探究学習

【前編】徹底解説!探究学習の外部連携に必要なことは?連携のパターン、メリットについて

・探究で外部の企業や組織と連携したいけどやり方がわからない
・効果はありそうだが大変なことも多そうで、あらためてメリットやポイントを整理したい

私たちStudyValleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、高校の先生や塾の先生方へ、探究学習を効果的に行うICTツールの提供や、コンサルティングサービスを行っています。

その中で、先生方から冒頭のようなご相談をよくいただきます。特に地域探究、企業探究、進路・キャリア探究、総合的な探究などで外部連携がよく話題に上るようです。

そこでこの記事では外部連携について徹底解説。外部連携のパターン、メリット・連携に必要なことについて解説します。

後編では、外部連携を行うときの8つのポイント、連携先の探し方、事例を解説します。

探究学習は、生徒の興味・関心に基づき、課題設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現をいうサイクルを繰り返す学習です。

総合的な学習やアクティブラーニングと同じく「主体的・対話的で深い学び」を目指す流れの上にあるもので、不安定な時代において自ら考え問題設定し解決する力を養うことが期待され、産業界も注目しています。

一方で、生徒の興味関心に基づくがゆえにテーマが多岐にわたり、先生だけでは適切な指導が難しいという声もあります。探究では先生の専門外のテーマが選ばれる事が珍しくないため、先生は教えるのではなく、探究の方向性を確認したり、生徒が手詰まりになっているときに俯瞰した立場から別の選択肢を提示したりというコーチング、ファシリテート役に徹すことが重要とされています。しかし、より探究の効果を高めるためには学校から外へ出て、実地で体験したり、専門家から助言を受けることがより有効です。

その際は、企業や自治体、大学などの教育機関などと連携し、探究をサポートしてもらうことが考えられます。

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外部連携のパターン

一言で「外部連携」といっても、1日で完了するものから、年間を通じて密に連携していくものまで、さまざまなパターンがあります。まずは取り組みやすいところから始めてみてはいかがでしょうか。

外部連携のパターン例(探究プロセス別)

【探究プロセス】【外部連携のパターン】
総合的なサポートカリキュラムや教材作成から関わってもらう(1学期~)
テーマへの興味喚起など講師を招いて講演(1日~)
テーマへの興味喚起、情報収集など施設見学や体験(1日~)
情報の収集、整理・分析インタビュー(1日~)
整理・分析、まとめ来校・オンライン・メールなどで質問に答えてもらう(1日~)
まとめ・表現実験器具や設備を借りる
まとめ・表現論文のアドバイザー
まとめ・表現発表会に参加してフィードバックしてもらう

学校教育に協力したいと思っている人は個人・法人関わらず多い

まず「外部機関が、学校に協力してくれるだろうか?」という不安をお持ちの先生も多いと思いますが、学校教育に協力したいと思っている個人・法人は多く存在します。協力者には以下のようなメリットもあるのです。

協力者にもメリットがある
・CSR活動
・企業ブランドイメージアップ
・地域貢献
・大学教育の一環

学校に協力することはたしかに外部の組織にとって、売上など直接的なメリットを生むものではありませんが、企業であればCSR(企業の社会的責任)活動やイメージアップとして協力してくれたり、純粋に地域に貢献したいという気持ちから協力してくれる場合もあります。大学であれば、大学生に高校生のメンターを務めさせ、高校生に教える経験を通じて逆に学ばせようと、教育の一環として捉えてくれることもあります。

外部連携に関して文科省の見解(指導要領)

外部連携の重要性は指導要領にも記載されています。

総合的な探究の時間では,地域の素材や地域の学習環境を積極的に活用することが期待
されている。(中略)
総合的な探究の時間では,実社会や実生活の事象や現代社会の課題を取り上げるからである。また,この時間では,多様で幅広い学習活動が行われることも期待されている。それは、生徒一人一人の興味・関心に応じた学習活動を実現しようとするからである。
このような学習を実現するためには,教員以外の専門スタッフも参画した「チームとし
ての学校」の実現を通じて,複雑化・多様化した課題の解決に取り組んだり,時間的・精
神的な余裕を確保したりしていくことなどが重要である。(【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説より

続いて、連携先として次のようなものを例示しています。

・保護者や同窓会の人,地域の人々
・専門家をはじめとした外部の人々
・小・中学校の地域学校協働活動推進員等のコーディネーター
・社会教育施設や社会教育関係団体等の関係者
・社会教育主事をはじめとした教育委員会,首長部局等の行政関係者
・企業や特定非営利活動法人等の関係者
・小学校や中学校等,幼稚園等の関係者
・大学等の高等教育機関,各種研究機関や団体 等
【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説より

コミュニティ・スクールを構成している場合は、その枠組みを利用することも考えられます。

コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)とは・・・学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」への転換を図るための有効な仕組みです。コミュニティ・スクールでは、学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことができます(文科省HPより)。

外部連携のメリット

外部連携のメリット・デメリットを整理しておきます。まずメリットから。

専門性の高い情報・アドバイスが得られる

生徒が情報収集をよく行ったとしても、生徒個人の努力ではアクセスできる情報の質や量、また鮮度にも限界があります。専門性の高すぎる知識は生徒だけで深く理解することが困難な場合もあります。

