探究学習で、主体的・対話的に学ばせるための具体的な仕掛けを知りたい
ワークのレベルを変えて、目指すレベルまで、少しずつステップアップさせたい
私たちStudyValleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。
先生方とお話する中で、冒頭のようなご相談をよくいただきます。
この記事では「主体的・対話的で深い学び」のために研究されてきたアクティブ・ラーニングの手法(ワーク)を、探究学習でどういうときに使えばいいのか?想定使用シーンも合わせて紹介します。
また、アクティブ・ラーニング活動をチェックするための質問リストも掲載していますので、これから探究に取り組む先生は現状を整理するために、探究を実施したことがある先生は振り返りのために、ぜひご活用ください。
この記事の内容
アクティブ・ラーニングの視点とは
難易度別アクティブ・ラーニング活動集
●アクティブ・ラーニング初級編
・活動内容、一問一答、技能実演・模倣、選択回答、自由回答
・想定使用シ-ン
●アクティブ・ラーニング中級編
・制作、実演・発表
・想定使用シ-ン
●アクティブ・ラーニング上級編
・現場実習/インターン、フィールドワーク、政策提言、社会実験・調査
・想定使用シ-ン
アクティブ・ラーニング活動をチェック
・計画段階のチェックリスト
・実施段階のチェックリスト
・実施後の評価段階のチェックリスト
本記事の使い方例
①アクティブ・ラーニングの手法(ワーク)を難易度別に知る
②計画時に実施することをここから選ぶ
例1)課題設定では一問一答を使って生徒の興味を刺激しよう
例2)整理・分析ではマトリックスを使って整理させよう
③探究の過程で生徒の活動を活性化させるために最適な手法を参照する
例)ちょっと行き詰っているから、ピア・ティーチング(それぞれが知っていることを教え合う)を行って、一度、生徒の考えを整理させよう
難易度別に紹介していますので、生徒さんの学習レベルに応じて、上手く適応できる手法を見つけてみてください。
【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
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難しいけどおろそかにできない探究学習
探究学習に限らず、学習の主体はあくまでも生徒です。しかし、教員にも大事な役割があります。科目や指導法に関わらず、学校での学びにおいて教員の役割をおさらいしておきましょう。
1. 学習目標の設定
2. 適切な質問
3. 対話の促進
4. 適切な学習活動の選択と監督
5. 快適な教室環境づくり
6. フィードバックの提供
7. 自己評価の機会の提供
8. 指導の改善
これらはすでに実施されていることだと思いますが、ここからはさらに改善や充実化をするための視点をご紹介します。
アクティブ・ラーニングの視点とは
指導方法や学習活動を見直すときの視点としてアクティブ・ラーニングという考え方があります。
新学習指導要領でも引き合いに出されるアクティブ・ラーニング。これは教員から生徒への一方向的な講義形式ではなく、生徒が能動的に学ぶことを引き出す教育・学習活動のことです。
探究学習とアクティブ・ラーニングの違いと共通点を別記事でも解説しています。
>アクティブラーニングと探究学習の違い・共通点・先行事例の活用方法を解説
アクティブ・ラーニングが起きている場では、生徒は「先生だけ」の話を知識として「聞くだけ」ではなく、「生徒同士」で話し合ったり、実践したり、創造したりして、高い関与度を持って思考とアウトプットを行っています。
このように生徒が能動的に学ぶ姿勢は「主体的・対話的で深い学び」の実現に欠かせません。それを引き出す手段として、アクティブ・ラーニングが注目されているのです。
グループ活動ならすでにやっている、という教員も多いでしょう。でも生徒によってやる気や関与度にばらつきがあったり、生徒同士の諍いがおきたりして、学習以前のところでつまづくことはありませんか?
