探究学習

スポーツを真剣に取り組んだ価値とは〜株式会社Criacaoの挑戦

文武両道とは言うものの、部活動に一生懸命取り組むことで勉強が疎かにならないか、将来役に立つのか不安なお子さんもいるでしょう。

部活動、教科外学習や探究学習は受験に直接つながっているわけではなく、それぞれお子さんにとってプラスなのかどうか、という疑問を持つ保護者がいらっしゃるかもしれません。

そのような疑問や不安について、元Jリーガーで現在株式会社Criacaoの社員であり、サッカークラブ・Criacao Shinjukuキャプテンの井筒陸也様、株式会社Criacao 取締役COO でCriacao Shinjuku選手の剣持雅俊様にお話を伺います。

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プロフィール

井筒 陸也 様

株式会社 Criacao PR・デジタル戦略室長

サッカークラブ Criacao で広報部の立ち上げ、ファンクラブの運営 選手として 2020 年から Criacao Shinjuku キャプテン#3

2016 年〜2018 年 J リーガー 徳島ヴォルティスで54試合に出場 関西学院大学体育会サッカー部 主将として2回の日本一を含む四冠 初芝橋本高校(和歌山)サッカー部 主将としてインターハイ、選手権出場

 

剣持 雅俊 様

株式会社Criacao 取締役COO・創業メンバー

2013年株式会社Criacaoを創業、経営全般、新規開拓、研修事業を統括するとともに、サッカークラブCriacao Shinjukuプレイヤー#22

2016年10月よりNPO法人日本ブラインドサッカー協会 ダイバーシティ事業部 事業部長を兼務。Criacao以前は外資系ヘッドハンティングファームに新卒入社。人材コンサルティング及び、2011年よりチームマネジメントも経験。

中央大学卒、桐蔭学園高等学校サッカー部時代に神奈川県選抜として国体出場

 

弱点を受け入れた先にある下克上

渡辺
渡辺
今日はよろしくお願いします。

井筒さんは高校で全国大会、関西学院大学で大学日本一をいずれもレギュラーで主将の立場で経験され、華々しい活躍が認められてJリーガーになりました。

経歴を伺っているとサッカー界のエリート街道をずっと歩まれているように映るのですが、実際にはそうではないのでしょうか?

井筒 様
井筒 様
いえ、全くサッカーエリートではないです。むしろコンプレックスを感じていました。

中学校や高校はJユースや強豪校ではなく、個人としても足が遅いキャラでしたし、左利きで右足はほぼ使えないので、コンプレックスというかできないことばかりに自分の意識が向いていて、恥ずかしかったり嫌だったりした記憶が残っています。

渡辺
渡辺
今の井筒さんからは、当時のネガティブだった姿は想像がつかないです。そのような状況から、どのようにして今の井筒さんに変わっていかれた、成長していった転機がありましたら、当時の様子を含めて伺ってもよろしいでしょうか?

井筒 様
井筒 様
一朝一夕ではなく、沢山の積み重ねだと思いますが、一つ挙げるとするならば中学時代の指導者のおかげかな、と思います。あまり強くないチームだったのですが「できないなり弱いなりに考えろ」とハッパをかけられてました。

サッカーにはジャイアントキリングという言葉があるくらい、弱いチームが強いチームに勝つ下克上が比較的よく起きます。この弱者なりの戦略とでも言うべき考え方は、現役時代に意識していたのはもちろんのこと、引退してビジネスの世界に飛び込んだ今の私にとっても行動原理になっています。

渡辺
渡辺
具体的にあれをやれ、これをやれと言われるのではなく、状況を認めた上でどうすればいいか考える姿勢はスポーツにとどまらず、勉強でも仕事でも役立つと思います。

井筒 様
井筒 様
どのようにしてジャイアントキリングを起こすか、戦略を立てて試合で実行するのが自分にはあっていたというか面白かったです。そうしているうちに、足が速くないという短所も自分の特徴の一つであると受け入れられるようになっていったのだろうと思います。

渡辺
渡辺
具体的にあれをやれ、これをやれと言われるのではなく、状況を認めた上でどうすればいいか考える姿勢はスポーツにとどまらず、勉強でも仕事でも役立つと思います。

井筒 様
井筒 様
どのようにしてジャイアントキリングを起こすか、戦略を立てて試合で実行するのが自分にはあっていたというか面白かったです。そうしているうちに、足が速くないという短所も自分の特徴の一つであると受け入れられるようになっていったのだろうと思います。 

渡辺
渡辺
短所を無理矢理直すのではなく、受け入れた上でじゃあどうすれば良いかと考えることは、スポーツに限らず大切なことですね。

サッカーを通じて己を知る

剣持 様
剣持 様
サッカーに長年携わってきて思うことに、サッカーは一人一人の個性を活かせる特長を持ったスポーツではないか、というのがあります。オリンピック、パラリンピックを観ていて、多くのスポーツは身体能力が問われたり、体重別の競技になっていたりと、向き不向きというのが多少あります。

渡辺
渡辺
確かに階級別になっていたり、体つきに傾向が見てとれる競技も少なくないですね。

剣持 様
剣持 様
身体的、運動能力だけでなく、スキルの観点でもドリブルが得意、パスが上手、相手からボールを奪えるなど様々です。また、チームプレーが上手だったり、試合の流れを読める、つらい時に声で味方を盛り上げられることも、見えにくいですが大事なスキルです。

