探究学習が受験の役に立つのか?もしくは、探究学習に力を注ぐと大学入試への準備が疎かになってしまわないか懸念を持っている先生もいらっしゃるかと思います。この記事では、はじめに大学のアドミッションポリシーを分析し、探究学習の各プロセスと比較することで探究学習が受験に資する点を紹介いたします。続いて、日本の大学入試だけでなく、海外の大学入試制度を紹介し探究学習の導入が世界のトレンドに倣う流れであることを説明いたします。
探究学習とは一般に以下より構成されている学習です。
1. 課題設定
2. 情報収集
3. 整理・分析
4. まとめ・表現
これら4つをサイクルのように学習活動を繰り返し行います。また、与えられる教育ではなく、学習者が主体的に最初の課題設定からまとめまで進めていく学習方法です。2022年から高校で必修となる「総合的な探究の時間」が学習指導要領に明記されており、日本全国の学校で探究学習が広がっています。
大学はどのような学生を求めているのか?
日本の大学における横綱は東日本では東京大学と西日本では京都大学の両校で異論はないかと思います。この2つの求める学生像・入学試験の方針を抜粋してご紹介します。
東京大学
・学習への旺盛な興味や関心
・高校課程における幅広い基礎学習
・知識の詰め込みよりも、知識を関連づけて解を導く
京都大学はアドミッションポリシーを学部ごとに公表しておりますが、概ね以下の3点に要約されます
京都大学
・幅広い基礎学力と論理的思考力
・コミュニケーション力、表現力
・問題解決、学習への主体的な姿勢
3点のうち、“基礎学力”と“学習への姿勢や関心”の2点はほぼ同じと言って差し支えありません。中高生の皆さんや教職員の方々が入試問題を難関と考えているかもしれませんが、日本の双璧をなす両大学は入試問題を“基礎的な学習の到達度を測る検査”と捉えています。
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「探究学習は受験に役立つのか」
仮説として「探究学習は受験と役立つのか」を考えていきます。 反対に、探究学習が受験に役立たない、が対立仮説です。
もう一つは日本の大学入試と海外の入試を比較します。時に日本の教育は知識詰め込み型や暗記型と呼ばれ、海外の入試は学力と人物の総合評価と評されることがあります。果たしてこの意見が的を射ているのかどうか、そして探究学習が海外の入試に役立つのかを考えてみます。
探究学習が学習の動機づけになり得る理由
探究学習は問いと解が予め決まっていませんし、それらは教科書に載ってもいなければ、先生が教えてくれるわけでもない、小学校の学習とは異なる、全く新しい挑戦です。中高生にとって否応にも主体的に取り組まざるを得ない、そして簡単にゴールへ到達できる代物でもないでしょう。探究学習はプロセスも成果も自分次第という捉え方によっては冷酷な学習法です。
しかしながら、探究学習を短期間の一コマではなく、長期間にわたる探究をカリキュラムに取り入れている学校が数多くあります。果たしてそれはなぜでしょうか?その理由の一つに“学習者の姿勢”、つまり主体性を育むことが教育目標にあるからではないでしょうか。
探究学習では“何を学ぶ”、“どのように学ぶ”に関して生徒自身に裁量が与えられています。この裁量権は当事者意識につながります。つまるところ、“何を学ぶ”、“どのように学ぶ”について情報を集めて分析し、判断するのは言葉以上に大変です。
各学校が学校方針に基づいてカリキュラムや授業を設計していますが、探究学習のメリットには探究学習を通じて情報を入手して分析、発表する等のハードスキルの向上はもちろんのこと、学習者としての主体性といったソフトスキルの成長があると考えられます。
大学入試と探究学習の相関性
入試問題に限らず、問題は基本的にいくつかに分類できますが、大きく分ける軸はインプットかアウトプットが挙げられます。
・知る
・理解する
・調べる
アウトプット
・分析する
・アイデアや意見を述べる
・判断する
が一般的なスキルです。結論から申し上げて、東京大学と京都大学の入試問題はインプットとアウトプットの両方を駆使する問題が多いです。
設問の形式が「、、、とはどういうことか、説明せよ」、「、、、を50文字で記せ」のような、前提知識、問題資料を読み解くインプット、選択肢から選ぶのではなく、自身の言葉で記述論述とアウトプットが求められます。当然ながら、インプットがなければアウトプットはできません。同時にインプットはできたとしても、アウトプット能力がなければ解答できない出題となっています。
教員や塾講師の方々にとって、学習内容を「知っている」「理解している」=「解答できる」ではなく、両者の間には距離があることは自明です。インプットなら簡単でアウトプットは難しいわけではなく、学習の過程においてインプットだけでなくアウトプットまでできるようになることこそ習得と言えます。
最良の勉強法に「勉強内容を友人に説明する」と言われることがあります。それくらい、口頭か文章かを問わず、人に説明することは同じ内容を暗記する、理解することよりも難易度が高く、友人に説明することが学習内容の定着を示唆しています。
