探究学習のテーマや仮説は、一度書いたら終わりではなく、調べたことや対話をもとに見直していくものです。では実際の記録では、テーマや仮説の記述はどのくらい書き換わっているのでしょうか。TimeTactの保存履歴を匿名で集計し、項目ごとに、最初と最後に保存された過去の状態の記述を比べました。

項目別に比較可能な成果物は、テーマ・仮説ともに459件でした。テーマでは459件中146件(31.8%)、仮説では459件中178件(38.8%)で、最初と最後に保存された状態の両方に記述があり、その内容が異なっていました。ただし比較できたのは対象全体の約1.3%にとどまり、全体の傾向を代表する数字ではありません。また、記述が変わったことは、内容が良くなったことやAIの効果を意味しません。本記事では個別作品の原文や要約を掲載せず、全体の集計だけを用いています。

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今回の匿名集計で確認したこと

分析は2026年10月14日(日本時間)に行いました。対象は、その時点でTimeTactに保持されている成果物のうち、テーマと仮説の項目です。成果物の記述は、テーマ・背景・仮説・調査方法・結果・まとめ・今後の課題の7つの項目に分けて記録されます(項目名は本記事での表記です)。

TimeTactには、項目の内容が変更される前の状態が、過去の状態として保存される場合があります。保存されるのは一部の時点の状態で、すべての編集が記録されるわけではありません。今回はこの保存された状態のうち、同じ成果物の同じ項目について、最初と最後に保存された記述を比べました。保存された状態の数ごとの内訳は次のとおりで、2つ以上ある成果物だけが比較の対象になります。

保存された過去の状態の数(テーマ・仮説それぞれの項目について)
区分成果物の数対象全体に占める割合
対象全体34,897件100%
保存された状態がない31,253件89.6%
保存された状態が1つ3,185件9.1%
保存された状態が2つ以上(比較の対象)459件1.3%

テーマと仮説で件数は同じでしたが、同じ459件の成果物だと確認したわけではありません。2つの項目の件数を足して、別々の成果物の数として扱うこともしていません。集計の単位は成果物の項目であり、生徒数・学校数・授業数ではありません。

テーマと仮説の記述はどれだけ書き換わっていたか

最初と最後の保存時点で記述が異なっていた成果物(2026年10月14日時点)
項目比較できた成果物両方に記述があり内容が異なる比較できた成果物に占める割合
テーマ459件146件31.8%
仮説459件178件38.8%

仮説については、最初の保存時点では空欄で、最後の保存時点では記述があった成果物が130件(28.3%)ありました。この130件は、上の表の178件とは別に数えています。保存された最初と最後の状態だけを比べた結果であり、実際に最初に記入された時期を示すものではありません。授業では、空欄から記入に変わった成果物を、内容が書き換わった成果物とは分けて確認するとよいでしょう。

上記以外の分類(内容が同じだったもの、両方とも空欄だったものなど)は、プライバシー保護のため個別の件数・割合を掲載していません。

比較では、文字の装飾や余分な空白・改行の違いは同じ記述として扱い、文字・句読点・かっこの違いは異なる記述として扱いました。どのくらい書き換わったか、内容が良くなったかは判定していません。対応している形式の記述だけを取り出して比べているため、画像など文字以外の部分は比較に含まれていません。

この数字から言えること・言えないこと

  • 比較できたのは対象全体の約1.3%です。過去の状態が保存されていた成果物に限られるため、TimeTact全体の書き直しの割合を示すものではありません。
  • 比べたのは、変更される前に保存された過去の状態です。すべての編集の記録でも、最初の提出や最終提出、現在の最新の記述でもありません。
  • 記述が変わったことは、テーマや仮説が良くなったこと、教師の評価が上がったこと、学習効果があったことを示しません。教師の評価や意味内容の採点は使っていません。
  • AIの利用の有無で対象を絞っておらず、AIを使った群と使わなかった群の比較もしていません。AIが書き直しを促したかどうかは、この集計からは分かりません。

