この記事では、今のままでは日本が没落する3つの理由・その解決策としての探究学習について解説します。
みなさんは日本の将来についてどのようにお考えでしょうか?「国際的な評価も悪くないし、良くなっていくんじゃない?」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかしこのままでは、日本は没落する恐れがあります。その兆候はいたるところに表れており、特に次の大きな問題があります。
1.少子高齢化
2.産業構造の変化
3.進化しない教育
以下ではそれぞれの問題を取り上げ、それらの解決に探究学習が役立つ可能性について解説していきます。
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1.少子高齢化が引き起こす数々の問題
既に知られている通り、日本では少子高齢化が急速に進んでいます。
2021年の日本の総人口は1億2507万人ですが、2053年には1億人を割ると推計されており、その後も減少し続ける見込みです(下図)。
さらに、生産年齢人口は2015年に7,592万人だったのに対し、2056年には5,000万人を割ると予想されています。日本全体の人口に占める生産年齢人口の比率も、低下し続けると考えられています(下図)。
出典:経済産業省「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」
生産年齢人口・・・生産活動の中心となる、15歳以上65歳未満の人口。
人口推計は外れにくい統計であり、人口減少はほぼ確実に進行します。それによって市場縮小や人手不足などがより一層深刻になります。さらに、2022年には「団塊の世代」が75歳以上になります。75歳以上になると、一人当たりの医療費や介護費が大幅に増加します。このため、社会保障費が膨らみ、国債に頼る必要が出てきます。人口減少に起因して様々な問題が引き起こされるのです。
人手不足に伴う外国人労働者の増加。しかし知識労働力は補えず
生産年齢人口の減少によって人手不足が生じているため、日本には外国人労働者の数が増えています(下図)。
出典:内閣府政策統括官「企業の外国人雇用に関する分析 ―取組と課題について」
外国人労働者が増加している背景には、人手不足があります。先述の通り、日本は生産年齢人口が減少しており、52%の企業は正社員が不足していると感じています(帝国データバンク)。そして、企業の人手不足感は、外国人労働者の雇用の有無を説明する最も重要な変数であるとされています(内閣府政策統括官)。
したがって、生産年齢人口の減少に伴い人手不足を感じる企業が増えれば、今後も外国人労働者が増加すると考えられます。
また、単純労働に就くことを可能にした在留資格「特定技能」が2019年に新設されるなど、外国人労働者の雇用は、単純労働分野の人手不足に対応するものとなっています。
こうした中、日本人には、外国人労働者が「特定技能」等の資格では担当することのできない、知識労働分野での活躍が求められます。知識労働とは、知識によって付加価値を生み出す労働を指します。知識労働では、論理的思考や問題解決力、発想力が求められます。今後の日本の経済発展を望むには、知識労働を担える人材を育成することが強く求められています。
2.産業構造の変化で日本の強みが失われている
製造業は戦後日本の成長を支え、産業の基盤となってきました。
しかし現在、その営業利益は減少傾向にあります(下図)。
出典:経済産業省「令和元年度 ものづくり基盤技術の振興施策」
製造業が衰退しつつある背景にある主な要因を2つ挙げます。
1つ目は、変化の激しい新興国市場に対応しきれていないことです。先進国のGDPが横ばいとなっている現在、GDPが伸びている新興国の市場に進出することが重要となります。しかし、日本の輸出額は韓国やドイツと比較して伸びが小さく、新興国市場を十分に押さえることができていません。多様で変化が激しい新興国市場のニーズに、素早く対応していく必要があります。
2つ目は、中国や韓国がハイテク分野に進出したことです。ハイテク分野とは、航空宇宙、コンピュータ、電子機器など、様々な研究開発が求められる製品分野等を指します。日本の製造業はハイテク分野を強みとしていましたが、中国・韓国の工業化が進み、日本の優位性が低下しました。ハイテク分野の輸出額は、既に両国に追い抜かれています。
