探究学習

そのSDGs探究、善意の押し付けになっていませんか?自己満足で終わらせないためのポイントを解説

SDGsをテーマにした探究がありきたりの結論で終わってしまう
もう一歩SDGsの探究を深めたい

私たちStudyValleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

先生方とお話する中で、冒頭のようなご相談をよくいただきます。

SDGsは、探究学習のテーマとして人気です。しかし、SDGsをテーマとする探究学習は、寄付やボランティア活動といったありきたりなアウトプットで終わりがちです。さらに、寄付やボランティア活動は、実は課題解決に貢献していなかったり、かえって悪影響を与えたりする可能性があります。

この記事では、SDGs探究を善意の押し付けで終わらせることなく、質の高いものとするためのポイントを解説します。

目次
その案、本当に課題を解決できますか?
・古着を開発途上国に寄付する
・教育を受けられない子どもたちのために、学校を建設する
・安全な水が手に入らない人のために、井戸を掘る

なぜ短絡的な解決策で終わってしまうのか
・課題を多面的に捉えていない
・本来の目的を見失ってしまう

SDGs探究を深めるためのポイント
・SDGsの取り組みを俯瞰的に捉える
・外部と連携し、積極的に意見を聞く
・先行研究を調べる

SDGs探究を深めるメリット
・本質的な課題解決力が身につく
・生徒の自己実現に繋がる

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その案、本当に課題を解決できますか?

SDGsについて探究する中で、生徒が次のような提案をした経験はありませんか?

・古着を開発途上国に寄付する
・教育を受けられない子どもたちのために、学校を建設する
・安全な水が手に入らない人のために、井戸を掘る

実は、これらは課題の根本的な解決にならない、またはかえって悪影響を与えている例です。どういうことなのか、具体的に見ていきましょう。

古着を開発途上国に寄付する

着なくなった服を開発途上国や災害で困っている場所へ送る寄付活動は、盛んに行われています。

しかし、次のような問題が発生しています。

・送られる古着が多すぎるため、結局廃棄される
・古着が現地のニーズに合わない
・現地の繊維産業が衰退

現地には必要とされる以上の古着が送られており、結局処分されているのが現状です。これでは、古着を処分するコストを送り先に押し付けたことになってしまいます。また、気温が高い国に厚手の服が送られて使い物にならないなどの問題もあります。

さらに、無料あるいは安価で古着が手に入ることで、現地で作られた衣類が消費されなくなっています。その結果、繊維産業に従事していた人々が職を失ったり、経済的な打撃となったりしています。

>古着の寄付の裏側:アフリカでの現状とは?|GNV-ニュースサイト Global New View

教育を受けられない子どもたちのために、学校を建設する

学校の建設も、よく行われるボランティア活動です。しかし、単に学校を建設しただけでは、子どもたちが教育を受けられるようにはなりません。

子どもが教育を受けられない背景には、家庭が貧しく、幼いうちから労働せざるを得ないという事情があります。日中も働かなければならないため、学校に行く時間がないのです。こうした根本的な問題が解決されなければ、子どもたちに教育を届けることはできません。

また、学校を建設するだけで活動を終えてしまい、その後の運営については考えられていないという問題もあります。学校を運営するには、教員の質を高めたり、経営の方法を確立したりすることが必要です。しかし、これらについては考えずに建物だけを建てるケースが多く、結局学校が機能しないことがあります。

>「この問題は、本当に問題です」──この広告に答えが書かれていない理由|朝日新聞2030 SDGsで変える

安全な水が手に入らない人のために、井戸を掘る

安全な水が手に入らない場所に井戸を掘るというボランティア活動では、過去に大きな問題が発生しています。

カンボジアでは、多くの井戸を掘ることが優先された結果、水質検査をきちんと行わないというケースが多発しました。その結果、井戸の水を利用した人々がヒ素中毒となり、死者が出る事態にまで至ったのです。

