総合的な探究の時間では、人的資源や産業、自然といった地域のリソースや学習環境を積極的に活用することが期待されています。また、多岐にわたる生徒の探究テーマに対し、校内の先生だけでは専門的な指導が難しい場合もあります。
そのため、より良い探究学習を実現するためには地域の人々や専門家をはじめとした外部との協力関係が不可欠です。
そこでこの記事では、外部連携の留意点と五つの実践事例を紹介します。
目次
外部連携のための5つの留意点
1. 日常的な関わり
2. 担当者や組織の設置
3. 教育資源のリスト
4. 適切な打合せの実施
5. 学習成果の伝達
外部連携の事例を5つ紹介
事例1:学校支援本部による地域人材バンクの例
事例2:総合的な学習の時間を活用して市の政策に提言する例
事例3:地元企業と協力して地域の人にお菓子やパンなどを販売する例
事例4:近隣の高校と探究成果を発表する例
事例5:大学から講師を招き講義を行なっている例
まとめ
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外部連携のための5つの留意点
まず始めに、外部連携を行う際の五つの留意点について紹介します。外部連携はメリットもありますが、その分、手間やリスクもあります。効率的かつ継続的な連携のために注意、配慮すべき点をまとめました。
1. 日常的な関わり
2. 担当者や組織の設置
3. 教育資源のリスト
4. 適切な打合せの実施
5. 学習成果の伝達
1. 日常的な関わり
協力的なシステムを構築するためには、日頃から外部人材などと適切に関わろうとする姿勢を持つことが大切です。
まずは日常的な関わりを重要視しましょう。これは、外部連携のきっかけやより良い関係の継続に効果的です。
いますぐ深く関われる機会がなくてもかまいません。まずは関わる姿勢を持つことが重要です。地域であれば、町のイベントに参加してみるなど、関わりを持つことで地域の魅力や課題を知るきっかけになるでしょう。加えて、地域の方にも探究に協力してもらいやすくなるかもしれません。
また、このような姿勢は地域に限らず重要です。学校外のイベントに積極的に参加するなど、学校外の機関とも繋がりを持つことで、探究に協力していただける機会が見込めるのではないでしょうか。
2. 担当者や組織の設置
・校務分掌上に地域連携部などを設置したり、外部と連携するための窓口となる担当者を置いたりする。
・地域との連絡協議会などの組織を設置することも考えられる。
こちらは外部連携を行う際の校内の仕組みに関する留意事項です。
効率的に連携を行うため、校内で連携に関するシステムを確立しておきましょう。上記にあるように、担当部署を作っても良いですし、担当者を設置するのでも良いです。連絡等の業務を分担するのであれば、誰が何をやるのか・情報をどう共有するのかのシステムも決めておきたいですね。
学校の体制・組織づくりに関してはこちらの記事をどうぞ
>学校が準備すべき探究カリキュラム・マネジメントと体制整備のポイント4つ
3. 教育資源のリスト
学校外の教育資源を活用するために総合的な学習の時間に協力可能な人材や施設などに関するリスト(人材・施設バンク)を作成する。
連携可能な外部機関・人材のリストを作成しましょう。こちらは、課題に適した連携先選びに生かすことができます。課題に合わせて連携対象を適応できれば、より良い探究が行えるはずです。
また、リストを作成することで属人化を防げるメリットもあります。例えば、外部との幅広い人脈や知識を有する担当者の異動によって、今までの教育資源がうまく引き継げず探究学習の運営に支障をきたすことがあります。リスト化によってこれを防ぐことができます。
4. 適切な打合せの実施
外部人材に対して、適切な対応を心掛けるとともに、授業のねらいを明確にし、教師と連携先との役割分担を事前に確認するなど、十分な打合せをする必要がある。
打ち合わせに際して気を付けたいポイントは「何がしたいのか」「どのようなねらいを達成したいのか」「どのように連携を図っていくのか」などについて学校内で要望を明確にしておくことです。
また、始まってからも定期的に進捗確認や振り返りを行い、計画を見直していくことで、より適切な学習が行えます。
5. 学習成果の伝達
学校公開日や学習発表会などの開催を通知したり、学校便りの配布などをしたりして、保護者や地域の人々に総合的な学習の時間の成果を発表する場と機会を設ける。
連携を生かした学習について、成果を発表できる機会を設けましょう。協力してくれた外部の連携先へ成果を報告する以外にも、生徒のモチベーションや達成感を高める効果もあり、参加者から質問やフィードバックを受けることで対話的な学びにもつながります。
外部連携の事例を5つご紹介
次に、外部連携の事例を五つご紹介します。
