探究学習の担当になったけど、何をすればいいんだろう?
いつも直前に準備してバタバタなんだよね。次はちゃんと計画的にやりたい
私たちStudyValleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。
先生方とお話する中で、冒頭のようなご相談をよくいただきます。
この記事では探究学習の計画・実施に携わる先生向けに、探究学習の計画、実施まで、年間スケジュールのサンプルをご紹介しながらポイントを解説します。
計画を作成する上では、1時間ごとの授業イメージが頭にあることが必要です。Study Valleyはこれまで計画作成に関する基本的な考え方を紹介する記事を書いてきました。
計画に関する参考記事はこちらです。
>探究の全体計画作成方法とそれに欠かせない7つの要素
>探究の年間指導計画の作り方を作成手順から事例まで解説
>探究学習の単元計画・学習指導案作成の手順を7ステップで解説
この記事ではさらに踏み込んで「1年間・20時間をかけて企業と連携して地域探究を行った事例」を元に、1時間ずつなにを行ったかを細かく見ながら解説します。
また、20時間はそれぞれ探究学習プロセスである「①課題設、②情報の収集、③整理・分析、④まとめ・表現」に対応していますので、各学校で探究に割り当てられた時間数に応じて、どのプロセスに時間をかけるかなど、この記事の事例を元に応用していただけると思います。
まず、探究事例の概要と年間の大まかなスケジュールをご覧ください。
◆探究テーマ:企業と連携して地域の課題を探究する
◆探究のゴール:区の担当者を前に「地域の魅力創生オリジナルプラン」のプレゼンを行う
◆年間スケジュール
事前準備(~3月)
・ゴールを決めて逆算する
・評価方法を決める
1学期(4~7月/6時間):課題設定~情報の収集①
・企業から出されたテーマを探究
夏休み(8月)
・課題レポート
2学期(9~12月/8時間):整理・分析①~まとめ表現①
・企業への探究成果発表を行う
冬休み(12~1月)
・課題レポート
3学期(1~3月/6時間)情報の収集、整理・分析②~まとめ表現②
・2学期までの探究の成果を「地方の魅力創生オリジナルプラン」へアップデートする
・区の担当者への探究成果発表を行う
それでは、学期ごとに、どのように探究を進めていったかを解説していきます。
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当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
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年間計画の全体像(全20時間)
探究プロセス | 時間 | なにをやったか |
課題設定 | ①ガイダンス | 1年間の流れや目標を説明。企業からのテーマを発表。グループ決めのためのアンケート |
②グループ発表 | アイスブレイク&チームビルディングワーク | |
③課題設定、調べ方ワークショップ | 調査計画を立て、進め方を話し合う | |
情報の収集 | ④グループ調査 | グループごとに調査を開始 |
⑤グループ調査 | グループごとに調査 | |
夏休み | 課題レポート | |
整理・分析 | ⑦まとめ方ワークショップ | まとめ方についてグループで話し合う |
⑧グループ調査 | グループごとに調査 | |
⑨グループ調査 | グループごとに調査 | |
まとめ・表現 | ⑩発表の仕方ワークショップ | 発表の仕方についてグループで話し合う |
⑪まとめ作成 | グループごとにまとめの作成を行う | |
⑫まとめ作成 | グループごとにまとめの作成を行う | |
⑬発表練習 | グループごとに発表の練習を行う | |
⑭全体発表会、企業講演 | 連携企業へ発表会を実施 | |
冬休み | 課題レポート | |
情報の収集、整理・分析② | ⑮ローカライズワークショップ | 2学期までに調べた内容をどうローカライズさせ、オリジナルプランを作るかをグループで話し合う |
⑯グループ調査 | グループごとに調査を行う | |
⑰グループ調査 | グループごとに調査を行う | |
まとめ・表現 | ⑱最終プレゼン準備 | 最終プレゼンの準備を行う |
⑲クラス内発表会 | 最終プレゼンに進むグループの選定を行う | |
⑳最終プレゼン発表会 | 区の担当者等を招いて最終発表会を実施 |
事前準備(~3月)
計画スケジュール作成でポイントなのは、探究テーマ等についてはもちろんですが、探究の最終目標である「まとめ・表現」について、何をするのか決めておくことです。
最終目標のイメージを固めてそこから逆算する
発表形式や成果物のフォーマットが決まっていれば、そこから逆算してスケジュールやタスクを決めていけるからです。
例)ポスター発表をしよう
↓
ポスターのサイズは?
