インタビュイー
小倉加奈子 様 (医学博士)
順天堂大学医学部附属練馬病院病理診断科先任准教授、臨床検査科長。
2006年順天堂大学大学院博士課程修了。医学博士。病理専門医、臨床検査専門医。NPO法人「病理診断の総合力を向上させる会」のプロジェクトリーダー・理事。病理医や病理診断の認知度を上げる広報活動として、中高生を対象とした病理診断体験セミナーやチーム医療セミナーなどを開催し、病理診断の面白さを伝えるとともに、ふだんの学校生活と医学をつなげるような教育活動を精力的に行っている。
プライベートは(大学1年と中学3年の)2児の母。松岡正剛氏が校長を務めるイシス編集学校の師範としての指導の経験を活かし、医療と教育をつなぐ活動を展開している。
2020年からは経済産業省主導のSTEAMライブラリーに参画し、教育コンテンツ「おしゃべり病理医のMEdit Lab」を制作。
吉村堅樹 様(編集工学研究所)
イシス編集学校 学林局林頭。
松岡正剛(校長)直伝の世界読書奥義伝[離]を修めたのち、編集工学研究所に入社。
2013年度より編集工学研究所エディットスクール事業部部長、イシス編集学校 学林局 林頭に就任。
奈良県の平城京遷都1300年記念関連プロジェクト、帝京大学共読プロジェクト、千夜千冊編集業務などを手がけたほか、編集力養成プログラムの開発、ハイパー・コーポレート・ユニバーシティの講座ディレクター、ISISフェスタなどのイベントプロデュース、人材マネジメント、書籍・WEBメディア編集などに関わる。小倉先生(以下、同じ)と共に、経済産業省STEAMライブラリーの学習コンテンツ「おしゃべり病理医のMEdit Labo」制作にも携わる。
STEAMライブラリーへ教育プログラムを提供している順天堂大学の小倉加奈子先生、および編集工学研究所の吉村堅樹氏に、学習コンテンツ「おしゃべり病理医のMEdit Labo」についてインタビューさせていただきました。
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STEAMの M はMedicine(医学)
田中
始めにSTEAMライブラリーの御社のコンテンツの概要について教えてください。
小倉氏
STEAMライブラリーで「医学×編集で世界を読む」というコンセプトのもと、「おしゃべり病理医のMEdit Lab」を制作しました。STEAMのMというのは通常はMathematics(数学)のMですが、Medicine(医学)のMでもいいじゃないかと思ったんです。コンテンツを作成した理由の1つは、医学部をはじめとする医学系の大学へ進学したい中高生に医学を学ぶ場があるといいと思ったことです。 私が学んでいた当時と比べて、医学がかなり進歩していて、現代の医科大学では6年間で専門的な勉強に集中的に取り組みます。そうするとリベラルアーツ的な、社会の側や他の学問の側から医療を考える時間はほとんどとれません。医学は実学ですから、医師や看護師・スタッフとして働くときに必ず色々なバックグラウンドを持った患者さんと接することになります。だから医科大学に進学する前に、中高生が広い視野で医学を学ぶ一つのコンテンツとして、この教材を使っていただけたらなと考えています。 もう一点は、多くの中高生に医学に馴染んでもらいたいと思ったことです。医学は敷居が高いと思われているせいか、学校の先生でさえも「医学」と聞くと引いてしまいますね。でも医学は、中高で教わってきた学問がベースとなっています。そこで医学と他の学問、例えば中高の先生に馴染みの深い「社会」「歴史」「国語」「理科」などの科目との関連性を考えながらプログラムを組み立てました。 また、今まで生徒さんは文系・理系の科目を分けて学んできたと思うのですが、これからは科目横断的な学力をつける必要があります。そのとき役に立つのが「情報」を扱う手法です。この「学び方を学ぶ」ということが医学とともに「MEdit Lab」のもうひとつの大きなテーマになっています。
学び方を学ぼう!
