中教審の探究の方向性にTimeTactはどう役立つ?8つの論点で機能を検証(取りまとめ案)


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この記事の目的と前提
中央教育審議会のワーキンググループが示した「取りまとめ(案)②総合的な学習・探究の時間」(会議後修正、2026年8月4日付掲載)には、課題設定の質、発散と収束の思考、形成的評価、計画の精選、成果の外化、社会との連携など、探究の授業運営に関わる方向性が多く含まれています。本記事では、それぞれの方向性について、(1) 先生の実際の業務、(2) その業務に対応する探究学習支援サービス「TimeTact」の機能、(3) それでも先生の判断に残る部分、の3点を整理します。
読み進める前に、次の前提をご確認ください。
- 取りまとめ(案)は審議中の案であり、確定した学習指導要領ではありません。本文中の「案」はこの資料を指し、ページ番号は同資料の該当ページです。
- 本記事はTimeTactを提供するStudy Valleyの編集部が執筆しています。取りまとめ(案)は特定の製品やサービスに言及しておらず、TimeTactは文部科学省や中央教育審議会の推薦・認定を受けたものではありません。案自身も、掲載している実践事例について「国として推奨する意図を有するものでない」と注記しています(p.63)。
- TimeTactの機能は、2026年9月24日時点の学校向けTimeTact公式ページに記載されている内容に限って紹介します。導入による効果を保証するものではありません。また、TimeTactが生徒を自動で採点・評価する機能は紹介していません。評価は先生が行うものです。
一覧:案の方向性と、先生の業務・TimeTactの機能・先生の判断
| 案の方向性 | 先生の業務 | 対応するTimeTactの機能(公式ページ記載) | 先生の判断に残ること |
|---|---|---|---|
| 課題の質の向上(p.5) | 生徒の素朴な問いを探究の課題へ磨く支援 | 企業の課題・テーマを基にした課題設定、フリーテーマに関連する企業課題のAI提案 | その課題が生徒にとって自分ごとか |
| 発散と収束の技法(p.63) | アイデアを広げる・絞る活動の設計 | AIによる「発散」「収束」のフィードバック、ブレインストーミングツール「あいである」 | どの技法をいつ教えるか |
| 試行錯誤のプロセス重視(p.31) | 途中経過の記録と確認 | ノート&トーク機能、仮説整理の履歴管理 | 記録から何を読み取るか |
| 形成的評価・自己評価・相互評価(p.58) | 見取り、フィードバック、振り返りの設計 | 進捗・提出物の一覧表示とコメント、グループメンバーや教職員からのコメント | 評価の観点と文章記述 |
| 計画の精選(p.60) | 年間・単元計画の作成と運用 | 日付ごとの授業計画と教材配信、授業計画作成時のAI支援、導入時の年間カリキュラム提案 | 学校の目標に照らした内容の決定 |
| 外化の機会(p.7) | まとめ・発表の場の設計 | 探究ポスター機能、探究成果の公開ページ作成 | 公開範囲と個人情報の扱い |
| 社会との連携(p.64) | 外部との調整、期待値のすり合わせ | 企業課題を使ったプログラム、企業との連携内容の調整・マッチング | 連携の目的と深さ、安全管理 |
| 情報科との連携(p.29) | データやデジタル技術を使う探究の指導 | データサイエンス・AI体験等の授業動画プログラム | 情報科の授業との役割分担 |
以下、方向性ごとに詳しく見ていきます。
1. 課題設定の「質」を高める
案の方向性:「課題」という言葉が困りごとを想起させ、好奇心に基づく探究や、一度設定した課題が変化していくことが読み取りづらいという指摘を踏まえ、興味・関心や問題意識に基づく素朴な問いが「解明したい『問い』」「解決したい『課題』」など、より解像度の高い問いや課題へと洗練されていくイメージを参考資料等で示すことが検討されています(p.5)。
先生の業務:生徒が出した漠然としたテーマを、調べられる・試せる大きさの問いに絞り込む支援です。一人ひとりの関心が違うため、個別の声かけに時間がかかります。
対応する機能:公式ページでは、課題の設定について「多様な企業が取り組んでいる課題・テーマを基に、生徒の興味・関心にあった課題設定が可能」と説明されています。また「生徒が設定したフリーテーマに関連する企業課題を選出してAIが提案」する機能も紹介されています。
先生の判断に残ること:提案された企業課題が、その生徒の問題意識と本当につながっているかの見極めです。案は探究の考え方として「学習者の興味・関心や問題意識」を起点とすることを明確化するとしています(p.5)。外部の課題を入口にする場合も、生徒が「なぜ自分がこれに取り組むのか」を言えるかどうかを確認する役割は先生にあります。
2. 発散と収束の思考を支える
案の方向性:現行の「考えるための技法」は10個の例が並んでいるだけで、考えを発散させる思考が含まれていないとの指摘を踏まえ、「当面発散の観点を追加するとともに、発散と収束の観点から分類して示す」ことが適当とされています(p.63)。例として、発散に「自由に発想する」「組み合わせる」、収束に「比較する」「分類する」「焦点化する」などを置いた整理が示されています(p.83)。
