この記事では、探究学習の実践例の分析や、探究学習を理論的に研究した論文を紹介します。
具体的には、実際に高校で行われた探究学習の授業、研修、フィールドワークなどの報告・分析、探究学習実践に向けて学校・先生が準備すること、探究テーマとしては理科、国語、歴史、数学、SDGs、地域探究、そのほか高大連携や図書館活用などについて書かれた論文を紹介しています。
理論だけではなく豊富な授業の実践例や生徒の発表資料などが掲載されている論文もあるので、授業づくりの参考にもしていただけると思います。
さらに、他の論文を探したい方のために、最後に論文検索の方法も紹介しております。ぜひ最後までチェックしてくださいね。
・論文を読むメリットと読み方のコツ
・探究学習についての論文11選
∟実践例(総合)
∟先生が準備すること
∟高大連携
∟地域探究に関する論文
∟SDGsに関する論文
∟理科探究に関する論文
∟数学探究に関する論文
∟国語探究に関する論文
∟歴史探究に関する論文
∟図書館の活用に関する論文
・論文検索の方法
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論文を読むメリットと読み方のコツ
探究学習を知るうえで、論文を読むメリットはなんでしょうか?
論文には以下、3つのメリットがあります。
・査読が入ることにより情報の信頼性・正確性が高い
・書籍よりも情報が早い
・テーマが絞られていて具体的
まずこちらを簡単に紹介したいと思います。
査読が入るため情報の信頼性・正確性が高い
論文はその業界の学術誌に掲載されるのが一般的ですが、それには専門家による「査読」という審査に通ることが必要です。専門家に認められなければ学術誌には掲載されません。逆に掲載されたものは一定の信頼性・正確性があるということです。
書籍よりも情報が早い
出版された書籍も一定の信頼がある情報ではありますが、出版には時間がかかります。論文は書籍よりも公開のスピードが早いため、より新しい研究結果を見ることができます。
テーマが絞られていて具体的
書籍になると、ある程度テーマが一般化され扱うテーマが広くなる傾向があります。しかし論文はより具体的にテーマが絞られますので、ひとつのテーマについてより深く詳細に知ることができます。
読み方のコツ
論文は長いものでは100ページを優に超え、興味がある論文すべてに目を通すことは難しいと思います。
そこで素早く論文の内容を把握する読み方のコツとして「論文の最初の要約と、最後のまとめを先に読む」ことをおすすめします。
論文はおおむねこのような構成になっています。
・要約
・本文
・考察
・まとめ
要約とまとめに論文のポイントが書いてあります。気になる論文があれば、まず要約とまとめを読み、自分の知りたいことが書いてあると思ったら、本文をじっくり読む、という読み方が良いと思います。
探究学習について書かれた論文(カテゴリ別)
ここからは実際の論文をカテゴリ別に紹介していきます。
実践例(総合)
タイトル
令和2年度 ワールド・ワイド・ラーニングコンソーシアム構築支援事業 : 西日本をつなぐグローバルリーダー育成イニシアティブ(研究開発完了報告書)
ポイント
2020年5月から2021年3月にかけて広島大学附属福山中・高等学校を拠点校として行われた「⻄日本をつなぐグローバルリーダー育成イニシアティブ」の報告書です。
145ページに及ぶ資料にはプログラムが目指すグローバル人材のグローバルコンピテンシー、中学~高校の6年間でなにを狙いとしどんな活動を行うのか、スケジュールや具体的な時間配分などプログラムの詳細が掲載されています。
実際に期間中に行われた研修や留学生との交流プログラム、探究的な活動の様子や生徒たちが作った発表資料、生徒の感想なども豊富に掲載されており、学校レベルでの探究的な学習の計画作りから、授業の具体的な探究テーマの参考にもなる報告書です。
著者 | 広島大学附属福山中・高等学校 |
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掲載誌 | 中等教育研究紀要 /広島大学附属福山中・高等学校 |
発行年月日 | 2021-03-31 |
タイトル
高等学校におけるカリキュラム・マネジメントの推進~埼玉県立不動岡高等学校「Fプラン」の事例から~
ポイント
新学習指導要領で求められている「総合的な探究の時間」を中核とするカリキュラム・マネジメントの推進について研究した論文です。
埼玉県立不動岡高等学校の総合的な学習の時間「Fプラン」を事例とし、
①教育目標との関連
②組織体制及び人的・物的な体制の確保
③教科横断的な取組
④教育課程の実施状況の評価
以上の4点から考察されています。
著者 | 下山忍、島村圭一 |
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掲載誌 | 教職研究 |
発行年月日 | 2021-03-31 |
先生が準備すること
タイトル
教師が探究心を身につけるための環境要因の分析 ―高等学校におけるPBL実践を事例に―(抄録)
ポイント
探究学習に臨む先生に着目した研究です。
生徒が探究的に考え学ぶ姿勢を育成するためには、探究を行う教員自身が探究とは何かを認識し、探究を面白がることができる「探究心」が必要ではないか、という着想から探究を実践する教員がどのように「探究心」を身につけていくのか、その環境要因を明らかにするために書かれた論文です。
①探究につながる経験
②総合学科への赴任
③探究に対しての課題感
④探究学習の担当になる
⑤学校外との出会い
⑥同僚・生徒の姿から学ぶ