探究テーマを研究している大学や、企業と連携できれば、専門家から直接、最新の研究情報をもらえたりアドバイスを受けたりすることができます。

当事者から生の声を聞ける・協働できる

地域探究は人気のあるテーマです。地方創生や地域活性化を考えるときは実地に赴いて現場の声を聞くことが有効です。例えば地方創生に携わる企業、自治体の地域振興課、地元観光地や商店街などと連携することができれば、そこでしか手に入らない生の声を聞くことができ、また一緒にイベント企画・運営を行ったり、販売活動を行ったりと協働しながら学ぶことができます。

生徒のモチベーションアップにつながる

外部連携によって生徒が、日々、研究や事業などを通じて課題に向き合っている人たちと触れ合い、その熱量を身近に感じることは、何よりモチベーションアップにつながります。脅威・関心を喚起できる意味でも、外部連携のメリットは大きいと言えます。

対話的で深い学びになる

普段触れ合うことがない大人たちと関わり、フィードバックを受けることで、学校の中だけでは実現できない、対話的で深い学びが実現できます。

社会性が身につく

外部連携のメリットはたんに「新しい知識・思考の獲得」にとどまりません。大人たちとコミュニケーションを取りながら学習を進める中で、

・礼儀やマナー
・メールや電話の仕方
・報告や相談、質問の仕方
・お礼の送り方

などを学ぶことになり、社会性が身につきます。

外部連携に必要なこと

外部連携を行うために必要なことを解説します。これまでの業務に加えて行わないといけないことなので、忙しい先生は、時間のやりくりが大変だと思いまが、少しでも効率的に行うための解決案とともに紹介します。

連携先の選定

最も重要かつ、時間もかかるのが連携先の選定です。目的によって連携先も変わってきます。地元の大学や自治体に的を絞るならある程度、選択肢は絞られますが、企業となると選択肢も広く、面識のない組織であれば組織としての信頼性も確認する必要があります。

解決案:紹介を利用する

まっさらな状態から探すことは難しいため、はじめは学校同士の横のつながりで紹介を依頼する、地元商工会、地方自治体などに相談する、などの方法が早道かもしれません。

また文科省が総合的な学習の時間への支援をしている機関のリストを公表しています。施設見学や講師派遣を行っているところもありますので、まずはここからコンタクトを取ってみるのもいいかもしれません。

「総合的な学習の時間」応援団のページ

連携先の探し方については後編「外部連携先の探し方」でも詳しく紹介します。

カリキュラムや教材、指導内容の作成

既定のコマ数に合わせて連携先とカリキュラムを作成する、教材を開発する、指導内容を作成するなどのタスクがあります。

解決案①:ゴールを共有する

連携先が必ずしも高校生の学習レベルを理解しているわけではありません。現状のレベルと目指すレベルの目線を合わせ、探究の目指すゴールを共有しておかないと、指導内容などにおいてズレが生じ、余計な手間が発生してしまう恐れがあります。

解決案②:小さく始める

まずは双方に負担が少ない、小さな連携から始めることが良いかもしれません。
共同でのカリキュラムや教材開発は重要かつ時間もかかります。はじめての協業の場合は、まずは講師として呼んで講演してもらう、発表会に参加してもらってコメントをもらう、など無理のないところから小さくスタートすることも検討しましょう。コミュニケーションを積み重ねる中で、カリキュラムから一緒に作るなどの本格的な連携へ進むという選択肢もあります。

日程調整

学校に専門家を招く、生徒が先方へ訪問する、オンラインで打ち合わせを行うなどの日程調整が頻繁に発生します。

解決案:窓口のスリム化と繁忙期の把握

連絡窓口が多いと、意思決定者が分かりにくくなり混乱のもとになります。できるだけ窓口となって日程調整を行う人を少なくスリム化して、迅速に決定できるようにしましょう。
また、企業の決算期、大学の試験や受験シーズンなど先方の繁忙期も把握しておく、同時に、こちらも定期テストや学校行事などで時間がとりにくい時期は伝えておくと、日程調整がスムーズです。

改善のためのMTG

外部連携ができても、初めから上手くいくわけではありません。定期的に改善のためのMTGを行うことが望ましいでしょう。

例えば、生徒が調べたらすぐわかるようなことを何度も聞いてしまう、研究に関係ないスライドの作り方などを質問してくる、など学校側の指導に改善点が見つかるかもしれません。逆に学校が期待していたサポートが得られない、ということも考えられます。別の組織なのですから、ボタンの掛け違いが起きてしまうのはある意味当然ともいえます。だからこそ時間を割いて話し合い、前向きに改善していくことが必要です。

まとめ

外部連携のパターン、メリット・デメリットについて解説してきました。
後編では、いよいよ、連携を行うときの具体的なポイントや連携先の探し方、高校の事例を紹介します。

ABOUT ME
この記事を書いた人:Study Valley 編集部
探究No.1メディア”Far East Tokyo”編集部です!執筆陣は、教育コンサルタント、元教員、教育学部大学院生など、先生方と同じく、教育に熱い思いを持つStudy Valleyのスタッフ陣です。子どもたちがわくわく探究する姿を思い浮かべながら制作しています!先生方のお役に立ちますように。Twitterフォローで記事更新情報が届きます。
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【この記事の監修者】

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

田中 悠樹|株式会社Study Valley代表

東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。