このように、長らく日本を支えてきた製造業は、激しく変化する市場へ対応しきれない、これまで持っていた強みが発揮できないといった問題に直面しています。したがって、変化に対応し、新たな強みを創り出していくことが重要となります。実際に、経済産業省は今後新たなビジネスモデルの支え手が必要になると指摘しており、製造業やその他の産業においても現状を改革する人材が求められると考えられます。
新たな産業のあり方を創造できる人材を育成することができなければ、日本の産業は一層困難に直面するでしょう。
3.進化しない教育。課題は「主体性」
変化に対応し、新たな産業のあり方を創造できる人材が必要になると説明しました。しかし、日本の教育は画一教育から抜け出せておらず、変化に対応できる人材を育成するには不十分です。
画一教育は、決まった正解を正確に答えられるようになることを目指し、全員が同じ内容を一斉に教わる学習形態です。この学習方法は、高度経済成長期には功を奏しました。高度経済成長期は大量生産方式が広まっており、決められた仕事を正確にこなすことのできる人材が求められていました。このような人材を育成する上では、画一教育が役立ったのです。
しかし、これからの時代に必要な人材を育成するには、画一教育のみでは対応できません。新たなビジネスモデルの支え手を育てるには、決まった正解を答えるだけではなく、自ら課題を発見し、解決できる能力を伸ばす必要があります。
それにもかかわらず、日本には受け身の授業が多いのが現状です。日本の高校生は、「教科書に従って、その内容を覚える授業」が多いと感じている一方で、生徒自身が個人やグループで調べる授業が少ないと感じています。また、生徒自身の授業態度も消極的であり、アメリカ・中国・韓国と比べて「授業中、ボーッとしている」割合が高く、「授業中、積極的に発言する」割合が低くなっています。
詳細:国立青少年教育振興機構「高校生の勉強と生活に関する意識調査報告書〔概要〕 ―日本・米国・中国・韓国の比較」
教育が変化しないままでは、子どもたちに主体的に考える姿勢が身に付かず、日本の凋落に拍車をかける可能性があります。
日本を救うのは探究学習
日本が没落する兆候について解説してきましたが、没落を止める救世主になり得るものがあります。
それが、探究学習です。
知識労働・新たな産業の担い手が育つ
探究学習は、知識労働や新たな産業の担い手を育成する上で役立ちます。
今後の社会では、知識労働者や新たな産業の担い手が求められることは既に説明した通りですが、日本経済団体連合会(経団連)も次のように指摘しています。
「Society 5.0とはデジタル革新と多様な人々の想像力、創造力の融合により、課題解決・価値創造を測る「創造社会」である」
「定型業務の多くは AI(人工知能)やロボットに代替可能になるため、自ら課題を見つけ、AI をはじめとするデジタル技術やデータを活用してそれを解決できる人材が必要である」
Society5.0・・・狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会。
経団連は、Society5.0において求められる能力・資質として、「課題発見・解決能力」「リーダーシップ」「新しいことを学び続ける力」などを挙げています。
そして、このような能力・資質を育成するのに「望ましい学び」として経団連が指摘しているのが、探究学習です。
従来の授業では子どもたちが受け身な姿勢になりがちであり、主体的なしを促すには不十分です。このため、生徒自らが問いを立てたり、調べたりする探究学習が、これからの社会で求められる能力・資質を育成する上で重要となります。
同様に、産業競争力懇談会(COCN)も次のように指摘しています。
これからの社会(Society5.0)を創っていくには、知識の豊富さのみならず、高い視座から 幅広いことに目配りをして、新しい価値創造と課題解決をリードしていくことが必要であり、それを担う人材の育成が急務になっている。
出典:産業競争力懇談会 社会で育てる STEAM 教育のプラットホーム構築
そしてCOCNは、問題発見や課題解決の力を伸ばすためにSTEAM教育が効果的であるとしています。STEAM教育は教科横断的に学びながら創造力を伸ばす学習であり、探究学習との親和性が高いです。
STEAM教育・・・Science,Technology,Engineering,Art,Mathematicsの各要素を横断的に学び、実社会での課題解決に生かしていくための教育。
