*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。
認定NPO法人カタリバ(以下、カタリバ)は、「意欲と創造性をすべての10代へ」というミッションのもと、10代の居場所と出番をつくるための取り組みを行っています。具体的には、対話による校則見直しをサポートする「みんなのルールメイキング」などの取り組みがあります。
今回カタリバにご提供いただいたのは、その「ルールメイキング」を学ぶことができるコンテンツです。主に生徒向けの「入門編「実践編」と、主に教員向けの「番外編」に分かれています。校則を題材に、身のまわりの「当たり前」を疑い、様々な人との対話を深めるきっかけになる教材です。
苫野一徳さん(教育学者、哲学者)、工藤勇一さん(元・麹町中学校校長、現・横浜創英中学・高等学校校長)、為末大さん(元陸上競技選手、経営者)をはじめとする、各界の著名人の方々が参加しているのも特徴です。また、現役高校生として俳優の鈴木福さんもご出演されています。
このコンテンツの使い方や込められた想いについて、カタリバの古野様と山本様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。
古野香織様 プロフィール
1995年生まれ。大学在学中、18歳選挙権の実現を契機に、若者の投票率向上や政治参加を推進するための活動を開始。 大学院では、中高校生への主権者教育について研究・実践を行う。 学校の中の民主主義と対話の実現こそが主権者育成の第一歩になるのではという思いから、カタリバに入職。「みんなのルールメイキングプロジェクト」を担当する。
山本晃史様 プロフィール
1990年生まれ。学生時代、若者の社会参画活性化に興味を持ち、中高生世代の余暇活動を大学生が応援する活動に取組む。またフィンランド・ヘルシンキのユースセンターでインターンを経験。2018年にカタリバ入職。2019年、みんなのルールメイキングプロジェクト立ち上げ時から従事。文京区青少年プラザb-lab元副館長。
認定NPO法人カタリバ
「どんな環境に生まれ育っても、未来をつくりだす力を育める社会」をビジョンに掲げ、社会に10代の居場所と出番をつくるための活動に全国で取り組んでいます。探究型学習プログラム「全国高校生マイプロジェクト」、不登校の児童生徒やその家族をサポートする「オンライン不登校支援プログラム」などの多様な活動を行っています。
【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
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コンテンツについて
タイトル | みんなのルールメイキング |
---|---|
学年 | 中学、高校 |
キーワード | 校則、学校のルール、ルールメイキング、民主主義、生徒会 |
URL | https://www.steam-library.go.jp/content/93 |
コンテンツの概要
学校の「校則・ルール」を題材に、身のまわりの“当たり前”について疑ったり、さまざまな価値観や立場の人との対話を通じて納得解を作る「ルールメイキング」の取り組みをサポートする映像コンテンツです。主に生徒向けの【入門編】【実践編】、そして主に教員向けの【番外編】という大きく3つのセクションに分かれていますが、どこからご視聴いただいても、ルールメイキングのヒントを得られる内容になっています。
校則をテーマにした背景
(田中)カタリバは幅広い事業を行われていますが、なぜ校則をコンテンツのテーマにされたのでしょうか。
(古野)先生方の問いに答えうる教材を作りたいという想いで、このテーマを選びました。全国的にブラック校則をなくそうという流れが大きくなっていて、先生方の間でもどうにかしなければという話が上がっています。しかし、どのようにルールメイキングを行い、対話的な生徒指導に変えれば良いのか、というHowのところは誰も教えてくれません。Howについての問いが現場からたくさん上がっているので、それに答えられる教材を丁寧に作りたいという思いが背景にあります。
(山本)また、色々な人が対話をしながら、みんなにとって良いものを見出す力を育むために、校則は良い教材になるのではないかと考えています。
対話を生み出す教材となることを意識した
▲生徒が先生と対話する様子(4コマ目:実践編①「ルールメイキングの進め方を知ろう」より)
(田中)コンテンツを制作される上で意識したポイントはございますか。
(古野)先生と生徒、先生同士や生徒同士での対話が生まれることをすごく意識しました。校則見直しというテーマは、学校現場にとってはセンシティブに受け取られる可能性があります。このため、「校則見直しを絶対にしなければいけない」と主張する内容にはしたくありませんでした。そこで動画には、生徒や先生が一方的に主張するのではなく、先生と生徒が一緒に話し、悩みながら考えていくシーンを、あえて多く取り入れました。対話的に物事を考えることを自然と促し、先生と生徒で考えて答えを導いてほしいというメッセージを意識的に入れています。
指導が難しいテーマだからこそ、教材を活用してほしい
▲鈴木福さんと苫野一徳さん(教育学者・哲学者)がルールについて対話する(5コマ目:実践編②「ルールメイキングをはじめよう~そもそもルールとは?~」より)
(田中)先生方がこのコンテンツを使う際、生徒に関心を持ってもらうために投げかけるべき問いはありますか?
