*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。
HLAB(エイチラボ)は、サマースクールなど国境や世代を越えた多様な出会いと交流から学ぶ、リベラル・アーツ教育を提供しています。その経験を生かし、今回「合意形成」と「イノベーション」をテーマに、教材を提供していただきました。
このコンテンツの魅力や、教材構想の元となったHLABのサマースクール事業などについて、HLAB理事・COOの高田修太様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。
目次
・コンテンツについて
・サマースクールを始めたきっかけ
・サマースクールってなにするところ?
・このテーマを選んだ理由
・特に力を入れたところ
・コンテンツ制作にはサマースクールの生徒の協力も
・コンテンツは早い時期に導入するのがおすすめ
・導入の問いには何がおすすめ?
・実際に探究されていること
・まとめ
高田 修太様 プロフィール
理事・COO
HLAB共同創設者。東京大学工学部、同院工学系研究科修了。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校にて学生研究員として滞在。在学中、2011年に代表理事小林とHLABを設立、以降各地サマースクールの立ち上げに携わる。大学院修了後はBoston Consulting Groupにて主に通信・デジタル関連、ビッグデータ関連の経営戦略策定をコンサルタントとして支援。2017年、非営利組織での経験とビジネス両方のバックグラウンドを活かし、HLABに復帰。2019年より現職。
株式会社エイチラボ
HLABは、国境や世代を越えた多様な出会いと交流から学ぶ、リベラル・アーツ教育を提供しています。サマースクールやレジデンシャルカレッジ(教育寮)などを運営し、高校生と大学生を対象に、専門家や先生からではなく、お互いから学び、刺激を受けられる学びの場・コミュニティ・体験を提供しています。
【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
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コンテンツについて
タイトル | 対立する意見をどうまとめていくか? ~合意形成を学ぼう~ |
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学年 | 中学生、高校生 |
キーワード | PBL、探究学習、グループディスカッション、イノベーション、まちづくり ほか |
URL | https://www.steam-library.go.jp/content/122 |
コンテンツの目的
21世紀となり、世の中が不確実で予測が難しい時代に突入した、と言われています。そのような中で、多くの課題が私達を取り巻いていますが、身の回りの課題から社会レベルの課題を解決していく中では、多様な人々との協働、そして合意形成が重要となっていきます。このプログラムでは、「合意形成」をテーマに、異なる意見を持つ人々たちとどのように協働し、意見をまとめていくかを実践形式で学んでいきます。
タイトル | 気候変動を人間中心イノベーションで解決する! |
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学年 | 中学生、高校生 |
キーワード | 気候変動、合意形成、イノベーション |
URL | https://www.steam-library.go.jp/content/123 |
コンテンツの目的
本コンテンツでは、「気候変動」という地球規模の問題をテーマに、「イノベーション」を生み出すための手法を学びます。
社会を取り巻く課題の中で、次世代が直面する大きな課題である「気候変動」は、地球規模の問題であるために一見他人事である一方、生活や人生に大きな影響を与える課題です。では、自分ごととして知り、考え、行動に起こしていくにはどうしたらいいかを本コースでは考えます。
このように気候変動対策について探究しながら、HLABが大事にしている「お互いから学び合う」大切さを理解してもらうことも目的としています。
サマースクールを始めたきっかけ
サマースクールで行われるリベラルアーツセミナー(HLAB公式サイトより)
(田中)まずはHLABの主力プログラムである、サマースクールを始めた経緯についてお聞きしても良いですか?
(高田)2011年の震災の後に、当時大学生だった創業メンバーで、高校生向けのサマースクールを始めたのが最初です。高校生はどうしても、親・先生・卒業生といった限定された範囲の大人の影響だけを強く受けて、進路の選択肢が狭まりがちです。サマースクールを通じ、普段交流しない大学生や社会人と交流することで、広い視野を与え、進路の多様性を知ってもらうことが目的でした。東京でスタートし、いまでは全国5箇所で開催しています。
サマースクールってなにするの?
多様なゲストの方々をお迎えした、ざっくばらんな対話の場(HLAB公式サイトより)
(田中)サマースクールを知らない方のために、どのような活動をされているか、教えていただけますか?