という6つの要因を導き出し、その要因を活かすために必要なアクションを提案しています。
著者 | 酒井 朝羽 |
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掲載誌 | 令和2年度 信州大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻(教職大学院)実践研究報告書抄録集 |
発行年月日 | 2021-03-31 |
高大連携
タイトル
高大連携に基づく「総合的な探究の時間」の支援体制の整備に向けて
ポイント
高大連携に基づいた「総合的な探究の時間」における探究学習・課題解決型学習の支援体制を整備するためのパターンを、
①局所支援型高大連携
②研究室支援型高大連携
③協働開発型高大連携
④後方支援型高大連携
の4つに整理し、解説した論文です。
著者 | 原田 拓馬 |
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掲載誌 | 活水論文集 |
発行年月日 | 2021-03-31 |
ここからは具体的なテーマに関わる論文を見ていきます。
地域探究に関する論文
タイトル
地域への思いを書き/語る地域学習 : 北松西高校「地域探究」の実践分析を通して
ポイント
長崎県の離島、小値賀地区での「地域探究」の実践について「地域への思いを書き/語る実践としての展開過程」を分析しています。
島の進路選択にあたって「島を出るか、島で生きるか」という葛藤が起こりやすい高校において、筆者は「地域探究」を行うことと「島で生きる」という意識との関連性や展開の可能性について着目してこの論文を作成しました。
具体的なカリキュラムやスケジュール、学習の狙いなども紹介されています。
著者 | 溝内 亮佑(九州大学大学院 : 博士課程) |
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掲載誌 | 社会教育研究紀要 |
発行年月日 | 2021-03-31 |
SDGsに関する論文
タイトル
「SDGs総選挙」の実践報告―SDGsを争点とした主権者教育―
ポイント
総合的な探究の時間に行っている主権者教育で、SDGsをテーマに生徒たちが政党を作り選挙を行うという実践を行っている学校の先生が書いた論文です。
SDGsそのものは実感がない生徒も多いため、現場ではSDGsを学内生活にあてはめ、財源をPTA予算に置き換えるなど、生徒が当事者意識をもって取り組めるように工夫が行われました。実践はまだ途中だそうですが、生徒の関心の高さが伺えるといいます。
この学校は、愛知教育大学の先生からアドバイスをもらったり、選挙の際は自治体から本物の投票箱を借りる予定であったり、外部との連携も積極的に行っているところも参考になるのではないでしょうか。また、
・1年次には学校を舞台にしたSDGs総選挙
・2年次には自治体を舞台としたSDGs総選挙
・3年次には国や世界に向けてSDGs達成方法発信というような段階的な学びの可能性
も感じているそうです。
著者 | 小田原 健一 |
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掲載誌 | 研究紀要 |
発行年月日 | 2021-03-31 |
理科探究に関する論文
タイトル
思わず科学的に探究し考えを表現したくなる理科授業の構想(抄録)
ポイント
中学生を対象に行われた「光と音」をテーマとしインスタントカメラを使って行われた理科探究授業の抄録。子供たちがカメラの仕組み探究に興味を持って行く様子が具体的に書かれています。
著者 | 平田 樹 |
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掲載誌 | 令和2年度 信州大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻(教職大学院)実践研究報告書抄録集 |
発行年月日 | 2021-03-31 |
数学探究に関する論文
タイトル
高等学校数学科における協同的探究学習による思考活性型興味とわかる学力の向上を目指した授業開発と効果の検討
ポイント
数学探究授業の参考になる論文です。
生徒の「数学に対する興味」や「わかる学力」の低さを課題にあげ、生徒に多様な解法のあるオープンプロセスの問題に協同的探究学習として取り組ませることにより、その影響を研究したもの。
筆者はこの研究の成果が見られたとし次のように考察しています。
「協同的探究学習により多様な解法を比較し、自分の考えと他者の考えを関連づけることで、考える楽しさやより深い理解につながったためだろう。本研究は,日本の数学教育の課題である、『数学に対する興味』と『わかる学力』の向上において一定の効果を示した」
論文中では生徒たちが取り組んだ数学の問題、興味の変化などが具体的に記載されています。
著者 | 久保 雅央 |
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掲載誌 | 教育実践高度化専攻成果報告書抄録集 |
発行年月日 | 2021-03 |
国語探究に関する論文
タイトル
芥川龍之介『羅生門』を核とした探究型授業に関する研究 : 高等学校国語科における言語活動を通した「学び」の質の向上を目指して
ポイント
新しい指導要領に対応する国語の探究学習として芥川龍之介の「羅生門」をテキストとした具体的な探究実践を検討・提案した論文です。
・探究実践①において、「読むこと」を中心として作品の重層性の探究を行う
