探究学習

探究学習の整理・分析方法14パターンを解説

探究で情報の整理・分析が苦手な生徒が多いんだよ。調べるまではいいんだけど、整理するのが下手だから、うまく分析やまとめができていないと感じる。

こんなやり方があるよ、って一覧で見せてあげられたら、自分で考えてできると思うんだ。

私たちStudyValleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行えるICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

その中で、先生方から冒頭のようなご相談をよくいただきます。

そこでこの記事では探究学習の情報の整理・分析の方法14パターンをまとめました。

断片的で意味がなさそうなデータも、整理することで意味のある傾向が見えてきたり、関連がわかったりします。問いや課題の答えを見つけるためにはよい「整理・分析」の方法を知っていることがとても大切です。

また、整理・分析方法を知っていることは、前のプロセスである情報の収集にも役に立ちます。「地図にマッピングしてみたいから、一か所だけではなく網羅的にデータをとろう」「ビフォーアフターの視点で分析したいから、最初の段階からしっかりデータを取っておこう」など情報収集の質も上がります。

とはいえ、生徒が一度にこれらの方法を覚えるのは大変ですから、先生がしっかり特徴を把握しておいて、生徒が悩んでいたら「他の分析方法は試した?」「こんな方法もあるけど、一度やってみたら?」など適切にサポートしてあげてください。

整理・分析14パターン
①地図
②時系列表
③KJ 法的手法*詳細記事あり
④ベン図
⑤メリット ・ デメリットの視点
⑥ビフォー・アフターの視点
⑦マトリックス表
⑧二次元表
⑨Y チャート
⑩ロジックツリー*詳細記事あり
⑪グラフ
⑫統計的手法
⑬フィッシュボーン(特定要因分析)
⑭コンセプトマップ

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高校探究学習の情報の整理・分析14パターン

エクセルなどのツールを有効に使おう

具体的手法に入る前に、ツールについて触れておきます。

情報の整理・分析、特にグラフ、統計的手法など多数のデータを扱う、計算を要するものはエクセルやGoogleスプレッドシートの関数やグラフ化機能が便利です。繁雑な計算をミスなく行うことができます。

合計を出す「SUM」や平均を出す「AVERAGE」などシンプルなものから、クロス集計を行う「ピボットテーブル」などもあります。ぜひ有効に活用してみてください。

それでは具体的な手法を見ていきます。

①地図

地域の地形や構造物の位置を把握して、事実や関係を導き出す方法です。集めた情報が、どのエリアに該当しているのかがわかりやすくなります。

ポイント

正確な整理・分析結果を出すため、どのような視点を持って情報収集するのかを初めに考えましょう。課題解決に向けて調査する場所を決めていかなければ、集めた情報に偏りが出てしまいます。

地図は調査数やグラフなどをシールで貼り付けることができます。さらにわかりやすくするために、写真や図式といった質的な情報を適宜盛り込むことがポイントです。

【地域探究】地図を用いて防災マップを作る事例
・地図に民家の情報をマッピングする
・民家の中でも高齢者や障碍者など避難にサポートが必要のある家をマッピングする
・ハザードマップと重ね合わせる
・災害時の適切な避難方法を考える

そのほか地図でまとめると効果的な例
・指標生物の分布
・土地の利用状況
・スロープやエレベーターなどバリアフリー設備の設置状況
・駅周辺の商店の種類による出店状況の違い
・特色ある言葉や方言の使われ方など

②時系列表

事象の変遷や歴史を時系列にして、表で整理・分析する方法です。歴史教科書の年表をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。

時系列に情報を整理できれば、どの場面で変化が起きたのか、課題解決の着地点はどこにあるのかが明確になります。また手順もわかりやすくなるのが特徴です。

ポイント

時系列に細かくまとめると文字情報であふれるので、可能であれば、参考資料として画像や映像も加えながら作っていくのがポイントです。ICTの機能を積極的に活用してみましょう。

時系列は過去・現在・未来に切り分けたのち、今後の取組みについても触れると情報が充実します。

【地域探究】商店街の歴史から活性化のヒントを得る事例
・商店街の歴史を時系列でカードに書き出す
・聞き取りや図書館などを使って、店舗数や客数などわかる範囲で情報を追加する
・影響がありそうな数字や出来事も書き出す(町の人口推移や、近隣の大型ショッピングモール開店など)
・カードを時系列に並べて整理・分析する

③KJ法的手法

収集した情報を出発点に、そこから新しい発見をしたり、情報同士の関係性を見つけたりしたいときに用いられます。

ポイント

KJ法的手段では、線や矢印を使って情報を整理・分析するのがポイントです。

さらに大きいくくりと小さいくくりなどにグループ分けすることで情報同士の関係性が明確になります。また集めた個々の意見やアイデアを全体的に見ることで、これまで見えなかった新しい関係性が見えてきます。

