修学旅行や校外学習を使って探究ができないだろうか。
そういうご相談をよくいただきます。そこで、この記事では修学旅行を探究学習にする方法を解説します。
準備から実施、旅行後にすることまで、修学旅行を探究にする、オーソドックスなやり方をご紹介しますので、ご自分の学校やクラスの状況に合わせて、より自由度を高くする、条件を設けるなど、アレンジしてくださいね。
日帰りの校外学習にも応用できる内容ですので、学校外での活動をうまく使って探究をしたいと考えていらっしゃる先生はぜひお読みください。
この記事の内容
修学旅行で探究を行うメリット
・体験を通じて主体的、対話的な学びを実現できる
先生が行う準備と心がまえ
・手間をかける覚悟を決めて、できる準備をする
旅行前の準備
・問いや課題を準備する
・ガイドブックを利用する
・必ずしも教科書的な問いである必要はない
・パフォーマンス課題や発表の形式を決める
・旅行中に行うことをリストアップしスケジュールする
・アポイントを取る
・取材のマナーや受け答えを学習する
旅行実施
・グループでまとめの時間を取る
旅行を終えて
・まとめ・発表を行う
・協力者へのお礼・報告、現地への還元
修学旅行で探究を行うメリット
最初に修学旅行で探究を行うメリットを簡単に紹介しておきます。
体験を通じて主体的、対話的な学びを実現できる
修学旅行を探究にするということは、探究のプロセスである「①課題設定」「②情報の収集」「③整理・分析」「④まとめ・発表」のうち、「②情報の収集」のプロセスに修学旅行を利用することです。
その最大のメリットは「旅行」という体験を通じて、生徒が主体的に学びに取り組めること、そしてグループワークや現地での取材などを通じて対話的な学びを実現できることです。
探究を通して、現地でしか見られないもの、会えない人、できないことを体験できます。学習としてはもちろん、ありがちな観光修学旅行とも違った、生徒にとって貴重な経験にななることでしょう。
先生が行う準備と心がまえ
手間をかける覚悟を決めて、できる準備をする
修学旅行で探究を行うことは、これまで以上に手間がかかります。バスガイドさん、ツアーコンダクターさんにお任せ、というわけにはいきません。先生はその点を覚悟して、できる準備をしておくことが必要です。
例えば、このような準備が想定されます。
少なくとも数か月先から準備が必要です。これまでの修学旅行とは違う準備も必要になります。詳しく説明していきます。
旅行前の準備
修学旅行へ行く前の準備です。旅行中は時間がたつのはあっという間です。貴重な時間を無駄にしないためにも、しっかりと準備をしておく必要があります。
問いや課題を準備する
問いや課題を準備します。入口として旅行先の地理や歴史、自然などをテーマに調べ学習を実施するのが有効でしょう。調べる方法はインターネット、図書館、Youtubeなどいろいろな方法がありますが、修学旅行で便利に利用できるのが「ガイドブック」です。
ガイドブックを利用する
修学旅行先へ選ばれるような場所であれば、いくつもガイドブックが出ていると思います。例えば、下記のようなものです。
・グルメ中心のガイドブック
・自然や観光名所中心のガイドブック
・特産品や工芸品中心のガイドブック
ジャンルの違うガイドブックを用意して生徒に渡し、それをヒントに調べ学習を行って課題や問いを考えさせます。
例えばグルメからその土地の名産品を知ったり、自然から地理や地学に興味が広がったり、ガイドブックにも探究の種はたくさんあります。
また、ガイドブックに載っているような場所やお店であれば、観光客も多く、生徒の現地行動上の安全性もある程度担保される、という点もポイントです。
必ずしも教科書的な問いである必要はない
生徒が問いを立てるとき、行き先が修学旅行先として有名であればあるほど、教科書的なありきたりな問いを立てがちになります。
例えば京都なら、「京都の歴史」「京都の文化」、沖縄や広島なら「戦争」といったテーマから問いを考えがちです。どのような問いを立てるのか、学校や先生の方針にもよりますので一概には言えませんが、あまりにありきたりな問いを立てるとゴールが明確になりすぎて、事前資料で分かる情報を現地で確認するだけになったり、学校の勉強とあまり変わらない内容になってしまうことがあります。
