探究学習

SDGsネイティブの特徴とその背景から「SDGs探究」が生徒の自己実現を左右する理由を解説

SDGsネイティブってなに?特徴は?
彼らにとって、SDGs探究の意味って?

私たち Study Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

先生方とお話する中で、冒頭のようなご相談をよくいただきます。

SDGsネイティブとは、幼い頃から日常生活や学校教育などでSDGsに関する言葉や知識に触れ、環境問題や社会課題に高い関心を持つ人を指す言葉です。

主にミレニアル世代(1981年〜97年生まれ)とZ世代(1998年から2010年生まれ)の若者の総称とされています。いま高校に通っている学生たちもSDGsネイティブです。

この記事では「SDGsネイティブ」の価値観や就職活動の傾向といった特徴、また「SDGsウォッシュ」など、本質的ではないSDGsの取り組みも多く見られるようになった現在、SDGs探究で本質を見抜く力を養うことが、生徒の自己実現に関わってくるということも解説します。

この記事の内容
SDGsネイティブとは?
・SDGsネイティブの特徴
SDGsネイティブと就職活動
・企業のSDGsへの取り組みを重視
・SDGsへの取り組み度は志望度に影響
・社会貢献度の高さも重要視
企業のESG戦略とSDGsネイティブの採用
・ESG投資の盛り上がり
・ESG戦略とSDGsの関係
・SDGsネイティブ世代の有能な人材獲得がESG戦略に影響
SDGsネイティブは商品・サービスの開発でも重要
SDGs探究に求められるもの
・本質を見抜く力
・課題1:SDGウォッシュ
・課題2:本質的なSDGsへの取り組みとなっていない
・SDGsを「探究」することで本質とはなにか?を考える力が身につく
・就活生は社会貢献度を重視しているが・・・

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SDGsネイティブとは?

SDGsネイティブとは、幼い頃から日常生活や学校教育などでSDGsに関する言葉や知識に触れ、環境問題や社会課題に高い関心を持つ人たちのことです。

定義や世代の幅については諸説ありますが、社会課題や環境問題への関心が高く課題解決への意欲がある、主にミレニアル世代(1981年〜97年生まれ)とZ世代(1998年から2010年生まれ)の若者の総称とされています。

SDGsネイティブの特徴

SDGsネイティブは、多様な社会問題・環境問題を目の当たりにしてきました。2001年の米同時多発テロや2011年の東日本大震災、pm2.5による大気汚染やオーストラリアの森林火災など、多くのものが挙げられます。SDGsネイティブはこのような社会問題・環境問題の影響力を見てきたために、それらを自分ごととして考える傾向があります。したがって、彼らはSDGsへの関心が高いのです。

実際に、SDGsネイティブである若い世代ほど、SDGsの認知率が高くなっています。

出典: >SDGs認知率はコロナ禍を経てほぼ倍増。10代は70%超え~最新調査リポート

SDGsネイティブと就職活動

SDGsネイティブの価値観は、就職活動の傾向にも表れており、企業のSDGsをはじめとする社会貢献への取り組みが、志望度に影響することが分かっています。

企業のSDGsへの取り組みを重視

SDGsネイティブは就職活動において、企業のSDGsの取り組みを重視する傾向があります。二つの調査結果からこの傾向について説明します。

SDGsへの取り組み度は志望度に影響

SDGsへの取り組みの有無が、企業の志望度に影響するということがわかっています。

株式会社学情が実施した調査では、2023卒の学生の7割以上が、企業が「SDGs」に取り組んでいることを知ると「志望度が上がる」と回答しています。

この結果から、SDGsネイティブの学生は、就職活動において、企業がSDGsに取り組んでいることを重視しているとわかります。したがって、企業が積極的にSDGsに取り組むことは、採用にポジティブな影響をもたらすと考えられます。

参考:>【2023年卒】7割以上が、「SDGs」に取り組む企業は、就職活動で「志望度が上がる」と回答。20代社会人よりも、22.6ポイント高い結果に。「SDGs」認知率は、95.9%。