なにを書くか、どんな写真・イラストを載せるか?
会場はどこにするか?(教室?体育館?)
誰を呼ぶのか?(クラス内で?学年で?他の学年と合同?外部の人も招待する?)
↓
まとめ作業はいつから始めればいいか?
そのために整理・分析はいつまでに終わらせなければならないか?
フィールドワークを行う場合はいつごろにしなければならないか?アポイントはいつまでに必要か?
・・・
という風に、ゴールから逆算することでスケジュールやタスクを決めていくことができます。
外部連携先と打ち合わせを行っておく
この事例では外部企業、自治体と連携を行っています。年度が始まる前に、どのように連携するのか、どういう役割分担をするのかを決めます。
ポイントを挙げるとすれば、探究の目的を理解してもらうこと、どういう関わり方をしてほしいかを伝えることです。
外部連携についての詳細はこちらの記事もご覧ください。
>【前編】徹底解説!探究学習の外部連携に必要なことは?連携のパターン、メリットについて
>【後編】徹底解説!探究学習の外部連携とは?連携時のポイント、連携先の探し方、事例について
評価方法を決める
評価方法を決めます。評価は学校の全体計画や、探究を通じて目指すべき生徒の姿などから逆算して決めていきます。
探究においては、ルーブリックを用いて、リフレクションの記録や成果物などを含めたやポートフォリオ評価を行うことが一般的とされます。
評価は生先生と生徒、保護者などの間で能力・資質を可視化し、目指すべき方向を共有できるメリットもある反面、評価の外にある生徒の成長を取りこぼしてしまう、評価をつける先生の負担が増えるなどのデメリットもあります。
したがって、探究したいという生徒の動機づけを重視するなどの理由から、あえてルーブリックによる資質や能力の細かい評価は行わないという方針を取ることもあり得ます。
参考記事
>探究学習の評価方法を紹介。特徴、メリット・デメリットも
>探究学習で使える「ポートフォリオ評価」の重要性と実施のポイントについて解説
>探究学習におけるルーブリック評価の重要性と作成の手順・注意点を解説
1学期(4~7月/6時間):課題設定~情報の収集①
それでは具体的に1時間ごとの割り振りを見ていきます。1学期には6時間を使って、ガイダンス、課題設定~情報の収集を行いました。
1~3時間目:課題設定
①ガイダンス:1年間の流れや目標を説明。企業からのテーマを発表。グループ決めのためのアンケート
探究テーマは生徒が自分で見つけるパターンもありますが、今回は企業が実際に向き合っている課題をテーマにすることで、より深い学びにつなげる狙いです。
今回は、地元の飲食フランチャイズ企業がテーマを提供してくれました。
テーマ例
・店舗から出る食材ロス率を20%下げるために必要なことは?
・地元で人材を確保するためにはどうすればいい?
・高校生を施設に呼び込むための施策を考えよう!
・高校生がやりがいを持ってアルバイトできる環境とは?
テーマについては企業側と事前に打ち合わせが必要です。企業が実際に抱えている課題や、高校生世代に関係するテーマを選ぶことで、生徒、企業ともにやりがいのある探究になります。今話題のSDGsと絡めるなどの工夫もあります。
②グループ発表:アイスブレイク&チームビルディングワーク
探究のプロセスではブレインストーミングやグループディスカッションなど、グループでの作業が多くあります。時には意見がぶつかったり、議論が煮詰まることもあります。そのようなときdめお安心してグループワークが行えるよう、1時間を使ってアイスブレイク&チームビルディングワークを行います。
③課題設定、調べ方ワークショップ:調査計画を立て、進め方を話し合う
テーマを元に課題を考えます。課題は途中で変えることもできますが、それまdねおプロセスがやり直しになり、時間が足りなくなる恐れもあるので、十分時間をかけて行うことをお勧めします。
テーマ別課題アイデア例
・店舗から出る食材ロス率を20%下げるために必要なことは?
