*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。
リトルスタジオインク株式会社(以下、リトルスタジオインク)は、ホームページや映像、アプリ、冊子などを企画し、制作するなど、メディアを通じて「こども」のための情報を発信しています。
今回ご提供いただいたのは、STEAM型の科学的探究プロセスにより、データの活用と分析の方法を学習できるコンテンツです。
このコンテンツの使い方や込められた想いについて、リトルスタジオインクの町田様・小野寺様・秋田様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。
町田保様 プロフィール
リトルスタジオインク株式会社 代表取締役
日本最初期のCG制作会社に入社し、CGエンジニアとしてキャリアをスタート。リトルスタジオインク入社後は、テクニカルディレクターとして、日本科学未来館のシンボル展示 GEO-COSMOS(世界初大型球体ディスプレイ) 、愛・地球博 / 三井東芝館 などでシステム開発を担当。その後、統計関連事業 / Eラーニング事業の企画・構成、ディレクションを担当。
小野寺雄大様 プロフィール
大学卒業後、何かを探しにセブ島へ。特に何も見つからず帰国。2018年度入社。ウェブサイトのアクセス解析、ウェブ広告配信、Eラーニング事業の企画・構成、子供向けSDGsイベントの講師などを担当。2020年度より「未来の教室」コンテンツ制作に携わる。
秋田真生子様 プロフィール
大学で環境・開発学を専攻。留学先のイギリスで環境リテラシーの高さに驚き、環境教育(ESD)等に関心をもつ。2021年度入社。子供向けSDGs×プログラミングワークショップにおけるサポート業務や、コンテンツ制作プロジェクトのアシスタントを担当。
リトルスタジオインクインク株式会社
1983年に設立され、ホームページや映像、アプリ、冊子などを通して「こども」のための情報を発信しています。国や地方公共団体、企業の広報向けパンフレットやノベルティのデザイン等も手がけています。
コンテンツについて
タイトル | 世界はデータで出来ている~STEAM探究のための統計・データサイエンスの道具箱~ |
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学年 | 小4〜6、中学、高校 |
キーワード | データサイエンス、ビッグデータ、統計、GIGAスクール、PPDCA |
URL | https://www.steam-library.go.jp/content/173 |
概要
このコンテンツでは、データ活用やデータサイエンスの力を楽しく身につけられるように、身近な現象に対する疑問・興味関心をテーマにしたSTEAM型の科学的探究を行います。探究のプロセスでは、PPDACサイクルを活用します。
PPDACサイクルとは?
以下の5つを繰り返すデータにもとづいた課題解決のフレームワークのこと。海外や統計教育でもよく使われる統計的探究プロセスです。
P:Problem・課題を見つける
P:Plan・計画を立てる
D:Data・データを集める
A:Analysis・データを分析する
C:Conclusion・結果を発表する
データサイエンスは、課題解決に活かすことができるテーマ
▲探究学習において重要なPPDACサイクル(1コマ目: STEAM探究に役立つPPDACサイクル より)
(田中)コンテンツのテーマにデータサイエンスを選んだ背景について教えてください。
(町田)弊社で「子ども統計プログラミング教室」を行った際に手応えがあったからです。他の業務を通して統計の専門家の方ともつながりができていたので、良いコンテンツを制作できるのではないかと思いました。また、STEAMライブラリーには課題解決に取り組むコンテンツがたくさんありますが、その課題解決のために統計が役立ちます。エビデンスを持って課題解決を行う重要性を伝えたくて、データサイエンスをテーマにしました。
動画を見るだけでなく、データに触れながら学ぶことができる
▲CODAPで作成された箱ひげ図(2コマ目:ランドセルって重くない? より)
(田中)コンテンツを制作する中で、意識されたポイントはございますか?
(町田)動画で解説するだけではなく、実際にデータに触れられるよう意識しました。具体的には、「CODAP(コダップ)」という統計ツールを使い、データを可視化しながら考えをまとめられるようになっています。CODAPを初めて使う先生方も多いと思いますが、Excelよりも簡単にグラフを作ることができて使いやすいです。
学年によってコマを使い分けて活用する
▲コマに関連する教科・単元が書かれた指導案の箇所(2コマ目:ランドセルって重くない? 資料(教員用)より)
(田中)対象学年が小4から高校生までと幅広いと思うのですが、コマによって対象学年は異なるのでしょうか?
(町田)最初の2コマは小学生向けですが、中学生的な内容も入っているので中学生でもお使いいただけます。5コマ目のコロナに関するものは中学生あたりで、残りは高校生向けというイメージです。
(田中)なるほど。授業で言うと、何の授業の時に使うのがおすすめでしょうか?
(町田))授業内容との関連はあまり気にせずにお使いいただいて良いのですが、教科単元に合うことを意識して制作しました。関連する教科や単元は指導案に示しています。
一部のコマだけ使うこともできる
▲データのばらつき具合を見やすくする「箱ひげ図」の解説(2コマ目 ランドセルって重くない? より)
(田中)コンテンツはコマごとにトピックが分かれていますが、コマ単体で使うこともできるのでしょうか?