善意で行った活動ですが、「井戸を作る」こと自体が目的となり、「安全な水を使えるようにする」という本来の目的が見失われていたと言えます。

>「日本の寄付」井戸からも毒物 善意なら何をしてもいいのか J-CASTテレビウォッチ

なぜ短絡的な解決策で終わってしまうのか

それでは、なぜ本質的でない解決策に行き着いてしまうのでしょうか?考えられる原因は、以下の通りです。

・課題を多面的に捉えていない
・本来の目的を見失ってしまう

課題を多面的に捉えていない

まず、取り組みを通して解決したい課題を、多面的に捉えられていないことが考えられます。

例えば、先ほどの例にある学校建設は、「教育を受けられない子どもがいる」という課題を解決するためのアクションです。しかし、「教育を受けられない子どもがいる」という課題の元を辿ると、貧困が原因となっている可能性があります。貧困に苦しむ家庭のために子どもも働かなければならず、その結果教育を受ける余裕がないのです。

したがって、子どもたちが教育を受けられるようにするには、問題の根本にある貧困を解決する必要があります。教育に関する課題でも、教育以外の複合的な要因が絡んでいます。このため、「教育を受けられない」→「教育を受ける場所を作る」という対症療法的な考え方だけでは、課題の解決には繋がりません。

本来の目的を見失ってしまう

アクションが先行してしまい、本来の目的を見失うという問題もあります。

古着を開発途上国に送るという例では、「開発途上国の物資不足を解消する」「廃棄物の削減」などが本来の目的です。それにもかかわらず、古着を送ることばかりに意識が向きがちです。このため、衣類以外の物資不足が解消されない、送り先で古着が余って廃棄されるといった現状があり、本来の目的は達成されていません。

今一度本来の目的に目を向ければ、「大量廃棄を改善するために、ファストファッションのあり方を見直そう」などと、目的の達成に直結する切り口を発見することができます。手段であるアクションにとらわれすぎないように注意しましょう。

SDGs探究を深めるためのポイント

SDGs探究を短絡的な思考で終わらせず、より深いものにするためのポイントを紹介します。

SDGs探究を深めるためのポイント
・SDGsの取り組みを俯瞰的に捉える
・外部と連携し、積極的に意見を聞く
・先行研究を調べる

SDGsの取り組みを俯瞰的に捉える

生徒の取り組みは本当にSDGsの達成に貢献しているのか、俯瞰的に捉えましょう。

前述の通り、SDGsに取り組む際は、課題を一面のみから捉えてしまったり、アクションを起こすことに一生懸命で本来の目的を見失ったりしがちです。もちろん生徒の意欲や善意は大切ですが、「本当に目標達成に貢献しているか?」という客観的な視点が抜けてしまわないよう、先生方が俯瞰的に見てサポートすることが重要です。

生徒の活動を俯瞰的に捉えるには、以下の方法が有効です。

・似た事例と比較する
・長い時間軸で考える
・活動のコストと効果のバランスを考える

似た事例と比較する

生徒と似たような取り組みが行われた例を探し、比較することが役立ちます。

その例がうまくいっている場合、なぜうまくいったのか、生徒と比べてどのような点がよく考えられているのかを検討してみましょう。失敗している例の場合は、失敗の原因や、生徒が同じ落とし穴にはまっていないかを確認しましょう。

長い時間軸で考える

長期的な時間軸で考えることも重要です。

例えば、冒頭に示した古着の支援では、短期的に見れば衣類の不足を補うというメリットがあります。しかし、長期的な見方をすると、送り先の国の繊維産業を圧迫し、結果として国民を苦しめていると言えます。

また、学校建設の例では、学校の建設後にも施設の維持や教育の質を向上するための支援が必要になることがあります。しかし、生徒の都合によっては定期的に現地へ行けないことも考えられます。この場合、現地の学校は「建てっぱなし」になる恐れがあり、支援を継続できません。

