STEAMライブラリー

何からできている?どんなふうにできている?|株式会社NHKエンタープライズ

*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。

株式会社NHKエンタープライズはNHKグループの企業として、デジタル教材制作などを行なっています。そのノウハウを活かして今回は「『身の回りのものができるまで』 ~何からできている?どんなふうにできている?~」というコンテンツを提供いただきました。

このコンテンツの魅力や制作の背景について、木之下様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。

木之下研悟様 プロフィール

2001年入社以降、NHK番組素材を再編集したり、一部新規撮影して構成する、様々な教科の「NHKDVD教材」やデジタル教科書用の映像コンテンツ制作に携わる。筑波大学卒、同大学院教育研究科修了。趣味はランニング。

株式会社NHKエンタープライズ

1985年の設立以来、NHKグループの中核企業として、 番組やイベントの企画制作、コンテンツ販売、ライセンス事業、デジタルコンテンツ制作などの幅広い分野で事業活動を行なっています。2020年4月にはNHKプラネットと合併し、全国 7 支社とのネットワークを活かして、地域サービスの充実に力を入れています。

コンテンツについて

タイトル「身の回りのものができるまで」 ~何からできている?どんなふうにできている?~
学年小4〜6、中学、高校
キーワードSTEAM、探究学習、ものづくり、科学、食育、教育、リサイクル、ICT教育、プラスチック、植物工場、ゲノム編集
URLhttps://www.steam-library.go.jp/content/106

このコンテンツの目的

加工食品や衣類、プラスチック、紙がそれぞれどのようにできているか、身の回りにあるものから原料までを逆回しに見るなどしながら、そこに使われている科学、技術、ものづくりについて学習します。

また、ものづくりから派生した「課題」にも目を向けて、法律・倫理・環境への働きかけなどの視点も育みます。例えば、食品では果物の苗などの海外流出の問題、プラスチックではマイクロプラスチック、紙についてはリサイクルなどです。また生産コストなどを調べることで、経済的な面についても幅広く探究できます。

STEAMライブラリーへコンテンツ提供を決めた理由

(田中)今回はじめてのコンテンツ提供ということですが、コンテンツの提供を決めた理由はなんですか?

(木之下)教材制作のノウハウを生かしつつ、教科書の枠にとらわれないコンテンツを制作できるところに魅力を感じたからです。以前、教科書用にNHKの映像をまとめたデジタルコンテンツの制作を行なっていました。この時は教科書会社と連携していたため、教科書の枠を超えない範囲で製作していました。でも、STEAMライブラリーではその枠がなく、自由に制作できることに惹かれて応募しました。

生徒も先生も馴染みやすい身近なテーマ

(田中)「身の回りのものができるまで」というテーマにされた理由はなんですか?

(木之下)身近なものを入り口にしたかったからです。STEAM教育に慣れているかは先生によって差があると思うので、どの先生でも取り掛かりやすい身近なものをテーマにしました。また、身近なものと産業や社会を繋げられるコンテンツになっていて、小学生から高校生までの誰でも見ることができます。

わかりやすさにこだわったコンテンツ


▲2コマ目:どんなふうにできている? 食べ物(野菜・魚)より

(田中)制作時に意識したところやこだわったところを教えてください。

(木之下)生徒さんが考えやすいように、細かいステップを置くことを意識しました。「自由に考えて」ではなく、「こういう立場・こういう条件で考えて」「ではこちらの立場ではどうか」というように、前提条件をつけています。実証授業もやってみたのですが、条件をつけると色々な考えを出していただけました。

また、工場やお店の方へのインタビューを多く入れ、思いを語っていただきました。工場やそこでの工程を機械的に見せるのではなく、社会科見学や外部講師による授業のような感覚でご覧いただけます。

評価基準がはっきりと設定されている


別紙② 評価基準一覧表(高)より引用

(田中)どのコマでも評価基準一覧を作られているのが印象的だったのですが、これはどのような意図で作られたのでしょうか?

