探究学習

大学における探究型・プロジェクト型授業(PBL)16事例を紹介

大学におけるPBL型・探究型の授業が増加しています。

これからの社会に必要な能力・資質を育むために、2022年度から高校で探究学習が必須となりました。「探究力」の開発は大学でも同様の課題です。むしろより社会に近い大学でこそ、取り組みが急務であると言えるかもしれません。

この記事では、大学におけるPBL型・探究型の授業を事例ベースで紹介します。

PBLや探究型の授業では一体どのようなことを行っているのでしょうか。大学の授業の例をぜひ参考にしてみてください。

参考:大学で探究型授業、PBL(プロジェクト型学習)を行う意義とは?

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探究型・PBL型授業とは?

探究型・PBL型授業は実践的な課題解決を交えた授業のことを指します。

PBLとはProblem Based LearningあるいはProject Based Learningの略称で、日本語では「問題解決型学習」「課題解決型学習」などと訳される勉強法です。生徒が自ら問題を見つけ、さらにその問題を自ら解決する能力を身に付けることを目指します。
探究学習も同様に学習者が自ら課題を設定し、主体的に答えを導く学習です。

これらの学習法は、教員が教壇に立って板書し、生徒がそれをノートに写すという従来の授業とは大きく異なり、生徒が自ら課題を見つけ、その課題を解決するまでの過程でさまざまな知識を得ていきます。

すなわち、探究型・PBL型授業は、課題解決型の講義だけに終始しない実践授業ということです。

参考記事
探究学習とプロジェクト型学習(PBL)の違いー両者の関係と具体例を紹介

大学における事例16を紹介

こちらの記事では、そのようなPBLの大学における実践例の一部を紹介します。
授業の構造や期間は多様ですが、学生が今後のキャリアを考えるための実践授業が多くあります。

1. 早稲田大学
2. 立命館大学
3. 立教大学
4. 麗澤大学
5. 多摩美術大学
6. 専修大学
7. 東京国際大学
8. 摂南大学
9. 産業能率大学
10. 大阪公立大学
11. 大阪学院大学
12. 叡啓大学
13. 豊橋創造大学
14. 和歌山大学
15. 神奈川大学
16. 兵庫大学

1. 早稲田大学

タイトルプロフェッショナルズ・ワークショップ(プロプロ)
ねらい・社会人の姿勢、意識を学ぶ
・チームとして答えを出す難しさを学ぶ
・正解のない課題に挑み、考え抜く力を養う など
詳細早稲田大学 教育連携課

企業が実際に抱える問題について、様々な学部(および研究科)・学年の学生たちがチームを組んで、主に夏季休業期間を中心に活動し、課題解決に取り組みます。

プロフェッショナルズ(=社会人)の指導、監修のもと、課題抽出・分析・フィールドワーク・グループワークを通じて課題解決の具体的提案まで導き出し、最終報告では経営トップに対しプロフェッショナルズと一緒に提案を行います。 通常の就業体験インターンシップとは異なる、企業・学生の双方にメリットを生み出す社会連携教育プログラムです。

2. 立命館大学

タイトルASEANで学ぶ国際PBLプログラム
ねらい日々新たに生起する問題にチャレンジできるマインドを育成すること
詳細ASEANで学ぶ国際PBLプログラム|立命館大学

タイ・インドネシアのトップ大学で、英語で専門科目を受講します。派遣前・帰国後の立命館大学で開講されるPBL(Problem/Project-Based Learning)型科目の受講を含めた一貫した教育プログラムです。

派遣先大学の授業料が免除されるため、費用を抑えながら東南アジアに留学することができます。対象校はインドネシア大学やタマサート大学などのインドネシア・タイの6校です(2023年1月現在)。

3. 立教大学

タイトルBLP/ビジネス・リーダーシップ・プログラム
[経営学科コアカリキュラム]
ねらい・経営への理解を深める
・チームで取り組み、リーダーシップを育む
・ビジネスの現場で実践的に学ぶ
詳細BLP/ビジネス・リーダーシップ・プログラム[経営学科コアカリキュラム]

