研究系・行動系・創作系の探究を6コマで回す指導計画|時間配分・評価規準・配布シート例

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この記事の位置付け
中央教育審議会のワーキンググループが示した「取りまとめ(案)②総合的な学習・探究の時間」(会議後修正、2026年8月4日付掲載)では、探究の「課題」に着目した「研究系」「行動系」「創作系」という形態と、形態に応じて探究のプロセスが異なることを、学校の指導計画の立案等の参考資料として示すことが適当とされています(p.8)。これは審議中の案であり、確定した制度ではありません。
この整理の背景や政策上の論点は、探究のプロセスは研究系・行動系・創作系へ|中教審が示す新しい整理(案)で解説しました。本記事はその続編として、3つの形態を実際の授業で扱う場合の6コマ(50分×6回)の指導計画例を、時間配分・評価規準・生徒への提示物まで具体的に示します。特定校の実践報告ではなく、自校向けに組み替えるための設計例です。
なお、現行の学習指導要領の解説では、探究のプロセスとして「課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現」が示されています(解説 総合的な探究の時間編 p.6)。本計画はこの枠組みの中で、生徒の課題に応じて活動の重心を変える運用として設計しています。
取りまとめ(案)が示すプロセス例と外化のイメージ
取りまとめ(案)の補足イメージ7(p.18)では、形態ごとのプロセス例と、想定される外化(アウトプット)が次のように図示されています。
| 形態 | プロセス例(p.18の図より) | 想定される外化の例 |
|---|---|---|
| 研究系 | 問いの設定 → 情報収集(先行研究) → 仮説生成、仮説検証 → まとめ・表現 | 論文・レポート等 |
| 行動系 | 課題の設定 → 情報収集(実態調査) → 整理・分析、企画 → 行動、まとめ・表現 | プレゼン・実演等 |
| 創作系 | 問いや課題の設定・定義 → 情報・素材収集、アイデア創出 → 設計・構想、試行的制作 → 批評、改善 | 作品等 |
同じ図には「子供の興味・関心に基づく(内側から外側に広がっていく)ことが前提であり、『型にはめる』といった探究につながらないよう留意」と注記されています。本計画でも、形態は生徒の問いを分類するためのラベルではなく、次に何をするかを考えるための見通しとして扱います。
設計の判断1:形態は生徒が選ぶか、教師が指定するか
| 方式 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 生徒が選ぶ(クラス内で3形態が混在) | すでに個人やグループの問いがある時期。マイ探究に近い単元 | 教師の支援が分散する。コマ4で形態別グループを作り、相互に助言させる仕組みが必要 |
| 教師が1形態を指定(全員同じ形態) | 形態の違いを初めて扱う時期。テーマ探究に近い単元 | 生徒の問いと形態が合わない場合の逃げ道(別形態への変更)を用意しておく |
| 学年で時期を分けて順に経験させる | 年間を通じて複数の形態を経験させたい場合 | 各6コマが短くなりすぎないよう、年間指導計画で配分を確認する |
以下の計画例は「生徒が選ぶ(混在)」方式で書いていますが、1形態に絞る場合は該当する列だけを使えば成立します。
設計の判断2:6コマで何を終わらせるか
6コマは探究としては短い単元です。欲張ると全形態が中途半端になります。単元の終わりに到達する目標を、形態ごとに次の程度に絞ることをおすすめします。
- 研究系:小さな仮説を1つ立て、手の届く方法(公開データ、簡単な実験、観察、少人数への聞き取り等)で1回検証し、短いレポートにまとめる
- 行動系:身近な課題の実態を調べ、校内や身近な範囲で試せる小さな行動を1回試す(または実行計画を関係者に提案する)まで
- 創作系:作品の試作品を1回作り、他者の批評を受けて1回改善する
本格的な検証、学校外での継続的な行動、作品の完成は、続く単元やその後の探究につなげる前提です。
6コマの全体計画(例)
| コマ | 共通のねらい | 研究系の活動 | 行動系の活動 | 創作系の活動 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 自分の問いを見直し、単元の見通しを持つ | 問いの棚卸し → 形態選択シートで「解明したい」「解決したい」「形にしたい」のどれに近いかを考える → 仮の形態を選ぶ | ||
| 2 | 計画を立て、外化の形を決める | 問いの設定と、検証したい仮説の下書き | 課題の設定と、実態を調べる方法の決定 | 作りたいものの定義(誰に、何を伝える/解決する作品か) |
| 3 | 情報や素材を集める | 先行研究・既存データを探す | 実態調査(観察、聞き取り、公開データ) | 素材収集とアイデアの発散 |
