探究学習

探究学習の評価どうする?①生徒の評価

探究学習ってどうやって評価するの?
生徒の学習成果をきちんと確認できているのか不安…。

私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

その中で、先生方から冒頭のようなご相談をよくいただきます。

そこでこの記事では、探究学習における生徒の評価方法についてまとめました。

しっかりとした評価を行うことで、生徒は自分を見つめ直すことができ、その後の学習や発達を促すことができます。先生方にとっても、学習活動を改善するにはどのような指導を行えば良いかを考えるためのきっかけになります。

以下では、生徒を評価する際のポイントや具体的な方法について解説しますので、 ぜひ参考にしてみてください。

目次
・目指したい評価のあり方
・評価の体制を整えるための作業
・評価方法の例
・単位の認定

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目指したい評価のあり方

適切な評価を行うことは、生徒と先生の双方にとって重要です。

このため、「信頼される評価」を目指すことが求められます。「信頼される評価」とは、次のような内容を表します。

信頼される評価とは?
・先生の間で評価規準についての共通理解がある
・学習活動と評価規準に整合性があり、評価方法も適切である
・評価の回数が観点ごとに確保されており、偏りがない
・評価規準や評価方法などについての見直しが行われている
・生徒の多様な姿を幅広く評価している

そして、信頼される評価を実現するために必要なのが、「多様な評価」と「過程の評価」です。それぞれの内容は以下の通りです。

多様な評価
・多様な評価方法を取り入れ、生徒の学習状況を把握している
・評価対象を広くとらえ、多様な対象から生徒の学習状況を把握している
・異なる評価者によって、生徒の学習状況を把握している

過程の評価
・次のような様々な場面において学習状況を把握している。
(学習前の実態把握/途中や終末の学習状況の把握と改善 など)
・生徒が変容する姿を大切にし、継続的に学習状況を把握している

以上を意識して、生徒の学びや育まれた資質・能力・態度を評価しましょう。

特に、生徒の内面に育まれている良い点や進歩を積極的に評価することが大切です。これらを評価することで、生徒自身が自分の良い点や進歩に気付き、自らの可能性を実感できるようになります。

また、探究学習では、多様な学習活動によって単元が構成される場合が多いです。このため、「どの場面で」「誰が」「どのように」評価するのかを考えておくようにしましょう。

評価の体制を整えるための作業

ここからは、評価を行う際の観点・基準を設定する際に行う作業を解説します。

全体計画に「学習の評価」欄を作成

まずは、全体計画に「学習の評価」という欄を作成します。

「学習の評価」欄に記載する内容の例は以下の通りです。

・学習状況の改善を図るのに有効な評価の考え方や方法
・指導計画・学習指導の評価に関する方針
・評価活動を充実させる手立て

以上が「学習の評価」欄に含める内容の例です。この欄に示した評価の方針や手立てに基づき、評価を行っていくことになります。

ただし、欄に入れる内容は画一的に定められているわけではありません。このため、学校の現状や課題を検討した上で、この欄に含める項目を決定することが大切です。

評価の観点を設定する

探究学習を評価するにあたり、事前にいくつかの観点を設定します。観点を設定するのは、生徒の学習の進歩や成長の状況を総合的に判断するためです。

評価の観点を設定する際は、学校で定めた目標、内容、資質・能力・態度を意識して決めます。あるいは、学習指導要領の内容をもとに設定する方法もあります。

以下は、学習指導要領に記載された内容を踏まえて評価の観点を設定した例です。

この例は「総合的な学習の時間」に関するものですが、探究学習における評価の観点を考える際にも応用できる方法です。

学習指導要領に記載された観点を利用した例

「育てようとする資質や能力及び態度については、例えば、学習方法に関すること、自分自身に関すること、他者や社会とのかかわりに関することなどの視点を踏まえること。」

【設定した観点】【対応する視点】
課題設定の力学習方法に関すること
情報収集の能力自分自身に関すること
将来展望の能力他者や社会とのかかわりに関すること
社会参画の能力他者や社会とのかかわりに関すること

このように、学習指導要領の内容や、学校で定めた目標などを意識して評価の観点を設定しましょう。

また、探究学習では、学んでいる内容についても評価することが大切です。したがって、内容に関する観点や評価基準も設定するようにしましょう。

単元の評価を設定する

単元計画を作成する際、評価に関する計画も立て、学習活動の展開に沿って示しておくことが求められます。評価に関する計画があると、その単元の学習活動において、意図した資質や学びが生徒に身に付いているかを判断しやすくなります。 あらかじめ評価の計画を立て、そこに評価基準を位置付けていきます。