社会貢献度の高さも重要視

株式会社ディスコが2020年に実施した調査では、就職先企業を選んだ基準として「社会貢献度の高さ」が2019~2021年卒のいずれでも1位という結果が出ました。

参考:>就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2020年8月)

SDGsネイティブの就活生は、会社を選ぶ際、企業の社会貢献度を最も重視しているのです。

企業のESG戦略とSDGsネイティブの採用

企業側から見てもSDGsネイティブ世代の採用は重要な意味を持ちます。ここからは企業目線で、その理由を、ESG戦略との関連から解説していきます。

ESG戦略とは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」を考慮した戦略を指します。SDGsと同じく国連が提唱しており、企業を長期的な目線で評価するために、環境対策や社会問題などを考慮して投資先を選ぶように促す、という概念に基づいています。

環境(Environment)→環境問題に対する取り組みや環境保全に対する姿勢
社会(Social)→社会的影響の考慮、働き方の改善や多様性の実現
ガバナンス(Governance)→透明・公正な企業運営

ESG投資の盛り上がり

ESG投資は、前述したESGの視点を考慮した投資のことです。従来の投資が企業の財務指標を重視してきたのに対し、ESG投資では環境や社会、ガバナンスに対する姿勢をより重視しています(非財務的指標)。

企業広報戦略研究所が実施した「2020年度 ESG/SDGsに関する意識調査」では、約8割の企業が投資時にESGへの取り組みを考慮するという調査結果が出ています。世界中の個人投資家たちのESG投資への注目度は、年々高まりを見せているのです。

出典:>企業広報戦略研究所(株式会社電通パブリックリレーションズ内)「2020年度 ESG/SDGsに関する意識調査」
※全国の20~69歳の男女10,500人を対象にしたインターネット調査。2020年6月24日~6月30日に実施。

なお、ESG投資が注目される背景には日本が大きく関わっています。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、投資にESGの視点を組み入れることなどを原則として掲げる国連責任投資原則(PRI)に2015年に署名したことがあると考えられているのです。

ESG戦略とSDGsの関係

ESGとSDGsは、どちらも持続可能な社会の実現を目指しており、相互に関連しています。

前述の通り、「ESG」は「環境保全」や「働き方の改善」などの要素を含んでいます。これらは、SDGsの「目標13. 気候変動に具体的な対策を」「目標8. 働き甲斐も経済成長も」などと親和性が高いです。

このように、SDGsとESG は関連性が高く、SDGsを達成するために企業が考慮すべきなのがESGなのです。

SDGsネイティブ世代の有能な人材獲得がESG戦略に影響

したがって、SDGsへの取り組みは、ESG戦略に直結します。そして、ESG戦略において重要になるのが、SDGsネイティブの活躍です。

企業はSDGsネイティブ独自の視点をもったアイデアを活用することで、ESG戦略を効果的に実施することができるでしょう。

SDGsネイティブは商品・サービスの開発でも重要

SDGsネイティブの活躍は、企業のESG戦略のみならず、商品やサービスを開発する上でも重要です。

SDGsネイティブ世代はすでに、消費者の多数を占めており、そこに需要のある商品やサービスの開発が求められます。その際、SDGsネイティブのニーズを理解する必要があり、社内のSDGsネイティブの意見を活かすことが重要です。

SDGsネイティブは「持続可能性」という観点を大切にしつつ、若い世代ならではの自由な発想も持ち合わせています。

実際に、高校生がSDGsをテーマに、竹由来のサステナブルな生理用品を開発するなど、SDGsネイティブが新しい商品・サービスを生みだしている例はすでに見られています。

詳細:>中高生部門最優秀賞 「竹」×SDGsでジェンダー平等をめざす! ~ウガンダを例に~

このように、「持続可能性」という視点と創造力を併せ持つSDGsネイティブが、これからの社会を牽引していくのです。

SDGs探究に求められるもの

ここからはSDGsに関する課題を通じて、これから社会へ出ていく、SDGsネイティブ世代が、学校のSDGs探究で身に着けるべき能力を見通したいと思います。

本質を見抜く力

SDGsネイティブ世代がSDGs探究で身に着けるべき能力は「本質を見抜く力(課題をより大きな視点で捉え、本質的なSDGsへの取り組みはなんなのかを考える力)」です。