もしかすると学習内容や生徒のレベルに合わない活動をさせてしまっているのかもしれません。
難易度別アクティブ・ラーニングのワーク集
実はアクティブ・ラーニングと呼ばれる学習活動にも複雑さに応じた難易度があります。能動性や主体性が求められる学習活動に慣れていない生徒ほど、よりシンプルな活動から取り組んで積み上げていくことが肝心です。
グループ活動や問題解決だけがアクティブ・ラーニングの姿ではありません。また、特定の科目にしかできない学び方でもありません。
どんな科目でも、オンラインでも教室でも、個人でもグループでも、広く取り入れやすいアクティブ・ラーニングのワークを挙げてみました。
各活動の設計から実行、そして効果の表出までにかかる時間や評価の相対的難易度で初級・中級・上級に3分類しています。
たとえば初級であるほど単純で基礎的な知識や技能を測る方式が多く、上級に向かうに従って応用的なプロジェクト方式が増えていきます。
また、各種デジタルツール(デジタルメディア、ウェブサイト、集計ツール、文書ツール、メール、チャット、wikiなど)の活用も想定しています。
それでは早速、難易度別のアクティブ・ラーニング活動を見てみましょう。
アクティブ・ラーニング初級編
手軽に試しやすい口頭や筆記、模倣などの方式による学習活動です。個人でもグループでも実施できます。教員や生徒同士による評価や効果測定、フィードバックも比較的簡単です。
単独でも組み合わせでも、通常1時限内で完結させることができます。場所も選びません。
探究学習に応用する場合:探究学習の前半で実施すると自己課題の設定や情報収集になりますし、後半で行うと整理・分析・まとめ・表現の一部にもなりえます。
アクティブ・ラーニング初級編
一問一答 | 口頭試問、ペーパーテスト形式など |
---|---|
技能実演・模倣 | 体験学習、芸術鑑賞など |
選択回答 | ・正誤問題 ・多肢選択問題 ・順序問題 ・組み合わせ問題 ・穴埋め問題 |
自由回答 | ・一文要約 ・短答問題 ・ブレイン・ダンプ(与えられたトピックについて知っていることを全て書かせる) ・不明点(授業で分からなかったことについて書かせる) ・問題作成(生徒自身に問題を作らせる) |
上記と組み合わせて | ・一人でさせる ・ピア・ティーチング(それぞれが知っていることを教え合う) グループで共有・議論・改善提案をする |
想定使用シーン
・体験学習を通じてテーマについて理解する(技能実演・模倣)
・テーマに関する一問一答を作成して生徒の興味を刺激する
・ブレイン・ダンプを行って何を理解していて何が分からないかを可視化する
・まとめ資料をグループディスカッションを通じて作成する
アクティブ・ラーニング中級編
初級よりも丁寧な導入が必要になる制作や実技などの方式による学習活動です。個人でもグループでも実施できます。
ここでは、身につけた知識や技能を生徒なりに再構築したり、アウトプットに関する議論をしたり、フィードバックをし合ったりします。
学校内でできますが、1時限内で達成できる質量には限界があります。
教員は導入時に学習目標や成果物のイメージをわかりやすく提示し、途中で補助的な問いかけやフィードバックを求められる場面も出てくるでしょう。学びの効果測定は成果物や実技で判断します。
探究学習に応用する場合:探究学習のステップでいう「整理・分析」や「まとめ・表現」の段階と相性がいいです。また、この活動自体が次の探究学習サイクルの課題設定や情報の収集の足がかりにもなりえます。
アクティブ・ラーニング中級編
制作 | ・分類表、マトリックス、概念図(コンセプトマップ)、模型 ・エッセイ、小論文、論説文 ・研究レポート、研究論文 ・実験レポート、観察記録 ・物語、脚本、詩、曲、絵画 ・新聞、歴史新聞 ・ウェブサイト、日誌 ・動画、アニメーション ・プログラミング ・ポートフォリオ |
---|---|
実演・発表 | ・ロールプレイ、シミュレーション、ケーススタディ、演習 ・朗読、口頭発表、プレゼンテーション、報告会 ・グループでの話し合い、ディスカッション、ディベート ・実験・調査の計画・実施・報告 ・演劇、ダンス、演奏、美術作品 ・ゲーム対戦やスポーツ試合 |
想定使用シーン
・上記表から「まとめ・表現」の手法を選ばせる
・最終発表までに複数回、発表の場を設けてフィードバックを行う
・成果のウェブサイト公開を目指し、その準備も含め探究過程とする
アクティブ・ラーニング上級編
最後にご紹介する上級の活動は、より現実に近いプロジェクト型の方式です。生徒に期待される知識や技能の応用レベルは格段と上がります。
これまで蓄えてきた知識や技能を実践的・社会的な文脈で試し、使いこなせるようになることが目的です。トライアンドエラーをするために一定の期間と準備も必要になります。
評価軸は知識の正誤や技能の習得度合いではなく、課題の解決や目標の達成とそのためのプロセスに比重が置かれます。
教員は補助をしながらでも、少しずつ生徒自身に任せる部分を増やしていきます。社会現場やインターネット上など、学校の枠を超えて実施することが前提になります。
探究学習に応用する場合:このレベルでは、生徒自身が探究学習のサイクルを自ら回し続けるようになります。
アクティブ・ラーニング上級編
現場実習・インターン | 1日~長期に渡って学校外で活動する |
---|---|
フィールドワーク | 課外活動、修学旅行などと組み合わせることも |
政策提言 | 実際に自治体や地元議員へプレゼンテーションを行うことができれば落ちベーションが上がる |
社会実験・調査 | 専門知識のレクチャーができるとベター |
商品開発・販売 | 地元の企業・商店街などと連携し、商品開発をする例などがある |
このように、一口にアクティブ・ラーニングといってもその手法や難易度は様々です。
上級に向かうほど、生徒にかかる負担は大きくなります。でも活動の複雑さや難易度が上がるほど学習内容も定着しやすくなりますし、その過程で「学びに向かう力」も養われます。
アクティブ・ラーニング活動をチェック
アクティブ・ラーニング活動が学習内容や目標に適していないと学習効果は期待できませんし、なにより教員も生徒も辛いです。そこで、実際に活動を選択して授業計画に落とし込むときに確認すべきポイントをチェックリストにしました。
チェックリストの質問に回答することで、これから探究に取り組む先生は現状を整理することができます。また、探究を実施したことがある先生には、学習の振り返りになります。ぜひご活用ください。
計画段階のチェックリスト
□最も重要な内容や学習目標はなんですか?また、この活動はそれをどのようにサポートしますか?
