探究学習

「ジグソー法」のやり方って?具体的な手順と得られるメリット、探究への活用を解説

ジグソー法を探究に取り入れてみたいけどメリットは?
ジグソー法のやり方やコツを詳しく知りたい

私たち Study Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

先生方とお話する中で、冒頭のようなご相談をよくいただきます。

この記事では、ジグソー法のやり方を説明しながら、メリットやコツについても解説します。

授業デザインの枠組みとして「ジグソー法」が注目されています。

シンプルに言えば、テーマや課題について、グループ内で役割分担をして調べ学習を行い、自分が調べた内容を教え合います。自分の受け持ったパートを責任もって調べる、他のメンバーに説明することを通じて、学習効果を高められるばかりか、自主的に考える力や積極性、協調性も培われます。

まさにジグソーパズルのように互いの知識を協同学習により埋めていくため「ジグソー法」と呼ばれています。

目次
ジグソー法とは
探究学習におけるジグソーの活用事例
ジグソー法のやり方6ステップ
1.テーマ・課題を設定する
2.グループに分ける
3.エキスパート活動を行う
4.ジグソー活動を行う
5.発表を行う
6.一人で問いを記述する
ジグソー法3つのメリット
1.自主的に考える力が備わる
2.積極的に授業が受けられる
3.協調性が培われる
ジグソー法をやるときの4つのコツ
1.十分な時間を確保する
2.興味を持てる「問い」を用意する
3.エキスパート資料を用意する
4.参加する生徒の不安を取り除く
まとめ

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ジグソー法とは

ジグソー法はテーマや課題について、役割分担をして調べ学習を行い、自分が調べた内容を教え合います。自分の受け持ったパートを責任もって調べる、他のメンバーに説明することを通じて、学習効果を高められるばかりか、自主的に考える力や積極性、協調性も培われます。

グループワークや体験学習と同等の効果が得られるアクティブラーニングの要素を持つのが特徴で、探究学習のプロセスでの活用も期待されています。

アメリカの社会心理学者でありカリフォルニア大学のサンタ・クルーズ校の名誉教授として知られるエリオット・アンソロン氏が提唱した学習方法です。

探究学習におけるジグソーの活用事例

共通のテーマを役割分担して調べ・説明し合うジグソー法は、調べ学習の応用として利用できます。探究においては、探究テーマ・課題の発見、設定段階で活用することができます。

例えば「私たちの地元の隅田川をいつまでもきれいに保つには?」という学校が与えた探究テーマから、生徒が課題を見つける場面を想定しましょう。

隅田川の水質を決める環境要因について調べようと思うと、川の歴史、周辺の産業、指標生物の生息状況など、数多くの調査項目が必要になります。これらを一人一人が調べるのは時間がかかり、効率が悪くなります。自分のあまり興味のない項目は調査に身が入らないこともあるでしょう。

そこで、ジグソー法を使って、調査項目ごとに役割分担して調べ学習を行い、あ互いに説明し合うことで、調査の効率化や、真剣に調査に取り組みことによる知識の定着が見込めます。

参考記事
>【解説あり】高校日本史の探究学習事例4つを紹介(2.知識構成型ジグソー法を活用して「悪女・日野富子」を再評価する)

ジグソー法のやり方6ステップ

次に具体的なジグソー法のやり方を順に見ていきましょう。以下の6ステップがあります。

ジグソー法のやり方
1.テーマ・課題を設定する
2.グループに分ける
3.エキスパート活動を行う
4.ジグソー活動を行う
5.発表を行う
6.一人で問いを記述する

1.テーマ・課題を設定する

まずは調べたいテーマと議題を設定します。テーマが決まれば、この段階で各生徒に思いつくままに意見やアイデアを書き出してもらいましょう。あとで調べ学習をする際の手掛かりになります。先生はあらかじめ専用の記入シートを配っておくと作業効率が上がります。

取り組み例
テーマ「隅田川の水質の変化について」
ブレインストーミング「隅田川について知っていること、水質や周辺環境などに関わることで気になることなどを書き出す」

