経済産業省「未来の教室」が2021年2月末より公開を開始した「STEAMライブラリー」のコンテンツ事業者として最多の36コンテンツ(18コンテンツに日本語版、英語版がそれぞれ有り)を提供しているブリタニカ・ジャパン株式会社(以下、ブリタニカ)の天野慧氏、前田由美子氏に、Study Valley代表取締役社長、田中悠樹がインタビューしました。
後編では、これからの教育現場のニーズに応えるためのサポートについて、探究学習で学びを深めるために必要なこと、STEAM教育がそれを学ぶ人たちにどんな影響を与えるのかについて語っていただきました。
プロフィール
天野慧(あまのけい)様
ブリタニカ・ジャパン株式会社カリキュラムマネジメント&トレーニング部 ディレクター
株式会社NHK出版でデジタル教材の開発、外資系ゲーム企業で研修カリキュラムの構築と評価等に携わったあと、2021年5月より現職。同時に、教育の効果・効率・魅力を向上させるための知見であるインストラクショナルデザイン(教育設計)についての研究を進め、熊本大学大学院教授システム学専攻博士後期課程修了。電子的にスキル証明を行う仕組みであるデジタルバッジに関する研究で博士号(学術)を取得。熊本大学では客員助教として研究及び教育設計に関わる教員研修を実施。STEAMライブラリ―では、カリキュラムのデザインと教育現場での効果的な利活用へ向けた展開を担う。
前田由美子(まえだゆみこ)様
ブリタニカ・ジャパン株式会社コンテンツ開発部 マネージャー
新卒で出版社に就職。実用書・写真集・学習辞典などの編集を経て、2000年よりベネッセコーポレーションにて、小中高校生向け国語辞典・漢字辞典の編集、小中学校向け国語系デジタル教材の制作に携わる。2015年、ブリタニカ・ジャパン入社。小中学校向けデジタル学習教材「ブリタニカ・スクールエディション」の編集を担当し、調べ学習や協働・探究学習に焦点を当てたコンテンツの制作を進めてきた。STEAMライブラリ―では、日本語版の原稿チェックを担当。
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ブリタニカが提供するサービス自体に最先端の研究知見を応用し、先生方の「思い」に寄り添いたい
(田中) コンテンツ制作だけではなく、教育現場の先生方へ向けたサポートという点で大事にされていることは何かありますか。
(天野) それぞれの先生方のニーズに寄り添ったサポートを提供できないかと考えています。良いコンテンツがあれば、効果的な教育が提供できるかというと、そうではないと思います。もちろんそれは前提になりますが、それに加え、先生方のそれぞれの理想の授業をデザインするためのお手伝いができればと思っています。
たとえば、米国のチームには教育コンサルタントが5名ほどいて、プロフェッショナル・ディベロップメント(PD)というソリューションを提供しています。
これは、ブリタニカのコンテンツを使ってどう効果的な授業をデザインするかをサポートするもので、メールや1on1ミーティング、集合ワークショップ、eラーニング、ニュースレターによる事例提供、ワークシートや思考ツールの提供など、さまざまなチャンネルでのサポートを提供しています。パッケージのコンテンツを提供するだけでなく、先生方の利活用に向けて、できる限りのことをしていきたいと思っています。
(田中) 教育業界ではあまり聞きませんが、人事系システムやCRMシステムなどのITサービスではこうしたサポートは当たり前に行われていることですね。
(天野) そうかもしれませんね。私自身が学校だけではなく、海外の企業で人材育成の現場にいたこともあるので、その先端的な知見も取り入れて、日本の教育に貢献したいという思いも個人的にはあります。
世界の人材育成の業界では、「研修が人材育成の最終手段である」という考えがスタンダードになっています。何らかの業務支援を行うときに、研修で人を集めてスキルを教えるのは、時間もかかるし、お金もかかるし、もっとも効率が悪いことではないかと思います。
それよりも、ツールを提供したり、チュートリアルを提供したりしたほうが、直接的に課題解決に貢献できて効果的です。こうした考えを踏まえて、研修以外の解決策も考慮し、いろんなチャンネルを用いて、柔軟な解決策を提供するのが一般的になってきています。
実際に、人材育成の国際学会は、ASTD(American Society for Training &Development) という名称で、「トレーニング」という言葉がついていたのですが、ATD(Association for Talent Development)のように、その言葉が削除されました。人のサポートというと「研修しよう」となりがちですが、ブリタニカのPDも先端的な研究知見を応用して、より効果的なサポートを提供することを大事にしていますので、こうした動向も踏まえて、できる限りベストなものを提供したいと思っています。
もちろん日本でこうしたアプローチにどれだけ需要があるかは未知数ですが、いろいろ勉強して、お忙しい先生方に最適なサポートができる道を模索していきたいです。
前提になる知識がなければ問いなんて出てこない。まずは百科事典であらゆる切り口から物事を調べてほしい
(田中) ブリタニカさんが探究学習にかける思いを別の角度からもお伺いしたいと思います。探究学習の教材提供を通じて、どんな学びを実現したいとお考えですか?