パフォーマンス課題や発表の形式を決める
探究の成果をどのような形にまとめるのか(パフォーマンス課題)、発表をする場合はどのような形式で行うかなどを決めます。例えばショートムービーの作成を課題に入れると動画を撮影する必要がありますし、ポスターやパワーポイントでの発表を行うのであれば写真が必要になります。発表から逆算して、どのような資料を集めるか決めることも、事前学習に含まれます。
旅行中に行うことをリストアップしスケジュールする
課題や問いが明確になったら、旅行中にどのようなところへ行って、何を調べたらよいか、誰に話を伺えばよいか、どんな資料(写真や動画も含む)が必要か、などをリストアップします。
特に重要なのは、することが決まった後のスケジューリングです。決められた時間内で行動できることは限られています。どこへどういう順番で行くか、どれだけ滞在するか、誰と会うか、取材時間はどれくらいを見込むのか?優先順位と必要な時間の見込みを立てるのは、大人でも難しいことです。生徒に任せる場合でも先生のフォローは欠かせません。また、スケジューリングは、次に説明するアポイントの状況にも左右され、調整が必要です。
アポイントを取る
訪問先によっては事前に許可やアポイントを取る必要があることも。その場合は準備として、アポイントの日程調整が必要です。先生が行うこともできますが、すべてをこなすのは大変です。
そこでアポイントの取り方を生徒に教えて、自ら行わせる方法もあります。公的な施設や美術館、博物館などパブリックな組織や施設は生徒、それ以外は先生など、アポイント先によって分けても良いかもしれません。
取材のマナーや受け答えを学習する
取材のみならず、旅行中は現地の人に話しかけられることもしばしばあります。その場合もきちんとした応答ができるように、最低限のマナーを学習し、受け答えの練習などをしておくと安心です。
旅行実施
旅行が始まったら実際にフィールドワークや調査、取材を行います。トラブルが起きたとき、わからないことが起きたときの連絡手段や対応方法は先生同士でもよく打ち合わせおきましょう。
現地での行動ではインターネット、ガイドブックからはわからなかった情報にたくさん出会える機会です。逆に事前学習の成果が出るともいえます。
グループでまとめの時間を取る
1日が終わったら、できればその日中に収集した情報をまとめる時間をとりましょう。クラスで簡単にその日に行ったことをシェアする報告会を開いてもいいかもしれません。他のグループの発表に刺激を受けたり、翌日の行動の参考になります。
旅行を終えて
生徒たちは現地で、事前学習では分からなかったたくさんの発見をして帰ってきました。旅行を終えた後は、調べたことをまとめ、発表を行います。
まとめ・発表を行う
調べた情報の整理・分析・まとめを行い、発表を行います。準備には発表の形式に応じて適切な時間を配分します。さらなる問いが生まれる場合もあります。時間が許せば、追加で調査する時間を取ってもいいでしょう。
協力者へのお礼・報告、現地への還元
旅行中にフィールドワークや取材でお世話になった施設や人に、探究成果の報告もかねてお礼のメッセージを送ることも良い学びになります。生徒自らが行うことで社会性やお礼のマナーを学ぶことができます。
また、旅行先の地元メディア(地方新聞やテレビ局など)などに探究成果を投書することを検討してもいいと思います。
まとめ
修学旅行を探究学習にする方法を解説しました。準備など大変なこともたくさんあります。しかし、生徒たちが興味・関心を持ったことを、旅先という特別な場所で主体的に調べ探究するという経験は、一生の思い出になると思います。
またこの方法は修学旅行だけでなく、日帰りの校外学習などにも応用できます。本格的にご検討されるときは、またこの記事を思い出していただければと思います。
参考記事:【解説あり】地理探究の学習事例5つを紹介
*こちらの記事で、諏訪地方へ2泊3日で現地調査を行ったお茶の水女子大学附属高等学校の事例を紹介しています。事前学習、現地での住民の方への取材、学習後に地元新聞へ報告して記事に掲載されたことなど、修学旅行の探究に生かせるヒントがたくさん載っています。ぜひ参考にお読みください。