2.グループに分ける

次に4人1組程度のグループ構成を指示します。1グループの人数が多すぎると、資料の読み込みや説明する時間が相対的に増えて作業効率が悪くなり、逆に少なすぎても十分な学習効果が得られません。

そのためジグソー法では、4人1組程度で構成するのが一般的です。

取り組み例
30人クラスを、5人×6チーム(A~F)にわけた。

3.エキスパート活動を行う

次にエキスパート活動を進めていきます。エキスパート活動とは、各グループで専門家をつくりあげる活動のことです。

グループごとにテーマに関して異なる資料を配布します。このフェーズでは、グループごとにその内容に関して詳しくなってもらうことが目的です。

エキスパートグループで学習する内容は、学習課題を解決するために必要な学習内容を班の人数分で分割したものを用意します。資料を読み終えたあとは、理解を深めるために専門家同士でどのような感想を抱いたのか軽くディスカッションを交わすことが大切です。

先生はグループの机を巡回して、進行の滞っているところがないか確認していきましょう。生徒がエキスパート活動に親しめるよう学びの面でサポートしていきます。

取り組み例
チームごとに以下の資料を配布し、読み込み、チーム内で感想のシェアを行った。チームのメンバーはそれぞれ与えられた資料の専門家(エキスパート)になる。
A:50年間の隅田川の水質の変化
B:隅田川周辺の上下水道の歴史
C:隅田川に生息する水生生物について
D:隅田川周辺の人口の推移
E:隅田川周辺の工業化の歴史
F:日本の代表的な河川の水質調査

4.ジグソー活動を行う

ここで新たにグループを再編成して、今回取り上げているジグソー活動を始めることになります。新しいグループでは先ほどのグループの専門家を1名ずつ配置します。それぞれがエキスパート活動で理解した内容を説明しあってもらいましょう。

エキスパート活動のフェーズと同じく、先生はグループの机を巡回して、進行の滞っているところがないか確認していきます。

最終的に互いの理解が深まったところで、最初に決めたテーマについて改めてまとめてもらうのがジグソー活動です。

取り組み例
再編成されたチームでそれぞれの専門家が、前のチームで学んだことをシェアし合う。質問や意見、テーマについて気づいたことや仮説などをまとめる。

5.発表を行う

ジグソー活動を経て、最後はグループごとに発表をします。先生は発表の順番やルールについて指示を行いましょう。どのような言葉で伝えれば全体に理解ができるか、分かりやすく伝えられるかなども事前に先生が説明しておくと進行がスムーズです。

なお授業の流れによっては、クラス全体で互いの答えと根拠について検討する活動(クロストーク活動)をあわせて行うことで、より高い学習効果が得られます。

発表後、先生はミニッツペーパーなどを配布し最初に立てられた問いを再び考えてもらうようにしましょう。

ミニッツペーパーとは・・・学生に興味・関心や疑問点、理解度などを数分で記入してもらう紙のこと。

6.一人で問いを記述する

最後はグループではなく一人で問いについて記述(リフレクション)をしてもらいます。記述に悩んでいる生徒がいれば、先生は机を巡回して欠かさずフォローを行いましょう。

さらに授業後は生徒へアンケート調査を行うことも重要です。授業の満足度や理解度をヒアリングすることで、次にジグソー法を行うときの改善につながります。

ジグソー法3つのメリット

互いに知識を共有しあうジグソー法、改めてどのようなメリットがあるかを見ていきましょう。ジグソー法のメリットは大きく分けて3つです。

ジグソー法3つのメリット
1.自主的に考える力が備わる
2.積極的に授業が受けられる
3.協調性が培われる

1.自主的に考える力が備わる

座学の授業と違い、ジグソー法は自主的に考える力が備わりやすいのがメリットです。エキスパート活動までは従来の学習と大きな違いはありませんが、その後のジグソー活動では深めた知識を他者にアウトプットしていきます。

定着した知識を第三者に説明できるように進めることで、生徒自身が自分で考えた知識として吸収されていくのです。

2.積極的に授業が受けられる

ジグソー法では、積極的に授業を受けようという姿勢が身につきます。エキスパート活動以降は先生から教えてもらうのではなく、自分で動いていかなければいけないからです。

座学だと発表する機会も少なく、生徒によっては集中力を切らしてしまうこともあるでしょう。ジグソー法では生徒一人ひとりのアクションが必要不可欠で、受け身的では成り立たない学習方法なのです。