このように、数年後にどうなるか、また取り組む側が活動を持続できるかといった考え方も重要です。

活動のコストと効果のバランスを考える

活動にかかる費用や労力と、SDGsへの貢献度のバランスも考えましょう。

例えば、学校建設を行うには、寄付をするなどの金銭的なコストがかかる可能性があります。また、校内外で募金を呼びかけるといった労力も必要です。しかし、前に述べたように、学校を建てるだけでは子どもが教育を受けられるようにはなりません。活動にかけたコストの割に、効果が小さい可能性もあります。

したがって、必要となる金銭的なコストや労力に見合う効果が得られるのかという点も考慮することが大切です。

外部と連携し、積極的に意見を聞く

外部と連携し、積極的に意見を取り入れることも重要です。

生徒の知識や善意だけを基に行動しようとすると、本来のニーズとずれてしまうことがあります。例えば、足りているものを寄付してしまう、根本的な原因ではないところにアプローチしてしまうといったことが考えられます。

したがって、外部の専門家や当事者の意見を積極的に取り入れ、真のニーズや根本的な課題をしっかりと理解することが大切です。外部との連携を強化し、現状に即した効果的な取り組みができるようにしましょう。

>【前編】徹底解説!探究学習の外部連携に必要なことは?連携のパターン、メリットについて

先行研究を調べる

先行研究を調べることも役立ちます。

真のニーズや根本的な課題を理解するために、外部と連携し専門家や当事者の意見を取り入れることが重要だとお話ししました。しかし、テーマによっては当事者に話を聞くことが難しい場合があります。また、外部と連携する余裕がない学校もあるかもしれません。

そのような場合でも、先行研究を活用することで、問題の根本や求められる取り組みについて考えることができます。

SDGs探究を深めるメリット

SDGs探究を深めることには、次のようなメリットがあります。

・本質的な課題解決力が身につく
・生徒の自己実現に繋がる

本質的な課題解決力が身につく

SDGs探究を深めることで、本質的な課題解決力が身につきます。

ここまでに述べたように、SDGsに関わる問題は複雑で、対症療法のような考え方が通用しません。このことを理解し、課題を多面的に捉えて根本にアプローチする練習をすれば、本質的な課題解決力を養うことができます。

課題解決力は大学入試や就職試験でも重視される資質であり、SDGs探究を通して養うことは大きなメリットとなります。

生徒の自己実現に繋がる

SDGsは多くの生徒が関心を寄せており、進路選択にも関わる重要な概念です。このため、SDGs探究を深め、SDGsの本質を理解することは、生徒の自己実現に繋がります。

SDGsは生徒の人生と密接に関わっている

若い世代は、SDGsへの関心が特に高いことがわかっています。以下の図の通り、特に10代の若者は、7割がSDGsを認知しています。

出典: SDGs認知率はコロナ禍を経てほぼ倍増。10代は70%超え~最新調査リポート

また、若い世代は、企業がSDGsに取り組んでいるかどうかを就職活動において重視しています。株式会社学情の調査によると、2023年卒の学生の7割以上が、SDGsに取り組む企業は志望度が上がると回答しています。

このように、SDGsへの関心が高い若者は、就職という進路選択の場面でもSDGsに注目していることがわかります。したがって、探究学習を通してSDGsの本質を学ぶことで、本当にSDGsに貢献できる環境を選ぶことができ、自己実現に繋がります。

まとめ

SDGs探究を自己満足で終わらせることなく、質の高いものにするためのポイントを解説しました。

SDGs探究を深めることは、本質的な課題解決力の育成や生徒の自己実現に繋がります。SDGsに関わる課題を多面的に捉え、本来の目的を意識して活動することで、生徒の将来に活きるSDGs探究にしましょう。

参考サイト・書籍
Global News View
2030SDGsで変える(朝日新聞デジタル)
TEAM SDGs(電通 Team SDGs・ソリューション)
あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣(原貫太)

高校/学校の探究担当の先生向け探究学習支援サービス『TimeTact』 CSRの枠を超えた教育投資『TimeTact』

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。