生徒自身が課題を設定し、解決に向けて情報収集・整理・分析するのが「探究学習」です。
探究のプロセスは「①課題の設定」「②情報の収集」「③整理・分析」「④まとめ・表現」の4段階に分けられます。
生徒自らが課題を見つけ、取り組む探究の過程で「思考力,判断力,表現力」といった資質が備わっていくのが特徴です。
しかし、「探究学習よりも、各教科に絞って勉強するほうが効率は良いのでは?」と考える人もいるかもしれません。
そこで今回の記事では、探究学習を取り入れることで得られる「4つの力」とメリットを、具体的な探究学習のプロセスに沿って紹介します。
生徒自らが主体的に課題解決に取り組む探究学習では、以下の4つの力が身につきます。
探究学習を行うことで、教科の学力も向上する傾向にあります。また、大学で行われる研究と似通っているため、主体的に考える力が問われるAO入試にも有利になります。
では、詳しく探究学習で身につく力やメリットを紹介します。
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1.主体的に考えて課題設定する力が身につく
探究学習で身につく力の一つ目は、変化の激しい現代社会で必要とされる「主体的に考えて課題設定する力」。教科学習との違いや、課題の特徴についても解説します。
答えのある問いではなく「答えのない問い」
従来の教科学習は、各教科の知識を学び、教員が出題するペーパーテストなどの課題を解く能力を育成します。つまり教科学習は「答えのある問い」を「受動的に」学習するものです。
しかし探究学習は、生徒自らが「主体的に」考えて設定した「答えのない問い」や「答えの出し方が無数にあるような問い」に取り組みます。
教科学習→受動的、答えのある問い
探究学習→主体的、答えのない問い
(生徒の学習レベル、進捗段階によっては、教員が課題を設定する場合もあります)
産業界へのアンケート結果においても、主体性や課題設定へのニーズが高まっています。
【参考】
文系・理系ともに「課題設定・解決能力」がより高い順位となり(中略)IoTやビッグデータ、人工知能などをはじめとする技術革新が急速に発展する中、指示待ちではなく、自らの問題意識に基づき課題を設定し、主体的に解を作り出す能力が求められていることが示された。
(経団連「学生に求める資質、能力、知識(文系)」アンケートより:2018年)
自分にとって、社会にとって意味のある問い
探究学習で生徒は「自分にとって、社会にとって意味のある問い」に取り組みます。
社会の関わりでいうと、例えば「職業」をテーマにした探究学習では職業体験を通して自分の適性を理解したり、自分が将来どのような社会貢献ができるのかを探究したりします。
「自分にとって、社会にとって意味のある問い」である意識のない、目先だけの学習は生徒自身「なぜ今、学びが必要なのか」が理解しづらいでしょう。場合によっては「親や先生に喜ばれそうだから」という基準で問いをつくってしまうことも考えられます。
変化の激しい現代社会を生きていく子供たちは探究学習を通じて、小中高の間に主体的に社会課題を解決しようとする考え方を身に付けます。
教科学習→自分にとって、社会にとっての意味がわかりづらい
探究学習→自分にとって、社会にとって意味のある問いについて考える
2.課題解決に必要な情報収集力が身につく
次に紹介するのは「課題解決に必要な情報収集力」です。
多様化する情報と取捨選択の重要性
まず多様化する情報を取捨選択する重要性を確認しておきましょう。
あらゆる情報は、いまやSNSやインターネットで自由に収集できる便利な時代です。子供であっても簡単に欲しい情報を得られます。
しかしその情報の多様化ゆえに、主観による誤った情報や不必要な情報もあふれています。
情報収集は探究学習において必須のプロセスです。インターネットや図書館利用を通じて課題解決のために必要な情報を手に入れる方法を学びます。探究学習により、子供のころから情報収集に必要な力を高めることができるのです。
インターネットや図書館
課題解決に必要な情報を得るならインターネットや図書館利用が有効です。