田中
具体的に情報を扱う、学び方を学ぶという点をお伺いしたいです!また、先生達が授業を円滑に進めるためにどのようなものを準備しておくと良いか、また、子ども達からどういったことが質問として出てくることが予想されるのか教えていただけますか。
小倉氏
やってもらうワークの内容はなるべく予想できないものにしました。テーマがしっかり決まっていて、「解決型」のようなものとか、「新しい商品を世に出す」とか、そういう教材は学校でよくやられていると思います。 私も子どもが二人いるのでよく分かるのですが、子どもたちは「綺麗事だな」ということにすごく敏感なんですよ。「世の中はこんなに簡単に問題解決ができるはずがないから」と、辟易としています。中高生は思春期の時期ということもあって、大人たちがやらせようとしていることには懐疑的です。 そもそも、みんなそんなに勉強は好きじゃないし、やらされている感がある中で、やっぱりそのワークのゴールが見えちゃうんですよ。「こういうこと書いて欲しいんでしょ?」「社会のみんなが幸せになるような、こういうことを最終的なゴールとして出せばいいんでしょ?」と。
田中
教科書の「電球マーク」の答えに寄るように示唆しちゃっているというケースですね。
小倉氏
いきなり課題を自ら発見したり、つくり出したりするのは大人でも難しい。むしろ自分がいま抱えているモヤモヤの中から、こういう疑問があったんだとか、例えば世の中に対して怒りがあったんだというようなことを見つけることのほうが大事だと思うんです。そうやって、生徒が予想しづらい、飽きづらいワークを作ったつもりです。そのぶん、もしかしたら先生は授業の準備がやりにくいかもしれませんね。
吉村氏
先生には一緒に学ぶ、楽しむという姿勢での臨んでいただきたいです。正解がないようなお題、ワークにしているので、そうすると先生もこれが正解ですとは言い難いですよね。「先生もこういうの考えてきたけど君たちのほうがよく出来ているね」と一緒に楽しんでいただければ良いなと思います
名前がついたら病気になる
小倉氏
医学がテーマですから、誰にとっても未知な学びです。でも先生の得意な分野、担当の科目と関係づけていただくこともできます。例えば「医学×歴史」では、「病気の名前がどのように変わっていったのか?」や「医療の道具の古い歴史から、電子顕微鏡など今我々が仕事で使っている機器への流れ」といったレクチャーがあります。 「中世に活版印刷の発明がありました。みんなが本を読むようになり識字率が向上する。そうすると自分の目が悪いことに気付く。メガネが欲しくなってメガネ市場が発展していく。メガネを作っている途中にある人が顕微鏡を発見する。顕微鏡が発見されたから細胞発見に至る」など、歴史は <If-Then><If-Then>と連鎖していくじゃないですか。さらにこういったレクチャーに続くて、<If-Then>で未来のことを考えてみるというワークを用意しています。知識を必要としない、予想を裏切るようなワークになっています
吉村氏
小倉先生から「病名」の話がありましたけど、病気は名前が付いて初めて病気なわけです。名前がないときは何か分からない。「うつ病」や「胃潰瘍」といった名前がつけられてはじめて病気と診断されます。また、顕微鏡など道具が発明されることで、これまで見つからなかったウイルスや細菌が見つかって原因が分かることで病気とされる。じゃあ例えば「変なクセなどがある人に病気の名前をつけてみよう」という病名をつけるワークなどに取り組んでもらいます。病気というのはどこかから絶対的な線引きが降ってくるわけじゃなくて、医学の専門家や、医療業界が基準をつくり、名前をつけているわけです。
田中
学校の先生は失敗をすごく嫌いますよね。歴史の話がありましたが、医学に関わる歴史の話をじゃあ歴史の先生が知っているかというと多分知らないと思います。その時代に何があったかという背景は分かると思いますが。先生達にとって少しとっつきにくいかなというのがありますが、「正解がないので先生も間違えないですよ」ということでしょうか。
小倉氏
先生が準備やレクチャーすることはほぼゼロで臨んでいただいて良いです。先生たちに負担がないように、私が動画で一人でおしゃべり病理医していますので(笑) また、指導要領には、基本的に「生徒さんと面白がってください」と書いています。失敗を嫌うのは先生だけではなくて、正解志向の強い生徒も多いと思います。真面目な生徒さんほどそうで、「失敗するぐらいならやらない」みたいに引っ込んでしまう。だから「失敗してもいいよ」と声をかけるとか、生徒から出てきた発想について「すっごく面白いね!」って言い続けてあげるのが先生の役割です。
吉村氏
