*この記事は経済産業省「STEAMライブラリー未来の教室」のコンテンツ事業者様に、教材の詳しい内容や使い方のアドバイス、STEAM教育に対する思いなどを取材する連載企画です。
レジリエンスとは、ストレスや危機に対する抵抗力、という意味の言葉です。子どもたちは、学校生活の中で勉強、部活、人間関係などにおいて、さまざまなストレスを経験します。もちろん社会に出ればより一層、多くのストレスを経験することになります。
N高等学校(通称、N高)などの運営で知られる学校法人角川ドワンゴ学園が提供する「マイレジリエンスリサーチ ~凹んでも前に進む力を見つけよう〜」は、そのレジリエンスをテーマに、自分はこれまで、どう危機に対応してきたか、自分に合ったレジリエンスは何か、これから先どう危機に向き合っていくか、を探究しながら学べるコンテンツです。
学校法人角川ドワンゴ学園が実際に学校運営の中で培ってきた、レジリエンスを育む知恵が集約された教材となっています。その魅力や制作の背景について、角川ドワンゴ学園の園様と山内様に、弊社代表の田中悠樹がお話を伺いました。
園利一郎様 プロフィール
学校法人角川ドワンゴ学園 経験学習部 部長
早稲田大学卒。ドワンゴで動画サービス「ニコニコ」やニコニコ超会議等の宣伝広報に従事したのち、学校法人角川ドワンゴ学園にて「N 高等学校」の立ち上げに参加。省庁や地方自治体と連携した教育事業や、「N 中等部」や「N 高等学校」「S高等学校」の中高生に向けたワークショップやプロジェクト学習を通じてレジリエンスやリーダーシップ、創造性などを身につけるプログラムやキャリア教育の開発等に取り組む。
山内皓貴様 プロフィール
学校法人角川ドワンゴ学園 経験学習部 能力開発課
東京学芸大学卒。大学では異文化間心理学・質的心理学の研究室に所属。N高等学校通学コースのティーチングアシスタントを経験したのちに、角川ドワンゴ学園に新卒入社。角川ドワンゴ学園では主に、企業や研究者と連携し、N中等部やN高等学校・S高等学校のプロジェクト型学習や能力開発プログラムの開発に取り組む。
学校法人角川ドワンゴ学園
ニコニコ動画等を提供するIT企業ドワンゴと、出版社のKADOKAWAが創立した学校法人です。ネットと通信制高校の制度を活用した「ネットの高校」、N高等学校、S高等学校などを運営しています。IT×グローバル社会を生き抜く“創造力”を身につけ、世界で活躍する人材を育成することを目指しています。
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コンテンツについて
タイトル | マイレジリエンスリサーチ ~凹んでも前に進む力を見つけよう〜 |
---|---|
学年 | 中学、高校 |
キーワード | レジリエンス、PBL、プロジェクト型学習、心理学、道徳、保健体育、ストレス |
URL | https://www.steam-library.go.jp/content/175 |
コンテンツの目的
この学習プログラムでは、凹んでも前に進む力を身につけることを目的に自分の中にあるレジリエンスを探していきます。レジリエンスとは、ストレスなどのダメージを和らげたり、凹みから回復したりする力を言います。このコンテンツでは、以下の三つの力を身につけることができます。
・自分にあったストレスの対処法
・自分の強み(自然にできる考え方や行動)の理解
・自分の外からサポートを得られる力
この力は今後自分と向き合いながら学習をする生徒の助けになるだけでなく、日常生活でも必要になる大事な力です。
目次
今回どうしてこのテーマを選んだのか
内容はより万人向けに進化
コンテンツはいつ使うべき?
生徒を惹きつける問いには何がおすすめ?
生徒の答えは多様
お二人が探究されていること
まとめ
今回どうしてこのテーマを選んだのか
▲コンテンツはドラマ仕立てになっている(1コマ目:レジリエンスって何?より)
(田中)今回このテーマを選ばれた背景はなんでしょうか?
(園)今回は、前年度に制作したAIがテーマのコンテンツ(つくりながら学ぶAI〜ゼロから学んで、身近な課題解決に挑戦しよう〜)が、学校や生徒の雰囲気・学習レベルなどによって取り組みに差があったという課題を踏まえて、汎用的な能力に立ち返ってテーマを設定しました。
探究やPBL(プロジェクト型学習)への取り組みは生徒の中で大きく差があります。私たちの予想を超えて、活発にどんどん進めていく生徒もいますが、とりあえずワークはやるけどそこまで身が入っていない、という生徒もいます。探究にいたるまで、さまざまな段階の生徒たちがいる中で、今回はレジリエンスやエモーショナルスキルといったことに注目し、自分がどんなことに興味があるのかを、見極める前のフェーズに活用していただけたらと思います。
大人でも仕事がうまくいかなくて落ち込んだり、もう駄目だ、と思うことがあります。生徒も、学校生活の中で学内のイベントや部活や受験など、そのようなきっかけがたくさんありますよね。落ち込む前にどうやってレジリエンスを向上させておくか、ということが大切です。
コンテンツはいつ使うべき?