(古野)生徒は良くも悪くも、校則には高い関心を持っています。一方、先生は校則を指導している側なので、立場上、校則について問いかけづらいのではないかと思います。例えば、先生から「みなさんが変だと思う校則はありますか?」とは聞きにくいですよね。このため、教材をフックにしてもらっても良いと思っています。例えば、動画の中で鈴木福さんが「(高校生は)ツーブロックってやりたいものだと思います」と話しています。このように、先生の立場からは言いづらいことを教材で補完して、それをフックに話が始まっていくという形が良いのではないでしょうか。そして、生徒が「校則について思っていることを言ってもいいんだ」と心理的安全性を感じられる雰囲気にすることも大切ですね。
(山本)また、生徒と校則の話をする前提として、教員同士でも校則について話ができるのか、ということが大事だと思っています。実はそのきっかけになる、教員向けの、ルールメイキングってどういうものなのかを知っていただける動画も用意しています。
▲11コマ目:番外編③「社会で活躍するプロフェッショナルに聞く ルールメイキングの意義」より
コンテンツの使い方について
(田中)コンテンツは中学生・高校生向けですが、どの学年や学期に活用するのが良いでしょうか。
(古野)中学1・2・3年生、高校1・2・3年生の皆さんが使っていただけるものになっています。全国の中学校・高校でルールメイキングの実証事業を行っており、教材にはその実践から得たノウハウを散りばめています。中学校・高校どちらの事例も丁寧に載せているので、どちらの学校でもお使いいただけます。
学期については、それぞれの動画の特性を活かして通年でお使いいただけます。ルールって何だろうということを考える動画は、例えば生徒会がスタートする際など、始めの時期に、一方、「新しいルールを提案しよう」という動画は、より後の、学期末などのタイミングで使われてはいかがでしょうか。
また、総合・探究の時間にこだわらず、今年度から始まる高校の新科目「公共」の一番初めに使っていただくことも想定できます。「公共」は、主権者教育の一丁目一番地として作られた科目です。この科目と、私たちのコンテンツで学べるルールづくりや民主的な社会をどう作るかということは、親和性が高いと思っています。公共の授業で何をしようか迷っている先生方には、ぜひ使っていただきたいコンテンツです。
(田中)コンテンツは一コマ目から順に見ていくのが良いでしょうか?