→賞味期限の長い食材を中心にした新定番メニューを考案する
・地元で人材を確保するためにはどうすればいい?
→地元出身者が働きたくなる施策を考える
・高校生を施設に呼び込むための施策を考えよう!
→高校生向けキャンペーンを提案する
・高校生がやりがいを持ってアルバイトできる環境とは?
→高校生がアルバイトに求めるものを調査、それを踏まえた求人ポスターを作る
4~6時間目:情報の収集
④~⑤グループ調査:グループごとに調査を開始
情報の収集にもいろいろな選択肢があります。インターネット検索のポイント、論文や書籍の調査方法、情報の信頼性について(メディアリテラシー)などのレクチャーを元に、グループで調査計画を立て、調査を進めます。
先生はグループを回って、順調に進んでいるかどうかを確認し、行き詰っている場合は声掛けをして、調査方法のアドバイスを行ったり、議論を進めるサポートを行います。
参考記事
>探究学習の情報の収集方法12パターンを解説
>探究学習「情報の収集/整理・分析」に使えるリンク集【無料】
>メディアリテラシー教育参考サイト5選!この能力の必要性や探究学習との関わりも解説
>「教えない」ファシリテーションが探究学習成功のカギ
⑥企業講演:連携企業の講演を実施
この事例では、夏休みを前に企業に講演を依頼しました。
講演内容は1学期の探究へのフィードバックを中心に行いました。このほかにも進捗に応じて企業の地域でのこれまでの取り組みを伝えたり、過去に成果を上げた施策や上手く行かなった施策を紹介するなど、生徒の探究の刺激になる内容を講演してもらうなどが考えられます。
夏休み(8月)
この学校では夏休みの自由課題として経済産業省の「STEAMライブラリー」から教材を一つ選んで視聴し、レポートを作成する課題に取り組みました。
STEAMライブラリーは経済産業省「未来の教室」プロジェクトが提供するSTEAM教育の教材プラットフォームです。2021年時点で86ものコンンツがあり、ベネッセ、JAL、早稲田大学など有名企業や教育機関がコンテンツ提供事業者として多数参画しています。
この他にも探究に関わる課題であれば、個人で情報収集を進める、個人テーマを設定して個人探究するなどのバリエーションが考えられます。
2学期(9~12月/8時間):整理・分析①~まとめ表現①
7~9時間目:整理・分析①
7~9時間目は、情報の整理・分析を中心に行います。
⑦まとめ方ワークショップ:まとめ方についてグループで話し合う
整理・分析へ進む前に、まとめ方についてのガイダンスを行い、まとめ方を決めます。
なぜ、まとめ方を先に決めるのでしょうか。
例えば、プレゼンには、主張を伝えるために効果的なフォーマットがある程度決まっています(ex:結論→理由→具体例→再度、結論(PREP法))。ポスター発表でも、必ず伝えなければならない項目があるでしょう。レポートや論文にはもっと厳格な構成のルールがあります。
先にまとめ方を決めることで、成果物のフォーマットが決まり、そこにどんな情報をどのくらい載せるかも決まります。つまり、この次に取り組む、集めた情報をどのように分析して整理するかというプロセスで行うことが決まるのです。
⑧~⑨グループ調査:グループごとに調査
1学期の最後に企業からもらったフィードバックをもとに、再度調査を行います。
先生はグループを回って、順調に進んでいるかどうかを確認し、行き詰っている場合は声掛けをして、調査方法のアドバイスを行ったり、議論を進めるサポートを行います。
10~14時間:まとめ・表現①
2学期末に企業担当者の方を前に行う、最初の発表会へ向けて探究を進めます。
⑩発表の仕方ワークショップ:発表の仕方についてグループで話し合う
プレゼンのやり方などについてレクチャー、役割分担などをグループで話し合います。
⑪~⑫まとめ作成:グループごとにまとめの作成を行う
探究の結果をまとめ、プレゼン資料を作ってきます。
⑬発表練習:グループごとに発表の練習を行う
発表練習を行います。次回はいよいよ発表本番です。
⑭全体発表会、企業講演:連携企業へ発表会を実施
企業担当者を招いて、発表会を行います。生徒へのフィードバックは冬休み中に企業に作成をお願いします。
冬休み
