探究学習と調べ学習の明確な違いってなんなの?
探究学習が浅い調べ学習になりがちなんだけど、どうすればいいかな?
このような疑問をよく先生方からいただきます。
この記事では「探究学習と調べ学習の違い」、そして「探究学習が浅い調べ学習にならないためのポイント」、「調べ学習を探究学習に利用する方法」を解説します。
まず、探究学習と調べ学習の違いは「出発点」と「目的」です。表にまとめたのがこちら。
調べ学習 | 探究学習 | |
出発点(スタート) | テーマと範囲を先生が決める | 生徒が問いやプロセスを決める |
目的(ゴール) | 答えを見つけて指示通りまとめる | 各段階で主体性を発揮し対話を重ねて学びを深める |
そして探究学習は、ともすると浅い調べ学習で終わってしまう可能性もあります。以下の3つに気を付けることでそれを防ぐことができます。
探究学習が浅い調べ学習にならないためのポイント
・身近な自分ごとから問いを見つける
・目的を見失わないように伴走する
・対話が生まれやすい環境をつくる
そして最後に、「調べ学習を探究学習に利用する方法」として、探究テーマを見つけるために調べ学習を利用する方法を紹介します。
それでは詳しく見ていきましょう。
【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
現在、探究に関する無料相談会を開催中です。探究へのICT活用や外部連携にご興味ある方、お気軽にご連絡下さい。ご予約はこちら(2024年3月現在、問い合わせが急増しております。ご希望の方はお早めにご連絡ください)。
【企業のCSR広報ご担当者様へ】
CSR広報活動の強い味方!
探究教育を通して、学校と繋がるさまざまなメリットを提供しています。
まずはお気軽に「教育CSRサービスページ」より資料をダウンロードください。
また無料相談も可能です。些細なご相談やご質問、お見積りなど、お気軽にご相談ください。
探究学習と調べ学習の違いは「出発点」と「目的」
身の回りに情報があふれているこの時代、信頼できる情報に基づいた判断をするには情報や情報源を評価し取捨選択していくスキルが不可欠です。
このスキルを中等教育段階で習得・活用できる学習方法として、調べ学習と探究学習が挙げられます。この二つはいずれも情報の収集・整理・分析・まとめの工程を含んでいますが、探究学習は従来の調べ学習と何が違うのでしょうか。
探究学習と調べ学習の大きな違いはその出発点と目的にあります。 この違いを認識し、生徒の学びをより充実させていきましょう。
誰が課題を決めるのか
探究学習と調べ学習は課題を決める主体が異なります。
一般的に調べ学習は、先生や単元によってあらかじめ決められたテーマや範囲の中で進めます。生徒は黙っていてもお題を与えられますし、手を付ける前からすでに答えが存在していることが暗黙の了解です。その答えにたどり着けるか、それを指示通りにまとめられるかが生徒の腕の見せ所になります。
一方で、探究学習は生徒が自ら課題を設定するところから始まります。生徒自身の日常や社会のなかでの観察、興味関心が出発点となり、生徒には仮説を検証していくプロセスが問われます。場合によっては、自らデータを集めたりして、仮説を支えるために必要な根拠を作り出すことも必要です。
探究学習と調べ学習の出発点はこのように異なるため、それぞれで活用するスキルや学びのあり方も変わってきます。探究学習は生徒の「主体的な学び」の実現につながることが期待されているのです。
参考資料:平成29年度小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文科省説明資料
対話が生じているか
調べ学習は、テーマについて調べてまとめたレポートを提出するだけでも成り立ちます。なぜなら、調べ学習で重視されているのは、情報の収集・整理・分析・まとめの工程の末に「答えにたどり着けているか」だからです。
しかし探究学習は調べるだけで終わりません。一般的には、自分で見つけた課題や、立てた問いに対してどのようなプロセスを辿って答えを出したのか、たとえそのプロセスが失敗であってもその工程をも発表し、フィードバックをもらうところまで含まれます。
発表する相手はクラス内の生徒に限らず、分野の専門家や地域住民など外部の人の場合もあります。生徒は相手に合わせた表現方法を考えて発表し、その結果として多様なフィードバックを得ます。
探究学習では問いに答えるプロセスに正解がない分、同じ問いに対して生徒x発表相手の数だけバリエーションがありえます。その多様な意見の存在を認め合い、疑問を交わし、説明を補うことが理想です。そこで生まれた反応のキャッチボールは学習者本人はもちろんのこと、その場にいる全員で共有する学びになります。
フィードバックが起きるのは、発表の時だけではありません。仮説を検証している過程で都度受け取るものもあります。これらのフィードバックを通して、生徒は様々な段階で考えを広げたり、深めたり、改めたりします。これが探究学習に期待されている「対話的な学び」の側面です。
答えに「たどり着ける」ことで評価される調べ学習とは違い、探究学習では、たとえ問いやプロセスや答えが不完全であっても、各段階で生じる対話を通して新たに学びにつながる可能性を含んでいます。
参考資料:平成29年度小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文科省説明資料
探究学習のスタートとゴール
ここまで見てきたように、調べ学習と探究学習では出発点(スタート)と目的(ゴール)が異なります。
調べ学習 | 探究学習 | |