先生が積極的に間違えてくれたほうがいいかもしれません。「先生こんな名前考えちゃったけど、どう?」と率先して考えてみる。そうすると生徒のハードルも下がって「先生がそんなこと書くなら僕らも出していいんだ」となる。先生が「○○○症候群」など、正解らしいキッチリした名前をつけてしまったら面白くなくなる。準備というよりも、授業でのスタンスを大事にしていただければと考えています。
先生チームVS生徒チーム
小倉氏
私は今まで病理診断セミナーを中高生向けにやってきていて、色々な学校に出向いて病理診断を体験してもらってきました。セミナーが大いに盛り上がった学校では、生徒チームと別に先生チームが出来ていたことがありました。A, B, C, Dチーム, 先生チームとなっていて、生徒のチームと並列なんです。先生チームは生徒のことを放ったらかしで、夢中でワークに向かっていました。生徒が「なにあれ、○○先生、ちょー盛り上がっている」と言って、生徒も負けるまじと熱くなっていました。先生もガチンコで自分の意見を発表されていました。そういう感じになれば万々歳です。 私の仕事(病理診断)は細胞の形を見て造形を診断するのですが、細胞を診断するようにプレワークで葉物野菜を診断しようというワークを取り入れています。ほうれん草、小松菜、レタスとか、緑色の野菜を10種類くらい買ってきてもらって、それを形で分けていくアルゴリズムをグループごとに考えてもらう。対応表、一覧表でアルゴリズムを作るグループもいれば、フローチャートを作るグループもいたり色々なチームが出てくる。そんなふうに先生チームを作っていただく、というのも良いと思います。
田中
授業準備として職員室で先生たちでやってみるというのはとっつきやすい方法ですね。
吉村氏
先生が2チームくらいに分かれてやるのもいいでしょう。野菜を自己と非自己で分けるワークがあるのですが、情報を区別するということは、編集の始まりでもあります。一方、区別することが差別につながある場合もある。区別すること自体はもちろん悪いことではないですが、ハンセン病の歴史が象徴的なように、病気であると区別されることは、差別に結びつきます。人は他者感のあるほうを差別するわけです。シンプルなワークですが、面白く深く考えてもらうきっかけにしてもらえればと思います。
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コロナ・パンデミックとSNSの炎上
田中
面白くて深く勉強できたら最高ですね。少しトリッキーな質問なのですが、もしみなさんが高校生の頃にこのコンテンツに触れていたら、人生どう変わっていたと思いますか?
吉村氏
学び方や思考の方法を学ぶことができるので、中学生・高校生のうちに触れていたら、あらゆる教科、情報、学びに編集の型を使いながら、頭の中で組み立て直したり、関係づけることができるようになったと思います。以降の人生に起きる出来事に対する捉え方もきっと大きく変わったでしょうね。
小倉氏
テーマが「医学×バイオ」「医学×歴史」「医学×読書」と3つに分かれているのですけど、それぞれのテーマをまたいでいくような関連性をもたせています。例えば、コロナウイルスの感染戦略や、それに対する体の中の免疫の機能を「医学×バイオ」で学ぶのですが、パンデミックはSNSの誹謗中傷の広がりにも似ています。また、「医学×読書」でツイート文140文字を書きましょうというワークがあるのですが、そこでもう一度「医学×バイオ」について振り返って文章にしてもらいます。こんなふうに、科目やテーマを横断するような仕組みにしています。学ぶ意欲や気づきは「前やったあれに似ているな」というところから来ますから。
吉村氏
私たちの学生時代は「これはこういうもんなんだからしっかり学びなさい」という知識教育中心でした。科目をまたいで重ねて、新しい発見をしてほしい、という学びではありませんでした。それをこの「おしゃべり病理医のMEdit Lab」を通じて感じてもらえればうれしいですね。
小倉氏
芋づる式に疑問がふくらんでワークが終わる、というのを目指しています。生徒が終わった時に「色々なことをもっと知りたくなったな」と感じてもらえるようにつくりました。
田中
疑問をベースに興味がどんどん広がっていく感じですね。
小倉氏
とにかく楽しいと思ってもらえるような工夫はギリギリまでは作り込んでいます。参考図書の提示の仕方にしても、ただ並べて書いたら誰も読まないですからね。系統樹に本がぶらさがっていたり、機械の回路図に書籍が組み込まれていたり、少しでも目がいくようなワークブックにしています。先生も中高校生に戻っていただいて、一緒に楽しく学んでください。
医学者にも答えられない質問
田中
こういうものを届ける上で、今回なぜSTEAMライブラリーに載せようと思われましたか?他の方法もあると思うんですよね。
小倉氏
