*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。
株式会社バンダイナムコフィルムワークス(旧:株式会社サンライズ)は、40年以上もの間、「機動戦士ガンダム」や「ラブライブ!」など、数々の人気作品を手掛けてきたアニメ製作会社です。
今回は、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAにある、「動くガンダム」にまつわるコンテンツをご提供いただきました。動くガンダムを切り口に、「ロボットや人間の動き方」「想いを形にする取り組み方」など、多様なテーマを学ぶことができます。ガンダムが大好きな方から初めて知る方まで、どんな方でも楽しめるコンテンツとなっています。
このコンテンツの使い方や込められた想いについて、株式会社バンダイナムコフィルムワークスの佐々木様・志田様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。
佐々木新様 プロフィール
株式会社バンダイナムコフィルムワークス
常務取締役
1997年(株)サンライズ(現:㈱バンダイナムコフィルムワークス)入社。ガンダムシリーズ作品を管轄し、プロモートするガンダム事業部ゼネラルマネージャーを経て2012年同社取締役就任。2018年より現職。2019年GUNDAM FACTORY YOKOHAMAを運営する㈱EvolvingG取締役就任後、同12月代表取締役就任。
志田香織様 プロフィール
株式会社バンダイナムコフィルムワークスIP事業本部ガンダム事業部
「ガンダムGLOBAL CHALLENGE」プロデューサー
2001年(株)サンライズ(現:㈱バンダイナムコフィルムワークス)入社。
アニメーションの現場で制作進行、設定制作などを経て、企画営業部門ではガンダムシリーズ作品を中心に担当。
2009年ガンダム30周年記念の18mの実物大ガンダム立像設置から携わり、実物大ガンダムを動かすプロジェクトでは、動くガンダムの企画制作を担当した。
株式会社バンダイナムコフィルムワークス
1977年より、数々のオリジナル映像作品を生み出してきたアニメ制作会社です。アニメ制作のみならず、お台場での実物大ガンダム立像の設置や、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAにある「動くガンダム」の制作など、人々を惹きつける作品を創造し続けています。2022年4月に株式会社サンライズから社名を変更し、「株式会社バンダイナムコフィルムワークス」として新たにスタートいたしました。
コンテンツについて
タイトル | 「動く」って何?「動く実物大ガンダム」から考えてみよう! |
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学年 | 小4〜6 |
キーワード | ロボット、地方創生、イノベーション、キャリア教育、エネルギー など |
URL | https://www.steam-library.go.jp/content/94 |
概要
「アニメのガンダムを実物大のガンダムとして動かしたい」という夢の実現を探究する小学生向けコンテンツです。18mの「動くガンダム」の実現に必要な技術的な要素・観点について、体感学習も織り交ぜながら、普段の教科学習が社会や夢の実現と結びついているという気づきを与えます。
タイトル | アニメを現実世界に!? 「動く実物大ガンダム」への挑戦から夢を形にする方法を探れ! |
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学年 | 高校 |
キーワード | ロボット、地方創生、イノベーション、キャリア教育、エネルギー など |
URL | https://www.steam-library.go.jp/content/95 |
概要
「アニメのガンダムを実物大のガンダムとして動かしたい」という夢の実現を探究する高校生向けコンテンツです。小学生向けのコンテンツの内容に加え、「自分の街で動くガンダムを実現するとしたら何が必要か?」という問いについて考えます。技術的課題以外にも、経済的・社会的ハードルを越えていった過程を提示しながら、夢の実現に必要な視点について気づきを与えます。
コンテンツを制作した背景
(田中)STEAMライブラリーにコンテンツを載せようと思った背景は何でしょうか。
(佐々木)弊社の事業が、STEAM教育の題材に合うと感じたからです。2020年、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAに「動くガンダム」を設置しました。弊社は普段アニメを作っているので、実際に動くガンダムを作ったことがありませんでした。誰も作ったことがないものを作るので、科学者や技術者などの色々な方々と協力し、6年もの歳月をかけて制作しました。その分、思ってもいなかった知見が弊社に備わりました。
STEAMライブラリーの趣旨は、子どもたちが自分たちの興味を元に「これはどうやってできたのか」「何が大変なのか」といった本質を学ぶことにあると伺いました。だから、「動くガンダム」の制作過程を題材にすれば、子どもたちに興味をもって弊社の知見を学び取っていただけると思ったのです。
(田中)ガンダムが好きな子は多いので、このようなコンテンツがあると子どもたちも興味が湧きそうですね。
(佐々木)そうですね。ガンダムが題材だと、学習の入口としてうまく機能するのではないかと考えています。加えて、ガンダムを動かすためには重さや動力などが問題に挙がり、物理的な様々なテーマに学びが広がると思います。
「動くガンダム」を作るにあたって準備したこと
▲【Day1】「動くガンダム」を実現する方法を学ぶ、構造と大きさを知る より
(田中)「動くガンダム」を作る過程では工学的な知識も必要になると思うのですが、皆様も専門知識を勉強されたのでしょうか?
(志田)私はロボット学の入門書を買いました。ガンダムの動かし方が一番の命題で、どう動かせば感動してもらえるのかを探る必要がありました。そこで、「そもそもロボットって何?」というところに立ち返ろうと思い、書籍を購入しました。フィクションであるガンダムを現実世界に持ち込むわけなので、「現実の世界のロボットって何だろう?」と思い勉強し始めました。
(田中)少しでも良いから知識をつけながら、ガンダムの動かし方を試行錯誤されたのですね。
(志田)はい。せっかくやるのだから、ロボット業界のために何か発見がないといけないと感じていました。だから、ロボット界で何をすれば革新的なのか、ロボット界では何が課題になっていて、どこを突破したいのかを調べるところから始めました。
「動くガンダム」からどのように学習テーマを組み立てたか
▲【Day4】関節と筋力 …ロボットの動き方と人間の動き方の”共通点”と”違い”を学ぶ より
(田中)「動くガンダム」という題材から、どのように学習を設計したのでしょうか?