(町田)はい。全7コマを通して使う必要は全くありません。箱ひげ図をわかりやすく説明したいから2コマ目だけ使う、という使い方でも構いません。ただ、PPDACサイクルを取り上げている1コマ目は、STEAMに取り組む上で重要な考え方なのでぜひ最初に見ていただきたいです。
コマのタイトル自体が、子どもたちの興味を引く問いになっている
(田中)子どもたちにデータサイエンスに興味を持ってもらうための、問いの例はございますか?
(町田)2〜7コマ目の統計実践に関する内容のコマは、それぞれのタイトルが問いになっています。3コマ目を例に見ると、「物語にはどんな動物がでてくるんだろう?」という問いがタイトルとなっています。この問いを踏まえ、「日本と世界の童話では出てくる動物に違いがあるか?」「動物の性格によってエンディングが変わるのか?」といった問いかけをしていただけると良いと思います。
そして、それを調べるために物語に登場する動物の「種類」や「話の結末」などのデータを組み合わせて分析していきます。タイトルの問いを提示し、それを明らかにするためにデータを使うという流れで進めていただければスムーズに授業を進められると思います。
教材タイトル(問い)一覧
・ランドセルって重くない?
・物語にはどんな動物がでてくるんだろう?
・最近ホームランが増えているってホント?
・新型コロナウイルスの感染者数の傾向は?
・暑い日はアイスクリームが売れる?
・カレーといえば牛肉?豚肉?
(田中)なるほど。他に関心を引くための導入はございますか?
(町田)子どもたちがデータサイエンスや統計に興味をもつには、ビジュアライズが重要だと思います。「子ども統計プログラミング教室」でも、子どもたちはグラフが出るだけで「すごい!」と楽しんでくれます。先ほどご紹介したCODAPではすぐにグラフができるので、まずはグラフを出してみてください。それから、グラフの形を見て「なんでこうなっているの?」と考え、「統計」のことを学んでいけば良いと思います。
わかりやすく、端末に慣れるために活用できる
▲統計データの見方について、詳しく解説されている。(4コマ目:最近ホームランが増えているってホント? より)
(田中)コンテンツを使う先生方に、伝えたいことやアドバイスはございますか?
(町田)統計の学習で教える内容はわかりやすく作ったので、ぜひ安心して使っていただきたいと思います。理系ではない先生でもお使いいただけますし、逆に統計をしっかりと教えたい先生にとっても、丁寧に教えられる教材になっています。
(小野寺)それから、「パソコンに慣れる」とか「配布された端末を使う」ということの入り口としてお使いいただけると嬉しいです。GIGAスクール構想で端末が配布されたけれどうまく活用できないという時に、コンテンツやCODAPを使ってパソコンに慣れていただけたらと思います。
皆様が探究していること
(田中)子どもたちの探究をサポートするには、サポートする大人も探究することが重要だと思います。皆様は、現在探究されていることはございますか?
(町田)毎日何かしらを探究しています。例えば、SDGsやプログラミングを学習する小学生向けのワークショップを行っているので、自分でも関連するトピックについてたくさん調べています。海洋プラスチックゴミのこととか、海洋温暖化の話とか…。自分で探究していって、それを子どもたちに還元できれば良いなと思っています。
(秋田)私は「環境保全の取り組みはどうすれば共感してもらえるんだろう?」ということに興味があります。「エシカル消費」を流行で終わらせないためにはどうしたら良いかとか、環境について子どもたちにどう教育したら良いのかについて、自分の中の問いとして考えています。
(田中)確かにSDGsや環境問題って難しいですよね。「木を伐採してはいけない!」の一点張りになってしまったり…。
(町田)まさにそういうところこそ、データを消費する側のリテラシーを上げることが重要だと思います。適度に伐採する方が、治水効果が上がることもあると思います。それを伝えるときに、データを消費する側に読み取る力があれば「確かにデータ的にはそうだ」と理解できるはずです。だから、データを消費する側の学習ってすごく大事だと思います。
(田中)なるほど。その意味でリトルスタジオインクさんのコンテンツが役立ちそうですね。小野寺さんが探究されていることは何でしょうか?
(小野寺)私は小さなことかもしれませんが、部屋探しをしていたので部屋をたくさん調べていました。自分が住むとなるとすごく調べるので、やっぱり自分事だと思うことが探究に繋がるし、子どもたちにとっても「自分事化」が探究のきっかけになるのではないかと思いました。
まとめ
町田様、小野寺様、秋田様、ありがとうございました。
データサイエンスは一見難しいテーマですが、丁寧に解説されており、ツールを使って学ぶことができるため、着実に理解することができます。
探究において重要な考え方であるPPDACサイクルについても学習できるため、ぜひ活用してみてください。
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