(高田)高校生と国内外の大学生が約1週間、寝食を共にします。1日の流れとしては、午前に大学生が自分の専門分野を教える少人数のゼミを行い、午後には自己分析や地域の伝統などをテーマにした、講演会やワークショップを行ないます。また、夜には社会人の方とカジュアルに交流する時間も準備しています。
このテーマを選んだ理由
(田中)今回は「対立する意見をどうまとめていくか? ~合意形成を学ぼう~」「気候変動を人間中心イノベーションで解決する!」というテーマでコンテンツを制作されています。このテーマを選ばれた背景はなんでしょうか。
(高田)今までサマースクールで高校生と関わってきている中で感じた、彼らの中に起きるストラグル(心理的な葛藤など)にメスを入れられたら面白いな、と思ったことが発端です。
最近ブラック校則が話題になっています。どんなルールを作るのか、というルールメイキングも大切です。しかしその一歩手前の、誰と誰がどうやって合意するのか、という合意形成は、クラスでも、学校でも、社会においても必要ですので、1つ目のテーマは合意形成にしました。
2つ目は気候変動を通じてイノベーション思考を学びます。ワークショップを行う中でブレインストーミングを行っても、アイデアを出すことそのものに苦労する子が多くて、その手法を伝えられたらいいなということで。
特に力を入れたところ
(田中)特に今回のコンテンツ制作で力を入れたところなどありますか?
(高田)合意形成については宮城県の女川町の事例を取り上げています。女川町は東日本大震災で最も被害が大きかった町の一つです。しかし、巨大な堤防を作るのではなく、海と共存していく道を選びました。その意思決定も難しいと思うのですが、さらに、シニアの方々が、還暦以上の人はアドバイスはするけど口は出さない、と決めて、若い人に全力で活躍してもらう環境を作られました。これは、未来のコミュニティの合意形成のモデルになりえるなと思っていて、多くの人に知ってもらいたいです。
合意形成のワーク
ここでHLABのコンテンツから、合意形成とイノベーションについて学ぶ教材の一部を紹介します。
(7コマ目より引用:https://www.steam-library.go.jp/lectures/807)
ここでは、「学校生活の中で、気候変動に取り組むモチベーションが上がるアイデアを決めよう」というテーマで、各自でアイデアを出し、グループで話し合います。それまでのコマで、環境ばかりを優先しても同意を得られないことを学習している生徒は、環境保護に効果的であるかという側面だけでなく、生徒が意欲的に取り組めるか否かも考えます。
イノベーションを生み出す方法論について
(5コマ目より引用:https://www.steam-library.go.jp/lectures/805)
東京大学の小松崎俊作先生による講義では、イノベーションを生み出す方法について解説されています。高度な内容ですが、実例も取り上げつつ、理解しやすい内容です。
コンテンツは早い時期に導入するのがおすすめ
(田中)このコンテンツはどの時期に使うのが良いでしょうか?
(高田)合意形成は最初の方が良いと思います。友達とどこにご飯を食べに行くか、文化祭の出し物を何にするか、など合意形成は日常のあらゆるシーンで行われます。クラスの中で合意形成が共通言語になると、普段の生活も変わると思いますね。
イノベーションは、技術革新とか新しい技術というイメージがありますが、今あるものの組み合わせであることも多いんです。スマートフォンも、音楽と、インターネットと、電話とぎゅっとまとめたものですよね。だからイノベーションは、いろいろなテーマを学んだあとで、新しい答えを出すときのやり方として、学んでもらうのもいいかもしれません。
(田中)探究学習のサイクルでいう、「まとめ・表現」のフェーズで活用できそうですね。
高田さんが探究されていること
(田中)ありがとうございます。それでは最後に高田さん自身のご経験をお聞きしたいです。最近で実際ご自身で探究されていることって何かありますか?
(高田)僕が探究しているのはリベラルアーツについてと、趣味であるマジックについてですね。リベラルアーツに関しては世間で有名になってきたゆえに、どんどん多義化していると感じているので、本来のリベラルアーツとは何かについて探究しています。最近はそのためにギリシャ神話など古典を読むこともありますね。
マジックは、僕はアートだと思っているんです。アートとしてのマジックを自分がどうやって実現するのか、社会の中でマジックの地位は上げられるのか、などについて日々研究しています。
マジックをされる高田さん(Instagramより)
まとめ
高田様、貴重なお話ありがとうございました。合意形成やイノベーション思考は日常の様々な場面で必要なのにもかかわらず、学ぶ機会が少ないものです。しかし、探究的な学びの大きな助けになることは間違いありません。ぜひこのコンテンツを活用して探究学習やSTEAM教育に役立ててみてください。
HLABのコンテンツ一覧はこちら
関連するSTEAMライブイラリーコンテンツ
HLABの教材に関連したコンテンツには以下のようなものもあります。一部ご紹介しますので参考にしてみてください。
みんなのルールメイキング(認定NPO法人カタリバ)
地域循環共生圏(ローカルSDGs)の構築方法を学ぶ ~なぜ銀行員が農業をするのか?~(株式会社 YMFG ZONEプラニング)
防災教育〜災害に対してどのように向き合うか〜(海城中学高等学校)
ー問題解決のための思考法ー デザイン思考を知ろう!(一般社団法人 教育ソリューション研究協議会×株式会社うちゅう)
IoT技術により未来はどうなる?「IoTが実現する世界 〜イノベーションを通じた社会課題解決 Vol.4〜」(シャープ株式会社×株式会社エイスクール)
など
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。