先生の業務:アイデア出しの活動を設計し、広げる段階と絞る段階を切り替える指示を出すことです。
対応する機能:公式ページには「AIがアイデア出しのところから『発散』『収束』の2種類のフィードバックを実施」とあり、「みんなで集まってリアルタイムでアイデアを出し合えるブレインストーミングツール『あいである』」の搭載も紹介されています。整理・分析の段階では「すでに作成されているワークシートを読み込み、アイデアを整理できるオンライン模造紙」も使えます。
先生の判断に残ること:どの技法をどの時期に教えるか、AIのフィードバックをどこまで使わせるかです。AIのフィードバックはアイデアに対する助言であり、生徒の評価ではありません。技法の見直し案の詳細は「考えるための技法」の見直し案を解説した記事をご覧ください。
3. 試行錯誤のプロセスを残す
案の方向性:総合でAIを活用する場合には、一次情報の検証に加え、「プロセス(試行錯誤の履歴としての思考・判断の変遷や他者との議論・吟味など)」や口頭での表現などを重視する対応が考えられるとされています(p.31)。評価の面でも、学習者が探究のプロセスに関わる資料をポートフォリオ等にまとめ、それを用いて対話する検討会を行う等の取組が考えられるとされています(p.72)。
先生の業務:完成した成果物だけでなく、途中でどう考えが変わったかを確認することです。紙のワークシートでは、途中の版が残らないことがあります。
対応する機能:公式ページでは、情報の収集について「探究での調査内容をノート&トーク機能で保存し一覧管理」、整理・分析について「過去にどのような仮説整理をしたか、履歴をデジタルで管理」と説明されています。授業後には「各グループ・生徒が、授業中に取り組んだ内容をTimeTact上で一覧表示」でき、「生徒が自走して取り組んだ内容も、各種記録機能から確認」できるとされています。
先生の判断に残ること:記録が残ることと、その記録から生徒の変容を読み取ることは別の作業です。どの記録を見取りの根拠にするか、検討会でどの履歴を生徒と一緒に振り返るかは先生が決めます。履歴を使った振り返りの例は提出履歴で問い・方法・考察を見直す振り返り事例で紹介しています。
4. 形成的評価・自己評価・相互評価を回す
案の方向性:総合の評価は「文章で端的に記述する」という基本を維持しつつ、総括的な評価のための細かな評価場面の設定や過度な評価材料の収集は求めず、一貫した視点で継続的に見取る方向が検討されています。教師による形成的評価(見取りを踏まえた適時のフィードバックや指導・支援)と、生徒自身による自己評価・相互評価の機会を一層重視することが適当とされています(p.58)。
先生の業務:授業中・授業後に生徒の状況を把握し、適切な時期にコメントを返すことです。クラス全員分の進捗を追うこと自体が負担になりがちです。
対応する機能:公式ページのよくある質問では、「生徒ごとやグループごとの進捗状況をリアルタイムで確認できます。提出物や成果物の状況が一覧表示され、教職員は必要に応じてコメントやフィードバックを付け加えることが可能」と説明されています。ノート&トーク機能では「グループメンバーや教職員からのコメントで内容の深堀りも可能」とされており、生徒同士のコメントは相互評価の場面にも使えます。また、公式ページの冒頭では、授業計画、教材配信、生徒の進捗・成果物、ルーブリック評価を一元化するサービスと紹介されています。
先生の判断に残ること:評価の観点を定めること、見取った内容をもとに文章で評価を記述すること、どのタイミングでどんなフィードバックを返すかは、いずれも先生の専門的な判断です。ツールは記録を集めて確認しやすくするものであり、評価を代行するものではありません。評価の議論の詳細は形成的評価と自己評価重視の議論を解説した記事をご覧ください。
5. 全体計画・指導計画を精選する
案の方向性:全体計画には育成を目指す資質・能力を端的に記載し、「学習活動・指導方法・指導体制・評価」は単元計画レベルで記載して全体計画への記載を必須としないことなどが検討されています。具体の改善は解説や参考資料等で検討するとされています(p.60)。
先生の業務:年間指導計画・単元計画を作り、それを毎回の授業に落とし込んで教材を準備することです。
対応する機能:公式ページでは「日付毎に授業計画がセットされ」「日付毎の教材配信!教材の取り組み方も補記が可能」と説明され、授業計画の作成時には「ねこロボAI」を使えることも紹介されています。授業中は「授業日をクリックすると教材や提出物が表示」されます。サービス面では、導入時のミーティングで「年間のカリキュラムやプログラムなどの設計・実施方法などをご提案」し、その後も1〜2か月に一度程度の定期ミーティングを行うとされています。探究の目標設定や探究計画の立て方などを扱う約20種類の授業動画も用意されています。
先生の判断に残ること:学校の教育目標に照らして何を育てるか、全体計画に何を書くかは学校が決める事項です。AIによる計画作成の支援や外部からの提案は下書きや選択肢であり、採否と修正は先生と学校が判断します。計画の見直しの論点は全体計画・指導計画の「作りすぎ」を扱った記事で解説しています。
6. 成果を「外化」する機会をつくる