事例1:学校支援本部による地域人材バンクの例
事例2:総合的な学習の時間を活用して市の政策に提言する例
事例3:地元企業と協力して地域の人にお菓子やパンなどを販売する例
事例4:近隣の高校と探究成果を発表する例
事例5:大学から講師を招き講義を行なっている例
事例1:学校支援本部による地域人材バンクの例
教師以外の教育者によって推進されている地域人材バンクの事例です。
こちらの高校では、外部連携にあたって保護者・地域の人々により学校の教育活動全般を支援する組織「学校支援本部」が設立されました。この学校支援本部には、学校支援コーディネーターが置かれており、その人を中心に学校の教育を支える人材の募集・リストづくり・研修・派遣事務等が行われています。
これによって教師は探究等に活用できる人材をこの機関に相談し、効率的に学習できるようになりました。この高校のみでなく、区内多くの高校で設立され、ネットワーク化されています。
(表1:「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)」第1編 第3章より抜粋)
事例2:総合的な学習の時間を活用して市の政策に提言する例
こちらの高校では、2年生の総合的な学習の時間で生徒が模擬市職員となって市政の課題を考え、解決策や改善策を提案する単元に半年かけて取り組みます。市内の課題に対する解決策について、フィールドワーク等も取り入れながら探究を行いました。
総合的な学習の時間コーディネーターを中心に、市役所の行政担当者だけでなく、大学教員や地域の有識者、NPO、市民団体等を核とするネットワークを構築しました。その結果、その場が市政の課題を探る熟議の場として機能するまで発展しました。
探究の大まかな流れ
・環境・保全、健康・福祉、広報、観光、安全・防災の5つの課に分かれる
・各課の担当者から基本政策を学ぶ
・少人数のグループごとに政策ついて熟議、探究課題を検討する
安全・防災課の例
探究テーマ
・大規模地震を被害を最小限にとどめるために必要な市民協同について
・高校生として地域のために何をするべきか
実施したこと
・避難所運営ゲーム
・高齢者福祉施設の訪問
・災害時の地域連携の在り方について聞き取り調査
事例3:地元企業と協力して地域の人にお菓子やパンなどを販売する例
秋商ビジネス実践(秋田商業高校)の事例になります。
生徒が地元企業と試作を重ねて開発したお菓子やパンといった商品を「AKISHOP」というショップを開設し、完成した商品を販売します。連携には主に地元の企業に協力を仰いでいます。終了後には、「活動報告会」もひかえており、販売会のみに限らず、生徒の成果がわかる機会が多く設定されています。
事例4:近隣の高校と探究成果を発表する例
こちらは甲南大学リサーチフェスタ(甲南高等学校)の事例で、近隣の高校と連携して探究成果の発表会を行っています。近隣の高校との連携は比較的ハードルが低く、かつ同世代の学生から刺激をもらえるので良い機会でしょう。
近年はZoomで開催されているようですが、当日は発表に対して学校の壁を越えて質問やフィードバックが行われ、今後の探究活動へ生かされていきます。
事例5:大学から講師を招き講義を行なっている例
総合研究大学院大学、横浜国立大学理工学部、慶應義塾大学・立教大学等首都圏の大学などから講師を招き、高校3年間にわたって「知的探究心」を育てることを目的に、専門家の講義を受講します。
このように講義に専門家を招くといった外部連携は、比較的短期間の取り組みになるため、外部連携の経験の少ない学校でも取り組みやすいかもしれません。
参考:地道な働きかけを経て、尖った才能が刺激し合う学校に〜神奈川県立横須賀高等学校〜
まとめ
この記事では探究学習の外部連携についてまとめました。
外部連携を活用した探究は手間もかかりますが、生徒にとって貴重な経験や知識になることは間違いありません。自校にできること・必要なことを考慮して、探究をデザインしてみてください。
別の記事でも外部連携についてまとめていますので、よろしければ参考にしてください。
参考:
【前編】徹底解説!探究学習の外部連携に必要なことは?連携のパターン、メリットについて
【後編】徹底解説!探究学習の外部連携とは?連携時のポイント、連携先の探し方、事例について
*この記事は総合的な学習の時間に関する文部科学省の資料を元に、探究学習に臨む先生向けに内容をわかりやすく解説したものです。資料をもとに部分的に簡略化、加筆、言い換えなどを行っています。元資料をご覧になりたい方は「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)」第1編 第3章をご確認ください。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。