*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。
株式会社うちゅうは、「新天地(=宇宙)で活躍できる人材」をうちゅう型人材と定義し、その人材育成を目指して教育事業をおこなっています。前年度に引き続き今年度は「宇宙」「デザイン思考」「バーチャル社会」をテーマとした3つの教科横断的な学びのSTEAM教育コンテンツを提供してくださいました。
このコンテンツの魅力や制作の背景について、宇宙 星太郎さんと北白川かかぽさんに、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。
宇宙 星太郎様 プロフィール
うちゅう株式会社共同創業者CCO(チーフクリエイティブオフィサー)/一般社団法人 教育ソリューション研究協議会 研究員
宇宙をテーマにした教育・エンタメ分野に強い関心を持ち、2016年株式会社うちゅうを創業。東京や大阪で3つのうちゅう教室を継続的に展開、名古屋や北海道、九州でも単発イベントを複数実施している。子供たちに対して挑戦・失敗・学びを得るアクティブラーニング形式の教育を提供している。
北白川 かかぽ様 プロフィール
バーチャルサイエンスコミュニケータ/Vtuber教材統括責任者/教材制作アドバイザー
物理学や科学技術社会論の修学や研究の経験を活かし、科学や学術を題材とした配信や動画投稿を行うサイエンスコミュニケーション系Vtuber。中高数学の教員免許も有しており、「学びに対するハードルを下げたい」という思いのもと活動を行っている。
株式会社うちゅう
株式会社うちゅうは、うちゅう型人材の育成を掲げて、教育事業を行なっている会社です。
宇宙に関する知識+不安定な状況でも判断・検討できる能力+行動力、また、適応力・コミュニケーション能力などの力を備えた人材の育成のために、宇宙教室やワークショップ、教材開発などを行なっています。
コンテンツについて
今年度は「宇宙」「デザイン思考」「バーチャル社会」をテーマとした3つのコンテンツを提供してくださっています。
問題解決のための思考法 デザイン思考を知ろう!
学術系Vtuberと考える”未来のバーチャル社会”
人類は宇宙で生き抜くことができるのか?
ー問題解決のための思考法ー デザイン思考を知ろう!
タイトル | 問題解決のための思考法 デザイン思考を知ろう! |
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学年 | 高校 |
キーワード | 探究、イノベーション、課題解決、ものづくり、デザイン思考 |
URL | 基礎編:https://www.steam-library.go.jp/content/101 実践編:https://www.steam-library.go.jp/content/102 |
このコンテンツの目的
映像化が不可能と言われた、デザイン思考をアニメ化したコンテンツです。個性豊かなキャラクターたちと一緒にデザイン思考を楽しく学べます。このコンテンツは以下の二部構成になっています。
①デザイン思考の各フェーズごとに分かれたショートアニメ
②各コマで用いるフレームワークの解説動画
さらに、デザイン思考の全てのフェーズを繋げた一本の長編アニメもあります。こちらで紹介しているのは基礎編ですが、実践編もありますのでぜひご活用ください!
