高校の学習が、大学受験がゴールになっている
自分で考える力が大学入学までに身についていない
このような声を大学の先生方からよく聞きます。
高校と大学の間の乖離が問題になっています。その多くがペーパーテストである受験がゴールとなりがちな高校までの学習に対し、大学では自分で問題を設定して解決する力が求められています。しかし、そのようなやり方で学んでこなかった学生は、大学の勉強についていけなくなったり、大学側もそのフォローに労力を割かれるなど、いわゆる「高大接続」の問題が起こっています。
この記事では、高大接続をスムーズに行うために注目されている「高大連携」について解説。メリットから、導入事例が多い、高大連携を取り入れた探究学習まで紹介しています。
目次
高大連携とは
高大連携の意義「高大接続の課題」を解決する
高大連携のメリット
高大連携している大学と高校
高大連携でできること
出張講義の事例「建築構造デザインの世界」東京工業大学
大学生と高校生の共同授業の事例「高大合同研究」山形大学まとめ力
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高大連携とは?
高大連携とは「高校と大学で連携して学習等を行うこと」です。
継続的な高大連携を行う際は、高大で提携協定を結んでいるケースもあります。具体的には、大学教授による出張講義・模擬講義や、大学生と高校生の共同授業などがあります。
高大連携の意義「高大接続の課題」を解決する
高大連携には「高大接続」の課題を解決する効果があります。高大接続は「高校を終えて大学へ進む」関係のことを指します。
高大接続の主たる課題は、学びのスタイルの違いによるものです。大学では自ら課題を見つけ研究する必要があります。つまり「主体的に学ぶ姿勢」「課題設定・課題発見思考」が強く求められます。しかし、高校では主体性よりも、大学合格をゴールとした、正確なインプット・アウトプットを重視した受け身で、与えられた課題を素早くこなすことに特化した学習スタイルになりがちです。
そのため、大学に入学したは良いものの、大学で求められる学びのスタイルが身についていないため、大学側が学生の教育に苦慮するというケースが問題視されています。
ここで探究学習等に高大連携を取り入れ、高大の距離を近づけることで、この課題の解決を図ることができます。
探究学習はまさに課題設定力、解決力を養う学習。さらに教員だけでは専門性をカバーしきれないため、外部との連携が重要とされます。これが、高大連携で探究学習が注目される理由なのです。
高大連携のメリット
高大連携のメリットを整理しておきます。高大連携は、高校にも大学にもメリットがあります。二つの視点に分けて、メリットを紹介します。
高校のメリット
高大連携を行うことで、大学について早いうちから知り、学生の進路選択にギャップが生じにくくなる効果があります。
講義に触れたり、大学生と学ぶことで、どの学部でどんな内容のことを学んでいるのかイメージすることができます。
大学側のメリット
二つのメリットが挙げられます。
・講義を通じて大学の魅力を高校生にアピールすることができる
・交流を通じて高校においてどのような教育が行われているかを把握して大学における指導に役立てることができる
18歳人口は減り続け、学生獲得競争が激化しています。従って、大学は高校生に継続的に選ばれる戦略が重要になります。高大連携はその戦略の一つとして有効です。
高大連携している大学と高校
高大連携している大学と高校の一部を紹介します。
系列校以外でも提携を結び、継続的な連携をしている学校が多くあります。
大学 | 連携している高校など |
東京女子大学 | 麹町学園女子中学校高等学校 玉川聖学院中等部・高等部 横浜女学院中学校高等学校 など |
神戸国際大学 | 松蔭高等学校 |
法政大学 | 三輪田学園高等学校 |
東京藝術大学 | 武蔵野学芸専門学校高等課程 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校 |
芝浦工業大学 | 佐藤栄学園 芝浦工業大学附属高等学校 |
工学院大学 | 東京都立立川高等学校 東京都立多摩科学技術高等学校 大妻嵐山中学校・高等学校 など |
産業能率大学 | 群馬県立桐生高等学校 東京都私立関東国際高等学校 神奈川県立厚木北高等学校 など |
明治大学 | 明治大学付属明治高等学校 |
日本女子大学 | 麴町学園女子中学校高等学校 玉川聖学院中等部・高等部 横浜女学院中学校高等学校 など |
成城大学 | 神奈川県立岸根高等学校 北鎌倉女子学園中学校・高等学校 麴町学園女子中学校高等学校 など |
日本獣医生命科学大学 | 聖徳学園 |
