探究学習

「KJ法」のやり方とは?取り入れるメリットや学習効果を高めるコツ、探究への活用も紹介

探究学習にKJ法を取り入れたい
KJ法のやり方やメリット、コツを知りたい

私たち Study Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

先生方とお話する中で、冒頭のようなご相談をよくいただきます。

探究学習での意見や調べら情報をまとめる手段の一つとしてKJ法があります。簡潔に言えば学習での体験活動や調査によって得られた情報を、カードや付箋に書いてカテゴリごとに整理することを指します。

この記事は、KJ法のやり方、メリット、学習効果を高めるポイントを解説します。

目次
KJ法とは
KJ法のやり方5ステップ
1.付箋やペンを準備する
2.アイデアを書き出していく
3.カテゴリをグループ化(ラベル化)する
4.関係性を図解化する
5.図解を元に文章化する
KJ法を取り入れる2つのメリット
1.アイデアが見える化される
2.少数意見の活用
KJ法で学習効果を高める3つのコツ
1.最適なカテゴリタイトルを模索する
2.参加者全員の同意を得て進める
3.アプリやソフトを活用する

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KJ法とは

KJ法は、学習での体験活動や調査によって得られた情報を、カードや付箋に書いてカテゴリごとに整理することを指します。

KJ法を行うことで学習プロセスの把握がしやすくなる、課題の本質が見えやすくなるといった点がメリットです。またグループで自由にアイデアを出し合うブレインストーミングと相性が良く、合わせて活用されることがあります。

文化人類学者である川喜田二郎氏が1967年の著書『発想法』の中で発表した発想法です。

参考記事
>「ブレインストーミング」のやり方とは?守るべきルールとコツ、探究への活用事例も紹介

KJ法のやり方5ステップ

次はKJ法の具体的なやり方を5つのステップで紹介します。

KJ法のやり方5ステップ
1.付箋やペンを準備する
2.アイデアを書き出していく
3.カテゴリをグループ化する
4.関係性を図解化する
5.図解を元に文章化する

いずれのステップも決して難しくないので、探究学習などで積極的に取り入れるよう指導しましょう。

1.付箋やペンを準備する

KJ法は付箋やペンを準備するところからスタートです。しっかり文字が書き込める大きさの付箋を用意しましょう。付箋を使う場合は黒板やホワイトボードを使って分類作業ができます。もし付箋がないときはカードでもかまいません。

グループ分けするときにことを考え、ペンと付箋のどちらか一方は2~3色程度準備しておき、書き出す情報によって色分けできるようにしておくと便利です。

2.アイデアを書き出していく

1枚の付箋、もしくはカードに1つのアイデアを書き出していきます。ひとまず、並べる位置や順番は関係なく、書き終えた分は全て机の上やホワイトボードへランダムに貼ります。

「事実と意見を色分けする」など、付箋やペンで書き分けておく、または目印をつけておくなどしておくと、後の分類作業が楽になります。

kJ法ではアイデアは1枚につき1つが原則です。1枚に複数のアイデアが含まれているのであれば、複数の付箋に分割しましょう。

書くことがなくなるまでアイデア書き出し作業を行い、次の作業に移ります。

3.カテゴリをグループ化(ラベル化)する

書き出していった情報をグループ分けします。KJ法では情報をカテゴリに分ける作業を「ラベル化」とも呼びます。

記載されている情報で似ているもの同士を集めてグループを作りましょう。共通しているカードのグループには見出しを付けていきます。

グループ数が10以上ある場合は、さらに関連性の高いもの同士をまとめて大きなグループを作りましょう。あまり多すぎても分析が難しくなるので、10グループ未満になるまでグループ化を続けていきます。

また中には趣旨から外れたものがあるかもしれません。その際は無理にどこかのカテゴリに入れず、「その他」を作っても大丈夫です。

4.関係性を図解化する

グループ分けして見えてきた関係性を図解化していきましょう。それぞれのアイデアの関係性を整理してさらに見やすくするためです。

カード同士を線でつないだり囲んだりして関係性を明確にしていきましょう。

関係性の例
・因果関係
・相互関係
・対立関係

関係性が明らかになったら、図解にすると、それまで寄せ集めだった情報が一気に見やすくなります。

代表的な図解のパターンには、以下の4種類があります。

ツリー型

ツリー型は、樹木が枝分かれしていくように細かく情報を分解していくタイプです。ロジカルシンキングする際に使われる図式で、社会に出たあとでも度々用いることがあります。