【進路・キャリア探究】働きがいに関する情報の整理・分析例
・インターンシップや、働いている人へのインタビューを行い、情報を収集する
・得た情報をカードに書き出す
・カードを分類整理し、関連付ける
・働きがいに関連する要素はなにかを話し合う

④ベン図

情報の共通点と相違点の洗い出しに最適な方法です。集めた情報が、どのグループに属するのかを考えるきっかけとしても使えます。

ポイント

ベン図は、情報を2~3つ程度の要素で整理したいときに使う方法です。

例えば環境保全への行動を「今すぐできる行動」「誰でもできる行動」「みんなで行う行動」など、それぞれ異なる要素で分類・整理すれば、共通点と相違点が明確になります。また、学習のねらいによって適切な要素は変わります。

⑤メリット ・ デメリットの視点

調査を通じて生まれた意見やアイデアを、良い部分と悪い部分に分けて分析し、検討する方法です。

メリットとデメリットは表裏一体で、生徒が良いと思って出した意見にも何かしらの問題点が潜んでいる可能性があります。メリット・デメリット両面をじっくり考えることで、より質の高い問題解決方法が生まれます。また、生徒自身が自分のアイデアに対し批判的思考を身に着ける機会にもなります。

ポイント

生徒がメリット・デメリットについてじっくり考えられる機会を用意しましょう。それぞれの出したアイデアの良い部分や悪い部分を掘り下げる時間があれば、生徒同士質の高い情報共有が可能です。

また他の人が出したアイデアを肯定するだけでなく、時には批判してどのように改善につなげるのかという意見を求めることも大切です。

メリットとデメリットの数や、結果に与える重要によって出された意見が良いものか悪いものかを判断していきます。

⑥ビフォー・アフターの視点

探究学習を行う過程で、自身の考えにどのような変化があったのかを内省的に記録し、それを分析する方法です。就業体験や介護実習など、特定の体験の効果や体験者に及ぼす変化について考えるときなどに有効です。自分の考えを第三者的に評価する力、自己評価力も身につきます。

ポイント

探究学習を始める前や実習前(ビフォー)などに自分の考えや思いをメモやデータで記録しておきましょう。学習後、体験後(アフター)に振り返ったとき、どのような変化や成長があったのかを知るのに役立つからです。ポジティブなものだけではなく、ネガティブな変化も正確に記録するようにしましょう。

接客業の就業体験を通じた職業観のビフォーアフター
ビフォー
・なぜ働くのか?:お金を稼ぐため、家族を養うため、欲しいものを買うため
・仕事の適性は?:人と話すことが好きだから合っていると思う

アフター
・なぜ働くのか?:お金を稼ぐため、お客さんから感謝されると嬉しい
・仕事の適性は?:意外と緊張してうまく話せなかった。接客ではない仕事の方が向いているかもしれない。

⑦マトリックス表

縦と横、2つの尺度を用いて情報を整理・分析する方法です。話し合う論点が明確になりやすく、様々な視点から情報の分析・整理ができるようになります。

ポイント

情報ごとに用いる尺度は決まっていません。効果性や実現可能性、緊急性など尺度を変えて表を作成することで新しい情報が見える場合もあります。
より確かな情報の整理・分析を行うために、まずは尺度の設定をじっくりと考える時間を設けましょう。

マトリクスの尺度の例
効果性/実現可能性/緊急性/経済性/安全性/重要性/簡便性/難易度など

⑧二次元表

▲引用:今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編) 第1編第2章-1

複数の情報を整理・分析するときに便利な方法です。広い視点を持って情報を見ることができます。

ポイント

二次元表を用いるときは、比較対象の良し悪しがわかるような分析を行うのがポイントです。

集めた情報の共通点(利便性・実用性など)を洗い出せば、それぞれの良い部分・悪い部分が見えてきます。比較するポイントを適切に設定しましょう。

また、エクセルのピボットテーブル機能を使えば、二次元表を簡単に作成できます。

複数の分析パターンを試してみてください。

⑨Yチャート

▲引用:シンキングツールの活用について(米原市)

調査対象について様々な視点で整理し、分析する方法です。主に感想文やレポートなど文字でまとめるときの役に立ちます。

ポイント

まずは対象をどのような視点(気づいたこと、印象に残ったもの)を持って分析するかを設定することが大切です。設定も生徒自身に考えさせることで分析力が培われます。

また各視点を上手に説明できるようにしておき、最終的にチャート全体から言えることを導き出すようにしましょう。

なおチャートには3つの視点から情報を分析できるYチャートのほか、Xチャート(4つの視点)やWチャート(5つの視点)などがあります。集めた情報量に応じて使うチャートを選別しましょう。まとめるときは、余裕を持って書き込めるよう大きめの紙がおすすめです。