・探究実践②において、研究実践①の成果を継承・発展させ、「話すこと・聞くこと」、「書くこと」の活動を通し、「創造型」学習を行う
・これらの一連の学びの連鎖により、〈知のスキル〉を含む学びの定着と、活用能力の育成を図る試みを提案しています。
「創造型」では、小説、映像、演劇形式など、多様な表現手段を使った「創造」を提案します。論文中には作品の分析と、プロセスごとの生徒への評価の観点も詳細に検討されています。
著者 | 太田 孝、髙橋 正人 |
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掲載誌 | 福島大学人間発達文化学類論集 |
発行年月日 | 2020-12 |
歴史探究に関する論文
タイトル
社会的な見方・考え方に基づいた「問いを表現」する歴史教育 : 高等学校「日本史探究」を想定した授業開発を通して
ポイント
探究学習を見すえて開発された、生徒たちが「問いを表現する」授業と、その実践結果をまとめた論文です。
日本の現代史をテーマに、まず生徒に問いを表現させ、それをもとに授業を行い、生徒は自分の問いをもとに年表を作成します。問いはクラス全員で共有され、生徒は一人で学習するのではなく、自分の問いと他の生徒の問いの関連性を考えながら学習を進めていきました。この授業の結果、以下のような結果が見られました。
・生徒が暗記型と感じていた日本史の学習が主体的なものに変わっていったことを実感した生徒が非常に多かった
・他者の問いや答えに触れたり、共有したりすることで、興味関心を広げるだけにとどまらず、自分で調べたり意見交換したり授業に集中したりする生徒がいた
・断片的な知識の暗記ではなく、歴史的事象の推移や因果関係に着目した見方・考え方を働かせた知識の習得を経験していたことがわかった
論文では、問いの分析・分類や、学習の狙いも詳しく表にまとめられています。
著者 | 久賀 隆之、白石 崇人 |
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掲載誌 | 広島文教教育 |
発行年月日 | 2021-3-26 |
図書館の活用に関する論文
タイトル
探究的な国語科授業の構想過程における学校図書館員との「協働」の意義
ポイント
探究学習において教師と図書館員とのよりよい協働(高次の協働)の在り方を提案する論文です。
筆者は教師が授業を構想し、依頼に応じて図書館員が資料を提供するといった関わり方ではなく、単元の目標や指導過程自体を共に計画・実践・評価し、そのなかで教科内容と情報リテラシーの育成を両立させていこうとする関わり方を提唱しています。実現すれば、次のようなメリットがあるといいます。
1.探究的な授業の教材を収集・選定することが容易になる
2.探究のプロセスに沿った指導過程を組織することが可能になる
3.高次の協働を経験することが、国語科教師の学習を促す
図書館員を情報リテラシーの専門家、授業づくりのパートナーとして捉えなおし、よりよい探究学習を実現しようというものです。
著者 | 古賀 洋一 |
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掲載誌 | 島根県立大学松江キャンパス研究紀要 |
発行年月日 | 2021-02-01 |
論文の調べ方
この記事で紹介した探究学習について書かれた論文はごく一部です。ここにない論文を調べたい方へ、かんたんに論文が検索できるサイトと調べ方を紹介します。
CiNii Articles(サイニーアーティクルズ)
日本語の論文を検索するときに便利なのが「CiNii Articles(サイニーアーティクルズ)」です。
「探究」のようなキーワードを入力すると、関連する論文が一覧表示されます。
「探究 地域」など複数キーワードのAND検索も可能です。また「本文あり」をクリックしてから検索すると、論文が全文公開されているもののみ表示されます。詳細検索では著者名や論文の掲載雑誌名からの検索などもできます。
Google Scholar(グーグルスカラー)
英語の論文も検索したい場合は「Google Scholar(グーグルスカラー)」が便利です。Googleが提供し、グーグル検索のように論文が検索できます。
まとめ
探究学習に関する論文と、調べ方を紹介しました。
今後、探究学習の実施が近づき、さらに2022年から全国で実践が始まると、さらに多くの論文の発表が期待されます。
探究学習で悩んだら、論文を探して参考にしてみてはいかがでしょうか。
また、本で探究学習を学びたい方へおすすめの本をまとめました。よろしければこちらの記事もどうぞ。
>>【先生向け】探究学習について学べる本5選!ニーズ別にまとめました
【高校の探究担当の先生へ】
当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』」を提供しています。
現在、探究に関する無料相談会を開催中です。探究へのICT活用や外部連携にご興味ある方、お気軽にご連絡下さい。ご予約はこちら(2024年3月現在、問い合わせが急増しております。ご希望の方はお早めにご連絡ください)。
【企業のCSR広報ご担当者様へ】
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。
2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。
2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。