学習指導要領の改訂により注目を集めている「総合的な探究の時間」ですが、「どの様にして授業をすれば良いのだろう?」「教材は何を選べば良いのだろう?」と悩みの種が多くあるのではないでしょうか?
そこで本記事では総合的な探究の教材に着目をして「どんな教材があるのか?」「どの様にして選べば良いのか?」を解説していきます。
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総合的な探究の時間の教材を選ぶ際のポイント
総合的な探究の時間は活動内容が学校や、クラスのグループ内でも多様であることから、教材も各出版社、各教材の特色が強い傾向にあります。
本記事は主要出版社が出版する「総合的な探究の時間」に関する紙媒体の教材に着目し、選び方や使い方について解説していきます。
総合的な探究の時間の教科書とは?〜選び方を解説〜
まず、総合的な探究の時間の教材を選ぶ際にポイントとなるのが、どの様な授業をしたいのかを定めることです。
この記事で紹介している教材は大きく分けると3種類あり、「探究のネタとなる事例を集めている教材」と「探究の過程やその方法を解説しているもの」また、それらを組み合わせたものがあります。
作りたい授業によってこのどちらを選んだら良いのかも変わるため、まず、授業の方針を決め、その後授業にあった教材を選ぶといった手順が良いでしょう。
例えば前半に探究の方法を学び、後半で自身で問いを立てさせ、探究する授業では、組み合わせたタイプの教材が有効だと考えられます。
逆に毎授業で様々な事例で探究をする授業であれば、探究のネタとなる事例を組み合わせている教材が有効だと考えられます。
また、出版物の中には学校専売の学校採用品と一般購入可能の教材があるので、その点も注意してみていきましょう。
本記事では教材それぞれの特徴をまとめているので参考にしてみてください。さらに、探究学習を作る上では、教員自身が探究について深く知る必要があります。
探究学習の作り方については以下の記事を参考にしましょう。
総合的な探究の時間に使用するその他の教材
総合的な探究の時間はその活動内容が多岐にわたることから、教科書や副教材以外にもICTやワークシートなど様々なツールを使います。
例えば教材としてICT教材として、Time Tactやアクチュルといったサービスがあります。
ワークシートはクラゲチャートやXチャートなど、教科教育でもよく使用される教材をはじめ、様々な教材があります。それらは無料で使用できるものも多いため教科書と併用して使用することも考えていきましょう。
表解説!各出版社の教材比較
総合的な探究の時間に関する教材は各出版社からリリースされています。そこで、以下の表を使ってそれぞれの特徴を比べ、使用したい教材の目星をつけていきましょう。
出版物 | 出版社 | 種類 | 特徴 |
課題探究へのアプローチ 問いづくりトレーニング | 東京書籍 | 教科書 | 前半に探究の過程やその方法を解説し、後半で探究のネタとなる事例を集めている。 |
課題研究メソッド 2nd edition | 啓林館 | 教科書 | 教科書で探究の過程やその方法、プレゼンテーション方法を網羅的に解説し、さらに探究のネタとなる事例を集めている。 |
課題研究メソッド 2nd editionノート | 啓林館 | ワーク | 課題研究メソット 2nd editionのワークシート集 |
事例探究ワークブック 最新時事・探究メソッド編 | 実教出版 | 教科書 | 探究の意義から方法、観点まで探究に必要な知識を抑え、事例を多く取り扱っている |
総合的な探究実践ノート | 増進堂・受験研究社 | ワーク | 探究の方法を学び、教科との関連が深いテーマについて探究実践することができる |
STEAMブック | ブリタニカ | ワーク | STEAM(強化横断的)な内容に特化し、探究のネタとなる事例を集めている。 |
これらの教材で使ってみたいと思ったものはあるでしょうか?