⑩ロジックツリー

▲引用:今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編) 第1編第2章-1

枝分かれさせた図式で情報を整理・分析する方法です。ロジックツリーは右に進めば進むほど具体化されていくのが特徴で、下記のように構造がパターン化されています。

全体と部分:全体と部分で物事の要素を書き出していき、全体的に把握する構造です。

原因と結果:ある問題に関して原因をピックアップして、根本的な原因がどこにあるのかを考え結果を導き出す構造です。一番右に結果を書き出します。

意図と行為:どのように進めていきたいかという意図を決めて、その意図に進むための行為を枝分かれしていく構造です。

目標と手段:大項目に目標を入れて、その目標を達成するために必要な手段を書き出していく構造です。右に進むほど徐々に具体的になっていきます。

ポイント

ロジックツリーで事柄を細分化するときのポイントは、全体と部分、問題と原因、原因と解決策など段階ごとの組み立てを意識することです。作り込むほどに問題解決の方向性が明確になります。

⑪グラフ

視覚的にわかりやすく整理・分析する方法です。情報の事実関係を把握するのに役立ち、自分の主張の根拠となるデータを可視化して示したいときにも便利です。
グラフの種類は様々です。ポピュラーなものには下記のような種類があります。

棒グラフ
棒の高さで量の大小を比較できるグラフです。データの多い順、もしくは少ない順にまとめることで視覚的に見やすくなるのが特徴です。

折れ線グラフ
量の変化を見るときに使われるグラフです。複数の線を重ねる場合には色分けや実践・破線の使い分けが求められます。

円グラフ
全体の構成比を見るときに用いるグラフです大きいものから順に時計回りで表すのが一般的です(『その他』のみ最後に表示するのが基本)。

帯グラフ
構成比を比較するときに用いる均等的な長さのグラフです。データの多い順、もしくは少ない順に並べることで見やすくなります。

比較グラフ(レーダーチャート)
多角形で指標をまとめたグラフです。中心から放射状に広がるのが特徴で外に向かうほどデータ値が高くなっていきます。

散布図
軸と縦軸にそれぞれ別の量をとり、データが当てはまるところに点を打って示すグラフです。 2つの量に関係があるかどうかをみるのに非常に便利なグラフです。

回帰分析
結果となる数値と要因となる数値の関係を調べて、それぞれの関係を明らかにする統計的手法です。

ポイント

調査やデータに基づき、結果を示すのに最適なグラフを選ぶようにしましょう。
複数のグラフを取り合わせることで、より多くの情報を関連付けさせることができます。

エクセルやGoogleスプレッドシートなど、数値データからすぐにグラフを作れるツールを有効に使いましょう。

⑫統計的手法

ある事象の特徴、事実との関係性を第三者目線で捉えるときに用いる方法です。
網羅的に記載する統計的手法は、その時点で足りない情報が見えやすく、再度情報収集を行うべきかどうかを判断しやすくなります。

ポイント

数値化により各項目との関連性を客観的に比較できるようになります。また項目の組み合わせを変えれば、より広い目線で事象を整理・分析できます。

統計的手法のキーワード
分散:数値データのばらつき具合を表すための指標です。
標準偏差:平均値が同じでもデータのばらつきが異なる場合があります。そのような場合に、データが平均値の周辺でどれくらいばらついているかを表せる指標です。
正規分布:データが平均値の付近に集積するような分布。
相関性:二つのものが密接にかかわり合い、一方が変化すれば他方も変化するような関係。正の相関と負の相関があります。

⑬フィッシュボーン図(特定要因分析)

▲引用:物流現場における特性要因図の使い方 無料テンプレートダウンロード

情報の因果関係を整理し、課題解決を視覚的に行う方法です。魚の骨のような図式からフィッシュボーン(またはフィッシュボーンダイアグラム)と名付けられました。

ポイント

正しい手順(問題、改善すべき要因、課題解決の結果)を踏まえて作成することがポイントです。

大きめの紙に大骨を書き込み、思いつくままに問題やその要因を書き出していきます。その後、種類別にタイトルをつけ、原因となる最大の要因を出し、それを解決する方法について意見を出し合うようにしましょう。

さらにフィッシュボーンは、ブレインストーミングや先述のKJ法的手法と組み合わせるとより効果的です。ブレインストーミングによってアイデアを出し、KJ法的手法でまとめた結果を大骨に落とし込んでいけば、より整理・分析の質が高まります。

⑭コンセプトマップ

▲コンセプトマップの例

概念同士を線で結び付けて整理・分析する方法です。線の一番上に概念の関係性のタイトルをつけ、徐々に下へ集めた情報を広げていきます。コンセプトマップは理解力アップや学習の気づきを呼び起こされ探究学習における積極性が備わる点がメリットです。

ポイント

コンセプトマップは、複数のコンセプト(概念)や物事を地図状にマッピングしたものです。目的によって必要な情報や切り口が変わっていきますので、作成する目的と範囲を明確にすることが重要です。

コンセプトマップ作成後は、新しい情報収集の結果を受けて加筆・修正を繰り返すのがポイントです。繰り返し実施することで、課題解決への糸口を掴みやすくなります。

概念同士の線はあくまでも仮説段階で引くものなので、あとでしっかり検証することが重要です。線を引いて終わりでないということを生徒へ指導しましょう。

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。