探究の単元計画を作るにはどうしたらいい?
学習指導案を作るときのポイントは?
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その中で、先生方から冒頭のようなご相談をよくいただきます。
そこで、この記事では探究学習の単元計画・学習指導案作成の手順を7ステップで解説します。
目次
1.単元計画の基本的な考え方
2.単元計画作成の手順
3.単元計画としての学習指導案(7ステップで解説)
A.全体計画・年間指導計画を踏まえる
B.3つの視点から、中心となる活動を思い描く
C.探究的な学習として単元が展開するイメージを思い描く
D.単元構想の実現が可能かどうか検討する
E.単元計画としての学習指導案を書き表す
F.単元の実践
G.指導計画の評価と改善
4.単元計画作成の具体的手順(事例を元に)
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1.単元計画の基本的な考え方
「1年」「1学期」が時間的なまとまりなのに対し、単元は、生徒の学習過程における学習活動の一連の「まとまり」のことを言います。
探究学習においては、学習レベルや時間によって、「じっくり時間をかけ、1年を1単元で学習する」のか?「1年生はまずやり方に慣れるため、比較的取り組みやすい内容で前期と後期、2単元でやろう」など状況に応じて単元の期間や内容を検討する必要があります。
したがって、単元計画の作成は、教師が意図やねらいをもって、このまとまりを適切に生み出そうとする作業となります。
学校としてすでに十分な実践経験が蓄積され、毎年実施する価値のある単元計画が存在する場合でも、改めて目の前の生徒の実態に即して、単元づくりを行う必要があります。
単元計画の作成は、大きく次の2つに分けることができます。
・単元を構想する
・単元の計画を具体的に書き表す
実際には、2つの作業を往復しながら、望ましい単元計画を作成していくことになります。続いて、この作業をより具体的に、7つのステップに分けて詳しく解説します。
2.単元計画作成の手順(7ステップで解説)
単元計画の作成にあたっては、次ページ「単元計画作成の手順チャート」にそって、上のA〜Gの手順が考えられます。順番に解説します。
A.全体計画・年間指導計画を踏まえる
単元計画を作成するにあたっては、その前提として、学校の全体計画・年間指導計画を踏まえる必要があります。
学校の全体計画・年間指導計画についてはこちらの記事をご覧ください。
B.3つの視点から、中心となる活動を思い描く
単元構想の出発点として、
の3つの視点が考えられます。いずれも重要な視点であり、どの視点から構想を始めたとしても、他の2つの視点に十分に思いを巡らせることが大切です。
①生徒の興味・関心
生徒の実態や興味・関心を出発点とすることで、生徒の主体的な活動につながります。探究学習に関しては特に、興味・関心は課題や問いの設定に直結し、そのあとの探究活動に影響を与え続けます。いかに生徒の興味・関心を喚起するかは、探究学習前半の大きな山場です。
②教師の願い
教師の願いを出発点とすることで、どんな内容について学ばせたいのか、どんな資質や能力及び態度を身に付けさせたいのかを明確にした単元構想が可能になります。
③教材の特性
教材とは、生徒の学習を動機付け、方向付け、支える学習の素材のことです。教材(学習材)の特性を出発点とすることで、どのような問題解決や探究活動を行うことができるか、明確に見通すことができます。その際は、横断的・総合的な学習になるように意識することが求められます。
また、ただ教材を与えても生徒が自発的に探究できるわけではありません。よって「学習レベルにあった教材を使う」「教材研究を行い必要に応じてアレンジする」などのポイントを抑えることが必要です。
>探究学習で使える教材・ワークシート9選!使うときの注意点も
今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)第2編第3章 図1より
C.探究的な学習として単元が展開するイメージを思い描く
Bで思い描いた中心的な活動を、生徒主体の価値ある探究的な学習にするためには、次の二つのポイントがあります。
生徒が主体的に進める活動の展開においては、教師が意図した内容を生徒が自ら学んでいくように単元を構成する点に難しさがあります。
そこでまず、その関心や疑問から、生徒はどのような活動を求め、展開していくだろうかということをまず想像し、想定されることを書き出します。
具体例
・生徒が活動中に出会う様々な問題場面
・解決を目指して生徒が行う問題の解決や探究活動の具体的内容
・学習活動を通して生徒が学ぶことがら
考えられる可能性をできるだけ多面的、網羅的に予測しておくことで、生徒の主体性と教師の意図との両立が実現します。
もちろんその際には、各学校で定めた内容、育てたい資質や能力及び態度との照らし合わせを行ってください。
D.単元構想の実現が可能かどうか検討する
まず、単元を構成する諸活動を考えた後に、各活動が生徒の意識や活動の自然な流れに沿って展開できるかを検討します。
さらに、流れに不自然さや無理がある場合には、順番を入れ替えたり、活動の間に別の活動を挟んだり省略したりすることで、単元構想の実現可能性をより高めることができます。
E.単元計画としての学習指導案を書き表す
より具体的な単元の計画を表現するには、以下のような構成要素が考えられます。
F.単元の実践
どれだけ丁寧に単元づくりを行っても、生徒の活動は教師の想定通りにはなりません。その際には、計画通りに実行するのではなく、生徒の動きに応じて柔軟に修正しつつ学びを生みだそうとする、教師の構えが重要になってきます。
G.指導計画の評価と改善
単元が終了したら、実践を振り返り、単元計画を見直すとともに、次年度の全体計画や年間指導計画の改善に役立てることが必要です。
3.単元計画としての学習指導案
単元計画の構成要素の例は以下のような5段構成などが考えられます。
単元計画を書き表す上での基本的なイメージは、次の図のようになります。
今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)第2編第3章 図2より
4.単元計画作成の具体的手順(事例を元に)
単元計画作成の具体的手順を「大災害その時私たちにできること」(第2学年 1単位)というテーマを例にし、先ほどの7つのステップごとに解説します。
《単元》「大災害その時私たちにできること」
《単元の概要》
学校で被災し、学校が避難所となったとき自分たちができることを考える活動を中心に、これまでの災害の歴史や被害予測、地域防災の現状、地域の方からの高校生への期待を知ることで、自分に何ができるかを主体的に考え、地域・社会の一員としての自覚を高めるよう学習活動を展開した単元である。
A.全体計画・年間指導計画を踏まえる
今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)第2編第3章より
B.3つの視点から、中心となる活動を思い描く
全体計画で示された、学習課題、学習項目、育てようとする資質や能力及び態度を、どのような教材で、どのような活動を通して学ぶのかを、
・生徒の興味・関心
・教師の願い
・教材の特性
の3つの視点から具体的に検討します。以下、検討の際のポイントです。
生徒の興味・関心を把握するには?