4年間で段階的に学ぶ学習プログラムです。
1年目にはリーダーシップ入門やウェルカムキャンプに参加し、基礎を学習します。2年目以降は高度な問題学習プログラムや現実の経営課題に取り組みます。

リーダーシップ入門では、企業から提示される課題にチームで挑みます。実践を通し、各々のリーダーシップ発揮法を見つけていきます。2020年度課題は「あなたのちょっといい時間をつくるためにTBSができること」でした。500人近い学生が、毎日、TBSのことを考え、90もの新企画を考えました。

4. 麗澤大学

タイトルPBL(課題発見解決型学習)
<Project Based Learning>
ねらい社会に学び、学びを社会に還元する。
多彩なPBLで、実践力を身につける。
詳細PBL(課題発見解決型学習)<Project Based Learning> 麗澤大学

『社会に学び、学びを社会に還元する。多彩なPBLで、実践力を身につける。』ことを狙いに、学生たちがキャンパスを飛び出し、社会や世界と直に触れ合う機会が豊富に用意されています。

具体的には、地域や企業と連携した授業やゼミナール活動、学生有志に受け継がれてきた学外活動、そしてボランティアに参加する機会が設けられています。2年次に参加できる自主企画ゼミナールは他大学にも例を見ないプロジェクトで、自身の学びたいテーマに基づき、学生が自ら指導を受ける教員を選び、何をどのように学習していくかについて、当該教員の助言を受けながら決定し、学習計画を立て、その計画に従って進めていくという学生主体のゼミナールです。

5. 多摩美術大学

タイトルPBL(Project Based Learning)科目
所属学科や学年の枠を超えて、横断的研究や社会的課題に取り組むプロジェクト型授業
ねらい各自の専門的なスキル(技術や知識)を総合的に活かす能力を身に付けること
詳細多摩美術大学・PBL科目について

異なる専門的なスキルを持った各学科の学生が集まり、授業を通して触発し合うことで、幅広く柔軟な考え方や新たな創造を生み出します。また、学外においては、授業に関心を持たれた企業や自治体から依頼されるプロジェクトも多く、さまざまな視点や価値が交錯するなかで、生きた現場からも学ぶことができます。

科目構成は、複数の領域に共通する基礎演習、各学科の専門分野に則した課題の提案、企業や自治体、各種団体との産学官共同研究、さらには既存の領域に収まらない実験的なものなど、実践的で多彩な内容となっています。

6. 専修大学

タイトル社会知性を開発する「キャリアデザインPBLプログラム」
ねらい「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」などの社会人基礎力の養成
詳細PBLプログラム・専修大学

『課題解決型インターンシップ』『専大ベンチャービジネスプログラム』『専修リーダーシップ開発プログラム』の三つのプログラムを称して「キャリアデザインPBLプログラム」と呼んでいます。
これらのプログラムでは、現実の問題・課題に対して(あるいは問題を見つけるところから)、個人またはグループで、その課題を達成するためのアイデアの創出、計画立案、実現などに取り組みます。

7. 東京国際大学

タイトルプロジェクトを支えるPBL型授業
ねらい学生を研究・地域貢献活動においても指導し、人財として育成
詳細PBL型授業メニュー 小江戸(川越)まちおこし・東京国際大学

アクティブラーニング/PBL(Project Based Learning)を通じ主体的に活動できる人財育成を促進するカリキュラムを構築。教育方法においても、主体的な学びを可能とする方式を採用しています。また、全学カリキュラム講座としてCommunity Project Workshop (CPW) などの科目を設置し、既設の他の科目を指定し、学修します。学生を研究・地域貢献活動においても指導し、人財として育成していきます。
Community Project Workshop では、「CPW基礎科目群」で小江戸(川越)についての学習を通じて地域志向教育の基礎を学び、その後にCPW A~Cにおけるプロジェクトを実施するときの基盤としての力を付けます。