本記事ではそれぞれの詳しい特徴をまとめているので気になった教材についてチェックしてみましょう。
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各出版社の教材を紹介
各出版物について以下で詳細についてみていきます。各出版物ごとに特徴があり、それぞれ用途によって使い道が考えられます。
これらを参考に教材を選んでいきましょう。
東京書籍「課題探究へのアプローチ 問いづくりトレーニング」
本書は「探究につながる問い」の作り方を学ぶ教材です。各ユニットごとに個別の社会問題について考え、生徒が問いを作る練習をします。
教師用指導資料が準備されており、サポートが万全になされているのも特徴の一つです。
本書を使った探究のプロセスとしては、
- テーマを見つける
- 探究につながる問いをつくる
- 課題研究の計画を作る
- 情報の収集
- まとめと考察
- 課題研究の成果を発表するとされています。
本書では特に①テーマを見つけるに焦点を当てた教材となっています。
また、本書は各ユニットの事例の中で、各教科に結びつく知識が組み込まれており、教科横断的な視点も身につきます。
販売 | 学校採用 |
種類 | 教科書 |
媒体 | 書籍、デジタル対応 |
特徴 | ・探究テーマを見つけることに焦点を当てている ・教師用指導資料を準備 ・各教科との関連を学習できる |
引用元:https://www.tokyo-shoseki.co.jp/textbook/h/9/
啓林館「課題研究メソッド2nd edition」
本書は課題の発見方法からプレゼンテーション、発表までを段階を踏んで理解できる教材です。
画像左側の課題探究メソット(教科書)のみ使用することもできますが、画像右側の課題研究ノート(ワーク)が対応するワークシート集になっており、授業の成果をよりまとめやすくなります。
課題研究に取り組む意義やその概要についても説明しているため、本書一つで生徒が授業に取り組める構成になっています。また、本書の内容に加え、QRコードを読み取ることで、課題研究ノートへの記入例や、その他の事例も見ることができ、より幅広く課題研究に対応できます。
また、別売りで「課題研究メソッド 2nd Edition Teacher’s Manual~指導の手引き~」(学校採択用商品)により教員へのサポートが充実しています。
販売 | 一般販売 |
種類 | 教科書、ワーク |
媒体 | 書籍 |
特徴 | ・課題の発見方法からプレゼンテーション、発表までを段階を踏んで理解できる ・QRコードで内容詳細 ・指導の手引き(別売り)あり |
引用元:https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/kou/tankyu/
実教出版「事例探究ワークブック 最新時事・探究メソッド編」
本書は探究とは何か?から始まり、探究の事例までが一冊にまとまっている教科書です。
構成としては、
- 探究の意義(なぜ探究を学ぶのか)
- 探究の方法
- 探究に役立つ観点
- 事例
- キャリアと探究
といった形式になっており、生徒が探究するための方法を学べるのに最適な内容構成です。
本書の中には毎学習ごとに記述欄があり、一冊でノートの役割も果たすことができます。
特に事例のワークシートは問いが細かく設定されており、生徒が探究の方法を身につけるのに最適な一冊であると言えます。
また、教師用に無料でワークシート、スライド、など本書に必要な資料が公開されているのも特徴です。
販売 | 一般販売 |
種類 | 教科書 |
媒体 | 書籍 |
特徴 | ・探究の方法と探究の事例が書かれている ・授業に必要なスライド、ワークシートなどが無料で公開されている |
引用元:https://www.jikkyo.co.jp/book/detail/23328006
増進堂・受験研究社「総合的な探究実践ノート」
本書は、最初の章で探究の方法を身につけ、以降の章で、9つのテーマに取り組み探究をする一冊で網羅的に探究の能力をつけることのできるワークブックです。
本書では以下のような探究実践のサイクルが定着できるように構成されています。
引用元:https://teachers.zoshindo.co.jp/materials/high/iqr01.html
このサイクルを身につけるべく、9つのテーマが設定されています。
9つのテーマのうち7つはそれぞれ別々の学校で、実際の学校現場で取り組まれたテーマを使用しているため、生徒とテーマにギャップがないのが特徴です。また、この7つのテーマは各教科との関連性を意識して構成されており、7つのテーマで、主要5科目(国語・社会・数学・理科・英語)すべてと関連が図られていることも特徴です。
残りの2つのテーマでは、複数教科ではなく、教科単独の取り組みについての探究テーマが設定されており、教科での探究実践プロセスを身につけることができます。
販売 | 学校採用 |
種類 | ワーク |
媒体 | 書籍 |
特徴 | ・探究の方法と探究の事例が書かれている ・各教科との関連が図られている |
引用元:https://teachers.zoshindo.co.jp/materials/high/iqr01.html
ブリタニカ「STEAMブック」
本書は「探究のネタとなる事例を集めている」教材です。
各ユニットごとに睡眠や量子力学など全10テーマを使って教科等横断的な学び(STEAM教育)をすることができるのが特徴です。
教師用指導資料(朱書編)が準備されており、サポートが万全になされているのも特徴の一つです。
朱書編では、教師が授業で必要な言葉がけの例、授業をより効果的に進めるための情報、模範解答例、さらには各教科との関連や学習指導要領コードが載せられており、普段の授業では難しい教科連携的な学びを実現できます。
販売 | 学校採用 |
種類 | 教科書 |
媒体 | 書籍、デジタル対応 |
特徴 | ・デジタルの教材へQRコードでアクセスできる ・教師用指導資料を準備 ・各教科との関連を学習できる |
引用元:https://www.britannica.co.jp/assets/doc/form/202311_steam-book.pdf
総合的な探究の時間の教科書選定は学習方針によって変わる
これらのように、総合的な探究の時間には様々な教材があります。
総合的な探究の時間が各教科と大きく異なる点は学習する知識が厳密に定まっていないことにあります。そこでこれらの教材をうまく使うためにも、まずは授業の方針を固め、必要な教材は何かを判断しましょう。
教材は大きく分けて「探究のネタとなる事例を集めている教材」と「探究の過程やその方法を解説しているもの」また、それらを組み合わせたものの3種類がありました。
作りたい授業に合わせてこれらの教材を活用してみていただければ幸いです。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。