近年、CSRやSDGs、ESGといった用語をよく耳にしませんか?
企業活動において必須といわれ、気になっている企業の方も多いですよね。しかし、
各用語の定義と違いが分からない
企業活動でなぜ大切なのか知りたい
といった悩みもあるでしょう。
そこで、ここでは以下の内容についてご紹介します。
- CSR SDGs ESGの定義と違い
- 企業がCSR SDGs ESGを重視すべき理由
- 持続的な社会実現のために企業がやるべきこと
この記事を読めば、企業の強みを活かして社会に貢献するヒントが見つかるので、ぜひ参考にしてください。
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CSR SDGs ESGのそれぞれの定義
ここでは各用語の定義と具体例、メリットについて紹介します。
CSRとは?
CSRとはCorporate Social Responsibirity の略称で、企業の社会的責任を意味します。
企業は利潤追求のためだけでなく、社会の一員として責任を果たすべきという考えです。
CSRの目的はお客様や取引先、社員などのステークホルダー(利害関係者)と良い関係を築いて経営することといえます。
具体的には、以下の観点でCSR活動が実施されています。
- コンプライアンス(法令順守)
- 地域貢献(地元の清掃活動や施設見学など)
- 環境保全(エコフレンドリーな商品の開発、廃棄物のリサイクルなど)
- 人権の尊重(啓発教育、男女間の賃金格差の是正など)
CSR活動のメリット3つ
CSR活動には、主に3つのメリットがあります。
一つ目が、自社のイメージアップにつながることです。
例えば、大手電機メーカーのキヤノンでは、医療現場の人材不足を解決するために、患者と医者の負担を減らせる医療マシンの開発に力を入れています。そのため、医療に優しいメーカーとしての地位を確立しつつあります。
>CORPORATE SOCIAL RESPONSIBILITY REPORT 2019
二つ目は、ステークホルダーとの関係強化です。
社会問題への意識が高まっているため、CSRをないがしろにすると取引先やクライアントとの関係が悪くなる可能性があります。
過去には、有名なスポーツメーカーが発展途上国の労働者を劣悪な環境で働かせていたことの是非を巡って、世界的な不買運動が起こりました。そうなれば、ステークホルダーとの関係にも悪影響を及ぼすでしょう。
CSRに力を入れることは、ステークホルダーとの長期的な関係を築くうえで不可欠です。
>米ナイキが苦難の末に学んだ、CSRとは(東洋経済オンライン)
三つ目は、社員のモチベーションアップです。
なぜなら、CSR活動は自分たちが社会の役に立っているという実感を得やすいからです。例えば、地域の清掃活動に参加すれば、社会貢献を肌で感じられるでしょう。例えば、小中学校で出前授業を行うことが、従業員自身に自社の存在意義を改めて意識させることにつながり、従業員満足度が向上した事例もあります。
>村田製作所「せんせいロボット」の教育効果(東洋経済オンライン)
このように、CSR活動は従業員の士気向上にも有効なのです。
SDGsとは?
SDGsとはSustainable Development Goalsの略称で、和訳すると「持続可能な開発目標」を意味します。2030年までに持続可能なより良い世界を実現するために、国連で策定されました。
SDGsは、貧困撲滅や環境保護、不平等の解消など17の項目に分けられています。国際的な目標と聞くと縁遠くきこえるかもしれませんが、私たちにとっても決して無関係ではありません。
例えば、日本は多くのエネルギーを海外に依存しているため、世界情勢に大きく左右されます。2022年1月現在、ウクライナ情勢に起因するLNG(液化天然ガス)の高騰で、電気料金が大幅に値上がりしました。
日本もSDGsは他人事ではなく、積極的に取り組むべき課題といえます。
企業がSDGsに力を入れるメリットは、経営改善のチャンスになることです。
実際の成功事例を挙げますね。
- 自動車の中古部品を板金修理に活用。この企画を大手レンタルリース会社に提案し、販路を拡大
- 鉱石資源保全のために中古工具のフランチャイズを展開した企業が、300万円以上の黒字化に成功
- 食品会社が、豆腐を生産する際に発生する廃棄物を活用するために、地場産業者とタイアップ商品を企画。経営の黒字転換に成功
SDGsと聞くと、社会貢献のために収益を後回しにする必要があると思いがちですが、そんなことはありません。
概念をしっかり理解すれば、新たなビジネスチャンスにつながります。
さらに、SDGsが社会貢献と利益の両立が可能と分かれば、社員のモチベーションも各段に上がるでしょう。
社会貢献と利益向上、そして社員のモチベーションアップを全て実現するうえで、SDGsは有効といえるのではないでしょうか。
ESGとは?