私がSTEAMライブラリーを知ったきっかけは広尾学園の木村健太先生です。私は病理医として6年ほど中高でセミナーをしていましたが、セミナーだけでは、生徒からの質問や疑問に対応できなくなっていると感じてきました。生徒から「僕たちがドクターになる頃にはAIがたくさん導入されていると思いますが、その頃にはどんな医療になっていますか?」と質問が来る。私も分からない。むしろ一緒に考えたい。そういう質問がここ2, 3年にすごく増えていました。けれども私自身が病理医という枠にとどまっていては、生徒の要望に応えられないだろうと思いました。 こういう疑問が出てきていることは素晴らしいことだし、それに対してアンサーではなく一緒に考察できる場が必要だと感じていました。そういったときに、STEAMライブラリーというプロジェクトがあると聞いたんですよね。教材を作って学校の先生に任せることになるので、私たちの思いがどれだけ伝わるか不安なところはありますが、経済産業省が国としてやっている事業で、波及力はすごくあります。どの程度伝わるかは別として、思い切って挑戦すべきことではないかと思いました。とにかく工夫していけば少しずつ「学び方を学ぶ」ことの重要さや方法は、浸透していくのではないかと考えています。
生徒が勝手に見てもいい
田中
今、こうやって各コンテンツ制作者さんにインタビューをしていて、STEAMライブラリーの画面からは伝わらない制作者の意図をストーリーとして提供することで、先生方の取っ付きやすさは全然違うと思います。今はSTEAMライブラリーはプロトタイプという位置づけで、動画、PDFでコンテンツを提供していますが、将来的にこのような機能があれば懸念点を解決できるのではないか、もっとこういうコンテンツを配信できるようにしたいという意見はありますか。
吉村氏
一つはインタラクティブ性です。生徒がやってみて質問ができたり、お題があって競い合えたりする場がつくれるといいですね。もう一つは、ウイルス・カード・ゲームというのを今回作っています。ウイルス側と免疫側に分かれて対決ができるようになっています。こういった遊びながら学べるツールをグッズとして打ち出すことにも取り組んでみたいです。メディアを乗り換えることで学びは活性化していきますから。また、生徒や先生にコンテンツがどのように受け止められているのか、制作者側が受け取れると良いと思います。
小倉氏
編集工学研究所も思考の方法をインターネットで学ぶことができるイシス編集学校を20年以上やっています。お悩みを抱える先生方をこういった本棚空間にお招きして一緒にワークショップをしてみるのもいいですね。コロナでリアルに集まることが難しいようであれば、ZOOMなどのアプリケーションを使って、インタラクティブにやれることは色々あると思っています。STEAMライブラリーに置くコンテンツからどれだけ派生したプロジェクトをできるかが大事だと思っています。
吉村氏
生徒が書き込めたり集えて、それに対して私たちがレスポンスできる場があるといいですね。STEAMライブラリー全体でみれば、デイリーやウィークリーでピックアップされてスポットされたり、運営者によってセレクトされるとフラットになることを防げるのではないでしょうか。
小倉氏
機能の要望から話はずれますが、STEAMライブラリーのコンテンツは、生徒が勝手に見始めるようになるといいんじゃないでしょうか。学校に行けないお子さんとか、保護者が見て、家でやって楽しんで学んでもらえるようになってほしいです。
吉村氏
そうですね。でも主には子ども目線でコンテンツを考えています。勉強をやらされていると感じてほしくない、子どもがこれは面白い、もっとつづきを見たい、聞きたいと思ってくれるものが望ましいと考えています。
小倉氏
学校の授業でやるときには、映像を流しっぱなしでも良い、という意味では先生目線です。動画を一時停止してワークに取り組んでもらわなければいけないようにはせず、ワークの時間も映像に組み込んである親切設計です(笑)
先生のカルテをつくる
田中
せっかくGIGAスクール構想でPCが配られるので、例えば遠隔で沖縄の小学生と北海道の中学生が一緒に御社のコンテンツに取り組んで、オンライン上で意見交換できるようになったら面白いね、という話もあります。ただ、国の事業としてやるのが難しい部分もあるので、民間で作ったら良くない?というのが僕のスタンスで、STEAMライブラリーに入れる提案でダメになったものは民間でやっちゃえばいい、と思っています。 あともう一つ質問なのですが、不登校のお子さんが自分でサイトにアクセスして見たらいいと思うのですが、生徒に訴求する上で、勉強するモチベーションが受験になっちゃうと思うんです。なんで勉強するの?と言うと、偏差値の高い志望校に行くことがゴールになってしまっている。生徒たちがこれを勉強したほうが良い理由で「将来仕事ができるようになるよ」と言っても、親御さんが子どもにホリエモンの本を渡して「これ読んだらめちゃめちゃ仕事できる人間になれるよ」と言っているようなもの。モチベーションの源泉がズレているので「そんな勉強するんだったらオンラインで数学の授業取ったほうがいいんじゃないの?」となってしまう。その中で高校生がやるべき分かりやすい理由がもしあったら教えてください。