ここではSDGsにまつわる二つの課題を取り上げて、もう少し詳しく解説します。

課題1:SDGウォッシュ

SDGsウォッシュとは、見かけだけSDGsを掲げて実体がない、または効果のない取り組みを行うことです。実体の伴わないSDGsを掲げて企業のイメージアップを行うことや、環境負荷が高い事業への対応を放置して、あたかもそれがないかのようにSDGsを隠れ蓑として宣伝するといった、いわばSDGsを悪用する行為の事です。

課題2:本質的なSDGsへの取り組みとなっていない

「悪用」とまで行かなくても、ささいなSDGsへの取り組みを大きくPRして企業のイメージアップに利用する場合もあるでしょう。

また、一見、SDGsへ貢献していそうな取り組みでも、実際はあまり効果がない、むしろ問題を大きくするというケースがあります。

例えば、古着の発展途上国への寄付は一見良いことのように思えます。しかし途上国は先進国の古着で溢れかえっており、地元の産業を破壊するばかりか、先進国で余った衣服の焼却処分を行わざるをえず、実質、最終処分場と化しているというケースも存在します。

参考:>古着の寄付の裏側:アフリカでの現状とは?(Global News View)

SDGsを「探究」することで本質とはなにか?を考える力が身につく

SDGsがここまで盛り上がりを見せているのは「ESG」のように投資やビジネスとSDGsが結びついた成果といえるでしょう。一方で、ビジネスの世界はしたたかさに満ちています。たとえ悪意がなくとも、利潤の追求を行う過程で「本質的ではないSDGs」を利用する、そして将来社会人となる今の学生たちがそれに加担してしまうことも十分ありうるのです。

SDGsネイティブ世代はこの先の進路選択、就職などにおいて「SDGs」が重要な基準になります。だからこそ、うわべだけではない「本質的を見抜く力」が必要です。

就活生は社会貢献度を重視しているが・・・

先ほど、就活生が社会貢献度を重視しているという調査を紹介しました。

参考:>就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2020年8月)

では、就活生がどこで社会貢献度を判断しているのか?というアンケートを見ると、1位は「企業理念」となっています。

正直、企業理念だけでは、その会社が「本当に社会貢献度が高いのか」はわからないのではないでしょうか。探究学習を通じて「本質を見抜く力(課題をより大きな視点で捉え、本質的なSDGsへの取り組みはなんなのかを考える力)」をトレーニングしていれば、その企業で働くことが本当に社会貢献へつながるのか、検討することができます。

つまりSDGs探究の充実度が、その学生の将来の自己実現を左右する可能性もあるということです。

この力は短時間の調べ学習や、読書ではなかなか身につきません。時間をかけて、主体性をもって探究するからこそ、身につく力と言えるでしょう。

まとめ

今回はSDGsネイティブについて解説しました。

この記事で解説した内容
SDGsネイティブとは?
・SDGsネイティブの特徴
SDGsネイティブと就職活動
・企業のSDGsへの取り組みを重視
・SDGsへの取り組み度は志望度に影響
・社会貢献度の高さも重要視
企業のESG戦略とSDGsネイティブの採用
・ESG投資の盛り上がり
・ESG戦略とSDGsの関係
・SDGsネイティブ世代の有能な人材獲得がESG戦略に影響
SDGsネイティブは商品・サービスの開発でも重要
SDGs探究に求められるもの
・本質を見抜く力
・課題1:SDGウォッシュ
・課題2:本質的なSDGsへの取り組みとなっていない
・SDGsを「探究」することで本質とはなにか?を考える力が身につく
・就活生は社会貢献度を重視しているが・・・

SDGsネイティブ世代の観点を取り入れることは、社会や企業の存続に重要な意味を持ちます。そして SDGsネイティブ世代が、真に SDGsへ貢献したり、SDGsを通じて自己実現を果たすには、SDGs探究でじっくり SDGsに向き合うことが重要です。

参考:>【解説付き】企業と高校が連携してSDGsに取り組んだ探究学習事例5つを紹介

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。