(木之下)きちんと目標を書かないと、活動しただけで終わってしまうという危機感があったからです。目標があり、それができたかをしっかり振り返ってほしいという思いがありました。また、評価基準がある方が、教科や学習指導要領に即したものだという先生方の安心感に繋がると思いました。

ただ、評価は絶対的なものではないという前提で考えていただきたいです。例えば、オゾンを使ったクーラーは当初評価されていましたが、環境という視点が入ると避けられることもありますよね。このように、評価は絶対的ではなく変化するものなので、評価基準では捉えられない突飛な発想が出ても、切り捨てずに向き合ってほしいと思います。

どの年代でも使えるコンテンツ

(田中)対象年齢は小学校高学年から高校生までですが、難易度はどの程度でしょうか?

(木之下)中学3年生で実証授業を行ったときにアンケートを取りましたが、難しいというご意見はありませんでした。基本的に身近なテーマになっていますので、小学生でもわかりやすいと思います。高校生向けにより難易度をあげるのであれば、「これを化学式で表せる?」と問いかけるなどして発展させるのがおすすめです。年齢別の学習指導案も用意しているのでぜひ活用してほしいです。


▲1コマ目:高校向け学習指導案より

「当たり前すぎて考えたことがない」問いを


(1コマ目高校向け学習指導案より引用:https://www.steam-library.go.jp/lectures/707

(田中)次にコンテンツの使い方についてお聞かせください。生徒の興味を聞くために使える導入の問いはありますか?

(木之下)「当たり前すぎて考えたことがない!」という問いから入るのがおすすめです。「なんでペットボトルはプラスチックから作るの?ガラスじゃだめ?」とか、「どうして豆腐は固まっているの?」とか、改めて理由を考えるとわからないような問いが生徒さんの関心を引けると思います。いきなり動画から入ると、目的意識なく見てしまうと思います。だから、事前にワークシートや問いと向き合ってから動画をご覧いただくのが良いです。

どの時期に使うべき?

▲ペットボトルからプラスチックごみ問題も。(5コマ目:何からできている? プラスチックより)

(田中)ありがとうございます。では、このコンテンツはいつ頃使うのはおすすめでしょうか?

(木之下)高度な内容ではないので、いつでもお使いいただけます。また、STEAMライブラリーには合意形成やデザイン思考など、探究の基礎となるコンテンツもあるとお聞きしました。そのようなコンテンツでの学びを応用するための材料として、セットで一学期に使ってもらうのも良いと思っています。

「正解はなくて大丈夫」ということを大事に

(田中)ありがとうございます。コンテンツを使う先生方に気をつけてほしいことや、大事にしてほしいことはありますか?

(木之下)「正解はなくて大丈夫」ということを大事にしてほしいです。生徒が考えるパートの多いのが特徴のコンテンツになっているので、自由に考えるための材料としてお使いいただけると嬉しいです。

また、先生が楽しむことを大事にしていただきたいです。先生が全部を知っている必要はありません。私たちも、コンテンツを作る中で初めて知ることばかりでした。知らないことを知るのは面白いことなので、肩肘張らずに楽しんでください。生徒に教えようとするのではなく、はっとさせられるような答えが出てくるの楽しんで待つと良いのではないでしょうか。

探究されていること

(田中)今、木之下さん自身が探究されていることはなんですか?

(木之下)現在、陸上のコーチングスタッフもしておりまして、子どもたちの指導は日々探究だと感じています。子どもによって最適な指導は違いますから、各自にあった適切な指導を探究しています。また、自分ごと化して陸上に取り組んでもらうための意識づけにも挑戦しています。

(田中)探究する中で、良かったと思う指導はございますか?

(木之下)褒めまくることです。褒めて励ますことで、次も頑張りたいと言ってくれたり、家で練習してくれた子もいたりしました。あとは、グループに分けて練習の進行を任せると、リーダー的な役割の子が出てきて前に出る子が増えるということもありました。

(田中)なるほど。授業で子どもたちと接する際にも活かせるかもしれませんね。

まとめ

木之下様、本日はありがとうございました。

身近なテーマでかつ学習指導案も具体的に作られているので、初めての探究でも使いやすいコンテンツです。ぜひ、活用してみてください。

今回紹介したコンテンツ
>「身の回りのものができるまで」 ~何からできている?どんなふうにできている?~