3.協調性が培われる

ジグソー法を通じて協調性が培われます。

社会に出ると一人では解決できないことが数多くあります。また意見を柔軟に聞き入れ、相手の気持ちに寄り添うなどすることがあり、協調性は知識以上に必要とされる場面が多くあるでしょう。

ジグソー法で社会に出てからも役に立つ人材を育てられるのです。また話し合いにより他者の話を聞き取れば、新たな気づきも生まれて価値観の違いを理解することもできます。

ジグソー法はそのような力を生徒に身につけさせられる数少ない学習方法と言えるでしょう。

ジグソー法をやるときの4つのコツ

ジグソー法をやるときのコツを知れば、さらに学習効果を高めることができます。

ここでは先生が知っておきたいジグソー法のコツを順番に見ていきましょう。

ジグソー法をやるときの4つのコツ
1.十分な時間を確保する
2.興味を持てる「問い」を用意する
3.エキスパート資料を用意する
4.参加する生徒の不安を取り除く

1.十分な時間を確保する

ジグソー法を行う際は、十分な時間を確保しましょう。グループ分けからエキスパート活動、さらにジグソー活動など全てを行うには多くの時間を必要とするからです。

特に時間をかけるべきはジグソー活動と発表の時間であり、少なくてもそれぞれ30分以上が必要でしょう。テーマ・目的の説明やまとめの時間も考慮すると、ジグソー法を行う際は1時間以上を見積もっておきたいところです。

2.興味を持てる「問い」を用意する

ジグソー法では、生徒が興味を持てるような「問い」を用意することが大切です。生徒が問いに対して「考えてみたい!」「もっと知りたい!」と思えると、その後のエキスパート活動やジグソー活動が楽しくなります。

興味は自主的に考えるときに背中を押してくれる要素であり、「やらされている感」を払拭するものです。

先生は日ごろから生徒の興味や関心を知り、ジグソー法を実施する前に十分な棚卸しをしておく必要があるでしょう。

3.エキスパート資料を用意する

先生はエキスパート資料をしっかり準備しておきましょう。

内容を考えるときは、生徒がすでに持っている知識を考えながら新しく興味や関心の持てるようなものを選ぶのがポイントです。

またグラフや表などを盛り込み、生徒が視覚的に理解できるようなものを選ぶようにしましょう。読みやすく分かりやすい資料を提供することで、限られた時間の中で生徒たちはエキスパート活動での理解を深めやすくなります。

4.参加する生徒の不安を取り除く

先生は参加する生徒の不安を取り除くような心配りが求められます。

ジグソー法は自分の持つ知識を相手に伝えることがメインであり、他者の意見を批判したり討論したりする学習ではありません。これらを事前に周知させておくことで、生徒の「発言を指摘されたらどうしよう」という不安を取り除いてあげることができます。

グループワークやブレインストーミングのように、ジグソー法を行う生徒へは、互いに尊重しあう雰囲気づくりを伝えたり、失敗に対するケアやフォローをしたりすることが大切です。

まとめ

ジグソー法は、生徒がその時間の中で専門家となり他者へ知識を共有するという新しい授業デザインの枠組みです。

テーマや資料を正しく選べば生徒の興味を引き、自主的に考える力の向上が期待できます。

生徒の主体的な学びを促す方法として非常に注目されており、これから始まる探究学習でも応用できるものです。

先生は全ての生徒が積極的にサポートできるように気を配り、学びを全力でサポートしてあげましょう。

参考記事
>【早稲田大学 Tips動画】5分で分かるジグソー法<実践編>
>知識構成型ジグソー法 | 東京大学 CoREF
>Ritori-組織づくり・人材育成のプロフェッショナル向けメディア- – アチーブメントHRソリューションズ
>知識構成型ジグソー法とは?やり方やメリット・デメリットを解説
>知識構成型ジグソー法の本質あるいは今日的意義|金子章予

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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。