ESGとはEnvironment Social Governance の頭文字を取った略称です。企業投資の新しいベンチマークとして注目され、ESGに関連した投資はESG投資と呼ばれています。
ESG投資は、国連がPRI(責任投資原則)を提唱したことから注目されるようになりました。PRIとは、企業を長期的な目線で評価するために、環境対策や社会問題などを考慮して投資先を選ぶように促すというルールです。
日本でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名してから、ESG投資への関心が高まりました。
ESG投資には、主に次の7種類があります。
- ネガティブ・スクリーニング(武器商売、薬物などモラルに反する企業の除外)
- ポジティブ・スクリーニング(環境や人権などESGテーマとしてスコアが高い企業を推奨)
- 規範に基づくスクリーニング(国際的なESG基準に達していない企業を除外)
- ESGインテグレーション型(財務情報とESGなどの非財務情報を総合的に加味)
- サステナビリティ・テーマ投資型(再生可能エネルギーや水処理など)
- インパクト投資型(社会・環境に関するサービス・製品を扱っている企業への投資)
- エンゲージメント・議決権行使型(投資家と経営層が対話してESGへの投資を促す)
ESGに注力するメリットは、投資家からの信頼を得やすいことです。
ESGはSDGsを達成するためにも必須と言え、ESGに従ったビジネスを展開(ESG経営)すれば投資家からの積極的な投資を見込めます。
そして、ESG投資で得られた資金でSDGs関連事業を拡大すれば、自社の評価も高くなり、さらに投資家からの評価も上がるという好循環が期待できます。
CSR SDGs ESGの違いと共通点
これらの用語の定義とメリットなどについて紹介しました。
ここでは各用語の違いを、一番馴染みがあると思われるCSRを基軸に解説します。
CSRとSDGsの違いと共通点
CSRとSDGsは語られる視点と、責任を果たすべき対象の範囲が異なります。
CSRは「企業の社会的責任」と訳されるように、企業視点で取り組むべき内容が決められています。そのため、ステークホルダーを意識した取り組みやスローガンが掲げられています。
一方SDGsは、国連が定めた17の目標に従い、国際社会が足並みを揃えてサステナブルな社会を実現しようという考えです。そのため、果たすべき責任の対象は地域社会や株主など企業にとって身近な存在だけでなく、地球社会すべてといえます。
企業においては、会社としてのSDGsへの取り組みをCSR部門が担う、CSR活動の一つとしてSDGsを選択する、ということが考えられます。
活動の主体 | 対象 | |
CSR | 企業 | ステークホルダーが中心 |
SDGs | 全ての人 | 地球社会のすべて |
CSRとESGの違いと共通点
CSRとESGの大きな違いは「投資家の視点」があるかないかです。
ESGは、投資家が財務情報以外の情報で企業を評価する判断材料として使われているため、投資家の視点が常に意識されます。
投資家が「これからどの企業がサステイナブルな社会を実現していくか」を判断するうえで、もっとも重要視される指標がESGです。
企業側としても、CSRだけでは投資家の信頼を得るのは不十分です。ESGを基に、投資家向けの非財務情報も充実させるべきといえます。
目的 | |
CSR | 事業の強みを活かし、ステークホルダーを中心に、企業の社会的責任を果たす |
ESG | 持続可能な社会に貢献することを通じて、投資家に非財務的指標を与える |
企業がCSR SDGs ESGを重視すべき理由
CSR SDGs ESGそれぞれの定義と用語間の違いについて解説しましたが、なぜここまでこれらの取り組みが重要視されているのでしょうか?
ここでは企業がCSR SDGs ESGを重視すべき理由を3つ紹介します。
- 続出する企業の不正
- 急速な環境破壊
- 投資家への啓発
実例も交えながら解説します。
続出する企業の不正
CSRの観点から解説します。
CSRが注目される大きな要因の一つが、続出する企業の不正です。自社の収益を重視するあまり、過去にさまざまな事件が発生しました。
- 食品の産地偽造(偽のブランドラベル貼り付けなど)
- 検査データの改ざん(耐震偽装事件、列車の検査基準値を偽証報告など)
- 生産活動による環境破壊・・・四大公害病(水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく)など
- 反社会勢力の悪用(暴力団を使ったライバル会社の排除など)
これらの問題は今でも解決されていませんし、企業内でも、サービス残業やセクハラ、パワハラなどの問題がたびたび取り上げられています。
持続可能な社会の実現に向けて、企業が社会の一員であることを意識するためCSRがより重要視されています。
急速な環境破壊
急速な環境破壊が世界的な問題になっているのも、SDGsやCSR、ESGが重視されている背景の一つです。
日本国内だけでなく、世界的に見ても企業活動による環境破壊は深刻さを増しています。
- 森林伐採による砂漠化
- 工場用水の排出による酸性雨の発生
- 地下水の過剰な汲み取りによる地盤沈下
- 排気ガスが原因の大気汚染