案の方向性:テーマ探究・マイ探究といった形態に関わらず、論述・レポート・プレゼン・作品制作等の「外化」の機会を適切に設けることを学習指導要領上明確化することが適当とされています(p.7)。発表の機会の在り方についても、学校主体・行政主体・大学や企業等主体の多様な事例を紹介することが適当とされています(p.89)。
先生の業務:まとめの形式を決め、発表の場を用意し、成果物を保存・共有することです。
対応する機能:公式ページでは「探究ポスター機能の活用で、アウトプットをイメージした探究が可能」とされています。成果物の発信については「生徒の探究成果を学校の探究HPとして簡単に公開することが可能」「ノーコードで簡単に生徒の探究成果物をまとめたページを作成」でき、「生徒名の非表示対応など」の個人情報対策にも触れられています。よくある質問では「探究ボード」で成果物をまとめ、学校のHPやSNSに公開できるとも説明されています。
先生の判断に残ること:何をどこまで公開するか、保護者や生徒本人の同意をどう取るかは、学校の方針に従って判断します。外化の形(論文、プレゼン、作品など)を探究の形態に合わせて選ぶ考え方は、研究系・行動系・創作系の探究を6コマで回す指導計画で具体例を示しています。
7. 社会との連携を無理なく進める
案の方向性:社会との連携の一層の推進が極めて重要とされる一方、探究に関わる高校教師の4割超が「外部との連携・協働」に課題を感じているとの調査結果や、社会の側から学校教育への関わり方が分からないという声も紹介されています(p.63)。連携の深まり方の目安として「出会い」「伴走」「協働」の3層が示され、連携が単なる活動に陥らないための教師の指導性や、安全管理の在り方も解説等で示すことが適当とされています(p.64)。
先生の業務:連携先を探し、目的や役割を相手とすり合わせ、当日の運営と安全を管理することです。
対応する機能:公式ページのよくある質問では、「企業が実際に抱える課題を探究テーマとして活用する200以上のプログラム」を提供し、「企業側からのフィードバックも受けられます」と説明されています。サービス面では、授業の代行から企業出張・出張授業・生徒発表会のアレンジまでを行い、「学校のニーズに合わせて企業との連携内容を調整」するとされています。
先生の判断に残ること:その連携で生徒に何を学ばせたいのか、3層のどの深さで関わってもらうのか、生徒の安全をどう確保するのかは、学校と先生が決める事項です。外部に任せきりにせず、単元のねらいと連携内容を事前に確認してください。3層モデルの詳細は探究と社会との連携を解説した記事をご覧ください。
8. 情報活用能力を生かした探究と情報科との連携
案の方向性:総合においては、身体性を伴う体験や経験が基盤であることを前提に、とりわけ積極的な情報技術の活用が求められることを明確化すべきとされ、高校では情報科を「要」となる教科として、総合とのとりわけ緊密な連携が求められることを明確化する必要があるとされています(p.29)。
先生の業務:データやデジタル技術を使う探究の指導と、情報科の授業との接続です。
対応する機能:公式ページに掲載されている授業動画プログラムには、「データサイエンスプログラム – ファースト」「データサイエンスプログラム – セカンド」「AI体験プログラム」などが含まれています。
先生の判断に残ること:動画教材は授業の一部を補うものです。情報Ⅰで何を学んだ段階でどの教材を使うか、情報科の先生とどう役割を分けるかは校内で決める必要があります。情報Ⅰと連携した授業の設計例は情報Ⅰ×総合的な探究の時間の授業案で紹介しています。
ツールを検討するときの確認ポイント
取りまとめ(案)の方向性に照らして探究支援ツールを検討する際は、TimeTactに限らず、次の点を確認することをおすすめします。
- 生徒の途中経過(問いや仮説の変化)が記録として残り、先生が後から確認できるか
- 先生のコメントや生徒同士のコメントなど、フィードバックを返す手段があるか
- 評価の観点や文章記述は先生が行う前提で設計されているか(評価を自動化すると説明していないか)
- 成果物の公開範囲や個人情報の扱いを学校が制御できるか
- AIの機能を使う場合、その役割(助言か、評価か)が明確か
- 学校の年間計画に合わせて使い方を調整できるか
まとめ
取りまとめ(案)が示す方向性の多くは、課題設定の支援、プロセスの記録、フィードバック、計画の運用、成果の発信、外部との連携といった、先生の日々の業務に関わるものです。TimeTactには、公式ページに記載のとおり、これらの業務を支える機能やサービスがあります。一方で、どの課題を自分ごととして認めるか、何を評価の根拠にするか、何を公開し、誰とどこまで連携するかといった判断は、案の方向性に沿う場合でも先生と学校に残ります。案は審議中であり、今後の議論によって内容が変わる可能性がある点にもご留意ください。現行制度と案の違いを先に確認したい場合は教員向けFAQをご覧ください。
テーマ別に読み進める
TimeTactの機能やサポート内容の詳細は学校向けTimeTact公式ページをご覧ください。探究学習の全体像は探究学習とは?テーマ設定・進め方・評価・生成AI活用の完全ガイドで整理しています。
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。