| 4 | 中間レビューで他者の視点を得る | 仮説と検証方法へのレビュー | 企画(小さな行動案)へのレビュー | 設計・構想図や試作へのレビュー(批評) |
| 5 | 検証・行動・改善を行う | 検証を実施し、結果を整理する | 小さな行動を試し、反応を記録する | 批評を踏まえて改善版を作る |
| 6 | 成果を外化し、単元を振り返る | 短いレポートの要点を口頭で説明し質疑 | 行動の結果と次の提案をプレゼン | 作品を見せ、改善の経緯を説明 |
コマ3と4の間、コマ5と6の間は、校外での調査や試作のために1週間程度空けられると理想的です。
各コマの時間配分と教師の動き
コマ1:問いの棚卸しと形態の仮選択(50分)
- 0〜10分:これまでの探究で気になっている問いを3つ書き出す
- 10〜25分:形態選択シート(後述)で、それぞれの問いが「解明したい問い」「解決したい課題」「形にしたいアイデア」のどれに近いかを考える
- 25〜40分:ペアで説明し合い、問いを1つに絞って仮の形態を決める
- 40〜50分:単元のゴール(6コマ目に何を見せるか)を確認する
教師の動き:「どの形態が正解か」ではなく「次に何をすると問いが進みそうか」を問いかけます。形態はコマ4まで変更可能と伝えておきます。
コマ2:計画づくりと外化の形の決定(50分)
- 0〜10分:形態別のプロセス例(上の表)を確認する
- 10〜35分:計画シートに、コマ3〜6で何をするか、必要な材料や協力者を書く
- 35〜45分:単元の終わりに見せる外化の形(短いレポート、プレゼン、作品など)を決める
- 45〜50分:振り返り
教師の動き:6コマで終わる規模かどうかを確認し、大きすぎる計画は範囲を絞るよう助言します。
コマ3:情報・素材の収集(50分)
- 0〜5分:今日集める情報の目的を計画シートで確認する
- 5〜40分:形態別の収集活動(研究系は先行研究・既存データ、行動系は実態調査、創作系は素材収集とアイデアの発散)
- 40〜50分:集めたものの出典と、分かったこと・まだ分からないことを記録する
教師の動き:研究系の生徒には出典の確認を、行動系の生徒には調査対象への配慮を、創作系の生徒には他者の作品や素材の権利の確認を個別に声かけします。
コマ4:中間レビュー(50分)
- 0〜5分:レビューのルール確認(批判ではなく改善のための質問をする)
- 5〜35分:3〜4人のレビューグループで、1人5〜7分ずつ計画と途中経過を説明し、質問カードを使って質問を受ける
- 35〜45分:受けた質問をもとに、計画を修正する(形態の変更もここで判断)
- 45〜50分:振り返り
教師の動き:レビューグループは同じ形態でまとめると助言が具体的になり、異なる形態を混ぜると視点が広がります。単元のねらいに応じて選びます。この回は、地域や企業の方に「伴走」として中間レビューに参加してもらう場面にも向いています。取りまとめ(案)は社会との連携の深まり方として「出会い」「伴走」「協働」の3層を示し、「伴走」の例に中間レビュー、助言、成果発表の受け手を挙げています(p.64)。
コマ5:検証・行動・改善(50分)
- 0〜5分:修正後の計画を確認する
- 5〜40分:形態別の活動(検証の実施、小さな行動の試行、改善版の制作)
- 40〜50分:結果・反応・改善点を記録し、コマ6で話す要点を3つに絞る
教師の動き:予定どおりの結果が出なかった生徒には、「うまくいかなかったこと」自体が発表の材料になると伝えます。
コマ6:外化と振り返り(50分)
- 0〜30分:グループ内または小規模な発表会で、1人3分の説明と2分の質疑
- 30〜45分:振り返りシートの記入
- 45〜50分:次の単元へのつなぎ(続けたい問い、変えたい形態)
教師の動き:取りまとめ(案)は、AIを活用する場合などに重視する対応の例として「口頭での表現(成果の要点等をその場で説明し、質疑に耐える)」を挙げています(p.31)。発表の出来栄えよりも、自分の言葉で経緯と根拠を説明できているかに注目します。
生徒への提示物(コピーして使える項目例)
形態選択シート(コマ1)
| 問い | 考えるための質問 |
|---|---|
| 解明したい問いか(研究系に近い) | 答えを知りたい「なぜ」「本当に」があるか。確かめる方法を思いつくか |
| 解決したい課題か(行動系に近い) | 困っている人や場面が具体的に浮かぶか。自分が動ける範囲はどこか |
| 形にしたいアイデアか(創作系に近い) | 作って誰かに見せたいものがあるか。見た人にどうなってほしいか |
| 今の自分の選択 | 仮の形態と、その理由(コマ4まで変更可) |
中間レビューの質問カード(コマ4)
| 形態 | 質問の例 |
|---|---|
| 研究系 | その仮説が正しくないとしたら、どんな結果が出るはず?/その資料はいつ、誰が作ったもの? |
