今回は、株式会社Study Valleyの代表取締役社長であり、当ブログにてSTEAM教育のトップランナーの方たちへインタビューを行っている田中悠樹氏についてご紹介致します。どんな人間なのか、なにを考えているのか、どんなキャリアを経て起業に至ったのかなど、公式ホームページでは分からない素顔に迫りました。
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自分がやりたいことを見つけられる子供たちを増やし、日本社会を変えていきたい
東京大学大学院卒業後ゴールドマンサックスにアプリケーションエンジニアとして新卒入社。その後スタートアップCTO等歴任の後、株式会社リクルートホールディングスでは海外のスタートアップへの出資を担当。エンジニアとしてもビジネスマンとしても着実にキャリアを積み上げてきた田中悠樹氏。そんな田中氏が2020年1月に大学時代の友人と立ち上げたのは、なぜか教育の会社、Study Valley。 今回は、今までは当ブログでインタビューする側であった田中氏自身の特集記事として、教育への想いや事業展望、今までの半生など思う存分語って頂きました。 なおインタビューは株式会社Study Valleyの社員たちで行いました。第1編では、発足後1年半を迎えた株式会社Study Valleyがどのようにスタートし、どんな道筋を辿り、今後の展望をどう描いているのか、田中氏の社長としての想いをお届けします。
会社を立ち上げたキッカケは? オフィスで社員からの質問に答える田中氏 大学時代の友人と飲みの席で盛り上がって… ―株式会社Study Valleyは2020年の1月に発足しましたが、会社を立ち上げたきっかけはなんでしょう?―
田中
直接のきっかけは、大学時代の飲み仲間であり当時小学校の先生をしていた友人との飲み会です。僕はもともと教育かVR(仮想現実)、AR(拡張現実)の分野で何かしたいと思っていたんだけど、その友人と飲んでいるときに、僕が持っていた新しいアイデア(AIを使った算数の苦手克服アプリ)を披露すると、その場で「いいじゃん。面白いじゃん。やろうよ!」ととても盛り上がって…。その場で一緒に起業することに決まりました。 その後、すぐに当時勤めていた会社に辞めると伝えました。業務の引継ぎとか色々やることがあったので実際辞めるまでには3か月くらいかかりましたが、2020年の1月にStudy Valleyを設立しました。社名は「田中悠樹と愉快な仲間たち」にするか、勉強を中心とした周辺領域を包含した谷という考えで「Study Valley」にするか悩んだのですが、長すぎる社名は色々不便なので「Study Valley」にしました(笑)
大人の生産性を上げるより、日々勉強している子供に働きかけたほうが効果は高い ―直接のキッカケは飲み会だったとしても、もともと教育を取り組みたい課題だと考えていたのはなぜですか?―
田中
日本はこのままだとマズイと思っているからです。ビジネスを通して世界の色々な国に行き、人々と交流する中で、このままでは日本は衰退してしまうという危機感を持っていました。では、日本を変えていきたいとなったら、やるべきは教育だろうと。なぜなら大人を変えるより、子供を変えるほうが効果は高いからです。 前職では、HRTechの業界に関わる経験もあったんですが、HRTechが目指すのは、大人の生産性改善なんです。そこを分析していって僕が持った感想は、「これが上手くいっても微々たる改善しか起きないな」ということでした。 一旦社会に出て大人になってから新しいことを学ぼうとする人って少ない。なかなか勉強しない大人に一生懸命働きかけて彼らの生産性を3%上げるより、日々学んでいる子供たちに機会を提供するほうが、インパクトは大きいでしょう。 また教育以外の分野では、技術革新が起きて新しい仕組みやサービスが生まれ、また違う技術革新が起きて、その仕組みやサービスが便利になるという、ヘーゲルの弁証法的な考えによる螺旋階段状に循環しながら向上していく流れがあります。しかし教育にはそういった流れが全く起きていない。これには教育という産業自体がお金にならないと考えられてきたために業界内で競争が起きにくく、イノベーションが生まれづらいという構造上の問題も多分にあります。 なのでITなどの技術的側面の改革に加えて、もっと教育にお金が流れる仕組みを作ることで、早く教育の世界もそういう螺旋階段に載せていかなければいけないとも考えていました。