ツリー型は全体像が把握しやすく的外れな議論を防げる、優先順位を把握しやすいなどがメリットです。

サテライト型

サテライト型は、それぞれの要素を対等に並べて考えるタイプです。主従関係等がなく、全ての要素が必要なときに用いる図式と言えます。

例えば三権分立(国会・裁判所・内閣)、年齢別(10代・20代・30代など)を思い浮かべてもらえばイメージをつけやすいかもしれません。

サイクル型

サイクル型は、弧を描くように各要素の循環的な流れを表現するタイプです。終着点がなく、常に全ての要素をぐるぐると循環させていきます。

何度も繰り返し思考するフレームワークであり、社会ではPDCAサイクルとして用いられることが多い図式です。

フロー型

フロー型は左から右、もしくは上から下へ順に要素を図解していく方法です。ツリー型のように枝分かれすることなく、要素の時間的な流れを表現するときに用いられます。

どの段階に大きな問題があるか、影響を及ぼしているかといった要素を調べるときに便利な図式です。

5.図解を元に文章化する

できあがった図解を元に文章化しましょう。付箋に書かれている情報をできる限り盛り込み、一つの文章をつくっていきます。

グループ同士の時系列を意識し、グループの段階構造を活かして抽象的な話から具体的な話に変えていくのがポイントです。

慣れないうちにいきなり文章化しようとすると、考える時間が増えてしまいかえって作業効率が下がります。

そのため最初はそれぞれのグループを細かく文章化して、徐々に一つの文章としてつながるようにしましょう。

KJ法を取り入れる2つのメリット

KJ法を探究学習に取り入れるメリットは2つです。

KJ法を取り入れる2つのメリット
1.アイデアが見える化される
2.少数意見の活用

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

1.アイデアが見える化される

まず一つ目のメリットがアイデアを見える化できるという点です。

KJ法では生徒たちが思いつくまま付箋で書き出していったアイデアが図式化され、最終的に文章となって言語化され「見える化」されます。

見える化することでアイデアや情報が共有され、どこまで考えたのか?どこまでわかったのか?などが客観的にわかるようになります。

2.少数意見の活用

少数意見や共感する参加者が少ないアイデアであっても、同じ一つのアイデアとして多数意見と同じ土台で議論できることもKJ法のメリットです。

メインのアイデアとして採用されなくても、記録は残り、のちのちまで示唆やヒントを与えてくれる場合があります。

KJ法で学習効果を高める3つのコツ

KJ法のやり方がわかった上で、コツを押さえておけば学習効果が高められます。
次にKJ法で学習効果を高めるコツを紹介します。

KJ法で学習効果を高める3つのコツ
1.最適なカテゴリタイトルを模索する
2.参加者全員の同意を得て進める
3.アプリやソフトを活用する

ぜひ参考にしてこれからの指導に役立ててみてください。

1.最適なカテゴリタイトルを模索する

複数のアイデアをまとめる際のカテゴリタイトルをどうするか、は重要なポイントです。
それによってアイデアの全体像を適切に把握できるか、最終的な図解化、文章化がうまくできるかが大きく影響されます。

しかし、最初からちょうどよいタイトルが思いつき、アイデアをきれいに分類できるとは限りません。カテゴリ分けを進める過程でもっと良いタイトルを思いつき、分類を見直したくなる場合もあります。

そのようなときは面倒でも、再度カテゴリタイトルを見直し、分類しなおす方がベターです。時間の許す限り、常に最適なカテゴリを模索するべきです。

2.参加者全員の同意を得て進める

このポイントの意図は、声の大きい特定の人たちだけが場をリードしてしまい、意見が偏る、意見が出尽くさないことを避けることです。

「他にアイデアはないですか?」「違う立場からの意見はありませんか?」という風に参加する生徒全員の同意を確認しながら進めましょう。

同意を進めながら進めることで意見の偏りが減って精度の高い意見に仕上がります。

グループ分けや文章化する中でも、つど生徒たちに意見を聞くようにし、全員の同意を得ながら話し合うことが大切です。

3.アプリやソフトを活用する

アプリやソフトを活用してKJ法を実施することも検討しましょう。

付箋やカードに意見を書き出していくことは手軽ですが、記録として残しにくい、共有しにくいなどもデメリットもあります。

アプリであればKJ法の結果をデータとして残すことも簡単ですし、もちろんそれを共有することもできます。ラベル化とカテゴリ分けもアプリ上で簡単にできます。

教育現場にICTが普及する今、効率を上げるためにアプリやソフトも探究学習に積極的に取り入れていくのがおすすめです。

まとめ

今回はKJ法のやり方について紹介しました。

生徒たちの出した意見やアイデアを一つの大きな形にまとめられるのがKJ法です。探究学習の課題解決にも役立つので、先生は積極的に取り入れるよう生徒へ指導しましょう。

さらに自由にアイデアを出し合うブレインストーミングと併用すれば、生徒たちは主体的かつ積極的に探究学習を進めてくれます。

指導の際に今回紹介したコツを意識すれば学習効果を高められるので、ぜひ参考にしてみてください。

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。