和洋女子大学 | 千葉県立千葉女子高等学校 |
専修大学 | 和洋九段女子高校 |
龍谷大学 | 龍谷大学付属平安高等学校 北陸高等学校 崇徳高等学校 など |
神奈川大学 | 愛川高等学校 東高等学校 幸高等学校 など |
東京外国語大学 | カリタス女子中学高等学校 東京都立白鷗高等学校 東京都立小石川中等教育学校 など |
高大連携でできること
高大連携でできることとしては、主に以下の二つに分類できます。
大学教授による出張講義・模擬講義
大学生と高校生の共同授業
大学教授による出張講義・模擬講義のメリット
出張講義・模擬講義のメリットは、高校の授業では難しい、深い学びを得られることです。研究の最先端にいる教授の生の授業を受け、さらには質問する機会を得ることができます。
出張講義の事例「建築構造デザインの世界」東京工業大学
大学名 | 東京工業大学 |
---|---|
高校名 | 東京都新宿高等学校 |
学年 | 2,3学年理系進学志望者 |
時間 | 1時間半 |
URL | 平成28年度 高大連携・出張講義 |
環境・社会理工学院建築学系主任教授の竹内徹先生から、建築学について解説。
建築学とはどのような学問なのか、実際の建築の現場とは、東工大ではその建築をどのように教えているのかについて話した後、そうした進路を目指す者が、今、高校でどのような備えをするべきかという順に講演は進んだ。
講演は、映像を駆使し、先生の作品を含め多くの建物を具体例に引きながら、生徒に質問を投げかけて進められた。
東京オリンピックの会場となるはずであった国立競技場の最初のデザインの紹介や、先生により構造設計が行われた東工大の新図書館、耐震強化の行われた東工大キャンパスにある緑ヶ丘1号館、香港にそびえたつ地上350mの超高層ビル中環中心オフィスビルディングも紹介。
講演後には、多くの生徒から多方面にわたる質問が出されたが、先生は一つ一つに対して丁寧に答えていた。生徒の感想を読むと、「建築というものがどういうものであるかよくわかった。」「建築をやってみたいと思った。」等の意見が多数寄せられた。
大学生と高校生の共同授業のメリット
共同授業では、高校生と大学生がゼミ形式で学び、大学生がチューターとして高校生に指導やアドバイスを行う、探究学習を一緒に行う、などのパターンがあります。
共同授業のメリットには、高校生・大学生双方にとって実践的な学びを得ることができることがあげられます。
大学生は高校生に教えることで、自身の研究について理解を深められ、さらに発表・説明スキルなどの育成にも繋がります。
高校生は大学生の研究スキルに触れることによって、課題設定や研究といった探究学習の基礎的なスキルを学ぶことができます。大学生と話すことで、大学での学びが具体的にイメージでき、進路選択の参考にもなります。
大学生と高校生の共同授業の事例「高大合同研究」山形大学
大学名 | 山形大学 |
---|---|
高校名 | 米沢興譲館高等学校 |
学年 | 高校2年生と大学3年 |
時間 | 5月から11月の6ヶ月間、隔週で一コマ |
URL | 高大連携授業を通じた探究活動の相互連携の試み―山形大学と米沢興譲館高等学校を事例として― |
高校生と大学生混合のグループを作り、研究を行う。
5月までに、グループ分け、グループごとの研究テーマの設定を行った。そして各グループに担当教員が1人つき、教員の指示のもとグループワークを行った。
具体的には、地域社会、人間と情報、統計、個人と集団、意識と行動、認知と認識、幸福と健康、災害・事故の8つの基幹テーマの中から2つを選び、そのテーマにあった研究テーマをグループごとに決定した。
研究テーマの決定後は,グループごとに題目と研究計画を提出し、その内容に基づいて、構想発表、実験・調査の実施、分析、ポスター作成を行い、7月に授業内での研究発表会を行なったのちに8月のオープンキャンパスにて対外的に研究成果を公表した。
まとめ
今回は、高大連携について解説しました。高校にとっても、大学にとっても、教育メリットのある連携であることをご理解いただけたかと思います。探究学習をさらに発展させる選択肢として、ぜひ検討してみてください。
参考記事
「高大連携」の28事例を紹介&解説。高大接続をスムーズに
【前編】徹底解説!探究学習の外部連携に必要なことは?連携のパターン、メリットについて
【後編】徹底解説!探究学習の外部連携とは?連携時のポイント、連携先の探し方、事例について
地道な働きかけを経て、尖った才能が刺激し合う学校に〜神奈川県立横須賀高等学校〜
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。