(前田) 私は「答えのない問いに向き合い、自分なりの答えを出せる子供を育む」というゴールを意識しながらコンテンツ制作を行ってきました。
その中で私たちが作るコンテンツは探究学習だけでなく、個別最適な学びにも役立つものだなと感じています。ツールさえあれば、子供たちは自分のペースで分からないことや興味のあることを調べられますからね。せっかく一斉授業では出来ない学びを可能にする「STEAMライブラリー」や「ブリタニカ・スクールエディション」などのコンテンツがあるのですから、ぜひ活用してほしいです。
子供たちそれぞれが個人の興味や好奇心に従って知識を得て、そこから独自の問いを立て、自分で学んでいってほしいと思います。
(天野) そのために我々自身も学び続けないといけないなといつも思います。
大人になっても学び続けなければならない時代にSTEAM教育がある意味とは?
(田中) 最後に質問なのですが、もしお二人が中高生の時に現在のようなインターネット環境やツールがあり、STEAMライブラリーのようなコンテンツがあったら、どうなっていたと思われますか?違う職業に就いたり、生き方に違いがあったと思いますか?それともやはり教育の世界で働かれていたと思いますか?
(前田) 私はどんな職業を選んでいたかは想像がつかないですが、大学や学部の選び方は変わっていたかもしれないと思いますね。私の時代は偏差値教育の真っただ中だったので、自分が将来何をやりたいか、大学で何を学びたいかなどはほとんど考えず、大学や学部も偏差値で決めてしまいました。
お恥ずかしい話、私が選んだというより、先生が選んだと言っても過言ではないかもしれません。それで大学に入ったのですが、大学の友達のなかにはちゃんと問題意識や自分が学びたいことを明確にして勉強しに来ている人たちがいました。それを知ってすごく恥ずかしいなと思ったんですよね。
もし、もっと自分の興味に従って探究できる機会が中高生時代にあれば、大学を選ぶときの基準は違っていたような気がします。
(田中) そうですよね。それこそ大学の授業の身の入り方も全然違っていたかもしれませんよね。社会に出てからこそ学び直したい気持ちになる人も多いですし。
(前田) そうなんです。コンテンツを作成するために日々自分で勉強したり調べたりしている中で、もっと学生時代に勉強しておけばよかったとか、学び直したいなといつも感じます。でも自分が学生だった時は、そんなことまで考えず、ただ目先の受験をクリアできれば良いと思っていました。今思えば、何も問題意識を持たず、恥ずかしいことだなとすごく感じています。
(天野) 社会人になってからは本当にSTEAM的な学びが必要になりますよね。私自身、本が好きで出版社に入ったのに、そこで教育デジタル事業担当になり、教育工学を学ぶ必要性にかられて、ゼロから勉強をはじめて、その分野が好きになって博士号まで取得しました。
博士課程のときは、統計やデータ分析、プログラミングでとても苦労したので、中高時代にもっと数学や理系科目を勉強しておけばよかったと思いました。いまの仕事が好きなので、あまりやっていることは変わらないかもしれませんが、社会人になってからこうした学びの方が楽しいと痛感したので、より楽しい青春時代だったかもしれませんね。
(田中) なるほど。人によって全く違う答えになりますね。
(天野) STEAM教材を作っていると、いかに自分が無知か思い知らされる毎日で(笑)
(前田) そうなんです!!知らないことばかりですから!日々新しい知識に触れて、ニュースなども面白く聞けるようになります。
(天野) STEAM教材が新しいことに興味を持つきっかけになってくれればと思います。
(田中) 本当にそうですね。とても興味深いお話をたくさん聴けました。本日は本当にありがとうございました。
(天野)・(前田) ありがとうございました。
STEAMライブラリーとは
経済産業省「未来の教室」が運営する、STEAM教育を通じてSDGsに掲げられる社会課題の解決手法を学べるオンライン図書館
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。