探究学習を行うことで今後の社会に必要な能力・資質を伸ばすことができれば、知識労働や新たな産業の担い手を育成できると考えられます。
探究学習によって知識労働・新たな産業の担い手が育てば、停滞している日本経済の活性化につながります。
探究的な学びが充実する専門高校は、積極的に選ばれている
探究学習が日本にとって救いになることを説明してきました。そして、探究学習は子どもたちにも肯定的に受け入れられています。
このことは、専門高校を例に見るとよくわかります。
商業高校や工業高校など専門高校は、偏差値の高い普通科高校の受験に向けた安全校として、消去法的に選ばれる印象を持つ方もいるかもしれません。
しかし、専門高校は積極的に選ばれるようになっています。「ぜひこの学校に入学したかった」と答えた生徒の割合は、普通科高校では33%であるのに対し、専門高校では50%となっています(文部科学省の資料より)。
このように入学意欲の高い生徒が集まる専門高校では、探究的な学びが充実しています(下図)。
出典:文部科学省 今後の高校教育の在り方に関するヒアリング(第1回)配布資料・議事録 本田由紀氏発表資料4
「積極的に質問や意見を言える授業」や「生徒自身が目標を設定してそれに取り組む授業」など、探究学習に共通する授業形態が専門高校では突出して多いことがわかります。
また、平成30年告示の学習指導要領では、専門学科の場合、「課題研究等の履修により、総合的な探究の時間の履修と同様の成果が期待できる場合においては、課題研究等の履修をもって総合的な探究の時間の履修の一部又は全部に替えることができる」と定められています。
実際に、多くの専門高校が課題研究による代替を行っています。課題研究は農業や商業、工業など、専門科目の学びを活かしながら取り組むものであり、専門性が高い内容です。
このように、専門高校では生徒が主体的に取り組む授業が多く、内容も専門的であるため、充実した探究学習が行われています。
専門高校に通う生徒の入学理由として最も多かったのは、「進学や将来の仕事に役立つ知識や技術が身につくと思ったから」(80%)です(文部科学省の資料より)。
生徒は将来に向けて専門性のあるスキルを身につけたいと考えていることから、専門的な分野について主体的に探究できる専門高校が注目されています。
以上のように、探究学習が充実した学校が積極的に選ばれていることから、子どもたちにとっても探究学習が肯定的に捉えられていることがわかります。
地方創生にも貢献
探究学習は、地方の活性化にも繋がると考えられます。
生産年齢人口の減少が著しいことは冒頭で触れましたが、特に東京圏・近畿以外の地域において大幅に就業者数が減少しています(下図)。
地方での就業に対しては、雇用機会や社会インフラの不足といったネガティブなイメージを持つ人も多いようです。しかし、探究学習を通して、地方で就業することへの意識が肯定的に変化した事例があります。
長崎県立北松西高等学校では、3年間で地域の課題について探究し、論文を作成したり、町議会にて解決策を提案したりする学習を行っています。
このような流れで学習が行われるようになったのは2017年度ですが、その前の年である2016年と開始後の2019年の調査を比較すると、島で生きることを検討している高校生の数が大幅に増えています(下図)。
出典:岡幸江「地域での経験と思いを引き出す地域学習 : 小値賀共同研究の視座」
2019年度の高校生の話の中では、「小値賀の課題を知って、変えたいと思った」という意見が出ています。探究学習を通じて地域の課題を知ることで当事者意識が高まり、地域に貢献したいという気持ちが芽生えたと考えられます。
探究学習には、地域とつながり、地域の課題を追究する機会が豊富にあります。
したがって、地域への関心や当事者意識を高めることができ、地域の活性化に貢献する人材が育成されると期待できます。
このことは、結果としてUターン就職などに繋がり、地方の人手不足が解消される可能性があります。
まとめ
少子高齢化・産業構造の変化・進化しない教育の3つを理由に、日本が没落する可能性について解説しました。3つを改善することができなければ、日本の没落を止めるのは難しいでしょう。
しかし、探究学習は日本の没落を止める救世主となり得ます。
教育さえ変えることができれば、他の課題にも効果が波及していき、日本が抱える大きな問題を少しずつ改善していけるかもしれません。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。