いくら便利に勉強できるツールやアプリがあっても子供たちに勉強する気がなければ意味がない ―田中氏は最初「数学のアンカー」というアプリを作りローンチさせました。これは子供の学習レベルに合わせて授業動画、練習問題を提供する学習効率化アプリです。
テストをアップロードするだけでAIが苦手を分析し、その子にあった授業動画・練習問題を提供する
しかし現在は「子供たちの学習モチベーションを高めること」をより重視し、探究学習の効果を高める「TimeTact」というサービスを開発、展開しています。 創業からまだ1年足らずで「子供たちの学習モチベーション」に注目して新サービスを開発した理由はなぜでしょうか?―
田中
教育業界に入ってみて気づいたのは、いくら便利で使えるツールやアプリがあっても、子供たち自身を勉強したい、学びたいという気持ちにさせなければ、結局意味がないということです。子供たちにやる気があれば、オーソドックスな紙のドリルであれ、AIを使ったアプリであれ効果がありますけれども、そもそもやる気が無ければ無用の長物なわけで。なので、まずは子供たちの学習へのモチベーションを高めて、子供たちが半自律的に学習する仕組みづくりをしようと思いました。 今までは日本は人口が多かったので、均質的な教育によりある程度の人材をたくさん作って、それで社会が回っていた。ですが、これからの少子高齢化の社会では量より質が求められます。質って何かというと、僕は「自分がやりたいことを自分がちゃんと分かっている」ことが質の高い状態だと考えています。なので、子供たちが、「自分がやりたいことは何か」という問いに向き合い、自分なりの答えを出すことを全面的にバックアップできる事業をしたいと考えるようになりました。
Study Valleyの現在の事業内容は? ―では、現在の事業内容の教えてください。―
STEAMライブラリー 田中
今は二つの事業に注力しています。一つは経済産業省とやっている「STEAMライブラリー」です。去年の9月に経産省が事業者公募を開始した「STEAMライブラリー」の事業案を見た瞬間、今の日本の教育に必要なのはこれだと直感しました。全身全霊をかけて提案書を書き、プラットフォーム構築事業者として関わることが出来ました。プラットフォームを作るだけでなく、コンテンツを作っている事業者さんそれぞれの想いに伴走していけるといいなと思いながら、事業を展開しています。
※STEAMライブラリー…経済産業省「未来の教室」が運営する、STEAM教育を通じてSDGsに掲げられる社会課題の解決手段を学べるオンライン図書館
Time Tact 田中
もう一つは「Time Tact」という製品です。学校や塾、家庭教師の事業者さん向けのデジタル機器を使用した学習支援サービスです。「GIGAスクール構想」で端末自体は教育現場に徐々に普及し始めましたが、端末だけあっても仕方ないので、そこで便利に利用できるシステム、ソフト面でのサービスになります。また、かれこれ10年以上前から学校の先生の働き方の問題が指摘されているにも関わらず変わらない現状を改善するための業務支援、校務支援の側面も持っています。今までは学習支援と校務支援が分けられて、システムとしても全く別物で当然という認識が一般的でしたが、それも破りに行きたいと思っています。
※GIGAスクール構想…日本全国の小・中学生が1人1台の端末を持って学ぶという国の構想
短期的なやる気を長期的な目的意識につなげるTime Tact ―Time Tactについてもう少し詳しく教えてください。―
田中
Time Tactは学ぶ人のモチベーションにフォーカスしたプラットフォームです。モチベーションを大きく2種類と捉えており、短期的なやる気の源泉と、中長期的なやる気=目的意識、に分けて考えています。 短期的には、勉強すればするほどお金がもらえる仕組みを提供しています。これまで先生がスタンプ台帳にシールを貼ってあげて、溜まったら景品がもらえる、の21世紀版です。 もう一つの、長期的なモチベーションについては、勉強することが目的ではなく、勉強を自分の目的を達成させるための手段に進化させる仕組みです。我々のTime Tactは探究学習にフォーカスしており、学ぶ一人ひとりが学ぶ目的を見つけられるプラットフォームを目指しています。詳細は弊社お問合せフォームにご連絡いただければご説明差し上げます(笑)
