理数探究の「物理」の事例が知りたい
探究学習の事例をお探しの先生へ。
2022年から本格的に始まる「探究学習」。理数探究の中で物理をどうやって教えたら良いかわからない・・・そういったお悩みをよくいただきます。
そこで本記事では「物理の探究学習事例」を調査してまとめました。
テーマやねらい、実践のプロセスや結果なども掲載しています。授業の参考にぜひお使いください。
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物理の探究学習のポイント
・探究で何を学ぶのかを明確にする
・評価を明確にする
「総合的な探究の時間」は探究的な学びを身につけるのに主眼が置かれ、テーマや課題に自由度があるのに対し、教科の探究は、探究的な方法で「教科に関する知識や考え方」を身に付けることも期待されます。
探究を通じて、生徒が教科の知識や考え方を身に付けられるようにデザインしておく必要があります。
またペーパーテストと違い、成果だけでなく探究のプロセスも評価の対象になるのが探究学習です。探究のプロセスを評価する方法を決めておくことも重要です。
事例をご覧になる際も、これらのポイントを踏まえて見ていただく良いかと思います!
それでは、理数探究(物理)の事例を紹介していきます。
【解説あり】高校物理の探究学習事例5つを紹介【理数探究】
1.水と石けんを使った表面張力についての探究学習
神奈川県内の公立高校で行われた水と石けんを使った表面張力についての探究学習です。2時間程度で数学と理科の二つの観点から探究できるように計画・実施されました。
テーマ | 「表面張力」「浮力」「親水基」「親油基」など |
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学習期間 | 1日(2時間) |
実施校 | 神奈川県内の公立高校 |
対象学年 | 2年生 |
学習のねらい
数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を組み合わせて行う探究の過程を通して、課題を解決するために必要な資質・能力を育成すること。
課題・実施の流れなど
・数学的にシャボン膜の性質を探究して表面張力について学ぶ
・水と石けんの表面張力を比較
・石けんについての構造を生徒が立てた仮説をもとに実験を行って確認する
結果
実験のプロセスで生徒たちは「表面張力」「浮力」「親水基」「親油基」などについて理解を深めていきました。
最後には石鹸が汚れを落とす仕組みをグループで探究しまとめとしました。
ポイント
休憩時間にも積極的に実験を続けるなど、多くの生徒が意欲的に取り組み、理数に対する興味・関心が高まりました。
また、探究活動を効率的に行うために、タブレット端末を活用するBYOD(私物端末の利用)を取り入れ、生徒の考えや意見を共有できるような支援も行われ、学習の効率化にもつながりました。
詳細: 高等学校におけるBYODを活用した理数探究学習の実践と成果
2.ロケット推進薬の燃料のしくみを定量的に探究
「ロケット花火」をテーマにした探究学習事例です。物理、化学にまたがるテーマ、また危険な物質を扱うものだけに「安全な実験環境」を実現する方法を学んだ事例です。
テーマ | 物理の燃焼について |
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実施校 | 常葉学園橘高等学校 |
対象学年 | 部活動にて |
学習のねらい
生徒の好奇心を大いに刺激しますが、扱い方によっては危険物となり得ます。事故防止の意識を深くもってもらいながら、ロケット推進薬の燃料のしくみを探究することがねらいです。教科としては高校物理と高校化学との関連が重視されました。
課題・実施の流れなど
静岡県の竜勢(ロケット花火のようなもの。静岡県指定無形民俗文化財)保存会への調査と、固体燃料ロケットの仕組みを比較することで、推進力となる燃料の仕組みを明らかにすることに取り組みました。
安全上、ロケットを飛ばさずに推進力を測定する方法として、梵鐘用の撞木をモデルにした装置を用いて測定を行ったり、過塩素酸塩の熱分解反応を学ぶためにビーカーやフラスコを用いた気体捕集実験を行ったりしました。
結果
過塩素酸塩の分解反応の化学式を導くことができ、物理にとどまらず、化学にも繋げられる学習となりました。
ポイント
本研究は、東海地区高等学校化学部研究発表会と日本学生科学賞中央審査で発表されました。その際、生徒は他校の学生から質問を受けたり活発に意見交換を行う中で、専門家や研究者として必要な能力を実感し、探究学習における「まとめ・表現」の段階で第三者からフィードバックをもらう重要性に気づく機会にもなったようです。
3.アドバンシング物理「センサープロジェクト」の実践報告
身近なセンサーを設計・製作することに、探究的なアプローチで臨んだものです。
テーマ | センサー、電気回路 |
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学習期間 | 7日間(14コマ) |
実施校 | 常葉学園橘高等学校京都教育大学附属高校スーパーサイエンスハイスクール(SSH) |
対象学年 | 2年生 |
学習のねらい
・未履修の電気分野への理解を、センサーの設計製作、実験を通じた探究的なアプローチで獲得すること
・その過程や面白さの喜びを体験すること
・身近なセンサーを探究することで科学技術と現代生活の関連を考えること
・発表によって他者へ伝えることの重要性を気づかせること
・共同実験者との討論を活発に行うこと
課題・実施の流れなど
以下からひとつを選び、設計製作、または調査を行います。
A.明暗を光で知らせるセンサーシステム作り
B.明暗を音で知らせるセンサーシステム作り
C.熱いことを光で知らせるセンサーシステム作り
D.デジタル温度計作り
E.光の急激な変化を調べる