>実践編
学術系Vtuberと考える”未来のバーチャル社会”
タイトル | 学術系Vtuberと考える”未来のバーチャル社会” |
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学年 | 高校 |
キーワード | 情報、プログラミング、バーチャル社会、Vtuber、XR、VR、AR、MR |
URL | https://www.steam-library.go.jp/content/143 |
このコンテンツの目的
本コンテンツでは、誰もが当たり前のようにバーチャル技術を活用することで、現実世界では不可能だった体験や自身の個性を活かした様々な活動が可能となる「バーチャル社会」を生きるうえで必要となる力を養うことを目的に、最先端のバーチャル技術を題材としたアクティブラーニングを行います。
バーチャル技術について動画を通じて学習した後、実際にバーチャル技術体験を行います。バーチャルアバターを作成してみたり、物理エンジンに触れたりすることができます。
人類は宇宙で生き抜くことができるのか? 高校生編
タイトル | 人類は宇宙で生き抜くことができるのか? 高校生編 |
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学年 | 小4〜6、高校 |
キーワード | 宇宙、ものづくり、天文学、諦めない力、プログラミング、プレゼンテーション |
URL | 小学生編:https://www.steam-library.go.jp/content/20 高校生編:https://www.steam-library.go.jp/content/21 ロケット特化版:https://www.steam-library.go.jp/content/22 |
このコンテンツの目的
ロケットや宇宙飛行士などあくまでも“宇宙”を題材にしながら、コンテンツでは①試行錯誤する力②協調性③オリジナリティなどを子どもたちが能動的に学ぶことを目指しています。
“宇宙”を題材に、答えのない問いに対して創造性と好奇心に基づいて行動し、その中で失敗をしながら学び、挑戦を続けるコンテンツです。
このコンテンツには小学生版、高校生版、ロケット特化版の三つの種類があります。ロケット特化版は発展編のコンテンツになっていますので、学年にあったコンテンツを使用してから使用するのがおすすめです。
目次
このテーマを選んだ背景
制作で意識したところ
学習・体験・探究の3部構成
映像でわかるデザイン思考
学校でも使いやすい
使う時期は始めの時期がおすすめ
コマの一部だけ活用しても良い
探究されていること
まとめ
このテーマを選んだ背景
(田中)この3つのテーマを選ばれた背景についてお聞かせください。
(星太郎)かかぽさんと、来たるべき「バーチャル社会」を担う人材育成に興味があると話していたのがきっかけです。会社としても「未来を生き抜く人材を育てたい」というビジョンを掲げているので、これからの時代の人材育成に関わりたいと思い、このようなテーマにしました。デザイン思考に関しては、基礎の基礎となる教材を作りたいと思ったからです。デザイン思考はSTEAMライブラリーの他の教材とも親和性が高いので、弊社のコンテンツは色々な教材に活きます。
制作で意識したところ
(田中)今回コンテンツ制作で特に意識した点などはありますか?
(かかぽ)特に学習者目線でいかにワクワク感を引き出すかと言うところに重点を置きました。ワクワクしないと、自分で考えようという意識にはならないと思います。ですので、製作者がVtuber(キャラクターを活用して動画投稿や配信を行うYouTuber)である点を活かし、親しみやすいようなコンテンツの設計にしました。
また、体験も重視しています。バーチャルワールドを楽しむ際に必要となるアバターをスマートフォンで作ってみたり、バーチャルワールドの基礎的な構成技術である物理エンジンをパソコンで操作したりするコマがあります。まずは基礎を学んだ上で、実際に手を動かしてみることで、体を通じて学べるように意識しました。
学習・体験・探究の3部構成
(かかぽ)「バーチャル社会」のコンテンツは次のような3部構成になっています。
第一部1コマ目:学習パート
第二部2~4コマ目:技術体験パート
第三部5〜7コマ目:今後の未来について自分の意見を考える探究パート
(かかぽ)この構成によって、体系的に理解しやすく興味をひきやすいコンテンツにしています。
技術というのは、ただそれだけがあるのではなく、社会でどう活かされていくかが重要だと考えています。だから、学習して体験という流れを作りつつ、さらに社会でどう活かされていくかを考える構成にしたところがこだわったポイントです。
学校でも使いやすい
(1コマ目:指導案 学術系Vtuberと考える”未来のバーチャル社会”)
(かかぽ)学校現場でも使っていただきやすいように、指導案も作成しています。
(田中)細かく書いていてわかりやすいですね。学校で使う際に一つ気になるのが、アバターを作るのは無料でできるのでしょうか?
(かかぽ)「バーチャル社会」のコンテンツでは、スペックの低いパソコンやスマートフォンでも問題なく、かつ無料でアバター作りができるものを選んでいます。ハードウェアさえあれば、スペックを問わずに対応できるようにしました。物理エンジンについても、ウェブブラウザでさくっと使えるものを採用しています。
映像でわかるデザイン思考
(一コマ目:全編動画 問題解決のための思考法 デザイン思考を知ろう!)
(田中)デザイン思考のコンテンツではどのようなポイントを意識されましたか?