8. 摂南大学

タイトル摂南大学PBLプロジェクト
ねらい教育理念である「自ら課題を発見し、そして解決することができる知的専門職業人の育成」を実践する
詳細摂南大学PBLプロジェクト – 摂南大学

一定期間内にプロジェクトの目標を達成するため、学生が自ら課題を発見し、プロジェクトのメンバーと協働して、課題の解決に取り組む創造的・社会的な学びを得ることができます。
具体的には、地方自治体と共同した「大学生と地方自治体とのSDGs連携プラットホーム活動」や、海外の学生と共同したプロジェクト「ベトナム中部貧困地区での古絵本を活用する学習支援(ベトナム絵本プロジェクト)」などがあります。

9. 産業能率大学

タイトルプロジェクト授業
ねらい答えのない現実社会の課題に対し、経営の学びを駆使して挑む
詳細プロジェクト授業・産業能率大学

高レベルで課題解決を行える理論とスキルの修得を最終目的にPBL(課題解決型学習)を行います。

Point1 企業や地域とのコラボレーションにより現実の課題を題材にする
Point2 チームで課題に挑み、提案を行う
Point3 提案や実施内容について、企業や地域の方から評価を受ける

アーティストやイベントのプロデュースなどを行います。
本物のライブコンサートを教材にリアルなビジネスを学ぶ「アーティストプロモーション」やプロ野球、横浜DeNAベイスターズの公式戦をプロモーションする「スポーツプロモーション」などがあります。

10. 大阪公立大学

タイトルPBLプログラムとPBL演習
ねらい学類を超えた学びで「実践力」を身につける
詳細PBLプログラムとPBL演習|学域|現代システム科学域・現代システム科学研究科|大阪公立大学

各学類のカリキュラムと独立した課題解決型の「PBL(Project Based Learning)プログラム」を履修し、その最終科目である「PBL演習」において、専門分野の異なる他者と協働を重ねることで、自ら課題を発見し、粘り強く解決に取り組むことのできる「実践力」を身に付けます。
プログラムには、環境再生、サービスデザイン、教育保障、ジェンダー論などがあり、それぞれで課題を発見し、解決を検討しながら実践力を身につけます。

11. 大阪学院大学

タイトル大阪学院大学PBLプロジェクト
ねらい「教育と学術の研究を通じ、広く一般社会に貢献し、且つ人類の福祉と平和に寄与する視野の広い実践的な人材の育成」を実践する
詳細OGUPBL大阪学院大学PBLプロジェクト

学問と社会、学問と産業の関わりを学ぶために、2つのPBL、すなわち、官学連携PBLと産学連携PBLに力を入れています。
PBL学習法によって、学生は情報収集、情報分析や課題解決に至る構想を考えるプロセスを体験しながら、課題との向き合い方を学びます。

多様なプロジェクトが実施されており、ブランドのフライヤー制作をするものや企業の経営戦略を考えるものなどがあります。具体的には、蜜林堂ブランド「Pot Honey」のフライヤー制作(参考)や「アフターコロナ ソニーの経営戦略」(参考)などがあります。

12. 叡啓大学

タイトル課題解決演習(PBL)
ねらい課題発見・解決力や他者と協働する力、やり抜く力などを養う
詳細課題解決演習(PBL)/ 叡啓で学ぶ|広島県国立大学法人 叡啓大学

1年次は「課題解決入門」を全員必修とし、獲得すべき知識やスキルを自覚します。
2・3年次では、企業などから提供された課題の原因を探究し、解決策の提案までを行う演習に3回取り組み、課題発見・解決力や他者と協働する力、やり抜く力などを養います。