授業で確かめたい3つの観点(仮想の例)

記述が書き換わったかどうかだけでは、探究が深まったかは分かりません。次のような観点で、生徒と一緒に変化の中身を確かめることが大切です。以下の例は説明のために作った仮想の例で、実際の生徒の記述ではありません。

1. テーマが絞り込まれているか。たとえば「地域の活性化」というテーマが「駅前商店街の平日の来客を増やすには」に変わったなら、対象・場所・時間帯が具体的になっています。「誰の、どこの、いつの話か」を問い返すと、絞り込みの度合いを確かめられます。

2. 仮説が検証できる形になっているか。たとえば「SNSで発信すれば客が増える」という仮説は、「店舗紹介の投稿を週3回、4週間続けた店は、続けなかった店より平日の来客数の増え方が大きい」と書き直すと、何をどう比べれば確かめられるかが明確になります。

3. 修正の根拠が記録されているか。たとえば調査の結果が予想と違ったときに仮説を書き直したなら、「どの結果を見て、何を変えたか」が残っていることが重要です。根拠のない書き直しと、調査に基づく修正を見分けるには、変更の理由を一言でも記録しておく必要があります。

教師の問いかけとしては、「最初の記述から何を変えたか」「なぜ変えたか」「変えたことを支える根拠は何か」の3つが使えます。問いの立て方そのものは探究学習の問いづくりガイドで詳しく解説しています。

これまでの匿名集計記事との違い

AIフィードバックと提出履歴の匿名集計では、比較に使える履歴がどのくらい残っているかを扱いました。AIフィードバックの7項目別分布では、AI関連コメントが付いている項目の分布を扱いました。本記事は、AIとの関連は条件にせず、テーマと仮説の記述そのものが最初と最後でどう違ったかに絞っています。

集計方法とプライバシーへの配慮

削除されていない成果物・項目・利用者・所属情報を対象とし、生徒としての所属と成果物の種類を条件にしました。学校を示す名称条件で候補を絞り、テスト・デモ等を示す名称を除外しています。これは学校の実在性や記録の完全性を保証する方法ではなく、抽出には偏りが残ります。対象かどうかは分析時点の状態で判定しており、過去の時点の状態はさかのぼって確認していません。

利用者の条件として、TimeTactの利用規約への同意を示すフラグが設定されている記録に限りました。このフラグからは、同意した規約の版や、学校ごとの追加の契約条件までは確認できず、今回も検証していません。比較に使う過去の状態は、データベースに保存された日時が「2026-10-14 00:00:00」より前のものに限りました。この日時は保存値のまま扱っており、タイムゾーンの換算はしていません。

記述の比較は、分析用の処理の中だけで行いました。公開するのは上記の全体集計のみです。氏名、学校名、学年・地域別の小集団、個別作品の原文・要約は掲載していません。個人を識別できない統計情報の扱いについては、TimeTact利用規約(第1条第3項、第22条第2項)とプライバシーポリシー(2.1(8))を確認しました。匿名の統計の公開と、個別作品の公開は別のものとして扱っています。

アイキャッチ画像は説明用のイラストであり、実際の生徒や集計結果を示すものではありません。本集計がAIの利用を条件にしたことを示すものでもありません。

TimeTactで、テーマと仮説の見直しの過程を確認する

TimeTactでは、探究の成果物を項目ごとに記録し、提出時点の履歴とあわせて確認できます。記述が変わったかどうかだけで評価するのではなく、何をなぜ変えたのかを教師と生徒で振り返る運用に役立ててください。

本記事はTimeTactを提供するStudyValleyの編集部による自社データの記述的な分析です。第三者による教育効果の検証ではありません。生成AIの利用方針を含む探究学習の授業設計は生成AIと探究学習の総合ガイドで確認できます。

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この記事を書いた人:Study Valley 編集部
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。