▲生徒たちが直面する、進路や人間関係などの具体例をもとに、レジリエンスを高める方法を学べる(2コマ目:まずは自分に労いの言葉をかけようより)
(田中)制作者側の意図として、いつこのコンテンツを使って欲しい、などあればお聞かせください。
(山内)いつでも良いと思っています。6コマ全てこなしても、一部でもかまいません。PBLの土台としてや、自分の強みなどの自己確立にもつながるので、年度始めに使っていただいても良いですし、生徒たちのストレス負荷が高くなる時期の前に使っていただいても効果的だと思います。
▲レクチャーは全部で6コマ。各5~6分程度の動画とワークシート教材がある。
(山内)例えば、文化祭の出し物についてほかの生徒と意見が割れてケンカしてしまったり、受験で合格が出なくて落ち込んでしまったり。そういうタイミングで、ストレスにやられてしまう生徒が多いんです。
(園)授業の中で使うだけでなく、ぜひ部活動など授業の外でも使ってみて欲しいですね。部活動の大事な試合で、自分が原因で負けてしまったり、目標に到達できなくて落ち込んだりすることもあると思います。そうなる前に、事前にレジリエンスを学んでおけるといいですね。
(山内)生徒だけでなく、先生同士でやってみるのも良いと思います。先生方にもレジリエンスは必要だと思うので、ぜひ活用して欲しいです。
生徒を惹きつける問いには何がおすすめ?
▲様々な角度からレジリエンスを学び、自分なりのレジリエンスを探究する(3コマ目:レジリエンスのタイプを診断しようより)
▲「旅行がキャンセルに」「大好きな人に振られたら?」身近な問いからレジリエンスを考える(5コマ目:自分の外にあるレジリエンスを探そうより)
(田中)はじめの導入の問いに何かおすすめはありますか?
(山内)「今まで凹んだときに、どうダメージを和らげたり、立ち直ったりしてきましたか?」という問いが良いと思います。実際にこの問いを生徒に尋ねたとき、とても多様な答えが返ってきました。「絶対に友達に電話する!」という生徒もいれば、好きなサッカー選手を応援すると元気が出る、ノートに書き出す、という生徒もいました。この回答が、コンテンツの核になるものなので、一番効果的な問いではないかと思います。
生徒の答えは多様
(田中)その問いに対する生徒の回答で多かったものや、変わったものってありましたか?
(山内)意外と多かったのは「推し」ですね。アイドルやミュージシャンなど応援したい人を応援していると、ポジティブになれるという意見は結構ありました。個性的だなと思ったのは、「鳥を眺めると自然の一員だと感じられて悩まなくなる」という回答です。色々な回答があって面白いですよ(笑)
お二人が探究されていること
(田中)子供に探究を教える前に、教える大人が探究しなさいと言われます。最後にお二人が何か個人的に探究されていることをお聞きしたいです。
(山内)僕はボードゲーム制作について探究しています。世の中に「遊び」をどうやったらもっと増やせるかな、とずっと考えていて、その活動の一環として、副業でボードゲーム制作をしています。どのようなルールだと面白いのか、どのようなものだと興味を引けるのか、世代を超えて遊んだりできるのかをトライアンドエラーを繰り返して探究しています。
(田中)ありがとうございます。園さんはいかがでしょうか?
(園)僕も似た領域ですが、学校の中での遊びに関連した能力開発に興味があります。学校という、いろんな制限が生まれてしまう場で、フォーマル・インフォーマル問わず、遊びを通じて生徒の能力を伸ばせるかについて、角川ドワンゴ学園の仕事として、いろいろなプロジェクトに関わりながら探究しています。
まとめ
▲園様、山内様、広報の永井様と
園様、山内様、今回は貴重なお時間ありがとうございました。
レジリエンスはあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、実際は必要な瞬間が誰にでもあるものです。特に多感な子供たちにとっては、切実な問題かもしれません。生徒の力になる内容ですので、ぜひ授業でも、授業外でも活用してみてください。
今回紹介したコンテンツはこちら
>マイレジリエンスリサーチ ~凹んでも前に進む力を見つけよう〜
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。