渡辺
渡辺
スポーツを通じて得意なこと、できることを考えるというのは大切に思います。また、スポーツを多面的に捉えることは学習についてもあてはまる部分も多いです。

学ぶには「理解する」「計算する」「調べる」「推測する」「論理づけする」「伝える」など様々なスキルが関わってきます。スポーツを通じて自身を理解する機会になりうるのではないかと思います。

剣持 様
剣持 様
重要なのは、例え短所があったとしても、自分の特長が活かせるポジションや場面があり、チームへの貢献の仕方は一人一人違って良いと思います。

渡辺
渡辺
サッカーが持つ「いろいろな個性や特長を活かせる」、「貢献の仕方が千差万別である」は中高生にとってはもちろんのこと、ひいては大学生から若手の社会人にとっても金言かもしれません。

例えば、就職活動で自己分析をする際に、興味や関心の軸に加えて、どのような得意や長所があるか、あるいは苦手や短所があるか、いろいろ考えると思います。しかし、時間をかけて自身に向き合うのが初めてで戸惑う声も聞きます。

剣持 様
剣持 様
もう1つのサッカーの特徴として「プレーが予め決まってなく、プレーヤーが試合中に判断して動く割合が高い」ということがあります。指示通りプレーするのでなく、一人一人が状況を判断して、自分のできることを実行することが大切です。

渡辺
渡辺
たしかにサッカーは「手が使えない不自由さ」と「どのように動いても良いという自由さ」が同居していて、監督の指示を待っていたら、そのチームは負けてしまいますね。

学習指導要領においても「主体的な学び」を目指していますが、文字通りに“自分で考えて判断する”ことが重要視されています。スポーツも学習も主体性を育むことは目的の1つです。

井筒 様
井筒 様
先ほど自分自身について知る機会とありましたが、部活動、スポーツの魅力だと思うのが「自分の実力を思い知らされること」です。

私の場合は、自分の弱点に目がいくばかりだったので、ポジティブとネガティブのバランスが必要だと思いますが、自分自身に喜怒哀楽の感情を持つことは人を成長させるきっかけになると思います。 

渡辺
渡辺
高校と大学で主将を務め全国大会に出場し、現在もチームキャプテンである井筒さんは個人としてだけでなく、チームとしても多くの苦労と達成感を味わったのではないかと思いますが、伺ってもよろしいでしょうか?

井筒 様
井筒 様
当時を振り返ってみると、しょうもないプライドを持っていたと感じる部分もあり、それでも創意工夫をして自分のプレーが向上できたことも少なくありません。もちろん、勉強でこのような経験をする方もいらっしゃると思いますが、スポーツや部活動の価値と言えるかと思います。

主将としては自身に対してだけでなく、仲間、チーム全体についてもどうすれば良いか数多く悩みました。うまくいったことも、うまくいかなかったこともありますが、いろいろな角度から考える経験をできてプレーヤーとしてだけでなく、人として大人になる経験をしました。

このような経験をするために文武両道が必要というつもりは全くなくて、ただ勉強以外にやりたいことがある人にとって、やりたいことを一生懸命やることは成長する機会になっている、ということです。

渡辺
渡辺
プロサッカー選手というのは狭き門で、全国大会や日本一となってもプロになるのは簡単ではありません。

そのような厳しい環境にいたからこそ味わった経験やアドバイスについて、後輩に向けていただけますでしょうか?

井筒 様
井筒 様
挑戦が人と違う特別なものである必要はありませんが、自分が人と違うことをしたいと感じたときは一歩を踏み出してほしい、とは思います。

私は大阪出身なのですが、高校で和歌山へ越境入学したことが人生で初めて決断した挑戦です。結果的に、プロサッカー選手になることができましたが、大学からプロサッカーになる時も、プロサッカー選手を引退する時も、周りのチームメイトや友人とは違う選択でした。

それでも、自分の中で「これがしたい」と思ったことやってみて、良かったと思っています。成功したことばかりではありませんが、自分の心で思ったことを大事するという生き方がつくられていった気がします。

Criacao Shinjukuは2026年世界一を目指し、関東サッカーリーグ1部に参戦しています。チーム情報や試合日程についてはこちらからご覧ください。

関東サッカーリーグ1部優勝により、2021年11月に開催される「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2021」への出場が決まりました。

http://www.jfa.jp/match/regional_league_2021/about.html

Criacao Shinjuku Website: https://criacao.co.jp/soccerclub/philosophy/

Criacao Shinjuku Twitter: https://twitter.com/CriacaoShinjuku

Criacao Shinjuku Members Club: https://criacao.co.jp/soccerclub/membersclub/

*コロナウイルス感染症の影響で日程等は変更となる場合がございます。


渡辺康雄(インタビュワー) 

株式会社Study Valley ビジネスアナリスト

2006年シティグループ証券株式会社に新卒入社。業務本部にて社内外の日本株決済プロジェクトを主導。2015年より1年を超える育児休業を取得し、育児に奮闘しながら並行してMBAを修了。

主夫生活を経て、2021年より株式会社Study Valley にて「STEAMライブラリー 未来の教室」運営及びメディアに従事。上智大学理工学部卒、IEビジネススクール|シンガポールマネジメント大学 Joint MBA修了 

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。