単元の評価規準は、評価の観点や単元の目標などを踏まえ、以下の設定します。

学校の全体計画を基に、単元における「育てようとする資質や能力及び態度」と「内容」を設定する。

各観点に即して実現が期待される生徒の姿が、単元のどの場面のどのような学習活動において、どのような姿として実現されるかをイメージする。

実現が期待される生徒の姿について、実際の学習活動の場面を想起しながら、「育てようとする資質や能力及び態度」と「内容」に照らし合わせて、具体的に記述する

このような手順で設定した評価規準は、あらかじめ生徒と共有しておくことをおすすめします。事前に評価基準を示すと、生徒は活動の方向性や目標を理解することができます。このことにより、生徒は単元の過程で学習状況を自己確認できるようになります。

評価体制を整えるまでの流れ

ここまで、評価体制を整えるための作業について確認しました。

以上の作業の流れをまとめたものが以下の図です。評価の観点や基準を設定する際は、この図を参考にしてみてください。

出典:今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編) 第4章p.114

評価方法の例

以下では、具体的な評価方法の例を3つ紹介します。ここで紹介する多様な評価方法を組み合わせながら、学習活動の様々な場面で評価を実施しましょう。

観察による評価

学習活動の過程の中で、発表や討論の様子を観察して評価する方法です。この方法では、観察票やチェックリストなどを活用し、生徒の情報を蓄積することが重要です。

観察による評価のメリットは、以下の3点です。

・最終的な成果物のみからはわからない学習状況を見ることができる
・学習過程における生徒の変容を把握しやすくなる
・即座に指導に生かすことができる

観察による評価を効果的に行うには、学習過程から生徒の良さや可能性を見抜く先生の目を養う必要があります。
また、生徒の行動を総合的に理解し、評価の観点に照らし合わせて分析することも重要です。

ポートフォリオを基にした評価

生徒が集積したポートフォリオを基に評価を行う方法です。

ポートフォリオには、活動計画表や取材のメモ・感想、教師や地域の人々からのコメントなどを資料として集積します。

ポートフォリオを基にした評価のメリットは、以下の3点です。

・問題解決や探究の過程を詳しく把握できる。
・振り返りの機会を設け、生徒が考えを整理したり、解決の見通しを持ったりすることができる。
・保護者や進路先等への説明、第三者評価のための資料としても活用できる。

この評価を行う際は、ポートフォリオが単なる資料の集積とならないようにしましょう。生徒に資料の並べ替えや取捨選択などの整理を促し、学習を振り返る機会を設けることがおすすめです。

参考記事
>探究学習で使える「ポートフォリオ評価」の重要性と実施のポイントについて解説

第三者評価

第三者によって生徒の学習を評価してもらう方法です。第三者とは、保護者や地域の人々、専門家等を指します。

第三者評価のメリットは、以下の通りです。

・先生方が気づかなかった点を補うことができる
・生徒への励ましが期待できる
・生徒の学習が認められ、達成感や自己肯定感につながる
・自己評価と第三者評価を比較し、客観的に捉えることができる

第三者評価を行う際は、あらかじめ学習の趣旨やねらいを伝えておきましょう。また、いつどのように評価をお願いするのかについて、きちんと計画を立てておくことも大切です。

相互評価(ピア評価)

相互評価(ピア評価)とは、生徒同士で評価し合う方法です。

相互評価のメリットは、以下の通りです。

・先生方の目線では気づくことができない生徒の言動を評価できる
・他者の評価を受けとめる力の育成につながる
・思いやりを持って友達をサポートし、アドバイスをする力が養われる

一方、相互評価では、生徒が互いを気遣って無難な評価しかできない、口裏を合わせて高い評価をつけ合ってしまう、といった懸念があります。

適切な評価を行うためにも、「評価基準を明確にする」「評価対象はあくまで行動や成果であり、人格ではないということを周知する」といった対策を行いましょう。

参考記事
>探究学習の評価方法を紹介。特徴、メリット・デメリットも
→こちらの記事では、ルーブリックや自己評価なども含めた評価方法を総合的に解説しています。

単位の認定

学校は、探究学習において満足できる成果が得られたかどうかを適切に判断しなければなりません。

そのために、探究学習の担当者同士で単位の認定に関わる会議を行い、満足できる学習成果があがっているかどうかを検討すると良いでしょう。ここでの検討を踏まえ、校長が単位の認定を行います。

単位認定の要件は、以下の通りです。

・学校が定める指導計画に沿って学習活動を行うこと
・学習の成果が探究学習の目標に対して満足できると認められること

まとめ

探究学習において、生徒を評価する方法について解説しました。

生徒の学習をきちんと評価することは、生徒が自分自身を見つめ直すことに加え、先生方が今後の指導をより良いものにする上でも重要です。

評価の観点や方法は様々あり、学習指導要領の内容や学校で定めた目標などを踏まえて考えることが大切です。多様な評価方法を活用し、学習の過程全般を通して生徒の学習状況を把握するようにしましょう。

*この記事は総合的な学習の時間に関する文部科学省の資料を元に、探究学習に臨む先生向けに内容をわかりやすく解説したものです。資料をもとに部分的に簡略化、加筆、言い換えなどを行っています。元資料をご覧になりたい方は「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)」第2編第4章をご確認ください。

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。