| 行動系 | その行動で困っている人の何が変わる?/試す前に、誰に相談や許可が必要? |
| 創作系 | この作品を最初に見た人は何を感じると思う?/一番こだわりたい部分はどこ? |
| 共通 | 最初の計画から変えたことは? それはなぜ? |
振り返りシート(コマ6)
- 最初の問いと、今の問い(変わった点)
- 一番うまくいかなかったことと、そこから分かったこと
- 他の人からの質問や批評で考えが変わったこと
- 次に続けたいこと、別の形態で試してみたいこと
評価規準の作り方
現行の枠組み:総合的な探究の時間では評定を行わず、各学校が定めた評価の観点に照らして、どのような力が身に付いたかを文章で記述します(解説 総合的な探究の時間編 p.133、取りまとめ(案)p.58)。単元の評価規準も、各学校が定めた目標と観点から作成します。
案の方向性:取りまとめ(案)は、細かな評価場面の設定や過度な評価材料の収集を求めず、探究のプロセスを通じて一貫した視点で継続的に見取ること、形成的評価と自己評価・相互評価を一層重視することを検討の方向としています(p.58)。単元計画の評価の視点の例として5要素(自己や他者にとっての意味/知識や方略の活用/学びの主体的な調整/他者との対話・協働/新たな意味や理解の構築)も示されていますが、具体的な要素は各学校の目標を踏まえて定めるとされています(p.76)。
これらを踏まえ、本計画では評価材料を増やさず、コマ4の中間レビューとコマ6の振り返りシートを主な見取りの場面にすることを提案します。形態によって見るべき根拠が変わる点に注意してください。
| 見取りの視点(例) | 研究系で見る根拠 | 行動系で見る根拠 | 創作系で見る根拠 |
|---|---|---|---|
| 課題と自己との関わり | なぜその問いを解明したいかの説明 | 誰のどんな困りごとに向き合うかの説明 | 誰に何を届けたい作品かの説明 |
| 知識や方略の活用 | 先行研究や検証方法の選び方 | 実態調査の方法と企画の根拠 | 素材の選び方や設計・構想の工夫 |
| 学びの調整 | 検証結果を受けた仮説の見直し | 行動の反応を受けた計画の修正 | 批評を受けた改善の内容 |
| 他者との対話・協働 | 中間レビューの質問への応答 | 関係者への相談や協力の記録 | 批評の受け止め方と取り入れ方 |
この表の視点は例であり、各学校の評価の観点に合わせて言い換えてください。形成的評価としては、コマ4の後に教師が1人1〜2行のコメントを返しておくと、コマ5に取り組む際の見直し材料になります。振り返りの深め方は形成的評価と自己評価重視の議論を解説した記事や提出履歴で問い・方法・考察を見直す振り返り事例も参考になります。
指導体制と安全面の準備
3形態が混在すると、担任1人ですべての相談に応じるのは難しくなります。取りまとめ(案)は、学級や学年を超えて、課題に応じて専門性や得意分野を持つ教師に相談できる体制が効果的な場合があるとしつつ、時間割や教室の調整が生じる点も指摘しています(p.8)。たとえば、コマ3〜5の期間だけ理科・情報科・美術科などの先生に「相談日」を設けてもらう方法は、大きな時間割変更なしに始められます。
行動系で生徒が学校外で活動する場合は、事前に行き先・相手・連絡方法を確認し、必要な許可を取る手順を決めておきます。取りまとめ(案)も、探究が学校外に展開していく中で安全管理の在り方が一層重要になることを指摘しています(p.64)。
生成AIを使う場合の注意
創作系ではアイデア出しや試作に、研究系では先行研究の検索語づくりに生成AIを使う場面があるかもしれません。使うかどうかは学校のルールと単元のねらいで判断し、使う場合は「AIが出したもの」と「自分が判断・改善したもの」を記録で区別させます。取りまとめ(案)は、AIを通じて得た情報の一次情報の検証や、試行錯誤の履歴としてのプロセスを重視する対応を検討事項として挙げています(p.31)。研究系の検証の例としてはAIの回答を条件を変えて比べる比較実験も使えます。
まとめ
研究系・行動系・創作系という整理は、審議中の取りまとめ(案)が参考資料として示すことを提案している段階ですが、現行の探究のプロセスの枠組みの中で、生徒の課題に応じて活動の重心を変える指導計画として今から試すことができます。6コマという短い単元では、形態ごとに到達点を小さく設定し、中間レビューと振り返りに見取りを集中させることがポイントです。形態の扱い方、評価の観点、指導体制の具体は、各学校の目標と生徒の実態に応じて先生方が判断してください。
テーマ別に読み進める
現行制度と取りまとめ(案)の違いは教員向けFAQで、情報科と連携した短時間の授業案は情報Ⅰ×総合的な探究の時間の授業案で紹介しています。発散と収束の技法は「考えるための技法」の見直し案を解説した記事をご覧ください。
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。