実社会で生じている課題を教育に積極的に取り入れていくことができるよう、企業やNPO、国際機関、地方公共団体など学外の様々な主体と連携を行う「プラットフォーム」を構築し、広島の街全体をキャンパスとして実践的な教育を展開します。
企業や自治体の課題を演習テーマとして設定し、解決へのプロセスを実践的に学びます。
3年間の学修成果を踏まえ、学生自ら解決すべき課題を設定し、課題の原因究明から解決策の提案を一貫して行います。

13. 豊橋創造大学

タイトルPBLによるプロジェクト活動
ねらい1年間のプロジェクトの運営を通して、アカデミックスキルズとともに地域企業との仕事上でコミュニケーションの方法も学ぶ
詳細PBLによるプロジェクト活動の実践|豊橋創造大学・豊橋創造大学短期大学部

短期大学部のキャリアプランニング科の2年次にて実践されています。
地域企業(NPO,行政機関を含む)と連携して共同でプロジェクトの運営を体験的に学びます。学生は、1年間のプロジェクトの運営を通して、アカデミックスキルズとともに地域企業との仕事上でコミュニケーションの方法も学習できます。このようなプロジェクト運営は、企業の仕事の進め方の体験や、ウェブ検索サイト及び携帯情報端末の活用など、就業後に直面するであろう、仕事能力の醸成を図ることになります。

14. 和歌山大学

タイトルPBL型科目
ねらい①知識習得・定着、応用力の向上
②学習意欲の向上(学習の動機づけ)
③ソーシャルスキルの向上
詳細PBL型科目|和歌山大学

和歌山大学ではキャリア教育科目や、協働教育センター(クリエ)のクリエプロジェクト(自主演習)などでPBLを展開しています。科目として設置されており、多様なPBLが実践できることが特徴です。
例えば、キャリアデザイン入門の科目として設置されている企画立案型のPBLは先進的企業のリアルな課題(ボリュームゾーン向けみかん加工商品の企画開発)に取り組みます。他方で、机上の企画立案のみではなく実際に現地に行き、立案したものを実践する「企業プロモーション」などもあります。
ほとんどの講義で講義によるインプットからグループワークによるアウトプット、振り返りまで行います。実践を通じた学習でねらいの達成を図ります。

15. 神奈川大学

タイトルPBL(問題解決型学修)
ねらい大学の授業(座学講義)で習得した知識を使って
実践の場面で「答えを出すこと」
詳細PBL(Project Based Learning)|神奈川大学法学部

ここでは5つの特修が設置されています。GPP特修、自治体実務特修、警察官実務特修、企業法務実務特修、法律学特修です。実務経験のある方を招いた講習と現場の経験から企画されたPBLを行えます。
座学講義で学んだ抽象的な知識を前提に、PBLではごく簡単な事例を取り上げ、学生の皆さんに、大学の授業で学んだことを使ってどう理解したらよいのか、どう行動したらよいのかを考えます。

16. 兵庫大学

タイトルSOTO-MANABI(ソトマナビ)
ねらい「理論」と「リアルな体験」でビジネスを学ぶ
詳細SOTO-MANABI

地域を舞台に、実践力を養う兵庫大学現代ビジネス学科オリジナルの学び方です。経済学と経営学の考え方・専門知識を学びながら、PBLやボランティア活動などを通して行政や企業に実在する課題と向き合い、経済の動きとその背景になる仕組みを理解する力を身につけます。実践されているPBLにはプロジェクト演習・実践、インターンシップ、ボランティア体験、留学があります。具体的には、てらこやを通じたまちづくりプロジェクト(加古川てらこや2022)や結婚式のプロデュース(学生プロデュース)などの活動があります。

まとめ

16校のPBL型・探究型の授業を紹介しました。
それぞれの大学で多様なねらいと実践をされています。学部の専門や、キャリア育成に焦点をあてた実践例が多いようです。ぜひ参考にしてみてください。

参考:大学で探究型授業、PBL(プロジェクト型学習)を行う意義とは?

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。