課題発見力を探究学習で育てる授業案!「問いが作れない」を解決する指導法

高校の探究学習において、多くの教員が直面する最大の壁が「生徒が自ら問いを立てられない」という問題です。テーマを決める段階で、「何を調べたらいいかわからない」と手が止まってしまったり、単に教科書の内容をまとめるだけの「調べ学習」で終わってしまったりするケースが後を絶ちません。自ら問いを発見し、それを検証可能な形に落とし込む「課題発見力」は、探究学習の成否を分けるだけでなく、社会人として仕事を進める上でも極めて重要なスキルです。この記事では、高校生の課題発見力を引き出し、良質な「問い」を育てるための授業案と実践的な指導ノウハウを詳しく解説します。
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なぜ今、探究学習において「課題発見力」が求められるのか
従来の教育では、あらかじめ用意された「正解」へいかに速く、正確にたどり着くかが重視されてきました。しかし、現代のビジネス社会や地域コミュニティが抱える課題の多くには、明確な正解が存在しません。何が問題なのか自体が曖昧な状況から、本質的な課題を見つけ出し、自ら問いを設定する力が求められているのです。
生徒が探究学習で自ら立てた「問い」は、学習意欲のエンジンとなります。自分が本当に知りたい、解決したいと感じた問いだからこそ、その後の情報収集や仮説検証に粘り強く取り組むことができます。探究の第一歩となる「テーマ決め」や「問いの立て方」の基本については、こちらのガイドも参考にしてください:探究テーマと問いの立て方実践ガイド。まずはこの基本を押さえた上で、さらに課題を深掘りするスキルを身につけていきましょう。
生徒が「問い」を作れない3つの本質的な原因
生徒が「問いが作れない」状態に陥るのには、いくつかの原因があります。教員がその背景を理解しておくことで、適切なアプローチが可能になります。
- 1. 「正しい答え」がある問いを探してしまう: 学校のテストに慣れている生徒は、間違えることを恐れ、すでにネットで答えが見つかるような無難な問い(例:「日本の人口減少の原因は何か」など)を選びがちです。
- 2. 知識や体験の不足による視野の狭さ: 対象に対する知識や社会的な体験が少ないため、そもそも何が問題なのか、どのような現状があるのかに気づくことができません。
- 3. 問いの抽象度が高すぎる、または具体的すぎる: 「世界平和を達成するには」のように壮大すぎて行動に移せない問いや、「学校の給食のメニューを増やすには」のようにローカルすぎて発展性がない問いになってしまいます。
課題発見力を育てる具体的な授業案とフレームワーク
生徒たちが「正解のない問い」を恐れず、日常の違和感から質の高い問いを引き出すための具体的な授業アイデアとフレームワークを紹介します。
日常の「違和感メモ」の作成
まずは、生徒自身の日常生活や学校生活、地域の様子を観察し、「なぜ?」「もっと〇〇ならいいのに」と感じた「違和感」を1週間にわたってメモさせるワークを行います。「通学路の信号の待ち時間が長くて不便だ」「部活動で連絡がうまく伝わらない」といった、身近な気づきがすべての探究のスタート地点になります。
「なぜなぜ分析」による課題の深掘り
見つけた違和感に対して、「なぜそうなっているのか?」という問いを5回繰り返すワークを行います。これにより、表面的な現象の奥にある本質的な原因(課題の構造)に迫ることができます。
例えば、「部活動での連絡漏れが多い」という事象に対して:、
1. なぜ? → 連絡ツールが複数(LINE、紙、口頭)混在しているから。、
2. なぜ? → 部員によって使いやすいツールが異なるから。、
3. なぜ? → 全体で共有するルールが決まっていないから。、
4. なぜ? → 代々の先輩からの慣習をそのまま続けているから。、
このように掘り下げることで、「単にみんなが連絡を見ない」という問題ではなく「連絡ルールの標準化と部活動の組織管理」という本質的な課題が見えてきます。
課題発見ワークシートの設計例と活用法
授業で課題発見をスムーズに進めるために、以下のような「課題発見ワークシート」を配布して記入させます。生徒が段階を追って思考を整理できるよう設計されています。
| ステップ | 生徒の記入内容の例 | 指導上のチェックポイント(教員のアドバイス) |
|---|---|---|
| 1. 違和感・気づき | 地域の商店街でシャッター通りが増えていて、活気がないのが気になる。 | 主観的な感想で構いません。まずは生徒自身が「面白い」「問題だ」と思うポイントを肯定します。 |
| 2. 現状の調査 | 市のウェブサイトで調べたところ、過去10年で商店街の店舗数が30%減少、利用客の平均年齢が65歳以上になっていた。 | 客観的なデータ(統計やニュースなど)にあたらせ、思い込みではなく事実を確認させます。 |
| 3. なぜ?の深掘り | なぜ若者が商店街に行かないのか? → 魅力的な店がないから? そもそも商店街の情報を知らないから? | 複数の要因を書き出させます。ターゲットや場面を絞り込むように促します。 |
| 4. 探究の問い(定義) | 「地元の高校生が思わず行きたくなるような、商店街の魅力発信やイベント企画とは何か?」 | 問いの主語と目的を明確にし、自分たちがアクションを起こせるサイズに調整します。 |
先生が問いをブラッシュアップする面談のコツ
ワークシートをもとにした個別面談では、教員が答えを与えるのではなく、問いかけによって生徒自身の思考を揺さぶることが大切です。「もし〇〇の立場だったらどう考える?」「その前提は本当に正しいのかな?」といった問いかけ(ゆさぶり)を行います。この「問いかける力」そのものを生徒自身にも学ばせることで、課題発見力はさらに向上します。教員側の問いかけの技術については、こちらの記事も役立ちます:探究学習で育む「問いかける力」の指導アプローチ。
また、問いを立てる際には、完璧な問いを最初から求める必要はありません。探究を進める中で、情報が集まるにつれて問いの形が変わっていく(ブラッシュアップされる)ことが普通であり、むしろそれが健全な探究プロセスであることを生徒に伝え、安心して取り組める環境を整えましょう。
テーマ別に読み進める
関連する解説を体系的に確認する場合は、探究学習の問いづくりガイドをご覧ください。
まとめ:自ら問いを立てる姿勢が一生の武器になる
高校生が探究学習で「課題発見力」を身につけることは、単に目の前の授業をクリアするだけでなく、将来あらゆる仕事において「新しいビジネスを創る」「業務の無駄を改善する」といったクリエイティブな成果を出すための絶対的な基盤となります。生徒たちの日常の些細な「なぜ」に耳を傾け、それを価値ある問いへと昇華させる伴走を心がけていきましょう。
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。










