大学入試の総合型選抜や学校推薦型選抜において、志望理由書や探究活動の成果物作成に生成AIをどう使うべきかは重要な問題です。本記事では、大学側の受け止め方やAIを利用する際のルール、自分の体験や熱意を自身の言葉で表現するための具体的なアプローチと指導の注意点について解説します。

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総合型選抜における生成AIの現状と大学側の姿勢

大学入試における総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜では、受験生の主体的な活動や個性、大学での学びに対する意欲が厳しく評価されます。その中で、志望理由書や探究学習のレポートの提出が必要とされるケースがほとんどです。近年、こうした提出書類の作成に生成AIを活用する受験生が増えていますが、これに対して大学側も警戒を高めています。多くの大学が「生成AIによる代筆や、本人のオリジナルではない記述は不正行為とみなす」という方針を明文化し始めています。書類選考だけでなく、その後の面接試験において整合性が問われることを意識しなければなりません。

なぜ大学は生成AIの無秩序な利用を嫌うのでしょうか。それは、AIが作成した文章には受験生本人の固有の体験や、にじみ出るような熱意(パッション)が欠落しがちだからです。AIが出力する志望理由書は、一見すると文法的に完璧でスマートに見えますが、どこか誰にでも当てはまるような無難な文章になりがちです。また、書類審査をAIの力を借りて通過したとしても、その後の面接や口頭試問で、書類の内容について深く突っ込まれた際、自分の言葉で説明できずに不合格となる事例が多発しています。総合型選抜で最も重視されるのは、受験生の生の体験と主体的な思考プロセスなのです。AIに書かせた文章は、面接での対話のギャップによってすぐに見破られてしまいます。

志望理由書や探究レポートでAIを使って良い範囲とダメな範囲

受験生の指導にあたる先生方は、AIの利用を一律に禁止するのではなく、どこまでが支援(サポート)であり、どこからが不正(代筆)になるのか、明確な境界線を生徒に提示する必要があります。以下に目安を示します。

利用カテゴリー具体的な活動内容評価上の判断
適切なサポート(OK)文章の誤字脱字や接続詞の修正、論理展開の矛盾や分かりにくい表現の指摘依頼、模擬面接の対話相手としての活用受験生自身の思考がベースにあるため推奨される
不適切な利用(NG)志望理由書の代筆を依頼する行為、自分の体験ではないエピソードの捏造、AIが生成した文章のコピペ提出不正行為とみなされ、不合格や評価剥奪のリスクがある

このように、文章のブラッシュアップや客観的なフィードバックを得るためにAIを使うことは、記述の質を向上させる正当な手段と言えます。探究レポートの執筆における正しいAIの活用法については、こちらの探究学習のレポート執筆でAIを正しく使う指導法を参考にしてください。AIに丸投げするのではなく、思考を支援してもらうという使い分けを受験生に自覚させることが重要です。

生成AIを活用しながら「オリジナリティ」を磨く3ステップ

総合型選抜に挑戦する生徒が、生成AIの罠に陥らず、自身の魅力を最大限に伝えるための具体的な活用ステップを解説します。

ステップ1:自身の「原体験」を徹底的に自己分析する

まず、志望理由書の骨組みとなる原体験やなぜその学問を学びたいのかという熱意の部分は、絶対にAIを使わずに自分の頭と手で書き出します。高校時代にこのような壁にぶつかり、こう工夫して乗り越えた、地域のボランティアでこのような人と出会い、社会問題の深刻さを知ったといった、自分だけの具体的なエピソードを箇条書きで整理します。自分の感情が動いた瞬間を大切にします。

ステップ2:AIを「厳しい校正者」として活用する

ステップ1で書き出したエピソードと主張をもとに、自分自身で下書きを書きます。その上で、AIに以下のようにプロンプトを入力して意見を求めます。

「私は〇〇大学の〇〇学部を目指す高校生です。以下の文章を読んで、志望理由として説得力が弱い部分や、論理が飛躍している箇所を具体的に指摘してください。文章を書き直す必要はありません。アドバイスだけを教えてください。」

このようにAIを使うことで、自分の文章を客観的に見直すきっかけが得られます。自発的な問いを立てて思考を深めるアプローチについては、探究活動で役立つ、論理的思考を深める問いの立て方も参考になります。客観的な指摘から自分では気づかなかった論理の甘さに気づくことができます。

ステップ3:最終的に「自分の声」でリライトし、人間の先生に見てもらう

AIの指摘を参考にしながら、文章を自分で修正します。このとき、AIが提案した小難しい専門用語や、普段の自分が使わないような不自然な言葉遣いは採用せず、自分の等身大の言葉で表現することが大切です。そして、完成した書類は必ず学校の先生や進路指導担当の人間に対面で見てもらい、熱意が伝わるかどうかフィードバックをもらいましょう。進路指導やレポート指導に使えるリソースは、こちらの進路指導や日々の探究レポート作成に役立つレポート指導資料にもまとめられています。AIと人間の両方のフィードバックを得ることで、文章の完成度は最大化されます。

指導者が知っておくべき受験生へのアプローチ

指導する立場である先生方は、生徒が持ってきた志望理由書がAIに書かせたものかどうかをチェックするだけでなく、面接練習を通じて書かれている内容が本当に本人の言葉になっているかを確認することが最も重要です。文章が整いすぎて本人の実態とズレている場合は、改めて君が本当に伝えたいことは何?と問いかけ、生身の感情を引き出してあげる指導が求められます。対話を通じてしか磨けない「受験生の生身の声」を先生が引き出すことが合格への鍵です。

テーマ別に読み進める

関連する解説を体系的に確認する場合は、探究レポート・評価ガイドをご覧ください。

まとめ

総合型選抜において、生成AIは志望理由書の代筆屋ではなく、論理チェックの壁打ち相手として使うべきです。AIには決して真ねできない、あなただけの原体験と大学で学びたいという熱意を自身の言葉で伝え、合格を勝ち取りましょう。

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この記事を書いた人:Study Valley 編集部
Study Valley編集部は、探究学習、教育、企業連携、進路に関する記事を企画・編集しています。公的機関の一次資料と公開事例を確認し、教育現場で実践に移しやすい情報を届けます。
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。