小倉氏
色々な理由をつけたところで、全て同じことになる気がします。やったほうが良い理由というのはその人自身から出てくるものであって、周りの人がやったほうが良いよというのはその子にとっては本質じゃないと思うので。 その質問にベストな答えは持ち合わせていないのですが、そういう子って自分の余暇にはYouTuberの伊沢さんのクイズ王とか見て遊んでいると思うんですよ。私も見たことあるんですが、こういった映像は遊びと勉強の境界線に位置しているなと思ったんですよね。だから見たいと思わせるものをどれだけ制作者が開発できるか、ということではないでしょうか。あとは本人次第でしょう。
吉村氏
面白いからやる、というのがまず一つですよね。生徒が面白いと思うものを作ることを目指しています。遊びと勉強の境界線にあるものこそが学びの本質です。もう一つ、やったほうが良い理由を言えるとしたら、思考方法、考える型を盛り込んでいるので、効率的にも学べるし、深く理解できるようになるということです。数学や歴史や英語といった受験科目に対しての向かい方は変わるはずです。教科書に書かれている通りに分類していたものを、違う方法で分類して関係をつけてもいいと思えるようになるでしょう。 あえて、受験ということで言うと、小論文などには直接的にすごく有効です。どこに問題意識を見つけるか、どのように論理立てて組み立てていけるか、ということが身につくないようになっています。
小倉氏
入試の面接対策にもなりますね。想定外のワークしか取り入れていないので、どんな質問にも答えられる訓練にもなるはずです。
田中
面接で「高校3年のときにSTEAMライブラリーでこういうのを勉強して、病理学的に言うとこういうことで…」と話せると説得力がありますね。
吉村氏
医療をメインテーマにはしていますが、スコープは相当広いと思います。コロナ・パンデミックから感染症の歴史まで、フェイクニュースやSNSから差別の起源まで、医療というものを地にしながら語り直しています。生徒がこのコンテンツに触れるきっかけは「小論文が書けるようになる」でも、しっかり学んでもらえれば、それ以上のものがあったと思ってもらえるはずです。
田中
インターネットのコンテンツはテレビのような受け身のメディアと違って、自分から取りにいかないとなかなか情報が入ってきません。そういう難しさがある中で、どうキーワードで気を惹けるかは大事ですよね。
小倉氏
AO入試も面接と小論文がセットですよね。医療面接を学校の先生に対して、カルテの型でやるというワークもあるんです。生徒が先生のお悩みを聞いていってカルテをつくります。「ダイエットが上手くできない」とか先生が答えたら、それを診断書として書いていく。
田中
へぇー!面白そうですね。先生が「全然給料上がらん」って答えたりして(笑)
吉村氏
それを生徒がどういうふうに診断するか、楽しみですね!
小倉氏
お悩み相談の回答をちゃんと先生に返してあげる、というところまでがワークです。カルテには「SOAP」(Subject・Object・Assessment・Plan)という書き方の型があるんです。ドクターはいつもその型を使ってカルテを書いているんですよ。医者の診断を先生のお悩み相談で体感してもらうんです。
田中
なるほど、面白いですね。貴重なご意見をお聞かせいただきありがとうございました。
田中悠樹 (インタビュワー)
STEAMライブラリーのシステム構築事業者である株式会社 StudyValley代表取締役
2011年にゴールドマンサックス証券テクノロジー部に新卒入社。株式会社リクルートホールディングスでは海外のVCを担当。2020年に株式会社StudyValleyを設立。オンライン学習サービス「アンカー」や業務・学習支援ソフト「TimeTact」の開発や運営を行う。創業1年目でSTEAMライブラリーのシステム構築事業を受託。
STEAMライブラリーとは
経済産業省「未来の教室」が運営する、STEAM教育を通じてSDGsに掲げられる社会課題の解決手法を学べるオンライン図書館
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【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。