SDGsにも掲げられているように、環境保全を無視した企業活動を続けると会社の長期的発展は望めません。
例えば、化石燃料にずっと頼りきりだと、いずれエネルギー問題に直面することは目に見えています。材木が必要だからといって森林伐採を続けていては、永続的な材木の確保は難しくなるでしょう。
それだけではありません。環境問題に疎いまま経営を続けると消費者からも厳しい制裁を受けることになりかねません。
2018年にイギリスの大手ファッションブランドが、自社のブランド価値を維持するために新品を一斉に焼却処分したことで世界的な非難を受けました。この騒動は不買運動にまで発展したのです。
そうなれば、購買需要が下がるだけでなく取引先との関係も悪化するでしょう。
このように環境破壊を伴う企業活動は、あらゆる面で企業の長期的な発展を妨げるため、CSR、SDGs、ESGが重視されるのです。
投資家への啓発
投資家への啓発も、企業が持続可能な社会を実現するうえで欠かせなく、とりわけESGは重要視されなければいけません。なぜなら、投資家が財務情報だけを頼りに投資先を選ぶと、経済に悪影響が出るリスクがあるからです。
2008年に発生したリーマンショックは、投資家が短期利益を追求した結果として起こった金融危機といえます。
他にも、経営成績だけで投資先を選ぶと、長期的にみてリスクを被ります。
- モラルに反したビジネスが原因で不買運動が起こる
- 環境保全をないがしろにして、国や消費者から厳しい制裁・批判を受ける
このような事態に直面すれば、たとえ短期的に好調でも、長期的に見れば株価の急落や、最悪の場合、倒産の可能性もあります。
企業は財務情報だけでなく、環境や社会問題への取り組み、企業統治など、収益にとらわれない取り組みも開示して、投資家への啓発も促す必要があるのです。
持続的な社会実現のために企業がやるべきこと
企業が持続可能な社会を作るうえで、CSR、SDGs、ESGの大切さを解説しました。
しかし、具体的にどう取り組めばいいのでしょうか?
ここでは、持続可能な社会の実現に向けて企業がやるべきことを2つ紹介します。
企業の強みと事業領域を活かす
CSR、SDGs、ESGは、ただ格好だけ取り繕えばいいというものではありません。安易にお題目だけを掲げて何もしないことは「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」と呼ばれ批判されます。例えば、次のような例です。
- 実体を伴わない、もしくは成果を伴わない活動
- 具体性がないスローガンを掲げているだけ
- 一部の環境保全活動を誇大に宣伝
そして、施策を立てる際は、自社の強みと事業領域と関連付けることが望まれます。そうすることが、より自社のイメージアップとブランディングにつながるからです。
大企業の例を挙げます。
富士通はSDGsの第3目標である「すべての人に健康と福祉を」を実現すべく、以下の取り組みをしています。
- コロナウイルスの感染状況を把握するため、自治体の窓口にチャットボットを設置
- スーパーコンピューターを用いた飛沫感染シミュレーション
この取り組みのおかげで、富士通は自社のパーパスである「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」を達成しつつあります。
このように、会社の強みを活かして適切な施策を展開すれば、自社の信頼度は格段に上がるといえるのではないでしょうか。
未来の人材に投資する
未来の人材へ投資、すなわち「教育」に力を入れることも企業が持続的な社会を実現するうえで欠かせなく、とりわけ「教育CSR」は重要視されています。
教育CSRとは、企業が社会の一員として学校教育に参加することです。
具体的には、以下のような取り組みが当てはまります。
- 学校への講師派遣
- 職業体験の受け入れ
- 工場・事業所見学の実施
- 授業で使える教材の開発
小学校、中学校では「総合的な学習の時間」、高校では「総合的な探究の時間」が実施され、「環境」「地域貢献」「国際理解」など、生徒の興味・関心に基づきさまざまなテーマが扱われています。
従来のカリキュラムだけでは学べないテーマも多いため、企業や自治体などの外部組織の協力が期待されています。
そこで、企業ならではの強みを活かして学校教育に参加すれば、子供の成長に大きく貢献できるでしょう。
また企業側としても、社員が自社の理解を深める絶好の機会になります。
このように、教育CSRは未来の人材である子どもと、社員教育の両面で期待できるといえます。
まとめ
この記事では、CSRとSDGs、ESGそれぞれの定義と用語間の違い、企業がこれらの取り組みを重視すべき理由等について紹介しました。
繰り返しになりますが、企業が収益だけを優先していい時代は終わりました。これからは社会の一員として、果たすべき責務がたくさんあります。
ただし、これらの用語の意味を正しく理解せず、場当たり的な施策を立てると返って世間から非難を浴びる可能性があります。
ですが、企業の強みを活かして持続可能な社会の実現に貢献できたら、企業の長期的な発展が期待できるでしょう。
もし、施策の方向性に迷ったら。ぜひこの記事を読み返してみてください。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。