(古野)全部で11本の動画がありますが、用途に合わせてお好きなところから、必要だと思う部分から使っていただけるものになっています。
「これからルールメイキングを立ち上げたい」「生徒が校則なんて変えられると思っていない」という段階であれば、入門編からご覧いただくのがおすすめです。
実践編については、実践を進める上でのヒントとしてお使いいただけたらと考えています。校則見直しをこれから進めていく方や、実際に進めているけれど、これで良いのかと疑問を持たれている先生方・生徒さんにおすすめです。
番外編は、主に先生向けの動画です。ルールメイキングを進める際の大きな鍵は、先生方の認識の変化をいかに生み出せるかだと思います。その意味で、まず番外編①を先生だけでご覧いただくのも良いでしょう。番外編①では、元麹町中学校校長の工藤勇一先生、元陸上選手の為末大さん、カタリバ代表の今村久美の対談形式の動画です。先生方に向けて、実際に学校改革を進めたプロセスをご紹介いただいたり、教育現場における「ルールメイキング」の重要性や、ルールの本質に立ち戻るための議論をしてくださっています。
番外編②では、実際に校則見直しを進めている先生や、見直しが完了した先生に思いの丈を語っていただいています。これらをヒントに、先生方の中で対話を深めていただければと思っています。
また「パートナー校」としてご登録をいただければ、学校状況に合わせて教材をご活用いただくための個別のご相談も可能です。詳細については、みんなのルールメイキングプロジェクト事務局の公式サイト(https://rulemaking.jp/startup/)をご覧いただき、ぜひ「パートナー校」にご登録をいただければ嬉しく思います。
▲工藤勇一さん(横浜創英中学・高等学校 校長)、為末大さん(元陸上選手)、今村久美さん(カタリバ代表理事)による対談(9コマ目:番外編①「特別対談 いまなぜ、教育現場でルールメイキングが必要なのか?」より)
ルールメイキングの難しいポイント
(田中)これまでに学校でルールメイキングを実践した中で、苦労されたことはございますか。
(古野)ルールメイキングは学校経営も関わるテーマなので、先生方の理解なしには進まないことです。生徒主体で進めても、先生方に提案した際に色々な意見が挙がって、提案が通らない、ということは全国各地で起きています。だから、いかに先生方の理解や対話の土壌を耕し、そのような取り組みを学校で続けていけるかということが課題だと思っています。
(田中)なるほど。ただ、相手が納得するように伝えなければならないことを学ぶという意味で、一度先生に否決されることも生徒の勉強になるのかなと思いました。
(古野)そうですね。提案を否決された生徒たちは非常にたくましく、提案書を書き直そうとしたり、もう一度、提案の場作ってもらおうとしたりしています。何かを変えていく際に、組織の中でどのように動いて提案すれば良いのかを、とてもリアルな題材・課題として学べるプロジェクトになっていると思います。
(田中)他に難しいと感じたことはございますか。
(山本)生徒は、先生方などの大人が言うことに対し、「なぜそう考えたのだろう」と背景を考える前に、「この人が言っていることだから、きっと正しいのだろう」と考えてしまうことがあります。そうではなくて、意見の背景までしっかりと考えることを意識する必要があると感じています。
お二人が探究されていることは?
(田中)子どもに探究を勧めるにあたり、大人も探究すべきだとよく言われます。現在、お二人が探究されているテーマはございますか?
(古野)主権者教育や参加型民主主義を、マイテーマとして中心に据えています。私が19歳の時にちょうど18歳選挙権が決まり、そこから若い人の政治参加や投票率はどうすれば上がるかといったことをずっと探究しています。ルールメイキングは、民主的にみんなで物事を考えて決めていくにはどうしたら良いのか、参加型民主主義をどう実現していけば良いのかという所にダイレクトにつながるテーマなので、すごく幸運な仕事に就けているなと思います。
(田中)なるほど、素晴らしいですね。
(山本)私は、「物事はみんなで話し合いながら変えていけるんだ」ということを、学校の中でより多くの人が感じられるようにすることが、今後のルールメイキングのテーマだと思っています。そこを実現するためにどのような手段が必要なのかを、今まさに考えています。
(田中)そうですよね。このプロジェクトは始まったばかりなので、先生方が実際にやってみて、カタリバさんに是非フィードバックをしていただきたいですね!
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>「みんなのルールメイキング」
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お問合せ:rulemaking@katariba.net(みんなのルールメイキングプロジェクト事務局)
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。