各教科・科目等での学習や日常生活の様子、ノートや生活の記録、保護者から寄せられた生徒の様子など生徒の関心や疑問がうかがえる各種の資料を収集し、精査することが考えられます。
生徒の関心や疑問を生かすには?
次の3点について考えられる可能性をできるだけ多面的、網羅的に予測することが有効です。他の教師と協働しながら、ブレインストーミング、KJ法などを用いて列挙していくなどが考えられます。
①活動の展開において出会う様々な問題場面
②その解決を目指して生徒が行う問題解決や探究活動の様相
③それぞれの学習活動をとおして生徒が学ぶであろう事項
参考記事
>探究学習にウェビングマップを活用!作り方・4つのメリットと探究活用事例、ツールまで紹介!
>「ブレインストーミング」のやり方とは?守るべきルールとコツ、探究への活用事例も紹介
>「KJ法」のやり方とは?取り入れるメリットや学習効果を高めるコツ、探究への活用も紹介
教師が意図する学習を生かす工夫は?
どこでどのような意図的な働きかけをする必要があるのか、その際に留意すべき事柄は何かなども、具体的に想定しておきます。
生徒の目線で丁寧に単元を構想する
各学校が設定した目標及び内容、育てようとする資質や能力及び態度が、確かに実現するかどうかを生徒の目線で判断します。
今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)第2編第3章より
C.探究的な学習として単元が展開するイメージを思い描く
これまでに考えた単元構想を具体化する際に、学習過程を探究的にするよう、単元の計画を考えます。こちらのように、活動と、具体的方策などをセットで記載しておくと分かりやすくなります。
今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)第2編第3章より
D.単元構想の実現が可能かどうか検討する
外部連携を行う際は、連携先とも計画を共有し、実現可能かを検討します。学習の狙いや想定される出来事なども同時に知ってもらうことで、より協力が得られやすくなります。
E.単元計画としての学習指導案を書き表す
単元の構想で描いたイメージを、様々な条件を考慮して具体化します。
今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)第2編第3章より
F.単元の実践/G.指導計画の評価と改善
実践においてはなるべくこまめに記録を取るようにします。期待以上の効果を上げたこと、想定通りに行かなったことは特に重要です。振り返りにおいては記録を元に、次の単元に生かす、改善するところ、思い切って削除するなど判断が必要になります。外部連携をしている場合は、連携先からもフィードバックを貰うことが重要です。
まとめ
探究学習の単元計画・学習指導案作成の手順を7ステップで解説しました。
この記事で解説した内容
1.単元計画の基本的な考え方
2.単元計画作成の手順
3.単元計画としての学習指導案(7ステップで解説)
A.全体計画・年間指導計画を踏まえる
B.3つの視点から、中心となる活動を思い描く
C.探究的な学習として単元が展開するイメージを思い描く
D.単元構想の実現が可能かどうか検討する
E.単元計画としての学習指導案を書き表す
F.単元の実践
G.指導計画の評価と改善
4.単元計画作成の具体的手順(事例を元に)
計画はその重要性、教科横断的であるという性質、作成にかける労力からも、先生たちの協働によって行われる必要があります。特に探究学習では学校としても経験が浅かったり、外部との連携が発生したりと、他の教科の単元計画と比べても難易度が高いものです。
学校の中に探究学習のための適切な委員会や会議体を作り、計画作成を進めていくことをお勧めします。
参考記事
>学校が準備すべき探究カリキュラム・マネジメントと体制整備のポイント4つ
探究学習の準備や実践に向けて、学校が構築すべき体制について解説しています。
*この記事は総合的な学習の時間に関する文部科学省の資料を元に、探究学習に臨む先生向けに内容をわかりやすく解説したものです。資料をもとに部分的に簡略化、加筆、言い換えなどを行っています。元資料をご覧になりたい方は「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)」第2編第3章をご確認ください。
【高校の探究担当の先生へ】
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。