特にインターネットは正しい検索の方法やWebページの性質を理解すれば、膨大な情報の中から目的に応じた情報を適切に取り出せます。しかしインターネットは手軽に情報収集できる性質上、誤った情報も多いので、正しい情報源を選び、必要な情報を見分ける力が必要です。
インターネットによる情報収集のポイントは政府や官庁、自治体など信憑性の高い発信元を中心に調べることです。個人の意見や感想といった主観的な情報は、見比べて総合的な分析が必要です。課題解決のためには、数値やデータに基づいた客観的情報が求められます。
また情報の鮮度も重要です。情報がいつ更新されたものであるかをチェックする必要があります。
生徒が主体的にインターネットや図書館といった情報収集を繰り返す探究学習に取り組むことで、課題解決のために必要な情報リテラシーが高まります。
外部の企業や協力者
外部の企業や協力者を通じた情報収集も探究学習をする上で欠かせません。様々な立場の人から多様な情報を得る大切さを学べます。
外部から情報収集するメリットは次のとおりです。
また外部も巻き込んだ探究学習は、先述の「社会にとって意味のある問い」の意識も芽生えやすくなります。
そしてひとつの課題を協力者とともに解決していく過程は、社会人が取引先と仕事を行う過程とも似通った部分があります。外部の人を巻き込むからこそ生まれる責任感や、学習を終えたときの達成感を経験できます。
これは指導要領にもある「対話的で深い学び」に通じます。
フィールドワーク・取材
どれだけ事前学習を行っても、実際に足を運ばなければ手に入らない「生の情報」があります。
そんな「生の情報」を得るために探究学習では、企業や自治体などを訪問して情報収集する「フィールドワーク」と、課題に関係する人に直接話を聞く「取材」を行います。
フィールドワークや取材は、書籍や教材では得られない具体的な情報を収集でき、探究学習に大いに役立ちます。インターネットや図書館で得た情報の裏付けになる点もメリットです。
実際に探究学習を取り入れる学校では、地域経済(地元企業や商店街、農家など)や地域行政(地方自治体、政治家など)など様々な分野でフィールドワーク・取材を行っています。
フィールドワークや取材を行う際は、情報収集の目的や分析の方法を明確にすることがポイントです。
3.情報を整理・分析して答えを作る力が身につく
3つ目は「情報を整理・分析して答えを作る力」です。
情報を再構築して新しい答えをつくることが必要
探究学習では、教科で学んだ知識や、集めた情報を再構築して生徒自身の新しい答えを導き出すことが必要です。
具体的には「グラフや表を用いて比較・分類する」「マトリックス表で整理・分析する」「メリット・デメリットを列挙する」などの手法で集めた情報を再構築します。
探究学習は教科学習のように答えが用意されていません。つまり暗記中心で知識を身につけてアウトプットする能力だけでは、問題解決には不十分なのです。
そのため教科や探究のプロセスで調べた情報の再構築が必要です。教員目線では各教科・科目との関連を図り、双方の学習の時間を互いに支え合うように配慮できることがポイントになります。
教科学習→知識を学ぶ、正確にアウトプットする
探究学習→教科で得た知識、新たに収集した情報を関連付けて答えを作る
ICTツールの活用
探究学習ではICT(情報通信技術)を活用すれば、効率よく情報を整理・分析できます。
具体的なICTの活用方法には「ツールを用いて情報の収集・分析を行う」のほかにも「情報や成果を共有する」「相互に意見交換やフィードバックを行う」「映像や音声で記録を残す」「発表用のプレゼン資料やポートフォリオを作成する」などがあります。
なお文部科学省推進の「GIGAスクール構想(ICT活用を進める取り組み)」では、1人につき1台のICT端末の使用を促しています。今後、ICT端末利用による探究学習が各学校で随時展開されていく予定です。
希望的観測ではない客観的な答えを作る力が大切
探究学習は、客観的な答えを作る力が大切です。新しい答えといっても、独りよがりや希望的観測の結論を導き出しては意味がありません。
自分の考えを明確にするだけでなく、具体的な数値や情報を踏まえて、自分の考えを説得力のある提案へと高めていくことが重要です。
調査した内容やデータといった情報を整理・分析をすることを通して、希望的観測ではない正しい推論の仕方を身につけることができます。