出発点(スタート) | テーマと範囲を先生が決める | 生徒が課題・問いやプロセスを決める |
目的(ゴール) | 答えを見つけて指示通りまとめる | 各段階で主体性を発揮し対話を重ねて学びを深めること |
探究学習は、生徒がより主体的・対話的かつ深い学びを実現するために調べ学習をステップアップさせた学習であるともいえます。
関連記事: 探究学習で身につく力とメリットを解説
浅い調べ学習に終わらないために
せっかく探究学習に取り組んでも、興味のないテーマに取り組み、誰とも対話せず、課題解決意識のないまま進めると「浅い調べ学習」に終わってしまうことがあります。以下のポイントをおさえて、効果的な探究学習を実現しましょう。
身近な自分ごとから問いを見つける
探究学習で一番難しいのは、出発点となる課題や問いの設定です。ここをおろそかにすると、その先の工程でつまずいてしまいます。
課題や問いの設定や、学習への動機づけがしやすいのは、身近な自分ごとに目を向けること。最初はそれで充分です。よく知られているテーマでも、「まだわかっていないことはないのか?」「ほかのやり方はないのか?なぜ?」も立派な問いになりえます。
関連記事: 面白い探究テーマを設定する具体的な方法
関連記事:探究学習のテーマ・課題選びに失敗する先生が見落としがちな3つの視点
目的を見失わないように伴走する
課題や問いが設定出来たら、信頼できる情報源から情報を集めて問いを磨きます。気づいたら膨大な量の情報に飲まれていることもあります。生徒一人ひとりの状況を踏まえつつ、生徒が問いを見失わないように思い出させながら伴走するのが先生の役割です。
ときには問いを立て直す必要が出てきますが、それも探究学習が進んでいる証拠です。
また、自分ごとで始まったはずの課題や問いがいつのまにか社会的な課題に結びついていることもあります。先生は生徒が見落としているかもしれない視点や案を示します。
たとえば実際に現場にいく、現物をさわる、専門家や当事者に話を聞く、仮説を実践してみる、現場調査をしてみるなどの具体的な手段を提案してみるのもひとつです。
探究学習での先生の役割は答えまでの最短ルートを導くことよりも、生徒が探究学習の段階を踏んでいくための方法論を実践・習得させることです。
対話が生まれやすい環境をつくる
従来の調べ学習と違い、生徒がそれぞれの問いやプロセスを自ら探るのが探究学習です。このような主体的な学びを可能にするのは、なによりも教室の雰囲気と生徒の心理的安全性です。
教室で発言しても笑われず、悪口にもつながらないとわかっている環境でないと、生徒は主体性を発揮できませんし、対話も生まれにくくなります。そしていくら発言が促されるからといって、独りよがりで人を傷つけるような言動は許されません。
教室での話し合いが表面的なものに留まることなく、傷つけ合いにもならないような発言ルールを設けたりして、生徒が安心して探究学習に専念できるような雰囲気づくりが肝心です。
探究の時間以外でも、生徒は主体的・対話的な思考の跡がみられる言動を見せることがあります。ときには生徒のこうした側面を発見し奨励することも進んでやってみてください。
調べ学習を探究学習の入り口にする方法も
逆に、調べ学習を探究学習の準備として利用することもできます。
課題設定が一番難しい
探究学習で最も難しいのが最初の段階、課題や問いの設定です。探究では生徒自らが興味・関心に基づいて課題設定をすることを推奨しています。しかしいきなり「好きな課題を設定していいよ」といっても、戸惑う生徒の方が多いのではないでしょうか。
生徒は自分の興味・関心に自覚的でなかったり、興味・関心があっても、課題を見つけるまで深く知っているわけではないことが多いのです。
調べ学習を入口として課題を見つける
そこで、まずは課題設定の前段階として興味があるテーマについて調べ学習を行うことも有効です。特にゴールを決めずに、興味の赴くままに調べるうちに、一筋縄ではわからない疑問や、さらなる興味がわいてきます。これが探究の種となり、よりよい課題設定につながります。
知識がないと課題も問いも生まれない
このように、知識がないと探究学習もうまくいきません。それは課題や問が決まった後だけではなく、そもそも課題を見つけるところから知識は大切なのです。
探究学習はもう始まっている
この記事では、探究学習と調べ学習に共通点もありながら、主に出発点と目的において大きな違いがあることを述べてきました。その違いは、生徒の学びをさらに深く豊かなものにしていくための着眼点でもあります。
普段から学習に集中しやすい教室の雰囲気づくりや、生徒一人ひとりの興味関心のアンテナを磨いておくことで、主体的で対話的な学びを実現できるチャンスが増えます。
ある意味、探究学習は開始前から始まっているのです。
【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
現在、探究に関する無料相談会を開催中です。探究へのICT活用や外部連携にご興味ある方、お気軽にご連絡下さい。ご予約はこちら(2024年3月現在、問い合わせが急増しております。ご希望の方はお早めにご連絡ください)。
【企業のCSR広報ご担当者様へ】
CSR広報活動の強い味方!
探究教育を通して、学校と繋がるさまざまなメリットを提供しています。
まずはお気軽に「教育CSRサービスページ」より資料をダウンロードください。
また無料相談も可能です。些細なご相談やご質問、お見積りなど、お気軽にご相談ください。
【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。