実験の結果は、班ごとにまとめて、最後に発表を行いました。
結果
生徒の取り組みは意欲的で実践後の理解度も高く、班内共同実験者との協同により予想を大きく上回るクオリティのセンサーシステムを作った班も現れました。
また、生活との関連性についての意識も大きく向上し、当初の期待を裏切らない結果が得られました。
一方で、探究のための新たな実験方法を考案した班は多くなく、工夫の余地があったようです。また班編成が討論の活発さをはじめ、学習の成果と関わっていることもわかり、探究学習における班の構成の重要性も示唆されました。
ポイント
生活に身近なセンサーを扱うことで生徒も関心を持って取り組むことができ、学習と生活の関連性を実感することにもつながりました。
生徒が自分ごととしやすい題材を選ぶことで、より深い学習体験になることがわかる事例です。
4.探究活動を実現するための基本実験10の研究
国立東京学芸大学附属高等学校が、物理・化学・生物・地学のそれぞれに設定している10種類の基本実験について、物理の事例を一部紹介します。
なお、この学校では、ここで取り上げたほかにも以下のような実験が用意されています。
物理基礎
①重力加速度gの測定
②運動の法則(力学台車の運動)
③摩擦力の測定
④フックの法
⑤オシロスコープによる音波観
⑥弦の振動
⑦気柱の共鳴
⑧力学的エネルギー保存の法則
⑨比熱の測定
⑩手軽な電気実験
物理
①衝突やはね返り
②円運動や単振動
③気体の性質(ボイルの法則など)
④波の性質(水波や簡易分光器の製作)
⑤レンズの焦点距離
⑥静電気(箔検電器など)
⑦直流回路(非線形抵抗,プランク定数hの測定)
⑧コンデンサ(電気容量の測定)
⑨電磁力(モーターの製作など)
⑩電磁誘導や交流回路
テーマ | ・物理の気柱の共鳴の生徒実験 ・直流回路 キルヒホップの第二法則 |
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実施校 | 国立東京学芸大学附属高等学校 |
学習のねらい
学習内容の理解を深めるだけでなく、自然現象の見方・捉え方を身につけた上で、目的意識を持って観察・実験に取り組む生徒を増やし、身の回りの現象を科学的に捉える力を育てること。
課題・実施の流れなど
(1)気柱共鳴の実験
アクリルパイプで安価で扱いやすい気柱共鳴装置を作り、どういう状態で共鳴が起こるのかを確かめる実験を行いました。発展として、気柱の両端を開けた時でも共鳴音が聞こえるかの実験も行われました。
(2)直流回路 キルヒホップの第二法則
キルヒホッフの第二法則が成り立っていることに気づかせることを目的に、生徒に抵抗やコンデンサの直列接続や並列接続、抵抗とコンデンサを組み合わせた回路などのそれぞれの端子電圧を測定させる実験を行いました。
結果
(1)自ら法則性を発見し、事象を分析して解釈し、自分なりの方法で表現を試みる生徒が増えました。予想とは違う結果が得られ驚く生徒も多く、知識以前の素朴な疑問に立ち帰る機会になったようです。
(2)普段使わないブレッドボードを使った実験で、黙々と作業をする生徒の姿が見られました。静かな個人実験ではありましたが、生徒の理解が深まりました。
ポイント
身近な素材を使って安価な予算で実施できたこともポイントのひとつです。自分の体を動かして実験に取り組むことで、生徒が試行錯誤し、自ら法則性を発見し、事象を分析して解釈するという探究的なプロセスが生まれやすくなったと考えられます。
5.高等学校物理の電気単元における回路カードを使った実験
高等学校物理の電気単元における回路カードを使った実験事例です。生徒が試行錯誤しながら回路を設計・製作する実験プロセスで探究力を高めた様子が見られ、探究学習に応用できる事例です。
テーマ | 高等学校理科、物理、電気回路など |
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実施校 | お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーションセンター お茶の水女子大学附属高等学校 かがく教育研究所 |
学習のねらい
普段あまり実感しないコンデンサやダイオードについて、電気回路を作ることでその働きを理解すること。
課題・実施の流れなど
視覚的理解ができるように、回路図と見た目が同様な回路カードを生徒自身が作成。
作成後「一人で行う実験」と「二人で行う実験」を実施します。それぞれにテーマ(コンデンサやダイオード、直列・並列繋ぎなど)を設け、高校物理での電気の単元理解を目指しました。
授業後に対象生徒27人に、実験教材の自作に関すること、使用に関すること、そして理解に関することの3つの観点からアンケートを取りました。
結果
アンケートについて、作り方が簡単だったという肯定的な意見を持つ生徒が100%、使い方が簡単だったという肯定的な意見の生徒が96%、内容理解が深まったと答えた生徒は100%という結果が得られ、本教材と実験は教科書の内容理解に有効であることが明らかとなりました。
さらに、生徒が試行錯誤しながら回路を設計・製作する実験プロセスで探究力を高めた様子が見られ、個人の活動のみならず、グループでの探究的な活動にも適した教材であることがわかりました。
ポイント
教科学習を探究的なアプローチで行うことで、生徒の理解にもつながった好事例といえるでしょう。
先生方がこれまで教科学習の中で行ってきた取り組みの中にも、少し工夫を加えれば、探究学習に応用可能なものが多く眠っているかもしれません。
詳細:高等学校物理の電気単元における回路カードを使った実験教材の検討
【高校の探究担当の先生へ】
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【企業のCSR広報ご担当者様へ】
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。