Time Tactを使う生徒たちにどのような影響を与えたい? 田中
Time Tactというサービスを利用することで、これを全力でやりたい!と思うものを見つけられるようにしたいですね。全力で取り組んだものに対して、社会でその分野に関して全力で取り組んでいる人からすぐフィードバックがもらえたら、いい点も改善点もすぐわかりますよね。せっかくインターネットがあって、簡単に色々な人と繋がれるのだから、すぐにフィードバックが返ってくるという点が重要だと思います。
イスラエルで受けた衝撃 前職では海外を飛び回っていた田中氏 ― なぜ探究学習にフォーカスしようと思ったのでしょう?―
田中
僕が前社でイスラエル駐在をしていた時に現地の投資家から聞いた話が強烈に印象に残ったからですね。一緒に食事に行ったときに、彼の娘の話になったんですが、彼が言うんです。「ねぇユウキ、聞いてくれ。うちの娘はぐーたらで昼夜逆転のだらしない生活をしていたんだけど、徴兵に行ってから激変したんだよ。生活態度が良くなっただけじゃなくて『私は将来こんなことをやりたいから、〇〇大学の〇〇教授の元でこんな勉強をしたいと思っているので学費を出してほしい』と言うようなった。劇的な変化じゃないか。」と。
※イスラエルでは18歳の男女の国民ほぼすべてに兵役の義務がある
日本でも自分のやりたいことを明確にして大学で学ぶ学生を増やしたい 田中
その話が僕には衝撃的だった。僕なんて大学に行く時に自分が将来何をやりたいかなんて全然考えてなかったからね。偏差値高い大学に行ければいいや、くらいの考えしかなかった。でも、先述したように「質」を考えたときに子供たちの目的意識はすごく重要な問題です。 目的意識なく大学に入ると僕みたいな勉強をしない学生になっちゃうけれども、大学に入る前にきちんとやりたいことが定まっていれば一生懸命勉強しますよね。
田中
だから日本でも徴兵制をやりましょうという話ではもちろんないです。その代わり、来年度から始まる高校での探究学習において、日本の子供たちも、早いうちに自分が何に興味を持って、どんなことを将来やりたくて、そのためにどんな勉強をしたらいいのか、自分で考えるチャンスにしてもらい、と思っています。
【第2編では、好きなことに熱中して過ごした田中氏の学生時代のエピソードをご紹介します】
STEAMライブラリーとは 経済産業省「未来の教室」が運営する、STEAM教育を通じてSDGsに掲げられる社会課題の解決手法を学べるオンライン図書館
[my_ogp url=’https://www.steam-library.go.jp/’]
【高校の探究担当の先生へ】 当メディアを運営する私たちStudy Valleyは「社会とつながる探究学習」を合言葉に、全国の高等学校様へ、探究スペシャリストによる探究支援と、社会とつながるICTツール「高校向け探究学習サービス『TimeTact』 」を提供しています。
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【企業のCSR広報ご担当者様へ】 CSR広報活動の強い味方! 探究教育を通して、学校と繋がるさまざまなメリットを提供しています。
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【この記事の監修者】
田中 悠樹|株式会社Study Valley代表
東京大学大学院卒業後、ゴールドマンサックス証券→リクルートホールディングスに入社。同社にて様々な企業への投資を経験する中で、日本の未来を変えるためには子どもたちへの教育の拡充が重要であると考え、2020年に株式会社Study Valleyを創業。 2020年、経済産業省主催の教育プラットフォームSTEAM ライブラリーの技術開発を担当。 2024年、経済産業省が主催する「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」に委員として参加している。