冬休みにも「STEAMライブラリー」を用いたレポートを課題にしました。今回は、3学期に取り組むことを踏まえて、「地域」に関する教材に限定して、視聴しました。
地域の課題を学べる教材例(STEAMライブラリー)
>地方創生はあなたのまちを救えるか?(株式会社YMFG ZONEプラニング)
>防災教育〜災害に対してどのように向き合うか〜(海城中学高等学校)
この他にも探究に関わる課題であれば、個人で情報収集を進める、個人テーマを設定して個人探究するなどのバリエーションが考えられます。
3学期(1~3月/8時間)情報の収集、整理・分析②~まとめ表現②
15~17時間目:情報の収集、整理・分析②
⑮ローカライズワークショップ:2学期までに調べた内容をどうローカライズさせ、オリジナルプランを作るかをグループで話し合う
2学期末に行った企業からのフィードバックを元に、探究の成果を地域の魅力創生にどう活かすのかをグループで話し合います。最終目標である、区の担当者へのプレゼンを目指して、再度、探究していきます。
このケースは、2学期の最後に発表、3学期の最後にさらにアップデートされた探究成果を発表するという構成になっていますが、年度の最後に一度だけの発表にすることももちろん可能です。
複数回、発表の機会を設けると、それだけ生徒が探究のプロセスに慣れることができる、最初のフィードバックをもとに、二回目の探究サイクルをまわせるため、より深い探究になるなどのメリットがあります。
⑯~⑰グループ調査:グループごとに調査を行う
先生はグループを回って、順調に進んでいるかどうかを確認し、行き詰っている場合は声掛けをして、調査方法のアドバイスを行ったり、議論を進めるサポートを行います。
18~20時間目:まとめ・表現②
⑱最終プレゼン準備:最終プレゼンの準備を行う
探究成果の総仕上げを行います。
⑲クラス内発表会:最終プレゼンに進むグループの選定を行う
クラス内で発表を行い、最終プレゼンに進むグループを決めます。
この事例では時間等の都合で選抜を行いましたが、もちろん、このクラス内発表をリハーサルとし、すべてのグループを最終発表に出場させることもできます。
⑳最終プレゼン発表会:区の担当者等を招いて最終発表会を実施
探究の集大成となる、最終の発表です。外部の方を招いて行うことで、生徒にはプレッシャーもありますが、それだけに大きな達成感を得ることができます。
最終成果物はフォローしてくれた企業にも共有し、最終のフィードバックをもらいます。
最後に生徒は振り返りを行います。
まとめ
1年間・20時間をかけて企業と連携して地域探究を行った事例を元に、探究学習の1年間を解説してきました。
1時間ずつ細かくたことで、授業で何を行うか、先生が何を準備すればいいか、具体的なイメージをつかんでいただけたのではないかと思います。
学校ごとに探究に充てられる時間数や、協力を依頼できる外部のパートナーなどリソースは異なると思いますが、これを一つのサンプルとして、
・主体性を重視したいから課題設定に時間を割こう
・まとめが苦手だから、まとめ方の講義に時間を使おう
・論文を書かせたいから論文添削のための指導を手厚くしよう
・多様な意見に触れさせたいから、発表には他の学年や地域の関係者にも観覧してもらおう
など、学校それぞれの事情や、生徒の学習レベル、期待する生徒像などに合わせてアレンジしてみてください。
【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
現在、探究に関する無料相談会を開催中です。探究へのICT活用や外部連携にご興味ある方、お気軽にご連絡下さい。ご予約はこちら(2024年3月現在、問い合わせが急増しております。ご希望の方はお早めにご連絡ください)。
【企業のCSR広報ご担当者様へ】
CSR広報活動の強い味方!
探究教育を通して、学校と繋がるさまざまなメリットを提供しています。
まずはお気軽に「教育CSRサービスページ」より資料をダウンロードください。
また無料相談も可能です。些細なご相談やご質問、お見積りなど、お気軽にご相談ください。
【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。