□活動内容のベースとなる既存の教材はありますか?
□良い議論を生みそうなテーマですか?
□生徒はどこでつまづきそうですか?
□活動を通して生徒が自分で解決したり克服できることはありますか?
□個人では難易度が高くても、グループなら実現できそうですか?
□生徒は、自分がなにかの専門家になることを実感できそうですか?
□実社会や生徒の関心事に結び付けられそうですか?
□内容や活動が興味深く、重要であることが伝わりますか?
□決められた手順に従うだけでなく、意思決定や自己説明を促すような内容ですか?
□内容は、生徒の最終評価に関わる課題と関連していますか?
□新しいフレームワークや技法など、生徒が新しい表現方法を試せますか?
□生徒が事前にできる準備はありますか?(読書課題や質問集など)
実施段階のチェックリスト
□生徒が何を期待されているかを明確に伝えられていますか?
□各グループの関与の度合い、相互作用、進捗状況などを観察していますか?
□特定のグループに時間をかけすぎたり、おろそかにしたりせず、必要に応じて手助けをしていますか?
□活動を振り返る時間を設けて、重要な発見やアイディアを全体で共有していますか?
□生徒が質問をするための時間を設けていますか?
□生徒の提出物から生徒の考え方や苦労を発見できますか?
□生徒同士の議論を喚起できますか?
□活動は適切な時間枠で切り上げていますか?
□生徒は活動に集中して取り組めていますか?
□グループ活動から排除されている生徒はいませんか?
実施後の評価段階のチェックリスト
□生徒は要求されたことを理解していましたか?不満はありませんでしたか?
□生徒たちは、教員が考えていたような方法で取り組んでいましたか?難易度を調整する必要はありますか?
□生徒は学習内容を習得しましたか?
□生徒は楽しんでいましたか?
□なにか驚くような発見や気付きはありましたか?
□この結果を踏まえて、学習内容や目標を修正する必要はありますか?
早速やってみましょう
この記事では、授業で「主体的・対話的で深い学び」を実現するための改善の視点としてアクティブ・ラーニング活動例とチェックリストをご紹介しました。
探究学習に限らず、あらゆる科目にも指導法にも応用できます。すでに実践していることに掛け合わせて、より質の高い深い学びを実現していきましょう。
他にも探究学習やアクティブ・ラーニングに関する記事を書いていますので、参考にしてみてください。
>探究学習の年間スケジュールと授業の内容を詳細解説
>探究学習の単元計画・学習指導案作成の手順を7ステップで解説
>探究の年間指導計画の作り方を作成手順から事例まで解説
参考文献:
>”In-Class and Worksheet Activities”. Carl Wieman Science Education Initiative. (accessed 2022-02-18).
>”Learning Types – Acquisition”. UCL. , (accessed 2022-02-18).
>Limbach, Barbara et al. Become A Better Teacher: Five Steps in the Direction of Critical Thinking . Research in Higher Education Journal . 2008. , (accessed 2022-02-18).
>Van Amburgh, Jenny A. et al. A Tool for Measuring Active Learning in the Classroom. American Journal of Pharmaceutical Education. 2007, 71(5). , (accessed 2022-02-18).
>佐藤浩章編. 高校教員のための探究学習入門: 問いからはじめる7つのステップ. ナカニシヤ出版, 2021.
>文部科学省. “2.新しい学習指導要領等が目指す姿”. 文部科学省. , (参照 2022-02-18).
>文部科学省初等中等教育局教育課程課. “教育課程部会 教育課程企画特別部会(第14回) 配付資料: 資料2 教育課程企画特別部会 論点整理(案) 補足資料(4)”. 文部科学省. , (参照 2022-02-18).
>文部科学省. 高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説: 総合的な探究の時間編. 2018.
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。