探究学習

【探究レポート】iPadを使ってオリジナル防災マップを作ろう【福島県矢祭町】

Study ValleyはEdTechツールの提供だけではなく、授業計画、講師の派遣なども含めた学校や自治体の探究学習全体のサポートも行っています。

特に、福島県矢祭町が推進するSTEAM教育の一環である「防災マップ」の作成には授業計画から関わらせていただいています。今日はこの取り組みの中で行われた全4回のワークショップの様子をご紹介します。

目次
矢祭町「地域から生き延びる力を育む授業」
実際の流れ
第1回 現地:自分のまちのハザードマップを見ながら歩こう!
第2回 自分たちのまちに隠れる「想定外」を共有しよう!(オンライン)
第3回 さまざまな災害について学び、矢祭町での災害や町外での災害でも命を守ろう! (オンライン)
第4回 ハザードマップを作りながら災害対策案を考えよう!(オンライン)
生徒の様子
まとめ

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矢祭町「地域から生き延びる力を育む授業」

□主催者等
矢祭町教育委員会、Study Valley、早稲田大学アカデミックソリューション

□講師
大場黎亜(おおばれいあ)
東京都生まれ。早稲田大学教育学部及び教育学大学院にて、教育と文学(専攻は近代文学)を学ぶ。学部時代に東日本大震災が発生し、個人でボランティアとして東北に入る。宮城県南3陸町災害ボランティアセンターへ通い続け、2014年、リーダー活動を認められ、町公認の南3陸町復興応援大使に任命される。現在は南3陸町民であり、地域住民として様々なまちづくりの活動に関わる一方、2013年からはまちづくりのコンサルタントとして、5年以上調査やアドバイザーの実績を有してきた。教育・文学専門であることから、まちづくりのストーリーをどう紡ぐか、そして「人づくり」をどうしていくかをテーマに掲げ、全国を飛び回る。防災士も取得し、全国の災害現場へもボランティアを続けていることから、防災教育も専門としている。

実際の流れ

今回のワークショップでは、以下のことを目標に、講師の大場さんと協力し、授業設計を行いました。

目標
○何よりも自分の命を守ること、そのためにはマニュアルが全てではないこと、そして自分で判断して命を守るためにできる日頃からの意識や教訓、想定が大事なことを理解する。
○自分たちの気付きを大切な人や地域の人にシェアすることで、子どもたちでも大人たちに教えてあげることができるということや1人1人の意識が町を守るということを理解する。

□授業回数(全4回)
第1回 現地:自分のまちのハザードマップを見ながら歩こう!
第2回 自分たちのまちに隠れる「想定外」を共有しよう!(オンライン)
第3回 さまざまな災害について学び、矢祭町での災害や町外での災害でも命を守ろう! (オンライン)
第4回 ハザードマップを作りながら災害対策案を考えよう!(オンライン)

第1回 現地:自分のまちのハザードマップを見ながら歩こう!

第1回目の内容
○実際に作られているハザードマップを見ながら、いざ災害が起きた時に危ないポイントを確認して一緒に歩く。
○歩きながら講師が一緒にリスク探しをして子どもたちに問いかける。
○水の流れや土質などにも注目しながら矢祭町の地域の特徴を知る。
○iPadを使ってマップに情報を書き込む。

第1回では、講師の話を聞き、実際のハザードマップを見ながらそのポイントを確認するというフィールドワークを行いました。事前学習として「災害から身をまもる」という動画を観て、自分の家や学校からの避難場所とルートの確認を各自行っています。

講師の話を聞いて現地の写真をとり、矢祭町の地域の特徴や自分の気づいた情報を書きこみました。

この画像は、実際の生徒の書き込みです。講師から聞いた話のメモや、地域の過去の災害の爪痕や感じた疑問等が簡潔にメモされています。

第2回 オンライン:自分たちのまちに隠れる「想定外」を共有しよう!

第2回目の内容
○第1回の内容や動画学習を思い出しながら、ハザードマップ上からだけでは読み込み切れない注意点や心配事を考察する。
○上記についてコメントしながら深掘りしていく。

前回フィールドワークで撮影した写真とメモの内容をみんなでシェアした後、前回に関連させて動画で川に関連する災害について学習しました。

過去の東日本大震災や熊本県の大地震・矢祭町の台風の被害などの写真を紹介し「どのようなことが起こっているのか」や「これは何をしているのか」といった質問を投げかけました。

すぐに理解できない部分もたくさんあったようですが、生徒は講師の質問に触発され、積極的に考察に参加しました。

(授業資料より引用:熊本の大地震の修繕中の写真。)

(授業資料より引用:矢祭町の台風被害後の写真。実際に見てまわった時と関連させて災害について学んだ)

第3回 オンライン:さまざまな災害について学び、矢祭町での災害や町外での災害でも命を守ろう!

第3回目の内容
○矢祭町で想定される災害(①水害②土砂災害)に加え、地震災害や津波災害などさまざまに学び、町内のみでなく町外に出ても役に立つ災害対策を学ぶ。
○さまざまな災害に対応していくために今から気を付けるべきことを考える。

矢祭町と南三陸町の過去の災害をスライドを通じて振り返り、下の五つの項目を参考に、動画やパワーポイントを通じて、災害について学習しました。

基礎知識をインプットした後、以下のような問いを立て、ジャムボード(オンライン上のホワイトボードツール)を通じてアウトプットを行いました。

①災害が起きたときに、何を知っておけばよかった?
②街で必要な災害対策について

①の質問では「矢祭町の避難先」や「避難するときに持っていくべきもの」について知りたいという声があがりました。学習した内容を自分に置き換えて捉えられていることが伺えます。

一方、②の質問では、今回の授業で学習したことをどうすれば街の人に知ってもらえるのか、という視点で「避難訓練を行う」や「防災マップ」の配布という意見が多く見られました。

第4回 オンライン:ハザードマップを作りながら災害対策案を考えよう!

第4回目の内容
○授業で得た気づきをもとに、ハザードマップを作る

1回目に実施したフィールドワークでの気づきやを元に、ジャムボードを使って今ある防災マップに写真や付箋、コメントを貼り付けて、オリジナルの防災マップを作りました。

こちらの画像は、実際に生徒が作成した防災マップです。川周辺の危険について、画像や付箋を使ってまとめています。星で危険度を表していたり、授業内での学びが活かされていることがわかります。

生徒の様子

生徒にとっては慣れないオンラインでの活動でしたが、たくさんの質問があがったり、積極的に授業に参加する姿勢が見られました。

第4回で作成してもらった防災マップからは、第1回から第3回までの授業で学んだことが活かされており、この講義で災害について学習できたことがわかります。

まとめ

今回は、弊社が協力させていただいたワークショップについてまとめました。生徒は今後の災害対策にも、この経験を役立ててくれるでしょう。

 

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。