(星太郎)アニメの部分にとても力を入れました。書籍やWeb記事を読んでも理解できたのか分からないのがデザイン思考の難しい部分だと思っています。それをどう解消するかを考え、書籍・Webの文章だけではなかなか伝わらないところを映像化しました。
デザイン思考のフレームワークやメソッドをよく見かけると思うのですが、その使い方がわかりづらいという課題感がありました。そこで、星太郎の解説編動画を入れて、動きを交えながらフレームワークやメソッドの使い方を伝えているのも工夫した面白い部分だと思っています。
使う時期は始めの時期がおすすめ
(田中)ありがとうございます。次にコンテンツを使うべき時期に関してお聞きしたいです。Vtuberと宇宙のコンテンツは自由に使えるかと思いますが、デザイン思考のような基礎のコンテンツは始めの時期に使う方が良いでしょうか?
(星太郎)デザイン思考は生活でも探究でも活用できる基礎となるので、1学期などの始めの時期が良いと思います。
コマの一部だけ活用しても良い
(田中)次にコマの使い方について教えてください。このコンテンツは一部のコマだけ使っても大丈夫でしょうか?それとも全体を通して使う方が良いでしょうか?
(星太郎)宇宙の方は一部だけ使うのでも大丈夫です。デザイン思考は全コマ通してやる方がいいと思いますが、アニメ「あきらくんの課題を解決せよ!(全編)」を見ていただくだけでも十分理解できるようになっています。この動画が突破口になればと思います。
(かかぽ)「バーチャル社会」の方も、柔軟な使い方をしていただければと思います。ストーリー立てた構成にはなっていますが、トピックは独立しているので一部だけでもお使いいただけます。また、しっかり取り組むようなワークは適宜、省略したり、逆にそのワークだけをガッツリ取り組んだりという形でも大丈夫です。
(星太郎)どのコンテンツも、一貫したものもありつつ個別でも使えるような構成になっています。
生徒の興味を引くキークエスチョン
(田中)授業で使う際に生徒の興味を引けるような問いは何かありますか?
(星太郎)デザイン思考の方で言うと、第一回のオリエンテーションにも書かれていますが、「問いを立てたことがありますか?」という問いが良いと思います。まず、問いを自分自身で立てたことがない、ということに気づかせてほしいです。
(田中)なるほど。問いを立てる場面や重要性についてはどう伝えるのが良いですか?
(星太郎)例えば友人にプレゼントを渡す時とか、文化祭の出し物を考える時などを想定してもらえればと思います。そういう時に良い問いが立てられないと、出てくるアイデアの幅も狭くなるし、みんなが満足できるものは作れないよね、ということに気づいてほしいです。
(かかぽ)バーチャル社会のコンテンツの方で言うと、「バーチャルで生きられるようになったらどんな生活がしたいですか?」とか、「社会にリアルがなくなってバーチャルしかなくなったらそれで良いのか」とか、そういった問いを投げてもらえたらと思います。私みたいにオンライン会議にバーチャルの姿で参加して仕事をする人がこれから増えていくと思うので、そんな社会を想像して問いかけてみてほしいです。
探究されていること
(田中)最後にお二人が探究されていることについてお聞かせください。
(かかぽ)私は、サイエンスコミュニケーションがどうあるべきかについてよく考えています。Vtuberとサイエンスコミュニケーションを組み合わせることで、社会にどのような新しいアプローチができるかというのも活動を通して探究しています。
(星太郎)私は、会社経営をやっていることが探究なのかなと思います。日本の民間企業で継続的に宇宙教育をやっているのって多分弊社くらいだと思います。市場も全然ない状況でやり続けるのって常に課題があって、その課題解決を模索し続けているのは探究だと感じますね。
まとめ
宇宙 星太郎さん、北白川 かかぽさん、本日はありがとうございました。
これらのコンテンツは教科横断的であるだけでなく、実際に体を動かして考えるところまで一体になっていることが特徴です。探究をする生徒にとっても良い興味のきっかけになること間違いなしです!ぜひ活用してみてください。
今回紹介したコンテンツ:
>デザイン思考をテーマにした教材「問題解決のための思考法」
基礎編:https://www.steam-library.go.jp/content/101
実践編(宇宙修学旅行編)https://www.steam-library.go.jp/content/102
>学術系Vtuberと考える”未来のバーチャル社会”
Vtuber:https://www.steam-library.go.jp/content/143
>宇宙をテーマにした教材「人類は宇宙で生き抜くことができるのか?」
小学生版:https://www.steam-library.go.jp/content/20
高校生版:https://www.steam-library.go.jp/content/21
ロケット特化版:https://www.steam-library.go.jp/content/22