(志田)「動くガンダム」からわかることを因数分解していきました。「関節の動きがわかるよね」「ロボットだからプログラミングのことも言えるよね」とか。分解した要素がどの教科に当てはまるのかを考えて、その中で子ども等にとって面白そうなものをピックアップしました。
ガンダムの最大の特徴は、人型のロボットであることです。そして横浜のガンダムは動くことができるので、ガンダムと人間の体のつくりや動きを比較することが子どもにとって一番わかりやすいと考え、「“動く”とはどういうことか」を学習のメインテーマにしました。
また、「動くガンダム」のプロジェクトは横浜市の誘致によって行われています。これに関連づけて、高校生向けコンテンツの8コマ目では、「動くガンダム」を自分の街に誘致するかどうかを考えるコマも作りました。役所の人、近隣住民、観光客などの立場でロールプレイをして、「動くガンダム」を街に作ることに賛成か反対かを考えます。
▲【Day8】シミュレーション …自分の街の特性を考え、ガンダムファクトリーをどのように見せていくかの視座を養う より
(田中)「面白そうだから良いじゃん!」と単純な議論になりがちですが、このロールプレイなら視野を広げて考えられそうですね。
(佐々木)実際に「動くガンダム」を設置する際も、横浜市のルールをいかに遵守し、かつ地域の方々のご了解をいただくかを大切にしました。こういったビジネスとしての課題はまさに僕の悩みなので、全国の少年少女たちの知恵を借りたいです(笑)
ガンダムに夢中になった大人たちから子供達へのメッセージ
▲「ガンダムに夢中になった大人たちのメッセージ」【Day10】プレゼンテーション …自分の考えを周囲に伝え、相手の考えを受け入れる より
(志田)弊社では「ガンダムエデュケーショナルプログラム」というものを行っていて、ガンダムを通してものづくりの楽しさなどを伝えています。STEAMライブラリーのコンテンツ制作は、このプログラムと並行して行っていたので、プログラムにご参加いただいた横浜市の先生方に、どのような教材が良いかをヒアリングしました。
返ってきた答えの多くは、「動くガンダム」を実現した熱意や、最後まで諦めない心などを伝えてほしいという内容でした。これを受けて、今回のコンテンツの最後には、横浜市の方やディレクターがどのような想いでプロジェクトに携わったかを語っていただきました。
(田中)それは素敵ですね。自分ごととして意欲的に探究してほしいと考える先生方は多いと思います。熱意を持って取り組んだ方々の想いを知ることができるコンテンツは嬉しいのではないでしょうか。
コンテンツの対象学年・使い方
(田中)コンテンツはどの学年で使うのが良いでしょうか?
(志田)小学4〜6年生向けと高校生向けのコンテンツに分けていますが、該当学年でなくてもご利用いただけます。どちらのコンテンツも4コマ目までは同じ内容で、実際に手を動かして作ってみるというワークを入れています。内容をご覧いただき、中学校の先生でも「これは中学で使えるかも」と思ったらお使いいただきたいと思います。
(田中)授業の組み立て方についてのアドバイスはございますか?
(志田)面白そうなところだけ取り出して授業していただいても構いません。内容が繋がっているコマでも2〜3コマで終わるようになっているので、レクチャー一覧(小学生向け、高校生向け)をご覧いただいて適宜抜き出していただければと思います。
(田中)ガンダムに関心のない子どもや先生も取り組むことができますか?
(志田)はい。ガンダムに関心のない子どもにも興味をもってもらえるように、導入の動画にガンダム以外のアニメを映したり、図を描いて手を動かすワークを取り入れたりしました。また、物理やガンダムに詳しくない先生にも取り組んでいただけるように、専門的な用語は指導ガイドや動画の中で説明するようにしました。先生方には、子どもと一緒に調べながら探究学習を楽しんでいただきたいです。
▲導入部分。アニメの歴史をダイジェストで振り返る【Day1】「動くガンダム」を実現する方法を学ぶ、構造と大きさを知る より
(佐々木)私たちのプロジェクトは、「あんなに大きいものをどうやって動かすの?」というすべての人に共通するワクワクが入り口にあるので、ガンダムに興味がない人でも取り組んでいただけると思います。ガンダムの施設も、ガンダムを好きな方だけでなく一般の方がたくさんいらっしゃいます。STEAMライブラリーに限らず、常に私たちはガンダムを知らない人にどう伝えるのかということを考えています。
今、お二人が探究していること
(田中)先生に限らず大人も探究した方がいいと言われます。仕事に限らず、お二人が探究されていることはありますか?
(佐々木)僕はゴルフスイングです。人間工学やてこの原理などを元に探究しているところです。
(田中)ゴルフはSTEAMの要素がたくさんありますよね!志田さんはいかがですか?
(志田)私は家庭と仕事の両立を探究しています。家庭と仕事って状況が千差万別なので調べても答えが出てこないことが多く、自分で探究しながら正解を作っていくしかないと思っています。
まとめ
今回は、株式会社バンダイナムコフィルムワークス様にSTEAMライブラリーのコンテンツについてお聞きしました。
ガンダムという小学生から高校生まで子どもが興味をもちやすい題材を扱っています。普段の学習が実生活に繋がることを実感したり、夢の実現ために必要な視点について気づきを与えたりするコンテンツです。子ども達が興味をもちやすい教材をお探しの方は、ぜひこのコンテンツを使ってみてください。
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