4.成果をまとめ、発表することで対話的に学ぶ力が身につく
最後は「成果をまとめ、発表することで対話的に学ぶ力」です。
単に「伝える技術」を身に付けるだけではなく、対話することで学びそのものを深められることがポイントです。
発表やプレゼンテーションの仕方を学べる
探究学習4つ目のプロセスである「まとめ・発表」を通じて、発表やプレゼンテーションの仕方を学べます。
社会に出てからも必須である「伝える力」は、ここで学べる「対話」の前提としても必要なスキルです。
「相手に伝える」「相手に理解してもう」「相手に行動してもらう」といったコミュニケーションスキルは、プレゼンテーションを行うことで磨かれていきます。
またコミュニケーション以外にも、スピーチ力やレポートや論文の書き方、パワーポイントの作り方など社会に出てから役立つ実践的なスキルが身につくのもメリットです。
対話することで学習が深まる
そこから一歩進んで「まとめ・発表」を他の人に見てもらい意見を交換することも重要です。
他の生徒と意見交換を行ったり議論したりする「対話的な学び」を行うことで、自分の考えを明確化・構造化して、新しい価値観を発見でき、もっと探究したい意欲が高まります。
対話で批判的思考やメタ認知能力が身につく
「対話的な学び」は、批判的思考(クリティカルシンキング)やメタ認知力を育てます。
批判的思考とは、物事を多角的・客観的にとらえる思考活動のことです。自分の発表を人に見てもらったり、逆にいろんな人の発表や意見を見聞きすることで、この批判的思考力が身につきます。
批判的思考は、物事を多角的・客観的にとらえるだけでなく、自分自身を客観的に俯瞰してとらえる「メタ認知力」にも通じます。メタ認知によって自己を内省的に見ることができれば、生徒自身が自分の能力や行動を適切に評価できるようになります。
そして自己や物事を多角的・客観的に見ることは「自分にとって、社会にとって意味のある問い」にもつながります。
これまで重視されてきた受験学力や入試にも良い影響
探究学習のメリットは他にも。探究学習は受験や大学入試対策の観点からもメリットがあります。学力と入試の傾向の変化からその理由を紹介します。
教科の学力も向上する
探究学習に取り組むことで教科の学力向上も期待できます。
実際、探究的な学びを行っている生徒ほど、各教科の正答率が高い傾向があり教科の学力も向上するといった文部科学省のデータ(小中学校)があります。
探究学習を通じて高められる思考力・判断力・表現力などは「汎用的なスキル」です。
「汎用的なスキル」とは、他の学問や職業などを習得するときに応用可能で、役に立つ基礎的なスキルのことです。
「汎用的なスキル」が高まることで理解度や定着度が向上し、教科学習でも学力向上が期待できるのです。
また探究学習は「関連づけ学習」である点もポイントです。
教科で学んだことを関連づけて答えを作る過程で、結果的に知識の理解や定着度が高まることが推測されます。
参考:平成28年教育課程部会生活・総合的な学習の時間ワーキンググループ「総合的な学習の時間について」
AO入試や、探究を使った入試が増えている
大学入試でもAO入試や探究を使った入試が増加傾向にあります。
AO入試では、総合的な学習(探究的な学習)を経て学んだことや受験生の考えを問う出題が多く、探究学習を通じて培われる課題解決力は、AO入試で大いに役立ちます。
現在、各大学ではAO入試の定員数が増える傾向に。また高校の探究の成果をもって入試を受けられる大学も出てきており、自分の関心あることを学んできた人が評価されるフィールドが広がっています。
まとめ
探究学習で身につく4つ力やメリットについて紹介しました。
1.主体的に考えて課題設定する力
2.課題解決に必要な情報収集力
3.情報を整理・分析して答えを作る力
4.対話的に学ぶ力
+受験学力や入試にも良い影響
探究学習では、従来の教科学習では得られない学びが多数広がっています。メリットを知れば入試だけでなく社会にも役立つ力が身につくことが理解いただけるのではないでしょうか。
今回の記事をきっかけに、探究学習の意味について理解を深めてもらえれば幸いです。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。