探究学習は学習のまとめに論文やレポートを書く、プレゼンテーションやポスターセッション等の発表を行います。それまで調べた情報や分析成果を自分が納得するだけでなく、先生やクラスメートに発表する必要があります。このプロセスは学習の深化をもたらすと言えるのではないでしょうか。
日本のトップ大学も探究できる人材を求めています
日本のAO入試と言えば慶應義塾大学が有名ですが、国立大学においても従来の一般入試とは別の入試制度が広がっています。大学により“AO入試”“総合型入試”や”学校推薦型入試“と呼び方は異なりますが、この新しい入試制度では以下のように総合的に出願者を評価します。
・学力検査
・出願書類(志望動機や学習計画)
・面接
・小論文
この新しい入試制度は例外的な運用ではなく、東北大学、筑波大学、名古屋大学、大阪大学や九州大学といった難関校で募集もあり、九州大学を除く4校は最難関の一つとされる医学部医学科も募集しています。
端的に言えば、大学は高校生の“どのような学問を、なぜ学習したいのか”、確固たる意思と実行力を測る入試制度を新設しています。大学がそのような制度を設ける理由はそれらを備えた学生が高等教育機関として大学の使命である“人材輩出”と“研究開発”を叶える人材だからと考えられます。探究学習は大学が学生に求める内容に沿う学習で言えるのではないでしょうか。
海外における大学入試
海外を一括りにすることが適当か否かは議論の余地がありますが、海外の大学入試は学力+人物評価が一般的です。入試はペーパーテストだけでなく、志望理由やリーダーシップ についてのエッセイや推薦書が必要になります。これらは学力を測るだけでなく、人物像や学習者の姿勢を評価しています。
一例として、世界的に著名なマサチューセッツ工科大学が高校生に宛てたアドバイスを紹介します。
Preparing yourself for MIT, then, means doing two things:
1. taking the time to really explore things that interest you, both inside and outside of school
学校でも社会でもあなたの興味関心のあることについてたっぷり時間をかけて調べてみよう
2. making sure you’re ready to do the work
1について、大学で学習するための万全の準備をしよう_
語学留学や交換留学ではなく、日本から学部課程や大学院課程に入学する場合、国際バカロレアのDPスコア、アメリカの共通テストに相当するSATスコアで学力を証明することが必要になります。加えて英語力の証明をTOEFLやIELTSを受験しますが、これら2つの英語試験も言語のスキルのうち、読む聞くインプットスキルだけでなく、書く話すアウトプットスキルが問われます。先述にて東京大学と京都大学は“入試問題を“基礎的な学習の到達度を測る検査を考えている”と申し上げましたが、海外の大学入試においても同様に学力はDPスコア、SATスコアで基礎的な学習の到達度を測っていると言って差し支えありません。
そして、上記の学力や英語力という第一関門の上に何よりも重要なエッセイ、場合によってはインタビューも含めた人物評価があります。“何をなぜ学びたいのか”“学んだことを将来どのように活かしたいのか”を自身の言葉で伝える機会と義務があります。決して壮大な夢や特別な経験がなければ合格できない入試ではありませんが、自分の知的好奇心とプランがなければなりません。要するに受動的ではなく、能動的主体的な学習者が高等教育に相応しいと考えられています。
また、海外の大学入試は課外活動、例えばボランティア活動、クラブ活動の実績について問います。学業スコアが良いだけでなく奉仕の精神や文武両道を求めているのは、勉強だけができる学生ではなく興味や関心に基づいて継続した活動をしている学生です。先述の日本における大学入試だけでなく、海外大学への進学にあたっても探究学習はプラスになります。
ちなみに、この点は東京大学と京都大学が「学習への旺盛な興味や関心」「問題解決、学習への主体的な姿勢」を受験生に求めているのと同じです。東京大学と京都大学には小論文や面接は課されませんが、記述式でアウトプットを問う出題形式が求める学生像を反映していると言えるのではないでしょうか。
まとめ
大学入試で求められている学習者像について考察してみました。探究学習が受験対策用ではありませんので合格への近道と呼べるものではありませんが、探究学習のプロセスと国内外の大学が高校生に求める姿勢には能動的、主体的といった共通点があります。また、自らの興味関心を披露する、学習に反映させて成果も含めて周りの人へ説明する訓練は探究学習の枠を越えて大切なことではないでしょうか。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。